欧州 小型高速炉開発で連携
04 Mar 2025
フランスの小型ナトリウム冷却高速炉(SFR)を開発するヘクサナ(HEXANA)社は2月20日、ベルギーの大手エンジニアリング・コンサルティング企業であるトラクテベル(Tractebel)社と戦略的パートナーシップ契約を締結した。これにより、ヘクサナ社のSFRと蓄熱能力を組み合わせた小型モジュール炉(SMR)の、エネルギープラットフォーム開発を加速する。
トラクテベル社はフランスに基盤を置く電気・ガス事業者エンジー(Engie)社の傘下企業で、原子炉の設計や建設プロジェクトにおいて、フランスの国内外で50年以上の経験を有する。今回の契約で、SMRエネルギープラットフォームの原子力部の建屋・施設の設計に加え、システムの効率性、信頼性、長寿命の確保のため、特殊コンポーネントの取扱いとメンテナンスを実施する。また、欧州の安全規制への適応を支援する。
ヘクサナ社は、2023年設立の仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)からのスピンオフ企業。SMRエネルギープラットフォームは、高温熱および電力を生成するように設計された小型モジュール式の高速炉(40万MWt)を2〜6基統合し、電気出力は最大90万kWとなる。CEAが数十年にわたり開発した実証済みのPhénix、Superphénix、ASTRIDの高速炉技術に基づくという。高温の熱エネルギー貯蔵と電力を組合わせ、重工業や航空・海上輸送などのエネルギー集約型産業のニーズに適時に応えると強調する。
また、英国発祥で、現在はフランスのパリに本社を置く先進炉開発企業のニュークレオ(Newcleo)社は2月20日、スウェーデンの先進炉開発企業であるブリカラ(Blykalla)社と、鉛冷却高速炉(LFR)用材料の共同研究開発に関する契約を締結した。
これにより両社は、それぞれの研究開発プログラム支援のため、契約の範囲内で互いの研究施設や専門スタッフにアクセスし、材料の試験結果、関連データを交換する。但し、商業目的や本契約の範囲外での新技術の開発には使用されない。それぞれの研究開発プログラムと工業化プロセスから得られる知見を組合わせ、材料ソリューションを強化。次世代炉の信頼性と長寿命を確保し、欧州の脱炭素化に向けてLFR技術の商業化を促進したい考えだ。なおこの契約は、欧州SMR産業アライアンスの目標に沿ってサプライチェーンの最適化を支援し、各当事者の炉型の許認可手続きにおいて国境を越えた知識交換の促進にも役立つと指摘する。
ニュークレオ社のS. ブオノCEOは、「我々の協力は、それぞれの開発プログラムの加速に役立つ知識の共有を目的とし、原子力セクター全体にも役立つもの。必要性が緊急で時間が限られる場合、この種の協力がカギとなる」と言及。ブリカラ社のJ. ステッドマンCEOは、「当社の耐腐食性材料に関する広範な専門知識とニュークレオ社の工業化能力を組合せ、鉛冷却炉技術の商業化を進める」と語った。
ブリカラ社は、安全で効率的、出力拡張の可能なコンパクト設計の鉛冷却高速炉「SEALER」(5.5万kWe)を開発。2030年までに初号機の臨界を達成し、2030年代に量産を開始する計画である。
ニュークレオ社は自社開発の鉛冷却高速炉(LFR)である実証炉「LFR-AS-30」(3万kWe)を2030年までにフランスで建設し、2033年までに英国で商業規模に拡大した「LFR-AS-200」(20万kWe)の建設を目指している。2024年12月には英原子力規制庁(ONR)による包括的設計審査(GDA)を申請した。
なお、ニュークレオ社は2月24日、アラブ首長国連邦の首長国原子力会社(ENEC)と、欧州およびMENA地域(中東、北アフリカ)でのニュークレオ社のLFRの展開に向けた戦略的協力に関する了解覚書(MOU)に調印。両社は、欧州での既存LFRプロジェクトへの共同投資と開発の機会を模索する協力を実施し、MENA地域のエネルギー需要軽減が困難な業界にLFR導入による脱炭素化を検討する。また、研究炉や運転中の施設を活用した能力開発プログラムや実地訓練での共同作業を通じ、知識移転の可能性も考慮するとしている。MOU締結はENECの新規および先進的な原子力エネルギー技術への投資と展開における成長計画に沿ったものであり、ENECのバラカ原子力発電所の運転実績とノウハウ、ニュークレオ社の先進技術の組合せが大きな価値を生み出すと期待を寄せる。