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ウクライナ フメルニツキー発電所の未完プラントに進展

21 Feb 2025

桜井久子

フメルニツキー原子力発電所 Ⓒ Energoatom

ウクライナ最高会議は2月11日、フメルニツキー原子力発電所の未完の3、4号機の完成に向けて、ブルガリアで建設が中止されたベレネ原子力発電所の設備購入に関する法案を承認した。賛成269票、反対40票であった。

ウクライナの原子力発電事業者エネルゴアトム社は同日、ウクライナ議会の議員による承認を歓迎し、「この決定は、ウクライナのエネルギーの自立とエネルギー安全保障を強化し、原子力産業のさらなる発展に貢献するものである」と表明。エネルギー省は、「同3、4号機の完成は、原子力発電所をゼロから建設するよりも数倍安価で迅速である」と指摘し、この議会の承認を受け、詳細なプロジェクト見積の更新作業を加速するようエネルゴアトム社に要請した。

フメルニツキー発電所の3、4号機は1990年に建設工事を中断してから未完成のままである。いずれも出力100万kW級のロシア製PWRであるVVER-1000を採用しており、3号機の建設進捗率は75%、4号機は20%である。エネルゴアトム社は3号機の完成を2028年に予定する。

ブルガリアでは、ベレネ原子力発電所(VVER-1000×2基)の建設計画があったが、2023年10月に中止となっており、ロシアから購入した炉設備等が建設サイトに保管されている。エネルゴアトム社は、この未使用の機器を購入して、フメルニツキー発電所の3、4号機に利用する計画だ。

エネルゴアトム社は、両機が完成すると発電量が年間150億kWh以上増加し、電力輸入への依存が減少、建設と運転の段階で、数千人の雇用を創出する他、中小企業の成長、コミュニティ収入の増加、投資誘致など、経済成長に貢献すると評価している。また、2030年以降に運転期限を迎える原子炉とリプレースすることにより、安定した信頼性の高いエネルギー供給を確保できるという。

IAEAのR. グロッシー事務局長は2月初旬にウクライナを訪問。フメルニツキー発電所の3、4号機の建設プロジェクトへの原子力安全に関する助言と技術支援を約束した。ウクライナは原子力部門におけるロシア系サプライヤーとの協力を完全に断っていることから、米ウェスチングハウス(WE)社からの燃料、またはWE社の技術を採用してウクライナで生産した燃料のみで運転される。WE社は現在、同3、4号機をAP1000を採用する5、6号機の最先端の技術レベルに引き上げるため、安全性分析を実施中である。

ウクライナには15基の原子力発電所があり、2022年3月初旬からロシア軍の支配下にあるザポリージャ発電所の6基(合計出力600万kWe)を含め、原子力は総発電電力量のおよそ半分を供給している。フメルニツキー1号機(VVER-1000)は1987年に送電網に接続されたが、他の3基の建設は1990年に中断。2号機(VVER-1000)の建設のみ再開され、2004年に送電網に接続された。WE社製AP1000を採用する5、6号機を含む、全6基が稼働を開始すると、その供給する電力は欧州最大となり、ザポリージャ発電所を超える。

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