ベラルーシ初の商業炉が送電開始
06 Nov 2020
©Rosatom
ベラルーシ初の原子力発電所の建設工事を請け負っているロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は11月5日、初号機となるベラルシアン原子力発電所1号機(120万kWのPWR)を、3日の昼過ぎに初めて同国の送電網に接続し送電したと発表した。
同炉については8月7日に燃料を装荷した後、10月11日に出力が最小制御可能出力(MCP)レベル(臨界条件を達成する段階において、核分裂連鎖反応を安定した状態に維持するのに十分な1%未満の出力)に到達。10月23日には、ベラルーシの非常事態省が出力を50%まで徐々に上げていくプログラムの実施を許可しており、ロスアトム社は出力40%に達した時点で同炉を初併入させるとしていた。今後は出力50%でプラント動特性試験の実施を予定しており、このような定格出力未満での試験を12月初頭までに完了した後、定格出力で試運転を開始。営業運転に入るのは2021年第1四半期になるとの見通しを明らかにしている。
ロスアトム社によると、ベラルシアン発電所では第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR(VVER)「AES-2006」設計を採用。ロシア国外で送電開始した同型炉としては最初となった。ロシア国内ではすでに、ノボボロネジ原子力発電所II期工事で同型設計の1、2号機が営業運転中。レニングラード原子力発電所でもII期工事1号機が2018年10月に営業運転を開始したほか、10月23日にはII期工事2号機が送電を開始している。
AES-2006の特長についてロスアトム社は、放射性物質の環境への放出を抑えるとともに安全な運転を確保するため、技術面で最先端技術を採用。格納容器は2重構造で、内側の容器が設備の気密性を保持する一方、外側の容器は竜巻やハリケーン、地震といった外部からの影響に耐えられる。受動的安全系を備え、外部電源が完全に失われた場合でも運転継続が可能であり、動的システムを使わずにすべての安全機能が作動するとしている。
また、格納容器の下部にはコア・キャッチャーを備えているため、過酷事故発生時においても炉心溶融物を閉じ込めて冷却することができる。出力もこれまでのVVERから20%増強されて120万kWになったほか、必要とする運転員の数が大幅に減少。従来のVVERで30年としていた運転期間は倍の60年となり、これをさらに20年間延長することも可能だとしている。
ベラルシアン1号機の送電開始について、ロスアトム社のA.リハチョフ総裁は「ベラルーシにとって歴史的出来事であり、同国における原子力発電時代の幕開けになった」とコメント。同社の傘下で建設工事を担当するASEエンジニアリング社(ASE EC)のA.ペトロフ第一副総裁も、「AES-2006を採用した原子炉の建設は国際市場で最も有望かつ需要があり、すでにフィンランドやハンガリー、トルコ、バングラデシュ、中国などが第3世代+の120万kW級VVERの顧客になっている」と強調した。
(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)