ポーランド内閣、2040年までの新しいエネルギー政策を承認
03 Feb 2021
©Polish Government
ポーランド政府は2月2日、気候・環境大臣が提出していた燃料・エネルギー部門における2040年までの重要政策「PEP2040」を、内閣が正式に承認したと発表した。国内エネルギー・ミックスにおける石炭火力シェアの大幅な削減を目標としたもので、原子力については出力100万~160万kWの初号機を2033年に運転開始すると明記されている。
「PEP2040」の概要はすでに2020年9月、気候・環境省のM.クルティカ大臣が公の場で公表。この政策に関して実施したパブリックコメント募集や関係閣僚との協議も同年末までに完了し、内閣の開発政策調整委員会等からは肯定的な評価が得られていた。
新たな政策や戦略の承認は2009年に前回のエネルギー政策を策定して以来のことであり、ポーランド国内でCO2排出量ゼロに向けてエネルギー改革を進める際の枠組となる。政策の主な柱は①クリーン・エネルギーへの移行、②CO2排出量ゼロのエネルギー供給システム確立、③大気汚染の改善。これらによって、ポーランド経済全体の近代化が円滑に進み、エネルギーの供給保証が強化されるとしている。
「PEP2040」はまた、パリ協定が定めた目標の達成に貢献するとしており、ポーランドのクリーン・エネルギーへの移行を公平かつ一致団結した方法で進める一助となる。さらに、地球温暖化防止を目指した欧州連合の2050年までの工程表「欧州グリーンディール」を、ポーランド経済に適応させることにも配慮したものになっている。
「PEP2040」」を通じて、ポーランドは2040年時点で国内発電設備の半分以上を無炭素電源にする予定だが、このプロセスの中で洋上風力発電と原子力発電の導入は重要な役割を担う。これら2つはポーランドがこれから構築する新しい戦略的産業であり、これらに特化した人的資源の開発や新規の雇用、付加価値の付いた国家経済が構築されるとポーランド政府は強調している。
「PEP2040」における原子力発電実施プログラム
「PEP2040」で戦略的プロジェクトの1つとされた原子力発電プログラムでは、2043年までに合計6基の原子炉を建設すると明記。2033年に100万kW以上の初号機が運転開始した後、2~3年毎に残り5基の運転を開始させるが、2043年という期限は、電力需要の増加にともない電力不足に陥ることを想定して設定した。
「PEP2040」によれば、原子力発電は大気を汚さずに安定的にエネルギーを供給するだけでなく、エネルギーの生産構造を合理的なコストで多様化することが可能である。また、近年使われている第3世代および第3世代+(プラス)の原子炉技術は、原子力安全分野の厳しい国際基準と相まって、原子力発電所で高い水準の安全性を確保。ポーランドが進める原子力発電プログラムでは、その多くに国内企業が参加することになるとした。
実際に同プログラムを進めるにあたり、関係する法の改正や資金調達モデルの確立も事前に必要になるが、ポーランド政府は原子力発電所建設サイトの選定、低・中レベル放射性廃棄物処分場の操業なども実行に移す。また、採用技術や建設工事の総合請負業者を選定するほか、発電所の建設と運転、監督等で必要な人材の育成も行う方針である。
「PEP2040」ではさらに、大型軽水炉の建設とは別に高温ガス炉(HTR)を将来的に導入する可能性を明記。HTRは主に、産業用の熱供給源として使用するとしている。