ベラルーシ初の商業炉で燃料の装荷を開始
11 Aug 2020
ベラルシアン発電所 ©ロスアトム社
ベラルーシ初の原子力発電設備となるベラルシアン発電所(VVER-1200、出力120万kWのロシア型PWR×2基)を建設中のロシア国営原子力総合企業ロスアトム社は8月7日、燃料の初装荷作業を1号機で開始したと発表した。
前日の6日に連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)が燃料の装荷許可を発給しており、今月末までに合計163体の燃料集合体を装荷する。その後、同炉の出力を最小制御可能出力(MCP)レベル(臨界条件を達成する段階において核分裂連鎖反応を安定した状態に維持するのに十分な出力(1%未満)のこと)まで上げて試験を実施するが、この段階で設計パラメーター通りの信頼性と安全性を確認できれば、同炉の起動プロセスは次の段階に移行、初めて国内送電網に接続されることになる。
旧ソ連邦に属していたベラルーシはウクライナと国境を接しており、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故では多大な放射線被害を被った。しかし、エネルギー資源が乏しく1次エネルギーの8割を輸入に依存する事情により、原子力の導入に関する実行可能性調査を1990年代後半に実施していた。
ベラルーシ初の原子力発電所建設計画については、福島第一原子力発電所事故が発生した直後の2011年3月15日に同国のA.ルカシェンコ政権がロシアとの二国間協力に合意。総工費の低金利融資などロシア政府の全面的な支援を受けて、2013年11月に1号機がフロドナ州オストロベツで本格着工したほか、翌2014年4月には2号機の建設工事が開始されている。
ロスアトム社のA.リハチョフ総裁は、「これでベラルーシも最新の第3世代+(プラス)設計「AES-2006」原子炉の保有国になった」と表明。同設計では、ロシア国内の稼働中原子炉ですでに実証・試験済みの技術が使われていると強調した。同総裁はまた、この設計では福島第一発電所事故後の安全要件すべてが満たされており、国際原子力機関(IAEA)の複数のミッションも同設計の信頼性を認めていると指摘。「この設計の原子炉がロシア以外の国で初めて、それもロシアの「良き隣人」たるベラルーシで完成したことは、ロスアトム社にとって非常に重要なことだ」と述べた。
「AES-2006」設計は、ロシア国内ではノボボロネジ原子力発電所とレニングラード原子力発電所双方のⅡ期工事に2基ずつ採用され、このうち3基がすでに営業運転中。国外ではバングラデシュとトルコで建設中であるほか、エジプト、フィンランド、ハンガリーで計画中となっている。
(参照資料:ロスアトム社、ASEグループの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)