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米テレストリアル社、溶融塩炉の商業化に向けアルゴンヌ研と詳細試験

17 Nov 2020

IMSRの炉心ユニット ©Terrestrial Energy

カナダを本拠地とするテレストリアル・エナジー社の米国法人(TEUSA社)は11月10日、開発中の小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)(熱出力40万kW、電気出力19万kW)で使用する溶融塩燃料について、米エネルギー省(DOE)傘下のアルゴンヌ国立研究所(ANL)と詳細な試験を開始したと発表した。

これは、IMSR発電所の燃料や機器・システムについて同社が実施している幅広い確認試験プログラムの一部であり、試験結果は最初の商業炉の建設許認可手続き等で活用する予定。第4世代の先進的原子炉技術のひとつであるIMSRは、コスト面や機能面で革新的と見られており、TEUSA社は安全でクリーン、信頼性が高くコスト面の競争力もあるIMSRのプロセス熱を、化学合成や脱塩など数多くの工業利用に有望としている。

IMSRはまた、発電用として既存の電力市場以外での適用が可能なため、TEUSA社としては、産業界が様大規模な脱炭素化を進める有望な手段としてIMSRを提供。米国市場における同設計の商業運転は、2020年代後半にも実現できると予想している。

発表によるとTEUSA社とANLとの協力は2016年、民間で進められている先進的原子力技術の商業化支援でDOEが開始したイニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」で、TEUSA社が支援対象に選定された折に始まった。TEUSA社は、最初のGAINによってANLとの商業協力が本格的に促され、独力で各種試験を実施するより、世界クラスの国立研究所と協力して関係分野の専門的知見を得る戦略を継続。そのおかげで、TEUSA社は社内の技術資源をIMSR開発に集中させることができ、IMSR発電所を早期に建設する選択ができた。

試験に際し、ANLは溶融塩にトリウムなどを混合した液体燃料の熱特性が規制基準を満たせるかの試験に加えて、IMSRの運転サイクル全般で使われる溶融塩の試験用混合物も準備。その上で燃料の融点、密度や粘度、熱容量、熱拡散率なども計測・特定するとしている。

IMSR初号機の建設サイトとしては、同じくDOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)が候補に挙がっている。このため、TEUSA社は2018年3月、INLのサイト評価を共同実施するため、ワシントン州の非営利電気事業者共同機関「エナジー・ノースウエスト社」と了解覚書を締結している。

(参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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