原子力産業新聞

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エストニア SMR導入で韓サムスンと提携

15 Apr 2025

桜井久子

韓国ソウルでの契約調印式  Ⓒ Fermi Energia

エストニアの新興エネルギー企業のフェルミ・エネルギア社と韓国の建設大手のサムスンC&T社(サムスン物産)42日、エストニアにおける、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMRBWRX-300」(BWR30kWe)の建設準備に関する提携契約に調印した。

フェルミ社は20232月、同国で建設する最初のSMRとしてBWRX-300選定した。今回の提携契約は、2024年11月に両社間で締結された覚書を基にしており、エストニアの原子力開発にとり、エネルギー安全保障の確保、ならびにカーボンニュートラルの達成に向けた重要なステップ。本契約に基づき、サムスンC&T社はフェルミ社が推進する最大2基のBWRX-300の建設プロジェクトに、概念設計(Pre-FEED/Front-End Engineering Design)から、事業構造の構築、コスト積算、サイト評価を実施する基本設計(FEED)段階まで、プロジェクトの初期段階から参画し、その後に続くEPC最終契約の締結を視野に入れている。

フェルミ社のK. カレメッツCEOは、「旧ソ連から独立後、エストニアは大胆かつ果断な改革を実施し、新技術に対して開放的な経済国である。エストニアの1人当たりのGDP30,000ドル(約429万円)で、韓国の33,000ドル(約472万円)に匹敵。エストニア国民は常に革新的な技術を取り入れ、隣国フィンランドの経済競争力と安価なエネルギー供給を通じて、原子力が果たす役割について理解している。原子力は簡単な技術ではなく、エストニアのような小国では、信頼できる民主的なパートナーとの協力によってのみ実現可能だ。サムスンC&T社の原子力発電と大規模発電プロジェクトにおける経験は、エストニアと北欧全域のSMRプロジェクトを軌道に乗せ、予算内で実行するためのカギである」と強調した。SMR建設の準備状況は、現在、サイト候補地の事前選定の段階20252027年)にある。フェルミ社は今後、選定された場所での詳細な調査を含む、サイト検証期間(20272029年)を経て、2029年に建設許可を規制当局に申請する計画である。手続きが順調に進めば2031年に着工、2035年後半には初号機の稼働を計画している。

なお両者は、協力関係をエストニア以外にも広げ、北欧全域にSMRを配備することも想定している。サムスンC&T社は、このパートナーシップを通じて、北欧地域全体で少なくとも1015件のBWRX-300プロジェクトに参加することで、スケールメリットを実現し、プロジェクト実施に伴うリスクの低減を目指す考えだ。

サムスンC&T社は現在、ルーマニアにおいて、米ニュースケール・パワー社製SMRである出力7.7kWeの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた「VOYGR-6」(合計出力46.2kWe)の建設プロジェクトのFEED取組むほか、202412月には、スウェーデンでSMRの建設を計画するシャーンフル・ネキスト(KNXT)社と協力覚書を締結するなど、欧州での原子力発電所事業の拡大を加速させている。

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