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フィンランド 将来の選択肢として原子力発電の開発を継続

01 Apr 2025

桜井久子

ロビーサ原子力発電所   © Fortum

フィンランドの電力会社であるフォータム社は324日、フィンランドとスウェーデンにおける原子力発電所の新規建設の前提条件を調査する2年間の実行可能性調査(F/S)の完了を発表。また、大型炉のベンダー2社と小型モジュール炉(SMR)ベンダー1社と協議を継続する方針を明らかにした

フォータム社は202210月に、フィンランドとスウェーデンの2か国における新規原子力発電所の商業面、技術面、社会面での前提条件を調査する、広範なF/Sを開始した。調査の過程で、複数のベンダー、潜在的なパートナー、顧客、社会的利害関係者と詳細に協議を行ったという。

フォータム社は、安定し、競争力のある低炭素の北欧電力システムにおいて、原子力の新設が重要な役割を果たすと認識。将来の顧客需要を満たすための選択肢として、既存の原子力発電所とのリプレースを視野に入れ、長期的な選択肢として原子力発電開発を継続する考えだ。同社のM. ラウラモCEOは、「電化による産業と社会の脱炭素化は、2050年に向けて北欧の電力需要を大幅に増加させ、場合によっては倍増させる。再生可能エネルギーのみに頼るのは、非常に不安定な電力システムにつながる恐れがあり、顧客や社会にとって望ましくない」「将来的にもあらゆる低炭素の発電オプションを堅持しておくことは理にかなう」と強調した。

同氏はまた、「今後5年から10年の間、北欧の新規電力需要は主に、新たな陸上風力発電と太陽光発電に加え、揚水発電および既存のロビーサ原子力発電所の運転期間延長によって対応する。新規の原子力発電は、市場と規制の条件が揃えば、2030年代後半の早い時期に導入される可能性がある」との展望を示した。

フォータム社は、産業規模の大口顧客の多くが、安定した電力の長期購入契約による供給確保を望んでおり、バランスのとれた電力ミックスの維持は、すべての顧客と社会にとり利益をもたらすと指摘。一方で、新規建設プロジェクトの主なリスクは、長期に及ぶ建設期間、資金手当の難しさ、不透明な電力の市場価格によるものと言及している。F/Sの結果、現在の電力市場の見通しでは、新規建設プロジェクトは商業ベースだけでは経済的に実行可能ではないが、独自の分析と他の西側諸国で進行中の新規建設プロジェクトに基づき、顧客需要の増加に対応すれば、スウェーデン政府が準備しているような強固なリスク分担の枠組みにより管理可能であると結論づけている。

また、新規原子力プロジェクトのリスク軽減にとって重要なものとして、EUと各国レベルでの規制のすり合わせや、政治的安定性を掲げている。さらに資金調達においては、原子力発電は、水素、肥料、クリーンスチールなどの低炭素製品の原料として、他のクリーン技術と同等に扱われるべきと訴えている。

同社は今後数年間、新規原子力発電プロジェクトの共同開発と共同投資へ関心を持つパートナーシップを模索するほか、潜在的な顧客との間で、ニーズを満たす最適解について協議を続ける方針である。F/Sの中で、ベンダーとともに何千時間も大型炉や小型モジュール炉(SMR)の設計評価を行い、今後、大型炉を開発するフランス電力(EDF)、米ウェスチングハウス(WE)社と韓・現代E&C社からなるコンソーシアムの2社、およびSMRを開発する米GE・日立社との協力を深める方針だ。フォータム社のL. ルヴェーグル新規原子力担当副社長は、「新規建設プロジェクトの実施にあたり、技術の成熟度の確保、国別の要件の制限、投資前の段階ですでにベンダーの能力を検証することが必要」とし、「投資を検討する前に、3社のベンダーと協力してプロジェクトのリスクを軽減する。コストのかかる設計変更の可能性を減らすには、建設前に可能な限りプラント設計の許認可リスクを軽減する。結果的に、プロジェクトの遅延を防ぐことになる」と指摘した。

フォータム社は、VVER-440PWR53.1kW)×2基で構成されるロビーサ発電所を運転。同発電所はフィンランド初の原子力発電所であり、現在、同国の総発電電力量の10%を供給している。1号機は1977年に、2号機は1981年に営業運転を開始。両機は20232月、20年間の運転期間延長の認可を取得し、2050年末まで運転可能となった。なお、同社はフィンランドのオルキルオト原子力発電所の他、スウェーデンのオスカーシャム原子力発電所、フォルスマルク原子力発電所の共同所有者でもある。

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