米国で建設中のボーグル3号機、温態機能試験を開始
27 Apr 2021
©Southern Company
米国で約30年ぶりの新設計画としてジョージア州で進められているボーグル原子力発電所3、4号機(各110万kWのPWR)増設計画で、4月26日から3号機の温態機能試験が始まった。
これは事業者であるサザン社の子会社で、同発電所を所有するジョージア・パワー社が同日に発表したもので、燃料の初装荷に先立って行われる最後の重要試験となる。ジョージア・パワー社は3号機の運転開始に向けて建設段階が大きく前進したと強調しており、完成すれば60年間から80年間にわたって顧客に信頼性の高い無炭素な電力を供給。サザン社が目標として掲げている「2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化」の達成においても、重要な役割を果たすとしている。
ボーグル3、4号機の増設計画では、米国で初めてウェスチングハウス社製のAP1000設計を採用しており、建設工事はそれぞれ2013年3月と11月に開始された。建設サイトでは2020年4月以降、新型コロナウイルスによる感染の影響を軽減するため、約9,000名の作業員数を約7,000名に削減したが、3号機については2020年10月に冷態機能試験が完了し12月には初装荷用燃料がサイトに到着。ジョージア・パワー社は今回の発表で両炉の運転開始スケジュールに触れていないが、地元ジョージア州の公益事業委員会が承認したスケジュール通り、3、4号機をそれぞれ2021年11月と2022年11月に完成させる方針だと見られている。
同社の発表によると、3号機の温態機能試験は完了まで6~8週間を要する見通し。燃料を装荷せずに、原子炉冷却ポンプ4台の熱を使って系統の温度と圧力を通常運転レベルまで上昇させ、原子炉機器や系統が正常に機能することを確認する。またこれにともない、主タービンの回転スピードも通常運転時のレベルまで上げる計画である。
なお、ジョージア・パワー社は同日、4号機の格納容器上部に重さ72万ポンド(約327トン)容量約75万ガロン(約2,840m3)の冷却水貯蔵タンクを設置したと発表した。重さのあるモジュールを、クレーンで吊り上げて設置する作業としては同増設計画で最後のもの。このタンクはAP1000における受動的安全システムの要として機能することになっており、万が一緊急事態が発生した場合、このタンクの水が重力で格納容器外面に流れ落ちるほか、状況に応じて原子炉の冷却を補助するための水源となる使用済燃料貯蔵プールへも給水可能。
同社によるとAP1000の先進的な安全システムでは、重力のほかにも自然循環や圧縮ガス等を動力として活用。ポンプやディーゼル発電機、送風機、冷却機といった電源を必要する機械をほとんど使用しないほか、運転員の介入なしでも緊急時の影響を最小限に緩和できるよう設計されていると強調した。
(参照資料:サザン社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)