英国のダンジネスB原子力発電所が永久閉鎖
10 Jun 2021
英国で稼働中の商業炉全15基を保有するEDFエナジー社は6月7日、南東部のケント州で40年近く稼働していたダンジネスB原子力発電所(61.5万kWの改良型ガス冷却炉:AGR×2基)を永久閉鎖し、直ちに燃料の抜き取り作業を開始すると発表した。
2018年9月以降、同社はダンジネスB発電所の停止期間を延長し、他の6サイト・12基のAGRには見られない同発電所に特有の重要な技術的課題の解決に取り組んできた。同社はすでにその多くを克服したが、新たな分析作業を詳細に実施したところ、同発電所では燃料集合体のパーツを含む主要機器のいくつかでさらなるリスクが認められ、同社はこれら2基の再稼働を断念。永久閉鎖を決めたとしている。
英国の商業炉には明確な運転期限が定められておらず、事業者は保有する原子力発電所で定期検査や10年に1度の大規模な「定期安全審査(PSR)」など、安全上の義務事項を履行。それらの結果に基づき、見直した当該炉のセーフティケース(安全性保証文書)の内容を規制当局が支持・承認すれば、無期限に運転継続することも可能である。
ダンジネスB発電所では1、2号機がそれぞれ1983年と1985年に送電を開始しており、これらの炉で当初予定されていた運転期間は2008年に満了した。そのため、当時同発電所を運転していたブリティッシュ・エナジー(BE)社は運転期間満了の3年前、これらを2018年まで10年間延長すると決定、同発電所で設備改修等を行っている。また、2009年にBE社を買収したEDFエナジー社も延長した運転期間の満了3年前(2015年)に、同発電所の運転を2028年までさらに10年間継続する方針を決定していた。
しかし、大規模な投資によって主蒸気配管など配管関係の腐食問題が解決した一方、ボイラーの材料物質を両炉で詳細に分析した結果、取り換えできない機器の劣化が予想より早く進行していることが判明。EDFエナジー社の幹部会や上級取締役会、株主総会等の協議を受けて、同発電所を永久閉鎖することになった。
同社によれば、ダンジネスB原子力発電所を含む国内7サイトのAGR発電所は、過去40年にわたり総発電量の約20%を供給してきた。ダンジネス発電所も2016年に過去最高の、約200万戸の電力需要量を供給。これまで英国内で約5,000万トンのCO2の排出を抑えるとともに、ケント州経済に対しては10億ポンド(約1,545億円)以上貢献した。
同発電所の閉鎖に関して、英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長は「英国では3年以内に原子力発電所が半減する可能性があり、新しい原子力発電設備に緊急投資が必要なことが浮き彫りになった」と述べた。「このように堅実な電源がリプレースされなければ、英国はガス火力に頼らざるを得ない」と警告しており、その場合、CO2の排出量が増加するとともに電気代も高騰、英国がCO2排出量の実質ゼロ化という目標を達成する日は一層遠くなる。「そうならないためにも、再生可能エネルギーと原子力に投資する道を選択し、環境重視の経済復興を果たすべきだ」と強調している。
(参照資料:EDFエナジー社、NIAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)