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UAEの規制当局、バラカ2号機に運転許可を発給

10 Mar 2021

FANR首脳による運転許可の発給(中央はアル・カービ副会長)©FANR

アラブ首長国連邦(UAE)の原子力規制庁(FANR)は3月9日、同国初の原子力発電設備であるバラカ発電所の2号機(140万kWのPWR)について、60年有効な運転許可をNAWAHエナジー社に発給したと発表した。

NAWAHエナジー社は、UAEで原子力発電導入計画を進めている首長国原子力会社(ENEC)の子会社。完成した発電所の運転管理を担当することになっており、2号機については今後、起動と送電開始の準備を進めていく。FANRもこれにともない、発電所駐在の検査官のみならずその他の検査官も投入する方針。規制要件に沿って燃料の初装荷や出力の段階的上昇試験が行われるよう、24時間体制で点検作業を実施するとしている。

バラカ原子力発電所はUAEのアブダビ首長国西部に位置しており、韓国製の140万kW級PWR「APR1400」を4基建設している。2012年7月に1号機が本格着工した後、約1年間隔で同型の2~4号機を順次着工。1号機については2018年3月に竣工式が行われたものの、運転員の訓練とFANRからの承認取得に時間を要することから、NAWAHエナジー社は燃料装荷などの準備作業を延期した。その後、国際原子力機関(IAEA)や世界原子力発電事業者協会(WANO)が同炉の起動前審査や安全評価を実施しており、FANRはこれらを通じて起動準備が整ったことを確認。2020年2月に運転許可を発給した後、同炉では翌3月に燃料の初装荷が行われた。同年8月に同炉はUAE初の原子炉として送電を開始、12月には定格出力に達したことから、近いうちに営業運転を開始できると見られている。

2号機の運転許可申請書は、1号機の申請書と併せてENECが2015年に、NAWAHエナジー社に代わってFANRに提出していた。これらの申請書は1万4,000ページにおよび、FANRは発電所サイトの分析を地理学や人口への影響等の観点から実施するとともに、発電所のレイアウトや原子炉設計、冷却系、安全対策、緊急時対策、放射性廃棄物管理など220項目以上をチェック。さらに59件の追加情報をENECに請求して発電所がすべての規制要件に適合していることを確認したほか、運転管理会社のNAWAHエナジー社についても、組織構造やマンパワーの準備状況など発電所の安全確保に必要な項目すべてを評価したとしている。

FANRの副会長を務めるアル・カービIAEA常駐大使は今回、「1号機に続き2号機で、再びUAEに歴史的瞬間が訪れた」と評価。「原子力発電開発利用プログラムにおける13年間の努力が実り、UAEはアラブ諸国として初めて商業炉を運転することになったが、これは将来的なエネルギー需要の増加に原子力の平和利用で対処するというUAEのビジョンとリーダーシップの賜物である」と強調した。

バラカ原子力発電所の建設進捗率は発電所全体で95%に達しており、完成した1、2号機のほかに3、4号機の進捗率もそれぞれ94%と88%。4号機では昨年5月に冷態機能試験が完了している。

(参照資料:FANRの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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