フラマトム社製の試験用事故耐性燃料、米発電所で18か月の運転サイクル完了
04 Feb 2021
使用前のEATF燃料の目視点検©Framatome
仏国のフラマトム社は2月2日、同社製の改良型事故耐性燃料(EATF)を試験的に装荷した米国の商業炉が、このほど18か月の運転サイクルを完了したと発表した。この先行使用・燃料集合体(LFAs)には、ペレットと被覆管の両方に事故耐性燃料(ATF)の概念が盛り込まれており、同燃料で商業炉が1運転サイクルをフルに稼働したのは初めてだとしている。
フラマトム社は今回、試験に使った商業炉名を明らかにしていないが、LFAsの装荷時期については、この商業炉で予定している3回の18か月運転の初回分として2019年4月に行ったと明記。この当時、同社はサザン・ニュークリア社がジョージア州で操業するA.W.ボーグル原子力発電所で、2号機(121.5万kWのPWR)にLFAsを装荷と公表していた。
発表によると、昨年8月の燃料交換時に原子炉から4体のLFAsを取り出した後、点検を実施。その結果、LFAsで期待通りの成果と優れた性能が認められたほか、同炉で残り2回の運転サイクルが終了した後、さらに詳細な計測と点検を行う計画だとしている。
フラマトム社で燃料事業を担当するL.ゲフェ上級副社長は、「当社のEATF技術で最高度の技術基準をクリアできることが確認できた」とコメント。この技術をさらに進展させ、顧客に一層安全かつ信頼性や効率性、経済性も高い燃料を提供していきたいと述べた。
フラマトム社は現在、米エネルギー省(DOE)が福島第一原子力発電所の事故後に開始した「事故耐性燃料開発プログラム」に参加している。同社のほかには、GE社と日立の合弁企業であるグローバル・ニュークリア・フュエル社、ウェスチングハウス社、ライトブリッジ社などが産業界から協力中。2022年頃までに、3段階でATFを開発・実証する計画である。
フラマトム社はまた、DOEプログラムの一環として独自のATF開発プログラム「PROtecht Program」も進めており、短・長期的な事故時の対応策としてPWR用に高性能で堅固な先進的EATF(GAIA)の開発を目指している。GAIA燃料集合体のコンセプトは、同社製の最新鋭ジルカロイ合金製被覆管「M5」に先進的なクロム・コーティングを施すとともに、燃料ペレットをクロム合金の酸化被膜で覆うというもの。クロムを塗布することで被覆管の高温耐酸化性が改善され、冷却水喪失時においても水素の発生を抑えることができる。このコーティングはまた、燃料が微摩耗するのを防ぐことから、通常運転時に燃料が破損する可能性も低くなるとしている。
なお、今回試験したLFAsは、フラマトム社が米ワシントン州リッチランドにある同社の燃料製造工場で製造加工したものである。
(参照資料:フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)