オランダ 原子力発電所の新設プロジェクトが遅延
28 Feb 2025
オランダ議会(下院)で2月11日、S. ヘルマンス気候・グリーン成長相(副首相)は、新規原子力発電所の建設遅延に関する議員からの質問に対し、新しい原子力発電所の実現までには、さまざまな作業や手続が山積しており、当初計画通りに2035年までに運開させることは難しいと、書面で回答した。
2021年3月にオランダで発足した前・連立政権は、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指しており、同年12月、連立合意文書に国内唯一の原子力発電設備であるボルセラ発電所の運転期間を長期にわたって延長するとともに、政府の財政支援により新たに2か所で原子力発電所を建設する方針を明記。翌2022年12月には、新設サイトとしてボルセラ・サイトが最適と発表している。計画では、2035年までに少なくとも、第3世代+(プラス)の原子炉、出力100万~165万kW×2基を新設し、オランダの総発電量の9~13%を供給するとしていた。オランダでは、1973年から稼働中のボルセラ原子力発電所(PWR、51.2万kW)で総発電電力量の約3%を供給中。同炉は運転開始から40年目の2013年に運転期間が20年延長され、現在の運転認可は2033年まで有効である。
経済・気候政策省(当時)は、2基新設に向けた立地選定手続きの第一歩として、企業、団体、地方自治体などから、サイト等に関する提案募集を2024年2月に開始。提案が条件を満たしている場合、建設候補地として潜在的に適しているかどうかを調査するとしていた。当初、新しい原子力発電所に適した場所と考えられていたのは、ゼーランド州のボルセラ・サイト、およびロッテルダム港のマースブラクテIだけであったが、同年9月以降、ゼーラント州のテルネーゼン、フローニンゲン州のエームスハヴェン、ロッテルダム港のマースブラクテⅡが候補地に追加された。これら候補地に対して、立地選定に向けた調査を実施することが法的に義務付けられているという。
同相は、候補地の選定決定の遅れを認め、許可、入札、建設において、まだ多くのステップを踏む必要があるとし、前内閣が言及した2035年の新設の期限は「非常に野心的」であり、これまで考えられていたよりも多くの原子力発電所の候補地を調査する予定であるため、年内の立地選定は不可能である、と指摘している。
なお2024年には、韓国水力・原子力、米ウェスチングハウス社、フランス電力がボルセラ・サイトにおける2基の新規建設の技術的可能性、安全性、環境影響、コストと時間の詳細な見積りを含む、実行可能性調査(F/S)を実施、完了しており、これらの結論は現在、独立機関によって検討されているという。