北欧 小型高速炉の導入に向けて協力
11 Mar 2025
スウェーデンの先進炉開発企業であるブリカラ(Blykalla)社は2月26日、ノルウェーの新興エネルギー企業であるノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社と、小型モジュール炉(SMR)「SEALER」(5.5万kWe)の展開に向けて協力覚書を締結した。
SEALERはブリカラ社が開発する鉛冷却高速炉。安全で効率的、出力拡張の可能なコンパクトなモジュール設計を特徴とし、2030年までに初号機の臨界を達成し、2030年代に量産を開始する計画である。独エネルギー大手のユニパー社、スイス大手エンジニアリング企業のABB社、スウェーデンの原子力発電事業者OKG社、スウェーデン王立工科大学などのパートナー各社から支援を受けており、スウェーデンのエネルギー庁や欧州連合などから約5,000万ユーロ(約80億円)の資金を供与されている。
ノルウェー国内では近年、原子力発電導入に向けた調査に率先して取組む自治体の数が急激に増加。ノルスク社はSMRの建設、所有、運転を目指し、国内の複数のサイト候補地で各自治体や電力集約型産業と連携したSMRの導入検討や建設可能性の調査を実施している。今回の覚書により両社は、ノルスク社が現在開発中の発電所プロジェクトにSEALERを導入し、ノルウェーでの展開にむけたサイト適性、規制対応、実行可能性の評価を行う。
両社は今後さらに、スウェーデンにおいて初号機となる実証炉SEALER-Oneの許認可手続き、資金調達、建設、運用面でも協力していく考えだ。ノルスク社はSEALER-Oneプロジェクト会社への参加可能性やブリカラ社への出資など、スウェーデン市場への進出を模索する。両社は覚書締結を契機に、原子力エネルギー開発の強化、サプライチェーン、許認可手続き、ファイナンス、研究等の分野で協力し、両国で革新的で信頼性の高い原子力の展開を加速させ、北部遠隔地への電力供給を含む、スカンジナビア地域のクリーンで安定したエネルギー安全保障を実現させたい考えだ。
ブリカラ社はこれに先立つ2月3日、重要なコンポーネントと安全システムの検証を目的に、電気式のプロトタイプ(SEALER-E)を収容した試験施設の起工式を挙行している。同施設はスウェーデンのオスカーシャム原子力発電所サイトに建設されるが、起工式には、スウェーデンのE. ブッシュ副首相兼エネルギー・ビジネス・産業相も出席した。建設の第1段階は6月までに完了予定であり、2025年第3四半期には試運転を開始する予定である。