米X-エナジー社、開発中の小型高温ガス炉「Xe-100」でカナダのベンダー審査開始
18 Aug 2020
Xe-100の概念図 ©X-Energy, LLC.
米国のX-エナジー社は8月11日、同社が開発している小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」について、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が提供する予備的設計評価(ベンダー設計審査)を開始したと発表した。
このベンダー設計審査では建設・運転許可の取得に向けた正式な申請手続に先立ち、当該設計がカナダの規制要件を満たしているかCNSCがメーカー側の要請に基づいて評価する。法的に有効な設計認証や関係認可が得られるわけではないが、X-エナジー社は今回、カナダのパートナー企業やサプライチェーンとの協力により、同国でXe-100の建設準備を進めるには効率的と判断したもの。同設計の完成度の高さから、3段階で構成される同審査のフェーズ1と2が一まとめに実施される予定だが、審査に際してはカナダ国籍のKinectrics社がX-エナジー社を支援する。Kinectrics社は、カナダ電力部門の専門的知見やエンジニアリング・コンサルティングで100年以上の卓越した実績を誇っている。
X-エナジー社はCNSCの先進的な審査を通じて、Xe-100設計がカナダの規制要件に適合していることを実証し、カナダでXe-100の許認可手続きを進める際に根本的な障害が全くないことを確認する方針。また、Xe-100設計のさらなる改善に向けて、貴重な初期フィードバックを得る考えである。同社によれば、リスク情報を活用したカナダの進歩的な規制枠組みと定評のあるサプライチェーンを組み合わせれば、カナダはXe-100初号機を建設する理想的な場所となり、その将来的な輸出に向けた連携関係も構築される。さらに、ベースロード運転や負荷追従運転が可能な同設計を使って、カナダはクリーン・エネルギーの比率を高めるという目標を達成しつつ、遠隔地域のコミュニティに十分な電力と高温の蒸気を提供、海水の脱塩や水素生産などにも活用できるとしている。
Xe-100は電気出力7.5万kWのSMRだが、これを4基連結することで出力は30万kWまで拡大が可能。X-エナジー社は同設計により、世界中で高まっているクリーン・エネルギーの需要に応えられると考えている。同設計はまた、燃料として3重被覆・粒子(TRISO)燃料を用いるため、同社は2025年までに商業規模のTRISO燃料製造加工工場「TRISO-X」を米国内で完成させる方針。この目標の達成に向けて、同社は米国のウラン濃縮企業セントラス・エナジー社や日本の原子燃料工業と協力する契約や覚書を締結している。また、ヨルダンがXe-100を2030年までに国内で4基建設することを希望しているため、同社は2019年11月にヨルダン原子力委員会と基本合意書を交わしている。
(参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)