IAEA理事会、イランに対し疑いのある2施設への査察求める決議を可決
22 Jun 2020
IAEA理事会 ©︎D.Calma/IAEA
国際原子力機関(IAEA)の理事会は6月19日、核不拡散条約(NPT)に基づく包括的保障措置協定と追加議定書の義務事項、およびIAEAが要請している事項への対応をこれ以上遅らせることなく、全面的に履行するようイランに求める決議を25対2で採択した。この決議は仏国、ドイツ、英国の3か国が提出していたもので、反対票はロシアと中国が投じた。未申告の核物質の保有と原子力活動が疑われる2施設へのIAEAの立ち入りについては特に、速やかに実現させることを要求している。
イランの核開発疑惑を巡り、国連安全保障理事会の5か国とドイツおよび欧州連合(EU)は2015年7月、イランのウラン濃縮活動を大幅に制限する一方、そうした制限の実行をIAEAが確認し次第、国連安保理やEU、米国が課してきた制裁の解除を盛り込んだ「包括的共同行動計画(JCPOA)」をイランと締結した。しかし、米国のD.トランプ政権は2018年5月、JCPOAからの離脱とイランへの経済制裁再開を指示。イランもこれに対抗して、一年後にJCPOAで課された制限の一部を今後は順守しないと宣言している。
主要当事国が撤退表明したことで、JCPOAは事実上、無効になったと見る向きもあるが、IAEAは今回の決議により、加盟各国が保障措置協定における義務事項を全面的に順守し、IAEAが要求する施設への立ち入りを促進することの重要性が強調されたと指摘。イランが保障措置協定を順守している点や、その原子力プログラムが純粋に平和利用目的である点を確証する際、IAEAが担う重要かつ他からの干渉を受けない独自の役割が明確に示されたと強調している。
決議文のなかでIAEA理事会は、R.M.グロッシー事務局長が今年3月3日と6月5日に公表した報告書について言及した。これらの報告書は、保障措置協定と追加議定書に基づきイランの申告が正確で完全であることを解明するためIAEAが傾注した努力や、疑惑があるとしてIAEAがイラン国内で特定した2施設の査察問題について説明している。
これらを踏まえた上で同理事会は、2施設への立ち入り容認も含め、これらの協定や議定書の義務事項を遂行するにあたり、イランは全面的かつタイムリーにIAEAと協力すべきだと進言。イランの核物質がすべて平和利用目的であるとの「拡大結論」にIAEAが到達するには、このような協力が不可欠であることを改めて確認したと述べた。
また、追加議定書に基づく2施設への立ち入りをイランが拒否している点については、事務局長が報告書の中で示した深刻な懸念に理事会は賛同すると表明。IAEAは未申告の核物質と原子力活動の可能性についてイランとの協議にほぼ1年を費やしたが、これらはあまり進展していない。このため理事会は、イランに対してIAEAのリクエストに速やかに応えることを要請。これにはIAEAが特定した2施設への立ち入りを直ちに許可することが含まれるとしている。
(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)