ニュースケール社製SMR、設計認証取得に向け米規制委の技術審査をパス
01 Sep 2020
ニュースケール社製SMRの完成予想図
©NuScale
米国の原子力規制委員会(NRC)は8月28日、ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)設計についての設計認証(DC)審査の最終(第6)段階を終え、安全評価報告書の最終版(FSER)を発行したと発表した。
同設計はSMRとしては唯一、NRCのDC審査を受けていたもので、DCが発給されればNRCの安全・規制要件をすべて満たした米国標準設計の1つとなり、エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)敷地内における初号機の建設・運転計画が具体的に動き出すことになる。
大手のエンジニアリング企業フルアー社の出資協力を受け、ニュースケール社が開発したSMRは出力5万kWのモジュール統合型PWR。このモジュールを12基連結すれば、出力を最大60万kWまで増強できる。同社によればまた、このSMRは固有の安全性を備えているため、異常な状況下でも原子炉が自動停止し、人の介入や追加の注水および外部からの電力供給なしで冷却することが可能である。
ニュースケール社は2016年12月末日に同設計のDC審査をNRCに申請し、NRCは翌2017年3月にこの申請を受理した後、今回42か月間にわたった同設計の技術審査を完了した。NRCのスタッフは、「運転システム内の対流や重力を活用したこの設計では受動的安全機能により、緊急の状況下においても原子炉を安全に停止させ、そのままの状態で維持することが可能」と確認。今後は同設計の認証に向けてFSERをNRC委員に提出し、設計規則の制定準備を進めることになる。
同SMRの初号機建設計画はユタ州市町村公社(UAMPS)が進めているもので、DOEは2016年2月にINLの敷地を建設用地として使用することを許可した。現地の報道によると、UAMPSは2029年6月にも同サイトで最初のモジュールの稼働を開始すると表明。運転については、西海岸ワシントン州の電力企業エナジー・ノースウエスト社が担当することになっている。
実際の建設に際しては、通常の商業炉と同じく建設・運転一括認可(COL)の取得が必要で、同設計がNRCから全面的に認証された場合、UAMPSその他の電気事業者はCOL申請書にニュースケール社製SMRを明記。NRCのDC認証は発給日から15年間有効であり、追加で10年~15年間更新することが可能である。
なお、ニュースケール社は2022年にも、同設計の出力を増強した6万kWモジュール版で改めて標準設計承認を申請する方針だ。NRCが5万kWモジュール版のDC審査を進めている最中の2018年6月、ニュースケール社は「固有の安全性に影響を及ぼすことなく、経済面と性能面の合理化に成功した」と発表。6万kW版のモジュールを12基連結することで、合計出力は72万kWまで拡大が可能になるとしていた。
同社製SMRについては、すでにヨルダンやルーマニア、チェコが国内で建設することに関心を表明。ニュースケール社は実行可能性調査等の実施に向けて、それぞれの国の担当組織と了解覚書を交わしている。
(参照資料:NRC、ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)