米エネ省、先進的原子炉実証プログラムの支援対象企業2社を発表
22 Oct 2020
X-エナジー社の「Xe-100」©X-energy
米エネルギー省(DOE)は10月13日、国内原子力産業界による先進的原子炉設計の実証を支援するため、今年5月に開始した「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」で、初回の支援金1億6,000万ドルの交付対象となる米国企業2社を発表した。
選ばれたのは、ビル・ゲイツ氏が会長を務める原子力開発ベンチャー企業で「ナトリウム冷却高速炉」を開発中のテラパワー社と、小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」を開発しているX-エナジー社である。ARDPはこのような先進的原子炉設計を7年以内に運転可能とすることを目指す官民のコスト分担型パートナーシップで、DOEはこれら2社が実証炉を建設するための支援金としてそれぞれに2020会計年度予算から8,000万ドルずつ交付する。DOEが約7年間に投資する総額は、同省の今後の予算確保や産業界のマッチング・ファンド適用状況にもよるが、約32億ドルに達する見通しである。
DOEのD.ブルイエット長官は初回の支援金授与について、「次世代原子力技術における米国のリーダーシップ強化を目的としたARDPの重要な最初のステップになる」と表明。このような連携により、「米国のクリーン・エネルギー戦略で重要な役割を担う先進的原子炉の開発に、DOEの投資を最大限に活かすことができる」と述べた。
今回のプログラムでテラパワー社は、パートナー企業のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と数10年にわたって蓄積してきた「ナトリウム冷却高速炉」の技術を実証する計画。同炉が運転時に生み出す高温は、熱エネルギーの貯蔵技術との組み合わせで、発電所の電気出力を容易に調整することが可能であり、太陽光や風力など出力が変動しやすい再生可能エネルギー源を補うことになる。同プロジェクトではまた、この設計用の金属燃料製造施設も新たに建設する。
X-エナジー社は「Xe-100」4基で構成される原子力発電所の商業化を目指しており、柔軟に変更できる同設計の電気出力とプロセス熱は、海水脱塩や水素生産などの幅広い分野に適用が可能。同プロジェクトでも、「Xe-100」に使用する3重被覆層・燃料粒子「TRISO」の製造施設を商業規模で建設することになっており、DOEの支援金はそのために活用される。
DOEによると、どちらのプロジェクトも安全性が向上する一方、手頃な価格で建設・運転が可能という設計上の特長を備えている。このため、世界的に高い競争力を持つ先進的原子炉を米国が建設していく道が開かれるとしている。
なお、ARDPではこのような①「先進的原子炉の実証」に対する支援のほかに、②「将来的な実証に向けたリスクの削減」、③「先進的原子炉概念2020(ARC20)」という支援ルートも設定している。②の対象は2~5件で、商業化を目指す期間は①より約5年長い。対象技術の将来的な実証に向けて技術面や運転面、規制面の課題解決を目指す。③については2030年代半ばの商業化を目標に、革新的概念に基づく様々な設計の開発を支援するとしている。
今回の①に対する継続的な支援は、議会でARDPに追加予算が充当され開発プログラムが順調に進展中との評価を受けた後、DOEが支援の継続申請を承認すれば実施に移される。②に対する2020会計年度から、候補プロジェクト5件のうち2件に対してDOEが合計3,000万ドルを支援する。③では少なくとも2件に対し合計2,000万ドルを交付。DOEが対象設計を発表するのは②、③どちらも今年の12月になる予定である。
(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)