ロシアの海上浮揚式原子力発電所が営業運転開始
25 May 2020
アカデミック・ロモノソフ号 ©ロスエネルゴアトム社
ロシア国営民生用原子力発電公社のロスエネルゴアトム社は5月22日、世界で唯一の海上浮揚式原子力発電所(FNPP)として、ロシア極東地域チュクチ自治管区内のペベクで試運転中の「アカデミック・ロモノソフ号」が営業運転を開始したと発表した。同社のA.ペトロフ担当理事が、FNPP建設プロジェクトは無事に完了したとして関係する法令に署名、同FNPPは同日付で世界最北端に位置する同国原子力発電所の一つに正式承認された。
アカデミック・ロモノソフ号は、電気出力3.5万kWの軽水炉式小型炉「KLT-40S」を2基搭載するバージ型原子力発電所(タグボートで曳航・係留)で、合計出力は7万kWである。全長140m、幅30m、総重量2万1,500トンで耐用年数は40年間。燃料資源が乏しくその輸送も難しい場所での利用に適しているほか、大型河川の川床にも係留可能なため、ロシア極東地域のみならずアジア太平洋地域の島嶼部などで利用することができる。
同FNPPの建造は2007年4月にモスクワ北部のセベロドビンスクにあるセブマッシュ・プリドプリヤチェ造船所で始まったものの、2008年からはサンクトペテルブルクのバルチック造船所(BZ)に移管された。当初はカムチャツカ半島のビルチンスクで送電インフラに接続される予定だったが、ロスエネルゴアトム社の親会社であるロスアトム社は2015年にチュクチ自治管区政府と協定を結び、最初のFNPPであるアカデミック・ロモノソフ号は同地区のペベクに係留されることになった。
アカデミック・ロモノソフ号は2018年4月、燃料を装荷しない状態でサンクトペテルブルクを出港し、同年10月に経由地である北極圏のムルマンスクで燃料を装荷。2019年8月には曳船に伴われてペベクに向けて出航し、9月に同地へ到着。その後12月より、ロシア本土の送電網から隔絶されたチャウン・ビリビノ系統に送電を開始していた。
今回の全面的商業利用の開始に先立ち、規制当局はアカデミック・ロモノソフ号で点検を実施した。その結果に基づき、連邦・環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)は「プロジェクトのあらゆる要件を順守した上でFNPPが建造された」として基準適合証を発行。これに加えて、環境管理分野の活動を監督・管理する連邦・天然資源監督庁(ROSPRIRODNADZOR)も同プロジェクトを承認。これらの承認により同FNPPは、衛生面や環境面、疫学面、防火安全面等について、すべての要件と連邦基準を満たしていることが保証された。
アカデミック・ロモノソフ号は送電開始以降、すでに4,730万kWhを発電してチャウン・ビリビノ系統における電力需要の20%をカバー。同系統にこれまで電力供給してきたビリビノ原子力発電所(出力1.2万kWのEGP-6×3基)が順次閉鎖されていくのにともない、同FNPPがチュクチ自治管区の主力エネルギー源になるとしている。
(参照資料:ロスエネルゴアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)