米イリノイ大、USNC社製MMRの建設に向け規制委に意向表明
01 Jul 2021
©USNC、UIUC
米イリノイ州のイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)は6月28日、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が開発中の第4世代の小型高温ガス炉「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」を将来学内で建設するため、原子力規制委員会(NRC)に「意向表明書(LOI)」を提出した。
UIUCはクリーンエネルギーの研究に加えて、人材育成用の研究・試験炉施設としても「MMRエネルギーシステム」を活用する。今回のLOI提出は、UIUCが今後MMRの建設許可をNRCから取得し、最終的に運転許可を得るための最初の正式手続きとなる。
MMRは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWの小型高温ガス炉だが、「MMRエネルギーシステム」は1~10万kWの熱や電気を生産する1基以上の「MMR標準型マイクロ・リアクター」と熱貯蔵ユニット、および熱を電気に転換する非原子力プラントを統合した「無炭素の発電所」となる。標準型マイクロ・リアクターは650度Cの高温熱を供給することが可能で、カナダにおけるUSNC社のパートナー企業グローバル・ファースト・パワー社は2019年3月、同炉の初号機をカナダ原子力研究所のチョークリバー・サイトで建設するため、「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会に申請した。
UIUCとUSNC社の今回の共同発表によると、USNC社は今後UIUC内のグレインジャー工科大学、および同大の原子力・プラズマ・放射線工学科と協力して、学内での「MMRエネルギーシステム」建設計画を推進する。MMRを備えた新しい研究・試験炉施設は、UNICのスタッフや学生に様々な研究の機会を提供。例として、計算科学の一分野であるマルチフィジックスにおける検証、原子炉のプロトタイプ試験、計装・制御(I&C)系、小規模送電網、サイバーセキュリティ、輸送とエネルギー貯蔵のための水素製造、およびその他のエネルギー集約型高価値生産品などを挙げている。
UIUCはまた、キャンパス近郊で保有するアボット石炭火力発電所を、部分的に「MMRエネルギーシステム」と統合する計画。既存の化石燃料発電設備における脱炭素化の加速を目的としたもので、「学内のCO2排出量を同量吸収させることで実質ゼロ化する構想」の一環として、学内建築物に対する熱電供給の無炭素化を実証していく。
UIUCはさらに、学内中心部でかつてGA社製の小型研究用原子炉「TRIGA」を保有していたことから、クリーンエネルギー研究の目標達成のほかに、「MMRエネルギーシステム」を次世代の原子力科学者やエンジニア、原子炉運転員など、原子力関係の人材育成に活用する。「TRIGA」は38年間稼働した後、1998年に閉鎖されており、UIUCは「クリーンエネルギー関係で新たな人材を教育訓練するには次世代のエネルギー研究施設が非常に重要だ」と強調している。
(参照資料:USNC社、UIUCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)