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英国のHPC計画、新型コロナの影響で送電開始が約半年遅延

28 Jan 2021

©EDF Energy

英国南西部のサマセット州でヒンクリーポイントC原子力発電所(170万kW級欧州加圧水型炉:EPR×2基)を建設中のEDFエナジー社は1月27日、新型コロナウイルスによる感染の世界的拡大(パンデミック)が影響し、1号機の送電開始は2026年6月に遅延する見通しになったと発表した。

同計画の最終投資判断を下した2016年9月当時、同社は1号機で2025年末の送電開始を予定していたが、パンデミックの影響を綿密に評価した結果、完成が約半年遅れるほか、総工費の予測額も2019年9月時点で215億~225億ポンド(※2015年の貨幣価値、以下同様)(約3兆円~3兆2,000億円)だったのが、今回220億~230億ポンド(約3兆1,360億~3兆2,800億円)に増大。これにともない、7.6%~7.8%としていたEDFエナジー社の予測利益率(IRR)も、7.1%~7.2%に引き下げられたとしている。

同社は今のところ、2022年末に1号機の格納容器でドーム屋根の設置を目指しているが、1、2号機が完成するまでに、当初スケジュールからそれぞれ15か月と9か月の遅れが発生するリスクが残っている。今年の第2四半期以降には、建設サイトもコロナ以前の状態に戻ると同社は予想しているものの、遅延リスクが現実となった場合、追加的に発生する経費は約7億ポンド(約998億円)、IRRは0.3%低下すると見込んでいる。

EDFエナジー社がこの日公開した動画によると、建設サイトでは感染の拡大を防止するため、ソーシャル・ディスタンスを確保するなど数多くの対策を実行中。同サイトと周辺コミュニティにおける安全性の維持で、実施可能なことはすべて実施している。作業員の減員と資材の供給途絶という厳しい環境の下、昨年は節目となる20の目標項目中、18項目まで完了した。

スケジュール管理も同社は注意深く行っているが、パンデミックの発生以降、いくつかの作業については延期を余儀なくされ、2020年の作業では約3か月の遅延が生じた。同社によれば、今年はさらに3か月遅延すると見込まれており、総工費は一層膨らむ可能性がある。しかし、2016年に計画の実施を決定して以来、同社がスケジュールを事前に調整したのは今回が初めて。パンデミックは健康にかかわる重大事項であっても建設工事上の課題というわけではなく、基本的に建設プロジェクトは良好に進展中だと強調している。

(参照資料:EDFエナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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