原子力産業新聞

海外NEWS

スウェーデン 原子力新設に向け新法案

04 Apr 2025

桜井久子

法案に関する記者会見の模様。ブッシュ副首相(向かって左から2番目)、ウィクマン財務次官(左から3番目)。 Ⓒ Government Offices of Sweden

スウェーデン政府は327日、議会に原子力発電の新規建設に対する国家補助に関する新法案を提出した。法案は、スウェーデンにおける原子力発電の新規建設を検討する企業に対して、国家が行う補助の基本条件と形態を明記しており、早ければ202581日にも発効する。

本法案を提出したのは、E. ブッシュ副首相兼エネルギー・企業・産業担当相、ならびにN. ウィクマン財務次官・金融市場相。新規建設と試運転、および建設前の設計他の準備に向けた、資金調達コストを引き下げるために政府融資を認める他、新設炉の運転時に市場リスクを軽減するため、運転事業者と政府による双方向の差金決済取引(CfD)制度の導入を提案している。但し国家補助の条件として、新規建設は同一サイトで、合計電気出力が少なくとも30kW以上の場合のみと規定し、特別な理由がある場合は30kW未満であっても、政府が補助の実施を決定できるとしている。また、補助の範囲を大型炉4基分(約500kW)に限定し、プロジェクト会社(複数の可能性)の申請を受けて政府が決定することに加え、プロジェクト会社の株式を他の民間企業や国家が取得する可能性にも言及している。なお、国家補助はEUの国家補助規則をクリアする必要がある。

今回の政府による法案提出を受け、スウェーデン国営電力会社バッテンフォールのD. コムステッド新原子力発電部門長は、歓迎するコメントを発表。「国家が資金調達において明確な役割を果たすことは、原子力発電の新規建設への投資を可能にする基本的な前提条件。この法案は、ヴェーロー半島にあるリングハルス原子力発電所(PWR110kWe×2基)で新規建設を実現するための重要な一歩である。法案を詳細に読み、できるだけ早く申請の準備をする」と語った。バッテンフォールは20226月、リングハルス・サイトで少なくとも2基のSMRを建設するための実行可能性調査(F/S)を開始しており、早ければ2030年代半ばまでに初号機を稼働させたい考えだ。

スウェーデンでは20229月に総選挙が行われ、翌10月、40年ぶりに原子力を全面的に推進する中道右派連合の現政権が誕生、202311月には、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップが発表された。これには、カーボンフリーの電力を競争力のある価格で安定して供給することを目的に、社会の電化にともない総発電量を25年以内に倍増させるため、2035年までに少なくとも大型炉2基分、さらに2045年までに大型炉で最大10基分を新設することなどが盛り込まれている。また、20241月には、環境法の一部改正法が発効、新たなサイトでの原子炉の建設禁止や国内で同時に運転できる原子炉基数を10基までとする旧・制限事項が撤廃された。同年8月には、N. ウィクマン財務次官・金融市場相が202312月に政府が任命したM. ディレン政府調査官とともに、新規建設のための資金調達とリスク分担について、国による補助金やCfDモデルの導入などを盛り込んだ報告書を発表するなど、原子力推進に向けた事業環境整備が着々と進められている。

cooperation