チェコ政府、ドコバニ原子力発電所増設計画で総工費の7割融資へ
01 Jun 2020
ドコバニ原子力発電所 ©CEZ社
チェコの公共ラジオ放送「Czech Radio」の報道によると、同国のA.バビシュ首相は5月28日の記者会見で、チェコ国営電力(CEZ社)が進めているドコバニ原子力発電所Ⅱ期工事(最大120万kWのPWR×2基)の建設について、1基あたり60億ユーロ(約7,120億円)と言われている総工費の7割までを政府が低金利で融資すると発表した。
政府がCEZ社と継続していた交渉の結果、おおよそで合意された事項の一つだが、これについては今後、EU機能条約(TFEU)の国家補助規則との適合性について欧州委員会(EC)から承認を得る必要がある。首相は「政府とCEZ社双方にとって非常に良い条件だ」と述べており、6月末までこの合意への調印について政府内で議論し、議会下院の政党幹部すべてに対して説明する計画。総工費の残り3割をCEZ社が負担して2029年に1基目を着工し、8年後の2037年にも同炉の運転をフルに開始するとしている。
同国では投資金の回収問題により、テメリン原子力発電所の増設計画が2014年に頓挫した。ドコバニ原子力発電所の増設計画についても、チェコ政府は昨年7月、CEZ社の100%子会社を通じて建設資金を調達するという投資家モデルを承認していた。CEZ社のD.ベネシュCEOは今回、「増設計画の契約締結に向けた入札手続きについて年内に判断を下すべきだ」というこれまでの主張を繰り返しており、2022年末までに契約企業を選定する考えである。
チェコ政府は、国内で十分な電力供給とエネルギー自給を保証するには新たな原子炉が必要であると考えており、2015年5月の「国家エネルギー戦略」では、現在35%の原子力発電シェアを2040年までに6割近くまで上昇させる必要があると明記。同戦略をフォローする「原子力発電に関する国家アクション計画(NAP)」では、原子力が再生可能エネルギーとともに果たす重要な役割を強調しており、国内で稼働するテメリンとドコバニ2つの既存原子力発電所で1基ずつ、可能なら2基ずつ増設する準備を始めなければならないとしていた。
これを受けてCEZ社は今年3月、出力が最大120万kWのPWRを新たに2基、ドコバニ発電所で増設するための立地許可申請書を原子力安全庁に提出。この増設計画については、これまでに数社が入札に関心を示しており、それらは中国広核集団有限公司(CGN)、ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社、韓国水力・原子力会社(KHNP)、仏電力(EDF)、米国のウェスチングハウス社などだと伝えられている。
(参照資料:Czech Radioの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)