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欧州理事会、新型コロナ後の復興計画で原子炉の廃止措置等に10億4,500万ユーロ

22 Jul 2020

記者会見するECのU.フォンデアライエン委員長(左)と欧州理事会のC.ミシェル常任議長©EC

欧州連合(EU)の政治的な最高意思決定機関である欧州理事会は7月21日、新型コロナウイルスによる感染で打撃を受けた域内経済の復興に向けて会期を延長して協議した結果、合計7,500億ユーロ(約92兆円)規模の復興基金を創設することで合意した。また、2021年から2027年までの「複数年次財政枠組み(MFF)」に関しては、東欧の3か国が2000年代にEUに加盟した際、交換条件として早期閉鎖した原子炉8基の廃止措置プログラムに対する支援金など合計10億4,500万ユーロ(約1,286億円)が割り当てられることになった。

対象となった廃止措置プログラムは、事故を起こしたチェルノブイリ発電所と同じ黒鉛チャンネル型炉(RBMK)と、格納容器のない第1世代のロシア型PWR(VVER)。具体的にはリトアニアのイグナリナ原子力発電所1、2号機(RBMK-1500、出力各150万kW)、スロバキアのボフニチェ原子力発電所1、2号機(VVER-440、同各44万kW)、およびブルガリアのコズロドイ原子力発電所1~4号機(VVER-440、同各44万kW)である。

これらは2009年までにすべて早期閉鎖された後に廃止措置活動が始まっており、EUは「国家的なエネルギー生産設備の喪失に対する影響緩和プロジェクト」の中から、これら3国に対して財政支援を提供中。しかし、廃止措置に特化したEUの資金調達プログラムでは、タイムリーかつコスト面でも効率的な廃止措置活動を行おうという動機付けが創出されず、3国の作業には遅れが生じている。また、EUの執行機関である欧州委員会(EC)は今年3月、「これらの廃止措置を日程通り完了するには、2021年から2027までの期間に追加の財政支援が必要」とする報告書を欧州理事会と欧州議会に提出していた。

今回の財政復興計画の中で、これらの廃止措置プログラムは「複数年次財政枠組み(MFF)」の1項目「域内セキュリティと防衛」に盛り込まれている。10億4,500万ユーロのうち、イグナリナ発電所に対しては2021年から2027年までの期間に4億9,000万ユーロ(約604億円)、ボフニチェ発電所には2025年までに5,000万ユーロ(約62億円)、コズロドイ発電所については2027年までに5,700万ユーロ(約70億円)の支援を約束。また、EU所有の施設における原子力安全と廃止措置に4億4,800万ユーロ(約551億円)が提供されるとしている。

欧州理事会はこのほか、MFFの「単一市場、技術革新、およびデジタル化」の項目で、欧州における複数の大規模プロジェクトに対する継続的な財政支援を確認。その中でも国際熱核融合実験炉(ITER)計画を実行に移すため、2027年までの期間に最大50億ユーロ(約6,156億円)提供する方針を明らかにしている。

(参照資料:欧州理事会の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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