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米TVA、ケイロス社製先進的原子炉の実証炉建設を支援 

07 May 2021

FHRの構造図©Kairos Power

米国のテネシー峡谷開発公社(TVA)は5月6日、原子力技術・エンジニアリング企業のケイロス・パワー社が進めている先進的原子炉「フッ化物塩冷却高温炉(FHR)」(電気出力14万kW)の開発について、低出力の実証炉建設に協力すると発表した。

この実証炉は「ヘルメス」と呼称されており、ケイロス社はテネシー州オークリッジにあるエネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」で同炉の建設を計画。今回の協力合意に基づき、TVAはケイロス社に対し原子炉のエンジニアリングや運転および許認可手続関係の支援を提供する。また、ケイロス社が「ヘルメス」を通じて、米国内の出力調整可能な電源としては最も手頃な価格でFHRを市場に送り出せるよう協力していく。

ケイロス社のFHRは、コンバインドサイクル発電とコスト面で競合可能な無炭素電源とするため商業化を目指している。冷却材として低圧の液体フッ化物塩を用いており、燃料には3重被覆層・燃料粒子「TRISO」を使用する。固有の安全性を保持したまま、電力と高温の熱を生成できると言われており、2002年にテネシー州にあるDOE傘下のオークリッジ国立研究所(ORNL)がFHRの概念を提案した後、これを元にMITやUCバークレーなどが個別の要素技術の研究を進めていた。

FHR開発についてはまた、DOEが2020年12月、リスクの削減を目指した官民によるコスト分担方式の「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」で、ケイロス社の「ヘルメス」実証炉を支援対象の1つに選定。商業規模のFHR開発につなげることを目標に、同プログラムにおける7年間の総投資額6億2,900万ドルのうち3億300万ドルをDOEが負担することになっている。

ケイロス社との今回の協力合意について、TVAのJ.ライアシュ総裁兼CEOは、「先進的原子力技術の進展に向けて、安全性や技術革新に関する当公社の見識をケイロス社と共有しつつ、先進的原子炉の許認可手続について経験を蓄積していきたい」と表明。「原子力はクリーンで信頼性の高い安価な電力によって米国経済を活性化するだけでなく、米国の国家安全保障にとっても重要だ」と強調した。

なお、米原子力規制委員会(NRC)は2019年12月、TVAがテネシー州オークリッジ近郊で管理しているクリンチリバー・サイトに対し、「事前サイト許可(ESP)」を発給した。このESPはTVAが2016年5月、複数の小型モジュール炉(SMR)で電気出力の合計が80万kWを越えないものの建設を想定し、NRCに申請していたもの。TVAは現在、同サイトで複数のSMR設計を建設した場合の潜在的な環境影響を評価中である。

(参照資料:TVAケイロス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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