ポーランドの原子力開発プログラムに米国が協力
21 Oct 2020
P.ナイムスキ特任長官 © Piotr Naimski
米エネルギー省(DOE)は10月19日、ポーランドの民生用原子力発電開発プログラムに協力するため、同省のD.ブルイエット長官が両国の政府間協力協定に署名したと発表した。
この署名は同日、ブルイエット長官がポーランドのP.ナイムスキ戦略エネルギー・インフラ特任長官と協議した後に行われたもので、両国がエネルギー関係で30年間という長期の協定を結ぶのは初めてとなる。調印された文書は今後ポーランドのワルシャワに送られ、今週後半にもナイムスキ特任長官側が署名、双方が発効要件すべてを満たしたと確認する外交文書を交わした後、正式発効する。
ポーランドの原子力発電開発プログラムに対する米国の協力は、今年6月にポーランドのA.ドゥダ大統領がホワイトハウスを訪問した際、ポーランドによる米国産LNGの輸入拡大などとともにD.トランプ大統領との共同声明に盛り込まれていた。同協定では今後18か月以上にわたり、ポーランドの原子力発電プログラムを実行に移す方策や必要となる資金調達方法について、両国が協力して報告書を作成すると規定。この報告書は、米国が今後原子力発電所の建設パートナーとして長期にわたってポーランドのプログラムに関与し、ポーランド政府が国内で原子力発電所の建設加速に向け最終判断を下す際の基盤となる予定である。
同協定ではまた、関係企業への支援や規制、研究開発、人材訓練などで政府が主導する両国間の協力分野を特定。欧州でのプロジェクト等に共同で協力していくため、サプライチェーンの構築や原子力に対する国民の意識を高めることなどが明記された。
DOEの発表によると、D.トランプ大統領はポーランド国民に対してエネルギーの供給保証を約束。「ポーランドやその近隣諸国が、(ロシアのような)唯一の供給国からエネルギーを人質に取られることが二度とないよう、代替エネルギー源の利用を保証する」と明言した。今回の協定は大統領のこの約束を果たすためのものであり、具体的にはエネルギー関係でポーランドとの戦略的パートナーシップを強化し、ポーランドのエネルギー・ミックスを多様化、高圧的な供給国に対するポーランドの依存度を下げるとしている。
ポーランドでは今月初旬、複数年にわたる同国の改定版原子力開発プログラムを内閣が承認しており、第3世代あるいは第3世代+(プラス)のPWRを600万~900万kW分、建設することを確認。同プログラムを提出した気候・環境省のM.クルティカ大臣は「2033年に初号機を運転開始した後は、2~3年毎に後続の原子炉を起動していき2043年までに6基の建設を終えたい」と述べていた。
DOEのブルイエット長官は今回、「ポーランドが国家安全保障と民主主義的主権を維持していく際、米国はともに協力する」と強調。エネルギーの供給保証で重要な点は、燃料やその調達源、供給ルートを多様化することだとトランプ政権は信じており、原子力はポーランド国民にクリーンで信頼性の高い電力を提供するだけでなく、エネルギーの多様化と供給保証の促進をも約束すると述べた。次世代の原子力技術は、米国が欧州その他の地域の同盟国とエネルギー供給保証について協議する上で、欠くべからざるものだと表明している。
ポーランドのナイムスキ特任長官も、今回の協定はクリーン・エネルギーのみならず、その供給保証も視野に入れたものであり、ポーランドは一層幅広い状況の中で今回の戦略的協力を捉えていると指摘。同協定は「地政学的安全保障と長期的な経済成長、技術の進展、およびポーランドにおける新たな産業部門の開発につながる」としている。
(参照資料:DOE、ナイムスキ戦略エネルギー・インフラ特任長官(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)