米ホルテック社のSMR設計、カナダ安全委のベンダー審査で第1段階をクリア
25 Aug 2020
「SMR-160」の完成予想図©ホルテック・インターナショナル社
米国のホルテック・インターナショナル社は8月20日、子会社のSMR社が開発している小型モジュール炉(SMR)設計「SMR-160」(電気出力16万kW)が、カナダ原子力安全委員会(CNSC)による「予備的設計評価(ベンダー設計審査:VDR)」の第1段階を成功裏に通過したと発表した。
2018年7月に開始されたVDRでSMR社は19の技術レビューの重点項目に集中的に取り組んでおり、CNSCに提出した文書は数百点にのぼる。第2段階でフォローアップの必要な分野がいくつか特定されたことから、SMR社は近々、こうしたフィードバックを踏まえて同審査の第2段階に進む予定。同設計は、事故時に運転員が現場を離れても安全性が保たれる特性(walk-away safe)を備えており、カナダ国内で同設計の許認可手続きを確実に進めるため同社はVDRを継続する考えである。
VDRは建設・運転許可の取得に向けた正式な申請手続きに先立ち、当該設計がカナダの規制要件を満たしているか、CNSCがメーカー側の要請に基づいて実施する全3段階の評価審査。法的に有効な設計認証や関係認可は得られないものの、VDRによってカナダの規制要件に関する初期フィードバックが得られるほか、技術面の潜在的な課題を設計の早い段階で特定し解決策を探ることができる。
CNSCは今回、VDR第1段階の審査の結論として、「SMR社は全体的にみて規制要件におけるCNSCの意図を正しく理解している」と表明。一方、今後フォローアップすべき部分として、SMR社が使用した米国のコードや基準について、詳細な選択理由の提示を求めているほか、これらの基準をどのようにカナダの要件に適合させるかについても説明を要請している。
またCNSCによると、SMR社は評価の際に確率論的安全分析(PSA)を実施する必要性を認識していながら、いくつかの点についてはPSAや外部ハザードに対するリスク評価の準備を期日までにしていなかった。これらは外部事象や内部火災、洪水、複数事象の発生などの影響を評価する際に活用されるため、ベンダーによるCNSC要件の理解度を測る上で必要なものである。
米国ではすでに、オレゴン州のニュースケール・パワー社が開発したSMRについて、原子力規制委員会(NRC)が米国内での建設・運転に必要な設計認証(DC)審査をSMR設計としては初めて2017年3月に開始している。ホルテック社傘下のSMR社は同様に「SMR-160」を米国内で建設・運転するため、DC審査の申請準備を進めているが、カナダでの建設については、「2020年代後半に初号機の運転が可能になる」と説明している。
同設計についてはまた、ウクライナ原子力発電公社のエネルゴアトム社が同国内で6基建設することと、一部機器の国内製造を検討中。ホルテック社とエネルゴアトム社およびウクライナの国立原子力放射線安全科学技術センター(SSTC)は2019年6月、この目的を実行に移すため、国際企業連合を結成している。
(参照資料:ホルテック・インターナショナル社、CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)