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米テラパワー 韓HD現代と「Natrium」のサプライチェーン拡大で提携

26 Mar 2025

桜井久子

調印式には、テラパワー社の創業者兼会長である
B. ゲイツ氏とHD現代の K. チョン上級副会長も出席。Ⓒ HD Hyundai Heavy Industries

米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は311日、同社が開発する先進炉「Natrium」の部品のグローバル製造サプライチェーンの拡大に向けて、韓国のHD現代重工業と戦略的提携を発表した。テラパワー社の最先端技術と、HD現代の製造ノウハウを組み合わせ、ナトリウム冷却高速炉と統合エネルギー貯蔵システムを備えたNatrium34.5kWe)の大規模生産と迅速なグローバル展開を可能にする新たなサプライチェーン能力の構築が目的。

この提携は2024年、米ワイオミング州に建設予定のNatrium初号機の原子炉容器供給者にHD現代重工業が選定されたことが契機となっている。HD現代重工業は、造船を専門とするHD現代の傘下企業である。

テラパワー社のC. レベスクCEOは、「当社は、米国でNatrium初号機導入の後、今後10年間に米国内外で競争力のある価格で後継機の迅速な展開をしていく。Natriumは、ベースロード電力とギガワット級のエネルギー貯蔵を提供し、増大するエネルギー需要に応える、信頼性が高く、柔軟性のある電力供給が可能。世界的に高い評価の製造能力を有する、HD現代重工業との協力により、Natriumのグローバル展開に不可欠な商業規模の生産能力を確立していく」と抱負を語った。

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現代重工業のK. ウォン上級副社長は、「Natriumの部品製造において、当社の実証済みで高精度な製造ノウハウと、大規模生産が可能なサプライチェーン能力を活用し、テラパワー社の商業展開のビジョンを支援していく。本提携は、次世代原子力エネルギーソリューションの商業可能性を加速させる、画期的な協力関係の始まりとなる」と意気込みを示した。

Natriumは202010月、米エネルギー省(DOE)が支援する先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の「57年以内に実証可能な炉」に選定されたプロジェクトの1つ(もう1つは、X–エナジー社の高温ガス炉「Xe-100」)。テラパワー社はARDPを通じて、Natriumの設計、建設、運転特性を検証する。初号機は、米ワイオミング州南西部のケンメラーで閉鎖予定の石炭火力発電所の近くに建設される。テラパワー社は、Natriumがクリーンエネルギーを生産するだけでなく、閉鎖する石炭火力発電所に代わり、エネルギー生産地域の経済を支え、建設やその後の運転期間における雇用を促進すると見込む。同社は20243月、米原子力規制委員会(NRC)に建設許可を申請6月には起工式を挙行し、非原子力部の建設工事を開始した。原子力部の着工は早くて2026年、送電開始は2030年を予定している。

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