米GLE社、サイレックス法ウラン濃縮施設の建設を念頭に米エネ省との契約を再調整
10 Jun 2020
DOEはパデューカとポーツマスで6万3千本以上の劣化UF6入りシリンダーを貯蔵中 ©DOE
レーザー分子法で独自のウラン濃縮技術を開発したオーストラリアのサイレックス・システムズ社は6月5日、サイレックス法による商業用ウラン濃縮施設を米ケンタッキー州パデューカで建設するため、同社が出資するグローバル・レーザー・エンリッチメント(GLE)社が米エネルギー省(DOE)と2016年に締結した劣化六フッ化ウラン(UF6)の売買契約を再調整したと発表した。
同社は、「パデューカ・レーザー濃縮施設(PLEF)」の建設をサイレックス法技術を商業化するための理想的な道筋と認識している。GLE社はサイレックス法の商業化と運用で独占実施権を保有しており、GLE社がDOE所有の劣化UF6の在庫を購入することは、PLEFでこれを天然ウラン程度まで濃縮し、民生用原子力発電所の燃料製造に利用するという計画を実現する上で非常に重要。小規模でも低コストで同技術の最初の商業用設備を建設することは、市場までの流れを低リスク化することにつながると考えている。
GLE社とDOEが2016年11月に劣化UF6の売買契約を交わした頃、ウラン市場は復活に向けて動き出したと見られていたが、近年の市場は十分な回復を見せていない。このためサイレックス社は、GLE社がPLEFプロジェクトで規制面の承認を得つつ市場状況が好転するのを待ち、2020年代後半にPLEFを操業開始するためのプラン作成で十分な時間的猶予が得られるよう、売買契約の一部条項とスケジュールを修正。両者間の契約を引き続き有効とすることで合意したとしている。
サイレックス社によると、PLEFで再濃縮プロジェクトが数十年続けば、天然ウラン・グレードの生産品を年間約2,000トン、UF6の形でウランの世界市場で販売することが可能になる。この量は1つのウラン鉱山が年間に産出する酸化ウラン520万ポンド(2,359トン)に相当し、近年の生産量としてはトップ10に入る。
また、PLEFのウランにはUF6に転換済みという付加価値が加わっているが、ここ数か月間に転換の市場価値はスポット価格で1kgあたり約22ドルに上昇した。PLEFプロジェクトの予備的な経済分析は、低コストで長期的な生産という基準から見ても、最上位のウラン鉱山と同等のランク付けになることを示している。
なお、サイレックス法の商業化プロジェクトについては、GLE社に76%出資していたGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社が2016年4月に撤退する意向を表明した。残りの24%はカナダの大手ウラン生産企業CAMECO社が出資していたが、サイレックス社は昨年12月、関係者間で所有権の購入協定を締結したと発表。GEH社が保有していた76%のうち51%をサイレックス社が購入するほか、25%はCAMECO社が既存の所有権に積み増しして合計49%とした。
今回のGLE社とDOEの売買契約の修正は、GLE社の再構築に向けた所有権購入協定を成立させる主要条件となっていた。これについて連邦政府の承認を得るための申請書が今年2月に米原子力規制委員会(NRC)に提出されており、今年の末までに最終承認される見通しである。
(参照資料:サイレックス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)