米国 テキサス州に30基のマイクロ炉建設を計画
03 Mar 2025
米国のマイクロ炉開発企業のラスト・エナジー社は2月28日、テキサス州北西部のハスケル郡に30基のマイクロ炉を建設し、同州内のデータセンター顧客向けに電力供給する計画を発表した。
同社は、取得した200エーカー(約0.8㎢)の用地にマイクロ炉を建設し、私設電線と送電網を組合わせて電力を供給する。同社はすでにデータセンターの需要増大に応え、テキサス州の独立系統運用者であるERCOTに送電網への接続を申請しており、米原子力規制委員会(NRC)に事前サイト許可(ESP)を申請する準備を進めている。
テキサス州のG. アボット知事は、「テキサスは米国のエネルギーの中心地であり、先進的な原子力発電でNo.1を目指している」「ハスケル郡におけるラスト・エナジー社のマイクロ炉プロジェクトは、州の増大するデータセンター需要に応えるもの」と指摘。ラスト・エナジー社創設者兼CEOは、「当社のマイクロ炉『PWR-20』(2万kWe)は、ユーザーの需要に合わせて出力を拡張できる上に、発電所モジュールはオフサイトで大量製造、簡単に組立てが可能。設置場所の柔軟性を考慮して設計されており、迅速に需要を満たす最善の方法」と強調した。同社は、テキサス州全体での原子力展開の加速を目指す、テキサス原子力アライアンスの創設メンバーでもある。
ラスト・エナジー社の既存の商業契約では、欧州全域に80基以上のマイクロ炉の納入を計画するが、そのうち半分はデータセンター向けだという。テキサス州には現在、340を超えるデータセンターがあり、約800万kWの電力を消費し、テキサス州の全電力需要の9%を占める。さらに、2029年までに同州のダラス・フォートワース地域だけでも、主にデータセンターによる4,300万kWの需要増が予測されている。同社はテキサス州でのサイトの開発に加えて、ユタ州でのプロジェクトを模索している。
なおラスト・エナジー社は2月17日、英原子力規制庁(ONR)が同社の英国の南ウェールズにおけるマイクロ炉4基建設プロジェクトの原子力サイト許可(NSL)の正式手続き入りしたことを確認したと明らかにした。同社は2024年5月以降、ONRとの許認可申請前活動を行っていた。
同社は2024年10月、1951年から1977年まで稼働していた南ウェールズのスリンビ(Llynfi)石炭火力発電所の跡地に、マイクロ炉4基の建設計画を発表。2027年に初号機の建設完了を目指している。同年12月、米輸出入銀行(US EXIM)はラスト・エナジー社による南ウェールズでの建設プロジェクト向けに、1.037億ドル(約156億円)を融資する意向表明書(LOI)を発行した。
NSLの正式手続き入りは、2月6日にK. スターマー首相が原子力計画の合理化、導入加速のために導入した、一連の画期的な規制緩和の方針を反映している。これにより、マイクロ炉が計画規則に含まれるようになり、立地適格性が劇的に拡大、「イングランドとウェールズのどこでも」導入が可能となった。本プロジェクトにおけるNSLの取得は、1978年のスコットランドのトーネス原子力発電所以来となる。それ以来、英国ではすべて既存または過去に原子力発電所があった場所、またはそれに隣接した場所に設置されていた。