メキシコ、国内唯一の原子力発電設備で運転期間を60年に延長
21 Jul 2020
ラグナベルデ原子力発電所 ©CFE
メキシコ政府のエネルギー省(SENER)は7月17日、国内唯一の原子力発電設備のラグナベルデ原子力発電所で、今月24日に運転認可が満了する1号機(BWR、80.5万kW)の運転期間を30年延長し2050年7月24日までとする承認を公表した。
原子力安全・保障措置委員会(CNSNS)が技術的観点からこの延長を保証したのを受けたもので、同発電所を所有する電力公社(CFE)は今後、最高レベルの運転と信頼性、近隣住民その他の安全を最大限に保証するため、国内外の厳しい規制を順守することを約束。これにより1990年7月に営業運転を開始した同炉の運転期間は60年に延長されることになる。
メキシコでは米国から安価な天然ガスを輸入できるため、CFEの電源構成における6割近くを天然ガスのコンバインド・サイクル発電が占めている。総発電量に占める原子力発電のシェアは4.5%ほどで、CFEは昨年12月、国内の電源ミックスを多様化するとともに天然ガスや化石燃料への依存度を下げるため、ラグナベルデ原子力発電所の運転期間延長に加えて同サイトで新たに2基、太平洋沿岸の新サイトにも2基、原子炉の建設を検討中と述べたことが伝えられている。
CFEはラグナベルデ1号機で長期にわたって安全かつ信頼性の高い運転を維持するため、2015年に運転期間の延長に向けた準備作業とCNSNSへの申請手続きを開始した。その際、長期運転(LTO)に付随する規制要件に沿って、発電所の機器・システムや構造物で点検や試験、モニタリングを実施すると誓約。2016年にはこれらを実行に移すため、機器・システム等の性能管理で47の点検・監督プログラムを始めている。また、申請書の審査が行われた過去5年間に、CFEはCNSNSから386件の追加情報提出要請に応えたほか、13の点検・監査を通じて複数の技術的課題にも取り組んだ。この12か月間は特に、このような作業が激化したとしている。
CFEはまた、2019年3月に国際原子力機関(IAEA)の長期運転安全評価(SALTO: Safety Aspects of Long Term Operation)チームを同発電所に招聘。SALTOチームは結論として、同発電所の維持管理が十分行き届いている、発電所の長期運転に向けて管理部門が準備作業の改善に取り組んでいると評価している。
なお、同発電所で1995年に営業運転を開始した2号機(BWR、81.0万kW)については、運転認可が2025年4月10日まで有効である。ただしCFEはこれについても、すでに運転認可の延長手続きを始めている。
(参照資料:メキシコ・エネルギー省(スペイン語)の発表資料、現地報道(英語)資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)