原子力産業新聞

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ハンガリーのパクシュ増設 大型設備の製造に進展

23 Apr 2025

桜井久子

パクシュ6号機の原子炉容器の鍛造
Ⓒ AEM-Specstal

ハンガリーのP. シーヤールトー外務貿易相は48日、同国のパクシュ原子力発電所の増設プロジェクト(=パクシュⅡプロジェクト 56号機を増設、各VVER-1200120kWe)に関連し、6号機の原子炉容器がロシア国営原子力企業ロスアトム傘下でサンクトペテルブルクにあるAEM-Specstal工場で鍛造されているほか、5号機の最初のタービン部品が、仏アラベル・ソリューションズ社のベルフォール工場で製造されていることを明らかにした

シーヤールトー相は、「5号機のタービン部品がフランスのベルフォールで、6号機の原子炉容器がロシアのサンクトペテルブルクのヨーロッパ最大級の鍛造工場でそれぞれ製造開始されている事実は、増設プロジェクトが大規模な国際投資であることを示している」と述べた。さらに、「パクシュⅡプロジェクトは、EU域内で進行中の、最大かつ最先端の原子力プロジェクト。その成功は、国内のエネルギー供給の長期的な安全保障にとって極めて重要」と指摘。バイデン前政権による制限措置がプロジェクト進行の妨げとなっているものの、「プロジェクトは前進しており、重要なマイルストーンに到達したことには大きな意味がある」と強調した。

また、この製造は欧州とハンガリーの最も厳しい規制に従って行われており、原子炉容器は少なくとも60年間、300℃の温度と162バールの圧力に耐えなければならず、製造期間中に約700回の品質チェックを受けるという。

パクシュⅡプロジェクトを主導するパクシュⅡ開発会社のG. ヤカリ会長兼CEOは、「長納期の設備の製造は順調に進んでおり、ハンガリーの専門家は設計管理からライセンス供与、継続的な生産管理まで多くの努力をしている。目に見える成果の一つは、6号機の原子炉容器の鍛造が始まったことだ。5号機の原子炉容器の鍛造が始まってからまだ1年も経っていない」とプロジェクトの順調な進行をアピールした。

5号機の原子炉容器のノズル部分を含む最終検収が4月中に行われ、その後、組立て作業がロシアのボルガドンスクにあるAEM-Technologies工場で開始される。両機の炉内構造物については、ハンガリーの国家原子力庁(HAEA)から既に製造の承認を受けており、それに基づいて製造を開始できるという。

原子炉容器と容器底部は、鍛造中に約12,000tの圧力で形成される。完成重量は約330t、高さは11m以上、直径は4.5m、最大壁厚は285mmになる。近代的な材料組成と製造技術により、原子炉容器は最長100年間使用できるという。5号機のコアキャッチャー(メルトトラップ)はすでに完成しており、20248月にハンガリー側に引き渡された。

ハンガリーでは、旧ソ連時代に建設されたパクシュ原子力発電所の4基(各VVER-440、出力約50kWe)で総発電量の約5割を供給している。公式運転期間の30年を超過したため、運転期間を20年延長しつつ容量の大きい56号機に徐々にリプレースしていく方針。シーヤールトー相は、同発電所の拡張はハンガリーの長期的なエネルギー供給を保証する重要要素であり、総発電量の約70%も供給できるとしている。パクシュIIプロジェクトはロシアとの政府間合意により2014年に開始され、プロジェクトコストの大部分がロシアの低金利融資によって支えられている。パクシュⅡ開発会社は20228月、パクシュⅡプロジェクトの建設許可をHAEAから取得20237月以降、サイトでは建設の準備作業が進行している。HAEAからの承認を待ち、今年内には初コンクリート打設を行い、2030年代初頭には運転を開始したい考えだ。

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