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米国の温暖化防止団体、感染拡大時の原子力発電所早期閉鎖の延期を州知事に要請

21 Apr 2020

「マスクをしたグリーン・アンクル・サム」 ©Climate Coalition

米国で地球温暖化防止対策の推進を呼びかけている団体「Climate Coalition」は新型コロナウイルスによる感染の拡大が深刻化するなか、ニューヨーク(NY)州内で今月中に予定されているインディアンポイント原子力発電所2号機(106.2万kWのPWR)の早期閉鎖を延期し、運転を継続するよう同州のA.クオモ知事に訴える書簡を公開した。

ウイルス感染にともなう呼吸器不全で多くの州民が亡くなっているが、原子炉の早期閉鎖を延期すれば化石燃料発電所から有害な汚染物質が新たに大量に排出されるのを抑えられると同団体は指摘。これはパンデミックによる影響が一層悪化するのを防止し、これ以上の死者を出さないために知事が実行できる最も重要かつ予防的な措置であり、CO2を排出しないクリーン・エネルギー源をこのように不味いタイミングで停止させてはならないと訴えている。

同団体はクリーン・エネルギーの支持団体や環境保護グループ、個人などの連合体であり、クオモ知事が2016年8月、NY州北部で稼働する3つの原子力発電所への助成金プログラムを盛り込んだ包括的温暖化防止政策「クリーン・エネルギー基準(CES)」を州議会で成立させたことを称賛している。

しかし同知事は、NY市の北約40kmに立地するインディアンポイント原子力発電所については、「大都市圏に近すぎる」としてかねてより早期閉鎖を要求。同発電所を所有するエンタジー社と州政府が協議した結果、2号機を2020年4月に、3号機(107.6万kWのPWR)を2021年4月に永久閉鎖することで2017年1月に合意していた。

知事宛ての書簡の中で同団体は、「パンデミック対応でNY市の財政は火の車となっており、ここで原子炉を止めてしまえば財政面の脆弱性は余計に増す」と指摘した。その上で知事に対して、「あなたは本当に送電網を一層脆弱なものとし、この危機的状況に新たな不確定要素を加えたいのか?」と詰問。夏が急速に近づくなかで異常気象により熱波が長引いた場合はどうなるのか、NY市全体が室内に避難し続けねばならないのかと疑問を投げかけた。

また、ウォールストリート・ジャーナルのコラムニストで新型コロナウイルスに感染したP.ヌーナン氏の言葉を引用し、「電気さえあれば何もかもが上手くいく。世の中はすべて送電網にかかっている」と指摘。数百万のニューヨーカーの生命がエアコンや換気扇に左右されるにも拘わらず、最も信頼性が高くクリーンな電源を本当に知事の一存で止めてしまうのかと非難している。

同団体はさらに、クオモ知事が昨年、州内のCO2排出量の100%削減に向けた法案を可決させた事実に言及した。クリーン・エネルギー源としては州内最大規模のインディアンポイント発電所の早期閉鎖を画策しておきながら、知事は代わりの電源として再生可能エネルギーではなく、大気汚染を助長する化石燃料を選んだと糾弾。ニューヨーカーが望まない政策によって、知事は数百億ドルの価値を持つ資産を無駄にしようとしていると述べた。

もしも知事がNY州にとって本当に意味のあるCO2削減を約束したいのなら、安全でクリーンな原子力発電所の閉鎖を全力で阻止しなければならないと同団体は強調。インディアンポイント発電所の閉鎖はクリーンな大気とCO2の削減、両方に向けた努力を数十年分後退させるほか、脱炭素化した未来のために原子力発電は非常に重要だとする最新の科学的知見とも矛盾するとした。

同団体によれば、インディアンポイント原子力発電所の早期閉鎖で州政府と事業者が合意して以降、原子力発電に対する世間の見方は劇的に変化した。原子力発電所を廃止して再生可能エネルギーで代替するというドイツの取り組みの失敗により、A.メルケル首相は停電回避のために古来の森林を伐採し、採炭に抗議する者を逮捕せざるを得なくなった。もっと科学的思考を持つ環境保護派のリーダーであれば、原子力発電が地球温暖化との戦いに必要なことを認識している。「憂慮する科学者同盟」や世界的自然保護団体の「Nature Conservancy」、科学雑誌の「ナショナル・ジオグラフィック誌」などは、ここ数年間で原子力発電に関する勧告を改訂。否定的に見られていた原子力発電は今や、重要なクリーン・エネルギーと位置付けられ、それなくしては迅速かつコスト面の効果もある方法で化石燃料から脱却することはできないと見られている。

同団体から見て、クオモ知事はコロナウイルスによる感染の拡大を抑えるために医療専門家の意見を聞くよう繰り返し強調しているが、知事こそ地球温暖化関係の主要な専門家の意見を聞き、最新の知識を受け入れるべきだと表明。地球温暖化防止で正しいことを行うのは、新型コロナウイルスとの戦いで正しいことを行うのと同じであると主張している。

(参照資料:Climate Coalitionの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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