UAEでアラブ初の商業炉バラカ1号機が起動
03 Aug 2020
バラカ1号機の起動成功を喜ぶ中央制御室のスタッフ©ENEC
アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電の導入計画を担当する首長国原子力会社(ENEC)は8月1日、同国初の商業炉であるとともにアラブ諸国においても初となるバラカ原子力発電所1号機(140万kWのPWR)が7月31日の早朝に初めて臨界に達し、安全に起動したと発表した。
UAEを構成する7つの首長国のうち西側に大きく広がるアブダビ首長国のバラカで、ENEC傘下の運転管理会社で韓国電力が一部出資するNAWAHエナジー社が、規制上の要件と原子炉の安全に関わる最も厳しい国際基準を満たしつつ同炉の起動プロセスを実行したもの。NAWAH社は今後、同炉で数週間にわたり様々な試験を実施した後、UAEの国内送電網に接続、その後2021年の営業運転開始を目指して出力上昇試験などの試運転を実施する計画である。
バラカ発電所では韓国製の140万kW級PWR「APR1400」を4基建設することになっており、2012年7月に1号機が本格着工した後、約1年間隔で同型の2~4号機を順次着工してきた。1号機については2018年3月に竣工式が執り行われたが、運転員の訓練と連邦原子力規制庁(FANR)からの承認取得に時間を要することから、NAWAH社は燃料の装荷など後続の準備作業を延期した。その間、起動に向けた準備を進めながら国際原子力機関(IAEA)など複数の規制関係機関に1号機の安全評価を依頼しており、今年1月には世界原子力発電事業者協会(WANO)は同炉で起動前審査を実施。起動準備が整ったことを確認したのを受けてFANRは今年2月、同炉に対し60年間有効な運転許可を発給した。これに続いてNAWAH社も、翌3月に燃料の初装荷作業を完了していた。
ENECのM.アル・ハマディCEOは、「今日という日はUAEの原子力平和利用プログラムにとって正に歴史的瞬間であり、過去数十年以上の間に我が国が策定したビジョンや戦略計画、盤石なプログラム管理の賜物である」と強調。「最近では(新型コロナウイルスによる感染という)世界的規模の課題が発生するなかで、開発チームは1号機の安全な起動を実証するため優れた忍耐力を発揮した。今後は同発電所で国内電力需要量の4分の1を賄うという目標の達成に向けて更なる一歩を刻み、安全で信頼性が高くCO2も排出しない電力を提供していきたい」と述べた。
UAEの原子力開発利用計画は2009年にスタートしており、実際に商業炉を起動した国/地域としては世界で33番目(2009年末までに国内の商業炉を全廃したリトアニア含む)となった。ENECによれば、バラカ原子力発電所はUAEのエネルギー部門の電化に向けて大きく貢献。4基すべてが完成すれば年間2,100万トン以上のCO2排出を抑えつつ560万kWの電力を供給することになる。同発電所では今年2月に2号機が完成したほか、3、4号機についても建設工事が最終段階に入るなど、発電所全体の建設進捗率は94%に達している。
(参照資料:ENECの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)