原子力産業新聞

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欧州データセンター 米製SMRの導入を評価へ

19 Mar 2025

桜井久子

フランスのパリで覚書に署名するWE社の
P. フラグマンCEOとData4社のO. ミシェリCEO
Ⓒ Westinghouse Electric Company

米ウェスチングハウス(WE)社は311日、欧州のデータセンター開発・運営企業であるData4社と、欧州における将来のデータセンターへの電力供給を目的に、同社製小型モジュール炉(SMR)「AP300」(PWR30万 kW)の導入評価に関する了解覚書(MOU)を締結した。

Data4社は、フランス・パリに本拠地を置き、フランス、イタリア、スペイン、ポーランド、ドイツ、ギリシャで35のデータセンターを運営している。米ゴールドマン・サックスの調査によると、生成AI関連サービスの成長に伴い、データセンターの電力需要は2030年までに23年比で165%増加すると予測されている。データセンターは、24時間365日稼働させるため、豊富で信頼性の高い、クリーンな電力が不可欠である。

WE社のAP300は先進的な第3世代+炉で、既に運転実績のあるAP1000をベースとした、安全でコンパクトかつ柔軟な設計が特徴。AP1000のエンジニアリングやライセンス、コンポーネント、サプライチェーンを活用できるため、導入が容易で、2030年初めの運転開始をめざしている。同社は「エネルギー集約型の次世代コンピューティングに対して、コスト効率が高く、クリーンな電力をオンサイトで提供できる」としている。

Data4社は「これまでのデータセンターは従来の電力会社のみに依存していたが、将来はオンサイト発電と従来のグリッド供給、エネルギー貯蔵を統合し、複数の電源を活用する時代に入る」と指摘。そのうえで、「AP300の導入は、キャンパスのエネルギーの自律性を高め、自給自足の持続可能なデータセンター・インフラ確立に向けた大きな一歩になる」と強調している。

一方、WE社製のマイクロ炉「eVinci」について、米ペンシルバニア州立大学は228日、ユニバーシティパーク・キャンパスの新しい原子力研究施設への設置に向け、米原子力規制委員会(NRC)に申請プロセスの最初のステップとなる意向表明(LOIを提出した。この取組みは、ペンシルベニア州立大学とWE社が2022年に開始した、マイクロ炉の研究開発協力が発展したもの。

eVinciは熱出力1.5kW、電気出力0.5kWのヒートパイプ冷却の可搬式原子炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要。キャンパス全体の研究施設や建物に電力を供給し、燃料補給なしに8年以上にわたり電力の安定供給が可能だ。同大学には、1955年に全米初の運転認可を取得した研究炉BNRがある。

WE社のJ. ボールeVinciマイクロリアクター担当プレジデントは、「ユニバーシティパークの研究施設は、ペンシルベニア州を世界有数の原子力イノベーションハブとし、学生や研究者に原子力を活用する新たな方法を見つける機会を提供する」と重要性を強調している。

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