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米テラパワー社、国産HALEU燃料の供給に向けてセントラス社と協力 

16 Sep 2020

©テラパワー社

米国のビル・ゲイツ氏が会長を務める原子力開発ベンチャー企業のテラパワー社は9月15日、数多くの次世代原子炉設計で使用が予定されているHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)について、商業規模の国産製造加工施設を米国で建設するため、セントラス・エナジー社と協力する計画を明らかにした。

同社は今月初頭、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と協力して、ナトリウム冷却高速炉技術と溶融塩熱貯蔵システムを組み合わせた「ナトリウム電力貯蔵システム」の開発を決めたが、このシステムにおいてもHALEU燃料を使用することになっている。今回の投資提案はまた、エネルギー省(DOE)が5月に公表した「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」に応募する際の要件の1つにも当てはまる。ADRPはコスト分担方式の官民連携により先進的原子炉設計を2つ選定し、今後5~7年間で初号機の建設をサポートしようというもの。申請者に対しては、それぞれの設計が必要とする燃料や核物質の入手プランも策定するよう求めている。

テラパワー社は、同社の先進的電力貯蔵システムがARDPの対象設計に選定された場合、セントラス社と共同でHALEUの製造加工施設を建設して金属燃料の集合体を製造する計画。同燃料を使用することで原子炉の経済性や燃料の効率性が向上するだけでなく、安全性や核不拡散性が強化され、放射性廃棄物の排出量も少なくなると強調している。

最初の1年間に、同社はHALEU燃料製造加工施設の設計と許認可について検討を開始するが、これには建設の詳細計画とコスト見積が含まれる。ナトリウムを冷却材に使った原子炉では金属燃料の装荷が必要だが、今のところ米国内で金属燃料を商業的に供給できる業者は存在しない。セントラス社との今回の提携契約は金属燃料の製造インフラで欠損部分を補うだけでなく、急増しつつあるHALEU燃料の需要を満たすためだと説明している。

テラパワー社のC.レベスク社長兼CEOは今回、「HALEU燃料の製造に向けた投資では、ナトリウム電力貯蔵システムの商業化という長期的見通しの中で、国産燃料が確保されるという利点がある」と説明。このような努力を通じて、同社はHALEU燃料の生産や国産の先進的原子炉技術の建設といったDOEの幅広い目標達成に向けて支援の提供が可能になると述べた。

また、セントラス社のD.ポネマン社長兼CEOは、「将来の先進的原子炉設計に対する燃料供給に関して言えば、米国はテラパワー社の投資のお陰で世界のリーダー的立場を手にすることも可能だ」と指摘。オハイオ州の同社プラントには、需要の増加や市場の成熟度に合わせて燃料の製造加工設備やウラン濃縮設備を増強し続ける十分な広さがあると強調した。

セントラス社は現在、DOEと結んだ総額1億1,500万ドルのコスト折半契約の下でHALEU燃料の生産実証作業を実行中。オハイオ州のパイクトンで、3年間に16台の「AC-100」遠心分離機を設置することになっている。2022年の半ばまでにこの実証計画を完了させた後、同社はテラパワー社とともにプラントの規模を拡大、ARDPの応募要項に沿って燃料関係の要件を満たす考えである。

(参照資料:テラパワー社セントラス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)

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