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中国で建設中の小型HTR、臨界条件を達成

15 Sep 2021

HTR-PMの中央制御室©華能集団公司

中国核工業集団公司(CNNC)は9 月13日、山東省栄成の石島湾で建設中の「ペブルベッド型モジュール式(PM)高温ガス炉の実証炉(HTR-PM)」(電気出力21.1万kW)」で、2基設置されているモジュールユニットの片方が12日の朝に初めて臨界条件を達成したと発表した。

 CNNCは、年内にも同機を国内送電網に接続する方針を表明。様々な利点を持つ高温ガス炉は、中国のCO2排出量を頭打ちにし(排出ピークアウト)実質ゼロ化(カーボンニュートラル)するという目標を達成する重要な道だと指摘している。同機の建設プロジェクトは、月面探査計画などとともに中国における16の主要な科学技術関係の国家プロジェクトの1つに指定されており、これによって高品質な原子力産業の開発を進め、国家の科学技術革新を促進していく考えである。

第4世代の先進的原子炉システムに分類されるHTRは固有の安全性を有するほか、高い発電効率と環境への適応能力を備えている。熱電併給や高温熱の供給が可能で商業的に幅広い用途に利用できることから、CNNCはHTRが中国のエネルギー供給を保証するだけでなく、供給構造の合理化にも貢献するとしている。

中国が開発したHTR-PM設計は、1つの発電機を電気出力がそれぞれ約10万kWのモジュールユニット2基で共有するというもので、建設工事は2012年12月に始まった。燃料には、黒鉛粉末を混合した燃料粒子を球状に圧縮成型し、炭化ケイ素(セラミック)をコーティングしたものを使用する。同機の建設プロジェクトでは今年3月までに冷態機能試験と温態機能試験が完了し、8月には国家核安全局(NNSA)が運転許可を発給、これにともない同機では燃料が装荷されていた。

HTR-PMでの臨界条件達成は、建設プロジェクトを主導する「華能山東石島湾核電有限公司(SHSNPC)」の関係者が多数見守るなかで行われ、SHSNPC に47.5%出資する華能集団公司や32.5%出資する(CNNC傘下の)中国核工業建設公司、20%出資中の清華大学から関係幹部が参加。同条件を達成した後は、これらの参加者による現地シンポジウムも開催された。

華能集団公司の発表によると、同プロジェクトでは今後、炉心と制御棒の性能を確認し原子力機器監視システムの有効性を確認するため、ゼロ出力で物理試験を実施する。また、送電網への接続に向けて、起動時や試運転時の各種試験により設計通りであることを確認する作業も継続する。

HTR-PMでは使用した実証工学機器の国産化率が93.4%に達しており、革新的技術を用いた機器は600点以上にのぼる。これには、ヘリカルコイル貫流蒸気発生器(OTSG)や高出力・高温熱の電磁軸受け構造を備えた主ヘリウム・ファンが含まれるとしている。

(参照資料:CNNC華能集団公司の発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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