原子力産業新聞

海外NEWS

米議会上院、原子力リーダーシップ法案を盛り込んだ次年度の国防予算法案を承認

30 Jul 2020

©米議会上院・エネルギー天然資源委員会

米国議会上院のエネルギー天然資源委員会は7月23日、「原子力エネルギーリーダーシップ法案(NELA)(S.903号)」を盛り込んだ修正版の国防省2021会計年度(2020年10月~2021年9月)予算法案(国防権限法:NDAA)(S.4049)が、同日の上院本会議において86対14で可決されたと発表した。

NELAはエネルギー天然資源委員会のL.マコウスキー委員長(=写真)が昨年3月に提出していたもので、原子力エネルギー開発における米国のリーダーシップの再構築が目的。具体的にはエネルギー省(DOE)が推進している先進的原子炉概念の実証、これらの多くで使われるHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)の供給、および原子力関係の人材育成などに焦点を当てている。NELAが支持する先進的原子炉であれば同委員長が選出されたアラスカ州の遠隔地域や、軍事基地その他の大都市においても安全でクリーンかつ信頼性の高い安価なエネルギーを供給できる大きな可能性があると主張している。

共和党員であるマコウスキー委員長と民主党所属のC.ブッカー上院議員は今年6月、NELAに賛同する20名の超党派議員グループ(同委員長とブッカー議員含む)の連名で上院軍事委員会のJ.インホフェ委員長(共和党)とJ.リード幹部(民主党)宛に書簡を送り、NDAAにNELAが盛り込まれるよう支援を要請。この書簡の中で同委員長は、国家安全保障における原子力の貢献を強調した。また、上院本会議におけるNDAA審議の場で、同委員長とブッカー議員はその他の上院議員15名とともに、NELAの文言を盛り込んだNDAAの修正案を提出していた。

なお、議会下院では7月21日に下院版のNDAA(H.R.6395)が295対125で可決されたが、これにはNELAが盛り込まれておらず、最終版の可決成立までには双方の内容を擦り合わせる必要がある。マコウスキー委員長は上院採決の後、「革新的な原子力技術の開発は米国の経済や環境、世界的リーダーシップの確保という点で多大な代償をともなうため、米国は非常に長い期間こうした技術の開発で大幅な遅れを取ってきた」と説明。国防省は論理的に見て、先進的原子炉の中でも遠隔地での建設が容易な超小型原子炉の最初の顧客になる可能性が高いとしている。

(参照資料:上院・エネルギー天然資源委員会の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

cooperation