ベラルーシの原子力導入初号機で温態機能試験が完了
22 Apr 2020
昨年10月時点のベラルシアン原子力発電所
©ベラルーシ政府
ベラルーシ初の原子力発電設備を2013年から建設しているロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は4月15日、ベラルシアン原子力発電所1号機(119.4万kWのPWR)で大がかりな温態機能試験が無事に完了したと発表した。
この試験は、機器の性能・機能を原子炉停止中の常温常圧状態で確認する冷態機能試験に続き、運転時と同じ高温高圧下で確認する重要な起動準備プログラムである。これにより準備作業は次の段階に移行し、6月半ばの完了を目指して1次系と2次系の主要機器や補助機器の検査が行われる。同発電所では同型設計の2号機の建設工事も約半年のインターバルで進められており、両炉はそれぞれ年内と2021年に起動できると見られている。
旧ソ連邦に属していたベラルーシはウクライナと隣接しており、同国との国境から約16km地点のチェルノブイリ原子力発電所事故(1986年)では多大な放射線被害を被った。しかし、国内のエネルギー資源は乏しく1次エネルギーの8割を輸入に依存するという事情により、1990年代後半に原子力の導入に関する実行可能性調査が行われた。
福島第一原子力発電所事故直後の2011年3月15日、A.ルカシェンコ政権は同国初の原子力発電所建設でロシアとの二国間協力に合意した。翌年11月には、総工費の90%をカバーする100億ドルの低金利融資をロシア政府が25年間で提供することを約束。同国の全面的な支援を受けて、2013年11月にフロドナ州オストロベツで120万kW級ロシア型PWR「AES-2006」の1号機が本格着工したほか、翌2014年4月には2号機の建設工事が開始された。
昨年12月に始まった1号機の温態機能試験では、原子炉系統の機器・システムを定格出力で稼働させた際の設計との適合性を確認するため、ロスアトム社エンジニアリング部門の専門スタッフが242項目の試験を実施した。運転パラメーターとして、1平方cmあたり160kgの圧力と280℃以上の温度下で4つすべての1次系冷却材ポンプの機能を試験したほか、補助動力供給系と制御・防護系の操作性をチェック。蒸気発生器や加圧器の主蒸気安全弁についても、性能を確認した。
ロスアトム社傘下の総合エンジニアリング企業「ASEエンジニアリング社(ASE ・EC・ JSC)」でベラルーシ原子力発電所建設プロジェクトを担当するV.ポリアニン副総裁は、発電所の予熱段階から冷却段階に至るまで、試験全体が定格出力で行われた点を強調。この試験によって、すべての機器やシステムが設計に適合していることが明らかになったとしている。
(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)