テラパワー社とGEH社、ナトリウム高速炉技術による発電・貯蔵システムの開発開始
03 Sep 2020
「ナトリウム発電・エネルギー貯蔵システム」の完成予想図©テラパワー社
米国のビル・ゲイツ氏が後援する原子力開発ベンチャー企業のテラパワー社は8月27日、ナトリウムを活用した商業用の発電・エネルギー貯蔵システムをGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と共同で開発すると発表した。同システムの実質的な利用開始は2020年代後半を予定しており、実用化される最初の先進的原子力技術の一つになる予定。
同システムの基本設計概念は、GEH社が開発した小型モジュール式高速炉「PRISM」などの先進的ナトリウム冷却高速炉技術と、溶融塩化物高速炉(MCFR)を開発しているテラパワー社の溶融塩エネルギー貯蔵システムを組み合わせたもの。従来の原子炉規模を簡素することで電気出力34.5万kWとし、コストを抑えるために原子炉建屋の外部に非原子力システムの機械設備や電気機器を設置する。これに加えて、設備の大半を原子力グレードの規格ではなく一般的な工業規格を採用するほか使用する機器の数を削減、原子力グレードのコンクリート使用量も大型炉との比較で8割削減する。
同システムはまた、50万kWの出力で5.5時間以上、熱エネルギーの貯蔵が可能になる予定で、これにより日々の電力需要量の変化にも追従。必要な時に十分な量のクリーン・エネルギーが使用できるようになるなど、同システムの低コストで柔軟性の高い発電とエネルギー貯蔵は、地球温暖化の防止目標達成にも寄与するとしている。
両社はこれ以外にも今年1月、米エネルギー省(DOE)が進める多目的試験炉(VTR)の設計と建設に向けた官民パートナーシップを促進するため、連携協力することで合意している。今回、テラパワー社は「原子力技術革新を進める企業として、原子力発電の価格を可能な限り圧縮することを目指したGEH社との協力を大きなチャンスととらえている」と述べた。
GEH社も「両社の経験を統合すれば、ナトリウムを使った発電・エネルギー貯蔵システムの設計・建設に向けて比類のない能力がもたらされる」と指摘。両社が保有する専門的知見と資源量の深さは、複数の原子炉の設計等でそれぞれが費やしてきた年月を反映しているとした。またこれにともない、すでにデューク・エナジー社やエナジー・ノースウエスト社など、複数の電気事業者が同システムの商業化支援で関心表明している事実に言及した。
(参照資料:テラパワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)