キーワード:福島
-
day3 | 浜通り3days
10:00 富岡ホテルを出発! 施設名 富岡ホテル TEL 0240-22-1180 web https://www.tomiokahotel.jp/ 住所 福島県双葉郡富岡町駅前27 3日目のスタートはもちろん、富岡ホテルから。 富岡ホテルでは、宿泊者には朝食が無料でサービスされる。地元産の食材を中心に供され、和・洋食が選べるスタイルだ。ぜひ楽しんでいただきたい。 朝食を終えて準備を整え09:30にロビー待ち合わせのはずが、運転役のイシノリが一向に現れず。「あれ、時間まちがってましたっけ?」といった顔をして09:50に登場するというハプニングがありつつも、次の目的地大熊インキュベーションセンターへ出発である。 旅先での会話を読む 清潔感があふれ快適なシングルルーム 寝心地の良いセミダブルのベッド アツシ イシノリさん困ります!09:30だと昨晩お伝えしたはずです!プンプン! イシノリ ごめんごめん。 脳内で10:00に変換しちゃったみたいで、もうしわけない(笑) 寝心地がよくってさぁ。 アツシ まったくもう!本日もスケジュールはギチギチなんですからね。 とにかく出発いたしましょう! はーい 10:30 大熊インキュベーションセンター 施設名 大熊インキュベーションセンター TEL 0240-23-7721 web https://okuma-ic.jp/見学コースあり(事前予約) 住所 福島県双葉郡大熊町下野上清水230 大熊町立大野小学校の旧校舎を改装し、2022年7月、「大熊インキュベーションセンター(OIC)」として生まれ変わった。 浜通り地方に新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」。OICは大熊町における復興の要として位置づけられるだけでなく、同構想の一翼を担うべく、多くのスタートアップ企業が入居するビジネスセンターだ。 ピカピカに磨き上げられた校舎もとい建屋内部は、小学校の教室そのもののような部屋(中会議室)もあれば、プロジェクター、wifiなど高速ネット環境が整備され、web会議もこなせる部屋(大会議室)もある。誰もがふらふらっと集まりそうな共有スペースには売店もあり、AIが商品を判別し会計をするシステムも導入されている。コンビニのセルフレジのようにバーコードを読み取るのではない。商品そのものを読み取って判別しているという。これならばバーコードを付けない商品も気軽に売れるではないか!どういう仕組みかはわからないが。 このようにOICでは、懐かしの小学校と最先端のテクノロジーが同居している。 くわえて、シャワールームや休憩室も完備。わたしたちは思った。「住める」と。 若いスタッフさんが、施設内を案内してくださった。彼女はOICの運営を担当する東京の会社からの、いわば転勤組。「物価が安い!」などと大熊での生活のメリットを語っていただいたが、同時に「もうちょっと遅くまでコンビニが開いていれば...」というのも本音だという。 しかしこれから大熊町にはデータセンターが複数建設される計画もあるようで、続々と住民が増えつつあるようだ。OICの最寄り駅である大野駅周辺も、急ピッチで再開発が進んでいる。今度OICを訪れた際には、一体どれほどの進化を遂げているのだろうか? それを確かめるのも楽しみになってきた。 旅先での会話を読む アツシ いかがでしたか? 大熊町商工会の蜂須賀禮子会長イチオシの大熊インキュベーション・センターは。 イシノリ 正直に驚いた。 これまで福島関連の講演やプレゼンで、OICのことは耳にはしていたのだけれど、実際にこの目で見ると、想像のはるか上を行っていた。 テル 私もです。 これからの浜通り地方を考えるとき、帰還者だけでなく新たにやって来た移住者の視点も無視できなくなる、とお話ししましたけど、ここOICは典型だなと思いました。 多様な方々が大熊町に溶け込んでいます。 タケコ OICでは、昔からの小学校の教室と、最新設備を備えた会議室が同居しています。ここでも多様性を感じますね(笑) イシノリ タケコ、うまいな。 ある部屋にあった黒板に、チョークの殴り書きで“Data rules the world!”って書かれていたんだけれど、ここには純粋にそういった人たちが集まっているんだな、と認めざるをえなかった。それがいいとか、悪いとかでなく、不便なことを何とも思わない人たちが、何もないことを「ゼロから始めるようでやりがいがある」と前向きに言ってのける人たちが、集まってきているんだな、と思った。 国家プロジェクトの「イノベーション・コースト構想」は、何かハコモノを造って終わりじゃない。そこにいる人間も変えつつある、ということを肌身で感じて、ちょっと震えてる。 OIC正門は学校そのものだ。一行は懐かしさを憶えながらも、緊張の面持ちで門をくぐる 校舎入り口ならぬ、OICの建屋入り口 利用者が自由に過ごせる共有スペース バリエーションに富んだ共有スペースの本棚。左上にみえる「一発屋芸人列伝」が気になり、イシノリは帰京後に購入している 共有スペースには物販コーナーも 入居者が開発した無人販売システムで運営されている コワーキングスペースのデスク 廊下の掲示板をチラ見。とてもチラ見で済まされる内容ではなかった(笑) シャワー室の外には、マッサージ・チェアが。1台ごとにスペースが区切られている OICでは入居者同士の交流の場を、積極的にセッティングしている 教室そのものな「中会議室」 最新設備をまとった「大会議室」 町内での新しいモビリティ(移動手段)を模索する試みも 快適な施設に思わず「ここからテレワークしたい...」と本音が テル 私はOICでテレワークしたいですね。 アツシ アタクシもこちらの充実した福利厚生ぶりに、大いに惹かれました。 マッサージ・チェアの置かれた休憩スペースなんて、アタクシの東京の部屋よりも広いかもしれません! タケコ スタッフさんが、あとは病院やスーパーが遠いのがなんとかなれば、とコボしてましたね。 イシノリ なんとかなる、いや、なんとかしそうだよねあの人たちは。 福島ロボットテストフィールド(RTF)で見たドローンが宅配してくれたり、自動運転のバスが周ったり。OICに思わせぶりにいろいろな乗り物が置いてあったけど、何か革新的なモビリティが生まれそうな気がする。 アツシ さ、お名残り惜しいですが、そろそろ次の目的地へ移動しますよ。 実はもう10分押してます。 はーい 11:30 震災遺構 浪江町立請戸小学校 施設名 震災遺構 浪江町立請戸小学校 TEL 0240-23-7041 web https://namie-ukedo.com/見学コースあり(事前予約) 定休日 火曜 営業時間 9:30~16:30 住所 福島県双葉郡浪江町請戸持平56 請戸小学校は、東日本大震災による津波の被害を受けたが、全員が無事に避難することができた奇跡の小学校として知られている。倒壊を免れた校舎に刻まれた脅威と、全員避難することができた経験を伝えるため、2021年10月より震災遺構として一般公開されている。 校舎の窓ガラスの多くは窓枠ごとなくなっており、残った数少ない窓枠は変形していることから、津波の強さがうかがえる。また、東日本大震災時の津波浸水高さの看板が校舎に貼り付けられており、1階天井の高さ以上に津波が押し寄せたことがわかる。 旅先での会話を読む テル 実際に津波の惨状を目の当たりにし、言葉を失いました。 先生も生徒も誰一人欠けることなく1.5kmも離れた大平山へ避難されたわけですから、心の底から安堵しました。 タケコ 実際に目にしてカラダが震えました。 1階部分の壁は、剥がれ落ちてました... 校舎の1階部分は、窓はおろか壁も失われているところも 校舎2階部分に「津波高さ」を示す看板が見える 校舎の1階の様子 校舎2階の黒板 アツシ 東日本大震災による津波の映像はテレビのニュースなどで見ておりましたが、実際に惨状を目の当たりにすると言葉を失います。見聞きして知っていたことでも、現場で自分の目で見ると、津波の被害を知った気になっていたことに気づかされました。 イシノリ 2階の教室の黒板に、行方不明者の捜索に当たった自衛隊や警察、消防、建設業者さんたちからの励ましの言葉や、卒業生たちからのメッセージが残されてました。 「負けんな!」「頑張れ!」と白チョークで力強く書かれた文字が目に飛び込んできました。 多くの方に震災遺構となった請戸小学校を訪れていただき、私の言葉だけでは表現できない多くのことを、感じ取っていただきたいです。 アツシ ええ。多くの方にご自身の目で見に来ていただきたいですね。ではそろそろ次へまいりましょう。 10分押してます。 はーい 12:10 ファミリーマート双葉町産業交流センターS(サテライト)店 店名 ファミリーマート双葉町産業交流センターS(サテライト)店 TEL 0240-25-8026 営業時間 7:00~20:00 住所 福島県双葉郡双葉町中野高田1-1 これは行程を組んだ時点からわかっていたことなのだが、どうしても請戸小学校から中間貯蔵工事情報センターへ行く途中で、ランチを取る時間が取れなかった。 そういう時は、みんな大好きコンビニの登場である。 お邪魔したのは、双葉町産業交流センター(F-BICC)に入っているファミリーマートさん。お隣には昨日お伺いした「東日本大震災・原子力災害伝承館」があるという立地環境だ。 これまたお昼休み真っただ中に到着したため、コンビニは都内のコンビニ同様に大混雑であった。浜通りではもう、こんな当たり前な光景が、当たり前に展開されている。 旅先での会話を読む テル ファミリーマートさんには助けられましたね。こちらで各自昼食を購入し、F-BICCの飲食可能スペースでいただきました。 タケコ こちらのコンビニでは福島県の桃ジュースなども販売されてました。お土産の追加購入にも利用できますね(笑) イシノリ ただし、営業時間は7:00~20:00と24時間営業ではないので注意が必要です。 アツシ 近くのビジネスホテル「ARM双葉」さんへ宿泊する際には、気をつけたほうがいいかもしれませんね。 さ、それでは次へ急ぎますよ!すでに10分押してます。 はーい 12:45 中間貯蔵工事情報センター 施設名 中間貯蔵工事情報センター TEL 0240-25-8377 web https://www.jesconet.co.jp/interim_infocenter/見学コースあり(事前予約) 定休日 日曜日/月曜日 営業時間 10:00~16:00 住所 福島県双葉郡大熊町小入野向畑256 一般に原子力業界で「中間貯蔵施設(interim storage facility)」というと、一時的に使用済み燃料を貯蔵しておく施設のことを指す。だがここでいう「中間貯蔵施設」は、福島第一原子力発電所事故の除染作業により発生した土壌等を最終処分するまでの間、安全かつ集中的に貯蔵するための施設のことである。 中間貯蔵施設は大熊町および双葉町に整備されており、福島県全59市町村のうち52市町村から除去土壌等を貯蔵している。かつて福島県内には1,400か所の除去土壌等の仮置場があったが、2022年度中にほとんどの除去土壌等を中間貯蔵施設に運び入れた。現在は、飯館村、南相馬市、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町からの除去土壌の運び込みが引き続き行われている。2024年8月末時点において、1,393万㎥の除去土壌等を中間貯蔵施設に運び入れており、東京ドーム11杯分の容量となる。2045年3月までに福島県外で最終処分することが決まっているが、その場所はまだ決まっていないのが実情である。 県外での最終処分に向けては、除去土壌等のボリュームを減らすこと(減容化)が重要となる。減容化の方法としては、放射能濃度が比較的低い除去土壌等を道路整備等で盛土(下地材)として利用することが挙げられる。除去土壌等の約73.2%を占める8,000ベクレル/kg以下の土に関しては、再利用できると考えられており、中間貯蔵施設の敷地では、除去土壌等を実際に道路の盛土として使用し、放射線の遮へいや耐久性を検証している。 ここ中間貯蔵工事情報センターは、中間貯蔵施設工事(特に除去土壌等の輸送や施設整備工事)について、その概要、工事の進捗状況、安全への取組等を紹介するPRセンターだ。月に何度か、中間貯蔵施設見学会も開催されており、事前に予約すれば中間貯蔵施設を見学することが出来る。 今回我々が参加したのも、こちらの見学会である。 センターで概要の説明を受けた後、用意されたマイクロバスに乗って、中間貯蔵施設や盛土の実験施設等を見学する。中間貯蔵施設の管理区域に入る際には、警備員がバスに乗り込み入域者に身分証明書の提示を求め本人確認が行われる。 コースにもよるが、2~3時間はかかると想定して行程を組むとよいだろう。 国道6号線が中間貯蔵施設の西側の境界線であり、東側には中間貯蔵施設などが位置しており、ゲートで入域管理を行っている。中間貯蔵施設は、大熊町の14%、双葉町の10%の敷地を占めている。震災前は950世帯2,700人が住んでいたが、住民の8~9割の方が先祖伝来の土地を国に譲ってくださり、中間貯蔵施設が整備された。 なお、中間貯蔵工事情報センターは2025年3月に、大野駅近郊へ移転する計画がある。大野駅が復興再生拠点区域になることから、大きな建物かつ人が集まりやすいエリアへ移ることで、より多くの方に中間貯蔵施設や最終処分の課題を知ってもらうのがねらいだ。 旅先での会話を読む テル 大変勉強になる見学会でした。「中間貯蔵施設」といっても、土壌貯蔵施設、受入・分別施設、減容化施設、廃棄物貯蔵施設に分かれているとは、これまでまったく意識しておりませんでした。 タケコ しかもすでに仮置場に置かれていたほとんどの除去土壌等は、中間貯蔵施設への運び入れを完了しており、これまでの大規模な受入・分別施設は解体されています。 今後運び込まれる土の量はかなり減りますので、大規模施設ではコストがかかり過ぎてしまい、建て替えた方がコストを抑えられるとの判断だそうです。 イシノリ 減容化施設では、フレコンバックや可燃物を焼却します。煙突にフィルターがあり、放射性物質が飛散する心配はありません。その後さらに出てきた灰を1,500~1,800℃の高温で溶かします。最終的な灰の残りかすは、煤塵、スラグ、メタルの3つです。このうち「スラグを再利用できないか」、ということになり、道路盛土実証事業で検討しているそうです。 アツシ 廃棄物貯蔵施設では、減容化施設で発生した灰の残りかすを鋼製の角形容器(1.3m×1.3m×1.0m)に封入して貯蔵されます。施設のサイズにもよりますが、約15,000個または約30,000個の鋼製の角形容器を貯蔵できるそうです。 国道6号線沿いに大きく看板が立つ。こちらが入り口である マイクロバスに揺られて最初に案内されるのが、地元で信仰されている鎮守神 足元の「土壌貯蔵施設」の構造を説明 もちろん数値は問題ない 手前の整地された小山が「土壌貯蔵施設」。奥に福島第一サイトが見える 「道路盛土実証エリア」では除去土壌活用のため、幹線道路を模したスロープのある道路を作っている テル ご案内いただいた正八幡神社は、平安後期に創建されたそうで。震災で鳥居が倒壊してしまったのですが、氏子の皆さんによって再建され、復興祈念碑が設置されていました。 祈念碑には、「長きに亘りこの地を離れることを強いられるが、(中略)再び、人々の営みが蘇ることを願い、この鳥居を建立する」と刻まれており、地元の鎮守神として、多くの方々から愛されているのだということがよくわかりました。同時に、地元の方々がどのような思いで先祖伝来の土地を手放したのかも、痛いほどわかりました。 タケコ 地元の方々の思いに応えて、1日でも早い最終処分場の決定に向け、真剣に考えていきたいです。 そのためにも、道路の盛土に除去土壌を活用するための検証が、もっと進んでほしいです。 アツシ 除去土壌の多くは田畑の土ですので、水分を多く含んでいます。道路盛土実証エリアでは、50メートルある道路を半分に分け、それぞれの盛土を、①除去土壌のみ、②除去土壌にスラグや生石灰を混ぜ合わせたもの──にわけて、耐久性の違いを検証しているそうです。 テル 環境省さんが、新宿御苑などで除去土壌等の再利用の実証事業を検討していたのですが、住民説明会で周辺住民の意見もあり、難航しているようです。 タケコ 福島第一原子力発電所の電気を使用していたのは東京・関東圏なので、東京の人からの否定的な意見は残念ですね。 イシノリ 子供のころから東京に住んでいないと、わからないのだと思います。東京がどれだけ地方にお世話になっているのかということを。 小学校の社会科の授業で習うのですよ。たとえば私の住んでいた千代田区の麹町というエリアでは、「電気は福島。水は朝霞(埼玉)」と習いました。すごくおおざっぱだとは思いますが。 テル 理解が広がるよう、我々も情報発信を頑張らないといけませんね。 むしろ今現在東京で育っている次世代層の方が、よく理解しているのかもしれませんよ。 タケコ ちなみに、見学終わりのバス降車時に、GM計数管式サーベイメータで見学者の靴裏の表面汚染を測定します。 測定値は最大で150cpmで、除染が必要となる13,000cpmを大きく下回りました。なお比較対象として計測したほかのものは、塩=220cpm、肥料=258cpm、花崗岩=156cpmでした。 アツシ 全く問題のない数値ですね。 最終処分場が早く決まり、浜通りの方々が1日でも早く安心できることを祈念しつつ、我々も帰ることにいたしましょう。ここで得た多くの思いを皆に伝えないと。 すでに10分押してます。 はーい 17:40 福島駅に到着 施設名福島駅住所福島県福島市栄町1-1 3日間の旅もいよいよフィナーレ。ちょっとした距離を走行し、「福島駅」へ帰還である。運転担当のイシノリが「運転していただけなのに、なんだか全身が気ダルい」とコボしていたので、くれぐれも無理のない行程を組んでいただきたい。レンタカーを「福島駅」ではなく「いわき駅」に返却してJR常磐線で帰るという手もある。 なお夕方の上り新幹線の窓側座席は、高確率で埋まっていることが多い。ここでちょっとしたTipsなのだが、「やまびこ」の車輛ではなく、「つばさ」の車輛を狙うと窓側席が比較的空いている、ような気がする。そう、福島駅では東北新幹線の車輛に後ろから、山形新幹線の車輛が連結されるのである!と、鼻息荒く語ったところで鉄道に関心のない層にはあまり響かないかもしれないが、知っておいて損はないだろう。や、それくらい帰りの新幹線は混んでいますぜ、という話なのであります。 旅先での会話を読む テル みなさん、3日間おつかれさまでした。 さきほど高速道路へ乗る前に立ち寄った「帰還困難区域」のゲートですが、だいぶ少なくなったとはいえ、まだこうしたエリアが残っていることを私たちは忘れてはいけないと思いました。 イシノリ 記事の中で「帰還困難区域」のゲートを前面に出すと、「復興は未だ遠し」との印象になる。一方で大いに変わりつつある浜通りの新しい動きを取り上げると、「新しい福島」をアピールすることができる。そのどちらも現実だというのが、状況をとても複雑にしているような気がしています。 でも今回の取材で、「前向きに取り組んでいる人たちがいるかぎり、我々も臆することなく前向きな姿勢で臨もう」との、強い決意を固めることができました。 タケコ はい。今回多くの若い方々に出会いましたが、地元の出身であろうとなかろうと、みなさん、生まれ変わる浜通りを夢見て懸命に取り組んでいらっしゃいましたよね。 そういった方々を前にして、これを応援しないという選択肢はありませんよね。 テル おっしゃる通りですね。帰還できない方々がいらっしゃることも認識しつつ、それでも浜通り地方の新しい取組を大いに応援したい、そんな思いでいっぱいです。 原子力産業界としても率先して浜通り地方を訪問し、新しい浜通り地方を世界へ発信していってほしいですね。 アツシ 浅野撚糸の浅野社長のセリフではありませんが、世界はまだまだ「福島」という言葉の響きを誤解しています。実際に現地を自分の目で見て、自分の足で歩き、その体験を周囲に伝えていってほしいですね。 アタクシ、4月の原産年次大会以降、今回のツアー企画実現を夢見ておりました。こうしてようやく達成できて、感無量であります。 是非とも産業界の皆さんにもご賛同いただき、いろいろな「浜通りツアー」に挑戦していただきたいです。3日間、おつかれさまでした! おつかれさまでした!楽しかったですね(笑) 1日を動画で見る
- 25 Jan 2025
- CULTURE
-
day2 | 浜通り3days
08:40 ほっと大熊を出発! 施設名 ほっと大熊 TEL 0240-23-5767 web https://okumakouryu.jp/hotokuma 定休日 なし フロント営業時間 6時00分~22時00分 住所 福島県大熊町大川原南平1207番1 2日目のスタートは宿泊させていただいた「ほっと大熊」から。まずは近所のコンビニ(7:00~20:00)で朝食を買い、腹ごしらえ。コンビニは、「ほっと大熊」の目の前にある「おおくまーと」に入居している。 同一エリアに開設された宿泊温浴施設「ほっと大熊」、商業施設「おおくまーと」、交流施設「linkる大熊」の3施設は、大熊町の交流ゾーンとして、帰還者や新規移住者をはじめ、町を訪れる方々との交流が盛んになることで、町の復興をより一層進めることが期待されている。実際に来てみると、存分にその役割を果たしていることがわかる。 旅先での会話を読む アツシ 「ほっと大熊」ではプラス350円で朝食(おにぎりのセット)をつけることもできます。もちろん近所のコンビニで、好きなものを購入してもいいですね。 タケコ ちなみにお部屋は、1~2名が宿泊できる洋室が8室、2~4名が宿泊できる洋室が4室、5~12名が宿泊できる和室が1室、ご用意されています。 朝ご飯を共有スペースへ持ち込んでもいい 落ち着いた内装の共有スペース テル 実にいいお部屋でした。平屋ですので天井も高くて、リラックスできましたね。 イシノリ リビングルームで団欒できますし、ご家族連れにも最適ですね アツシ さぁ今日もスケジュールが山盛りです。張り切って参りましょう。 はーい。 09:00 東日本大震災・原子力災害伝承館 施設名 東日本大震災・原子力災害伝承館 TEL 0240-23-4402 web https://www.fipo.or.jp/lore/ 研修コース あり(事前予約) 定休日 火曜日 営業時間 9時00分~17時00分 住所 福島県双葉郡双葉町中野高田39 東日本大震災・原子力災害伝承館は2020年9月に開館。2024年7月には来館者数が30万人に達した。原子力産業新聞ともなじみの深い、長崎大学原爆後障害医療研究所の高村昇教授が館長を務めている。 地震、津波、原子力発電所事故という複合災害をテーマにした施設。事故発災当時のリアルな状況が分かる展示物が多く展示されており、多くの人が涙をこらえられない。学校に飾られていたお習字の「原子力の利用」という文字や、町に掲げられていた原子力広報の文字パネル「原子力 明るい未来のエネルギー」が掲示されていた写真を見ると、原子力発電は地元の方々のご理解の上に成り立っていたことが、再認識できるだろう。 展示されていた写真に添えられた「震災に終わりはないから、これからもずっと思い続けます」という言葉が印象的だ。震災で悲しい体験をした方々の気持ちに寄り添った形で、町の復興が進むことを切に願う。 伝承館では、個人来館者向けに毎日4回、語り部講話(40分)が実施されているが、スケジュールの都合上、我々は聴講していない。聴講する場合、滞在時間を2時間弱程度確保しておいた方がよい。 旅先での会話を読む アツシ 私はここ(伝承館)には何度も来ているのですが、子供たちが書いた「原子力の利用」という書道の文字を見ると、原子力に対して理解を示してくれていた地元の方々のことを思い、胸が苦しくなるんです。なんだか申し訳なくて。 テル わかります。それもあってわたしたちは浜通りに来ても、東京電力さんの廃炉資料館ばかりに足が向いてしまうのかもしれません。 イシノリ 廃炉資料館で技術的な課題を認識して、そこだけに意識を集中した方が、気持ちは楽ですからね。 テル 本当はもっともっと、こちらの伝承館に来て、浜通り地方の背景のようなものを知っておくべきだと思いました。 「復興」「復興」と口にするのだったら、コミュニティについても知っておくべきでした。反省です。 学校生活の展示物が 郷愁と涙を誘う 看板のレプリカも屋外に展示されている イシノリ 原子力の標語看板、胸にズシリとくる... テル 原子力広報の標語を掲示したパネルはもともと、公民館があった国道6号線に沿った場所と、双葉町役場庁舎前に設置されていました。ですが設置から約30年が経過し、老朽化し倒壊の危険が生じたため2016年に撤去されました。 伝承館にあるパネルは、レプリカです。 アツシ 福島県の内堀知事によるメッセージが展示されておりましたが、「光と影が入り交じる福島のありのままの姿をしっかりと受け止め、前へと進んでいく」とありました。なかなか印象深かったです。 タケコ 「風評」をテーマにした展示も、考えさせられました。 農林水産業や観光への影響が、いまだに根強いようです。わたしたちも頑張らないとと思いました。 アツシ 立ち去りがたいですが、すでに10分押してます。 はーい。 10:30 ワンダーファーム 施設名 ワンダーファーム TEL 0246-85-5105 web http://www.wonder-farm.co.jp/ 定休日 月曜日 営業時間 9:30~17:00 住所 福島県いわき市四倉町中島広町1 常磐道「いわき四倉インター」を降りて直ぐという便利な場所にあるワンダーファーム。ショップ、トマト狩り施設、バーベキュー、レストランおよびドッグランが併設されている。県内外からの多くの来訪者があり、我々が訪問した日もバーベキュー施設は満席だった。 ショップ「森のマルシェ」では、ミニトマトの量り売り、トマト製品、福島県のお土産などが並べられていた。売上No.1は、令和4年度ふくしま満天堂グランプリを受賞した商品の「とまと味噌」とのこと。同商品を、福島県・内堀雅雄知事がPRするポップが置かれ、試食も可能となっている。 原子力産業新聞では以前、ワンダーファームの元木寛代表にインタビュー取材を実施したことがある。今回の訪問では、元木代表にはお会いできなかったが、快く施設内外での写真撮影を快諾していただいた。 旅先での会話を読む テル お味噌もジュースも、試食および試飲もさせていただきました。もちろん即座にお買い上げですよ。 アツシ 「とまと味噌」は、いわき市のフラガールトマトを使用した調味料で、トマトの酸味が味噌に加わることでまろやかに仕上がっています。 タケコ 塩分が控えめのため色々な料理に合いやすく、炊き立てのご飯はもちろん、お肉・野菜炒めなどにも使えますね。 トーストに「とまと味噌」を塗り、チーズをのせて焼くと、ピザトーストになりますよ。 いろいろと試食させていただきました。ごちそうさまでした! 広い敷地内にはBBQエリアも イシノリ テルさんが相当気に入っていた100%トマトジュースの「ワンダーレッド」ですが、想像を超えるトマト感でしたね(笑) テル 「ワンダーレッド」は、サンシャインというトマトを収穫後1週間以内に絞っており、もちろん食塩不使用。トマト本来の甘みを味わえ、スッキリとした後味で美味しかったですね。 アツシ 食塩が入っていないので、トマトジュースが苦手な方でも飲みやすいかもしれませんね。 なお、トマト狩りは、土日および祝日に、夏休み限定で開催されています。 テル ぜひご家族でお越しください! イシノリ あ、そういえばあのトマト神社って、なんだったんだろうね? タケコ あそこだけ唐突、というか、不思議な空間でしたね(笑) なにか由緒があるのでしょうか? レストランもある どこでもドア?の先に、謎のトマト神社 アツシ おっと、その手の話はこの辺で。すでに10分押してます。 はーい。 12:10 いわき・ら・ら・ミュウ 施設名 いわき・ら・ら・ミュウ TEL 0246-92-3701 web https://www.lalamew.jp/ 営業時間 9時00分~18時00分 住所 福島県いわき市小名浜辰巳町43-1 ランチは小名浜にある「いわき・ら・ら・ミュウ」でいただく。小名浜港に隣接した観光物産センターである。巨大な道の駅を想像してもらえばいいだろう。施設内にはお土産の海産物はもちろん、魚介類を扱う多くの食堂が立ち並んでいる。 このエリア一帯は、水族館「アクアマリンふくしま」などもあり、福島県でも屈指の観光スポット。食堂にも「東京から高速バスで来た」という若者たちが、平日にもかかわらず数多く押し寄せ、賑わっていた。 さて、ここ小名浜の食堂の特長はと言えば、「ドカ盛り」である。行って見て驚いたのが、食堂がどこもかしこも(と言っては言い過ぎかもしれないが)ドカ盛りなのだ。 今回お邪魔したのは「いくらの大五郎」さん。店頭からいきなり海鮮丼のタワー盛りを推しており、我々の胃袋に挑戦状を叩きつけてくる。受けて立とう。というわけでこちらを実食である。 各種メニューがドカ盛りのレベルごとに、1丁目から4丁目までわかれており、4丁目が最大級である。そして案の定、アツシが「かに・いくらタワー丼」4丁目を顔色も変えずにペロリと完食。すると店員さんが駆け寄ってきて「昨日から食材の量を増量したばかりで、完食された方の写真を飾りたい」とのこと。光栄であります。 ちょっとした芸能人ばりに写真をパシャパシャ撮られて、アツシはニコニコ。「あの量をこんなにきれいに食べていただけるとは!」と、店員さんも写真を撮りながらニコニコ。お店のオーナーである仲卸「丸秀水産株式会社」の森田裕会長も「最近は東京や神奈川から多くのお客さんが来てくれている。『(ALPS)処理水』放出でお客さんが来なくなるかと心配したが、たくさんのお客さんが来てくれるようになって本当にありがたい」とニコニコ。 みんなニコニコなランチタイムなのであった。もちろん海鮮は間違いのない美味しさですよ。 旅先での会話を読む イシノリ いやはやすごいな小名浜は。どこもかしこも「ドカ盛り」だらけ。 タケコ そうじゃないお店もありましたけどね。 みなさんが大盛のお店にばかり吸い寄せられてましたね... アツシ いえいえ。ここ小名浜は「ドカ盛り」で突き進む決意を固めたんですよ。アタクシには、その気持ちよくわかります! イシノリ おお、さすが写真を小名浜に飾られている男、アツシ。 言葉の重みが違う。 テル 実際、高速バス等でお越しの東京の若者たちは、「ドカ盛り」目当てでしたね(笑) もちろん海鮮ですので、いずれもお安くはないのですが、なかなかみなさん見上げたものです。 イシノリ 覚悟を決めた者が一心不乱にどんぶりに向かう姿は、神々しいですな。 店頭の壁面に写真付きのメニューが並ぶ 覚悟を決めた猛者たちが、暖簾をくぐり、食券機に向き合う イシノリ でもここの海鮮丼、サービスしすぎなんだよ。途中から会話がなくなったもの。 2丁目くらいがちょうどいいかな。 タケコ 私は1丁目でも、いっぱいいっぱいでした... タケコの「甘海老・かに丼」1丁目。なかなかの盛り具合で早くも不穏な空気が漂う テルの「いくら丼」2丁目。流石にいくらは積み上がらない(笑) イシノリの「トロサーモン・いくらタワー丼」3丁目。キナ臭くなってきた アツシの「かに・いくらタワー丼」4丁目。写真ではうまく伝わってこないが、圧巻のボリューム ゴキゲンな森田会長 メガネを外し、キメ顔で写真撮影に臨むアツシ タケコ 丸秀水産の森田会長、大変お喜びでしたね(笑) イシノリ 大食いは見ていて気持ちいいから。 あそこまで喜んでいただけると、大食い冥利に尽きるね。 テル 森田会長から「ALPS処理水放出は来客数へほとんど影響がない」、と言っていただけて、ホッとしましたね。 アツシ 私たち以外にもお客さんが大勢いらっしゃいましたね。ですが「いわき・ら・ら・ミュウ」はキャパが大きいですから、もっともっと多くの方にいらしていただかないと! イシノリ 小名浜の海鮮を食べ尽くす勢いで。 アツシ 食べ過ぎて苦しくなってまいりましたが、もう10分押してます。 はーい。 14:40 道の駅 ならは 施設名 道の駅 ならは TEL 0240-26-1126 web https://www.michinoeki-naraha.jp/ 営業時間 9時00分~21時00分 住所 福島県双葉郡楢葉町山田岡大堤入22-1 「道の駅ならは」は2001年6月に福島県7番目の道の駅としてオープン。東日本大震災後は営業を休止し、双葉警察署の臨時庁舎として利用されていたことを、憶えていらっしゃる方も多いだろう。道の駅は2019年4月より、営業を再開している。 道の駅ならはには、フードコート、温泉施設があるほか、物産館も併設している。物産館では、お土産の雑貨やお菓子が品揃え多く並べられているほか、地元の野菜や日用品も販売されている。 アイスショップ「ウィンディーランド」では、楢葉町産の手作りジェラートを販売している。なお「ウィンディーランド」は次の目的地、天神岬スポーツ公園にもお店を構えている。 旅先での会話を読む テル 浅野撚糸のスタッフさんに「とにかく桃が美味しい!」と言われていた影響もあり、「白桃クッキー」を購入しました。ほかにもいろいろとお土産を買わせていただきました。 アツシ アタクシは「ほっと大熊」でのウェルカム・サービスでいただいた、イチゴの飲むこんにゃくゼリー「おおくまベリー」を購入しました! タケコ 私は楢葉の「ゆずコロッケ」を食べるのを楽しみにしていましたが、おなかがいっぱいで何も食べれませんでしたorz イシノリ お昼に食べた海鮮丼がジワジワと効いてきてるのよね。クルマのシートベルトのせいなのかもしれないけれど。 ジェラートを食べたいのだけれど、ちょっとまだおなかが許してくれないようなので、次に行く天神岬で食べようっと。 道の駅の目玉、地元産の野菜もゴロゴロ タケコが食べ損ねた「ゆずコロッケ」 浜通りのお土産はたいてい置いてある もちろん楢葉産のものも アツシ さぁさぁ買い物も済んだことですし、次へ参りましょう。 実はもう10分押してます。 はーい。 15:25 天神岬スポーツ公園 施設名 天神岬スポーツ公園 TEL 0240-25-3113 web https://naraha-tenjin.net/ 定休日 不定休 住所 福島県双葉郡楢葉町大字北田字上ノ原27-29 海岸沿いの崖の上に広がる広大な公園。展望台からは太平洋を一望できる。南方に目を向ければ、JERA広野火力発電所を見ることができる。 スポーツ公園と名付けられただけはあり、アウトドア方面のアクティビティにはうってつけの公園だ。クルマでやってきてキャンプをするもよし。サイクリングのベースキャンプとしても活躍する宿泊施設やレストランもある。 イシノリは2018年にこちらの宿泊施設「展望の宿 天神」に宿泊したことがあり、「レストランで食べた夕食が実に美味しかったことが忘れられない」そうだ。というわけで今回はイシノリの強いススメでお邪魔したのであった。 旅先での会話を読む イシノリ 天神のご飯をあわよくばもう一度!と思ったのだけれど、おなかがパンパンに膨れている上に、15時台というハンパな時間。レストランは営業を終了しておりました。もちろん宿泊客は夕食を食べられますので、お越しになる方は、こちらに宿泊して夕食を食べるスケジュールを組むことを、強くおすすめしますデス。 今回はジェラートだけ食べることが出来ました。 アツシ ジェラート、美味しかったですねぇ。「ウィンディーランド」はこちらが本店なのかしら?可愛らしい一軒家のイタリアン・ジェラート屋さんです。 テル イタリアンとはいえ、完全に純・楢葉産です。 たとえばジェラート「楢葉の風」は、日本酒「楢葉の風」の酒粕を使用しています。 タケコ ジェラート「ホワイトいちじく」は、楢葉町の農家が育てた皮ごと食べられるいちじくをジェラートにしたものだそうです。 すっきりとした甘さで美味しかったです。 あいにくの空模様だったが、壮大な景色が楽しめた お子様が楽しめる遊具もある イシノリ この公園はお天気が良くないと良さが十分に伝わらないと思うので、ぜひ皆さんもご自分の目でご確認ください! テル ドッグランもありますよ。 アツシ おっと、また一雨来そうですので、そろそろおいとましますか。 実は10分押してます。 はーい。 16:30 富岡ホテルにチェックイン! 施設名 富岡ホテル TEL 0240-22-1180 web https://www.tomiokahotel.jp/ 住所 福島県双葉郡富岡町駅前27 原子力関係者の多くが耳にしたことがあるであろうホテルが、「富岡ホテル」である。富岡駅前に立地し、交通面でのアクセスがいい。ホテルから10数分歩けば、ショッピングセンターの「さくらモールとみおか」がある。 なお、「さくらモールとみおか」内のフードコートは、ランチのみの営業であることに注意が必要だ。さくらモール内のスーパーマーケットは、19時まで営業している。 ともすれば「泊まるだけ」になりがちなビジネスホテルだが、日没前であれば強くおススメしたいのは、お散歩である。震災後の富岡駅前の風景を映像等で目にしたことのある人も多いと思うが、再整備された駅周辺を自分の足で歩くと、何かしら感じるものがあると思う。 さて「富岡ホテル」だが、館内は清潔で、至極快適に過ごせる。事前の予約が必要だが、宿泊者以外でも、食堂で昼食をとったりテイクアウト用のお弁当を御用意していただけるので、視察団等の編成の際にはとても助かる。 またフロントのスタッフさんが大変親切である。困ったことがあると、親身になって対応してくださる。今回は大いに助けられた。ありがとうございました。 旅先での会話を読む アツシ ハイ!アタクシ、やらかしてしまいました。 富岡ホテルの公式サイトからネット予約していたのですが、実は予約に不備があり... テヘペロ タケコ フロントのスタッフさんの親身なご対応のおかげで、助かりましたね(笑) アツシ 助けられました! 感謝感激であります! イシノリ ここは深く突っ込まないのが、武士の情けですな。 海も近い こうした予期せぬ絶景に出会えるのも、お散歩の醍醐味 テル 私は踏切を渡って海の方まで歩いてきました。途中の道路工事の現場を通り過ぎると、美しい太平洋が広がっていましたね。 タケコ 私も海まで歩いてきました。 津波が来たことも承知してはいるのですが、海が静かで、とても美しい景色に感じました。 アツシ 駅前のロータリー周辺もきれいに再整備され、生まれ変わりましたね。 駅舎では、地元産の食材を販売する「マルシェ」のようなスペースが開かれていました。 イシノリ 2015年に取材で富岡駅周辺を撮影したことがあります。倒壊した駅舎の鉄骨部に、ステッカー(?)のような白地に墨書きで「富岡は負けん」と書かれていました。 その時の感極まるような感情が長いこと脳裏から離れなかったのですが、生まれ変わった駅前のロータリーを歩き、ここまで復興させた富岡のみなさんに喝采を送りたくなりました。 アツシ そろそろおなかもすいてきました。夕食のお店を探しましょうか。実はもう10分押してます。 はーい。 17:30 串揚げ居酒屋 串誠 店名 串揚げ居酒屋 串誠 TEL 0240-23-6360 web https://kushisei.com/ 定休日 日曜日 営業時間 16時00分~22時00分 住所 福島県双葉郡富岡町駅前21 こちら「串誠」さんは、富岡ホテルの斜め前に立地する。 富岡駅周辺は、徒歩圏内に夕食をとることのできるお店が数か所しかない。そのため予約はマストである。 事前に予約をして入店。案の定、食事をしているうちに店内は満席となった。店内は大賑わいで、あちこちから楽し気な声が響く。「被災地」という勝手なイメージで来店すると、度肝を抜かれるであろう。都内の居酒屋とまったく同じ光景である。 タブレット端末から注文するスタイル。メニューは、串揚げ以外にも、お刺身、サラダ、肉吸い、煮込み、スペアリブ、プリンなどバリエーション豊富である。 お会計も今風に支払機にて。支払い方法も豊富で、QRコード決済も可能だ。 旅先での会話を読む テル いや予約取れてよかったですねぇ。あやうく夕食難民になるところでした。 アツシ そうなんですよ。実はアタクシ、これまで海外の方々の随行で何回かこのお店を利用しておりまして。 ホテルの目の前なので助かるんですよね。タブレット端末による注文方式も、海外のお客さんからは「わかりやすい」と好評でした。 今風のテーブル風景 満席の店内 手前はアツシ タケコ 新しいお店のせいか、東京にいるときとあまり感覚は変わりませんでしたね。 ちょっとスペースが広いかな、程度の違いはありますが。 イシノリ ほかのお客さんたちの盛り上がりっぷりもよかったね。 このお店にいる人たちはもう、みんな普通に楽しんでる。 震災のちょっと前にエネルギー館(現・東京電力廃炉資料館)の取材で富岡に来たことがあって。偶然見つけた小さな喫茶店のようなお店で、洋食ランチを食べたことを強くおぼえてるんだよね。 その次に富岡へ来たときは、津波の影響で、その喫茶店がどこだかわからなくなっちゃってた。 だからこうして居酒屋さんが普通に盛り上がっているのを見ると、ホッとする。 テル おっしゃる通りで、これがあるべき姿ですものね。 私も周辺を歩いてみて、まだ復興途上のところもあるけれども、着実に再起を遂げているところもある、と強く感じました。 タケコ それとごはんが、美味しいですね(笑) アツシ さぁさぁ、おなかもいっぱいになったところで、明日に備え、早めにお開きとまいりしましょ~。 はーい。 Jヴィレッジ 施設名 Jヴィレッジ TEL 0240-23-7311 web https://j-village.jp/ 住所 福島県双葉郡楢葉町山田岡美シ森8 Jヴィレッジは福島県にあるサッカーナショナルトレーニングセンター。スポーツ利用のみならずビジネス利用もできるホテルや、さまざまなスポーツやイベント開催もできる全天候型練習場が新設された。 1997年に開設された日本サッカーの拠点施設で、特に日本代表チームが多くのキャンプを行った場所としても知られている。その後、福島第一原子力発電所の事故を受けて一時閉鎖されたが、復興の象徴として2019年4月に全面的に再開された。サッカー専用のグラウンドに加え、トレーニングジムやプールなど、総合的なスポーツ施設として多様な利用が可能。キャンプや合宿の開催のほか、企業の研修やイベントスペースとしても活用できる。 Jヴィレッジが再開したことで、周辺地域の観光業やサービス業の活性化が期待され、地域活性化や雇用創出に大きく貢献している。 旅先での会話を読む テル 原子力関係者にとっては多くの思いが詰まった施設、それがこのJヴィレッジです。私もさまざまな思いが去来します。 アツシ 今回の取材では残念ながら行程の関係で、立ち寄ることはできなかったのですが、アタクシにとってもここは思い出多き地であります。 タケコ みなさん、いらしたことがあるのですね。 イシノリ 再開される以前に来たので、こんなに綺麗になった芝生のピッチを見たのは初めて! Jヴィレッジ全景 ピッチ全景 天然芝のNo.3ピッチ ビジネスにも快適なシングルルーム リゾート感覚でくつろぐツインルーム 仲間たちと英気を養うフォースルーム アツシ こんな素敵な施設になっていたとはつゆ知らず。恐れ入りました! タケコ リゾート施設と見まがうばかりのお部屋ですね。 ジムもレストランもありますし、合宿でなくても1日中楽しめそうですね! イシノリ プールもあるしね! それと、ここは大浴場が気持ちいいんですよ。 テル 見事としか言いようのない復興を遂げていて、頭が下がります。 是非ともあらゆる機会をとらえて、利用してみたいですね。 アツシ 今回はお邪魔できませんでしたが、またあらためてお邪魔して、もっと詳しく拝見いたしましょ~ はーい! 1日を動画で見る
- 25 Jan 2025
- CULTURE
-
day1 | 浜通り3days
10:30 福島駅を出発! 施設名 福島駅 住所 福島県福島市栄町1-1 原子力産業界の福島出張の定番は「いわき駅」スタートなのだろうが、わたしたちは今回「福島駅」からスタートである。 新幹線で東京から「やまびこ号」または「つばさ号」で、およそ1時間半で到着。新幹線を降りると、広々とした駅の西口に出る。早速、予約したレンタカーの店舗へ移動しようとするが、GoogleMapいわく、目指す店舗は徒歩13分。ちょっと待て。危ない危ない。素直に店舗からの送迎バスを待とう。 もちろんレンタカー会社によっては、駅前に店舗もある。下調べは大事だなぁ。 旅先での会話を読む アツシ 福島まであっという間ですね。パソコン開いてちょっと作業してたら、もう着いてました。 テル 同じく新幹線駅であるお隣の「郡山駅」という選択肢もありますが、今回は県庁もある「福島駅」スタートとしました。 もっとも新幹線経由で目的地の浜通り地方に行くには、ここからクルマ移動になってしまいますが。 イシノリ 今乗ってきた新幹線は旅行客が多かったですね。あまり福島では降りてくれませんでしたが。 テル 福島は、というか浜通りは、今ダイナミックに変化を遂げており、それを感じられるのは今だけだと思います。 もっともっと多くの人に、福島へ立ち寄っていただかないと。 アツシ 4月の原産年次大会「福島セッション」でも、その点が強調されていました! 議論だけで満足せずに、次は行動です。原子力産業界は、社員旅行、研修旅行、慰安旅行等で何か理由をつけて福島に来るべきです。 タケコ 実際に現地を自分の目で見て、自分の足で歩くことで、わかることがあると思います。その体験を周囲にジワジワと拡げていってほしいですね。 イシノリ そそ。芸能人だけにまかせてないで、我々も行動しないとね。 タケコ 福島には初めて来たのですが、きれいな駅ですね。ちょっと静かですけど。 テル 新幹線改札のある「西口」と比べると、在来線側の「東口」はもっと賑やかですよ(笑) アツシ おっと、そうこうしているうちに送迎バスも来たようです。実はもう10分押してます。 はーい。 12:00 フランス料理店 ポン・ヌフ 店名 フランス料理店 ポン・ヌフ TEL 0244-24-3314 営業時間 11時30分~14時00分 住所 福島県南相馬市原町区日の出町206-1 浜通り地方のメインストリート「国道6号線」沿いに古くから佇む老舗フレンチ。福島第一原子力発電所事故後も早い時期から、洋食屋として営業を再開し、人々のおなかを支えたのは有名な話。 交差点、しかも通りに面した一軒家のお店である。駐車場の入り口がなかなかわかりにくいが、迷うことなくハンドルを切ろう。国道沿いではなく脇道側に入り口がある。 お店の外からは店内の様子がわからず、戸惑うかもしれない。しかし「営業中」の札がかかっていれば、間違いなく営業中なのだ。「注文の多い料理店」然とした佇まいに臆することなく、扉を開こう。きっと、店内いっぱいのお客さんを見て胸を撫で下ろすことだろう。紳士とマダムが切り盛りする「フランス料理店 ポン・ヌフ」は、絶品な洋食を味わえる人気レストランなのだ。 メニューは幅広く、たいていの洋食は揃っている。数多くのレビューがネット上にあるので、ここで多くは語らないが、実に美味しい。テルさんは「エビピラフ」、アツシとタケコは「ビーフシチュー」、イシノリは「ビーフストロガノフ」を注文したが、どれもとても美味しかった。特にビーフストロガノフは、ゴロゴロとステーキ肉が投入されており、食いしん坊も大満足である。 店主のお人柄も特筆すべきだろう。 実は店を辞去した後、クルマで移動中にイシノリが「社員証がない!」と大騒ぎ。どうやらいつも首からぶら下げている「迷子札」状のパスケースを紛失したとのこと。即座にクルマを停めて、全員の撮影写真に映り込んだイシノリを確認しながら、どの時点まで「迷子札」を持っていたか解析がスタートした。「新幹線で落としたかも...」と半ベソになりながら絶望のズンドコに沈むイシノリを囲みながらワイワイやっているうちに、東京にいる副編集長から電話が。 「イシノリ!あなたレストランに行った?」「うん... お肉、食べた...」「お店の人から電話があって、社員証を忘れていったそうよ」「MA・JI・DE!」 すぐさまクルマで取って返して、ポン・ヌフの扉をたたいたところ、マダムが申し訳なさそうに「駐車場に落ちていたのよ。ごめんなさいね。気づいてあげられなくて。社員証とクレジットカードが入っていたから、これは大変と思って、会社に電話しちゃった」 その節は誠にすみませんでした。平謝りしつつ、感謝感激のイシノリであった。 旅先での会話を読む アツシ いやいや、噂にたがわぬ名店でしたね。美味しい上にボリュームもあって、食いしん坊でも大満足。 イシノリ 福島出張時の「影の目玉」になりますな。 あそこまでゴロゴロと立派なステーキ肉が入っているビーフストロガノフは、初めて。 タケコ ビーフシチューもほんのりと酸味があって、とてもやさしい味でした。 ほかのメニューも食べてみたくなります。 テル ランチ営業しかされていないのが、実に惜しいですね。 もっと多くの方が遊びに来るようになれば、ディナータイムも開けてくれるんじゃないかなぁ。 「営業中」の札が輝いている ごちそうを前に撮影する面々。イシノリの迷子札が確認できる タケコ ポン・ヌフさんの魅力は、店内に入ると一層感じられますね。 テル 一軒家をぐるりと緑で囲まれており、この落ち着いた雰囲気が私は好きですね。 アツシ 中が見えないだけに、店内に入った瞬間のあたたかさは形容しがたいですね。お店のあちこちに猫ちゃんの置物が置かれていましたが、猫好きな人はやさしいといいますよ。 イシノリさんの「迷子札」騒動でも、大変親切な対応をしていただきましたし。 イシノリ おっしゃる通りです。 アツシ もうご存じでしょうが、そのせいで10分押してます。 イシノリ 面目ない... 13:20 福島ロボットテストフィールド 店名 福島ロボットテストフィールド TEL 0244-25-2473 web https://www.fipo.or.jp/robot/ 見学コース あり(事前予約) 定休日 土曜日/日曜日/祝日 営業時間 9時00分~17時00分 住所 福島県南相馬市原町区萱浜 新赤沼83南相馬市復興工業団地内 浜通りの産業回復・復興に留まらず、新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクトである「福島イノベーション・コースト構想」。福島ロボットテストフィールド(RTF)は、その一つとしてロボット/ドローン分野を集積させた一大拠点である。 2020年3月31日に全面オープンしたRTFは、東西に1㎞、南北に500m、約50haの敷地(東京ドーム10個分)を誇る。インフラや災害現場などの実際の使用環境を再現した21の施設があり、無人滑走機エリアには9施設、開発基盤エリアには5施設、インフラ点検・災害対応エリアには5施設、水中・水上ロボットエリアには2施設が配置されている。また、13㎞南には、RTFが所有する浪江滑走路・格納庫がある。 広大な施設ではあるが、おおよそ1時間規模の見学コースが用意されている。 RTFのミッションは、福島復興に貢献することおよび、ロボットの社会実装である。ミッション遂行のため、世界トップレベルのロボット実験環境を技術者に提供しており、ロボットの安全性確保・社会実装のためのルールやガイドラインといった仕組み作りに取り組んでいる。また、企業や大学など国内外のロボット研究開発運用者の交流・連携を促進しており、ロボットに係る次世代の人材育成にも取り組んでいる。RTFでは、こうした取り組みを通じて、中長期的な福島の復興支援をおこなっている。 旅先での会話を読む アツシ こちらがアタクシのイチ推し、「福島ロボットテストフィールド」です。 施設の規模もさることながら、倉庫に置かれた人型ロボットなど、なんかこう、グッときませんか? イシノリ わかる 真っ暗な倉庫のライトが点いて、目の前にアレがいた時は、たしかに鷲掴みにされた(笑) 「人機一体」だっけ?センスいいよねぇ。両肩に入った「JR西日本」とか「日本信号」とかスポンサーロゴも、なんだかリアルでカッコイイ。 これが「人機一体」 右端が 案内してくださったRTFの木幡さん テル 単なるスポンサーなだけでなく、共同開発者らしいですよ(笑) それと福島県はそもそも、ドローン関連もなかなか有名なんです。ドローンを使った配送実験とか、テレビでご覧になったことありませんか? イシノリ ありますあります。牛丼配達でしたっけ?南相馬の テル はい。福島県は長崎県とともに全国に先駆けて2024年度にドローン配送の実現に向けた地域課題解決連携“絆”特区に指定されているんです。 無人地帯で目視外飛行することを「レベル3飛行」と呼びます。「レベル4飛行」はさらに段階が上がって、有人地帯での目視外飛行が可能です。これまではルートごとに申請が必要でしたが、特区指定に伴い、エリア単位の申請でレベル4飛行が可能になりました。 アツシ ただし、ドローンの特区を活用する場合、飛行できるドローンは、国の認証を受けた機体に限定されています。 イシノリ となると、ますますドローンの活用が増え、浜通り地方が全国に先駆けた先進地域になりそうですね。 テル 無人滑走機エリアの緩衝ネット付飛行場は、高さ15mまでネットが張られています。天井のようにネットが張られたことで、屋内施設扱いとなり、ドローンから投下したりする場合なども、航空局への申請不要でドローンの実証ができるんですって。 タケコ 毎回申請するのは、大変ですものね。 アツシ あまりにも見どころが多くて1時間では回りきれませんが、10分押してます。 はーい。 15:00 haccoba 小高駅舎醸造所 &PUBLIC MARKET 店名 haccoba 小高駅舎醸造所 &PUBLIC MARKET web https://haccoba.com/ 定休日 月曜日 営業時間 12時00分~17時00分 住所 福島県南相馬市小高区東町1丁目140−1 無人駅の駅員の詰め所を改装して、醸造所兼店舗として活用している。レンタカーを駅前の無料駐車スペースに停め、店舗へ向かう。なんと、入り口が駅のホーム側にあり、改札を通らないと入ることが出来ない。無人駅とはいえ黙って改札を通るのは少々抵抗がある。というわけで、駅のインターホンで繋がった別の駅の駅員さんに確認したが、「入店のため、駅の改札を通ってかまわない」とのことだった。安心されたい。 haccobaでは、お米と一緒にさまざまな素材を発酵させてお酒をつくっている。例えば、コーラの作成過程で発生したコーラ粕に他の粕を掛け合わせて新たなお酒を製造したり、チョコレートの製造過程で発生するカカオハスク(カカオの外皮)からお酒を製造したり、梅酒の製造で使用した梅の実(梅酒粕)をお米と一緒に発酵させてお酒を製造している。 haccobaは自社の醸造技術と何かを掛け合わせて(コラボして)、新しいものをつくっていることに特徴がある。ガラス越しに、駅員の宿直室だった部屋に配置された醸造設備を確認することが出来る。 下校時刻になると、駅を利用する地元の高校生たちで店内も賑わうという。 旅先での会話を読む テル haccobaの佐藤代表が4月の原産年次大会「福島セッション」に登壇された際に紹介した「はなうたホップス」は、当協会の懇親会でも何度かお出ししたのですが、大変人気が高かった一品です。 今回は、梅酒粕を用いた「五香梅(ウーシャンメイ)」を購入しました。 アツシ 梅とスパイスの香りがよく、とても飲みやすいお酒でしたね。これは仕事やプライベートを問わず、ボクの周りに薦めたい一品です! 小高駅の入口 ホームに面して店舗入口がある タケコ haccobaのお酒は、また飲みたいと思うだけじゃなく、ほかのお酒も飲んでみたいと思わせる不思議な魅力がありますよね。 イシノリ お酒以外にも、地元福島産の雑貨類が販売されており、ここに来ればいろいろと手に入るね。 タケコ オリジナルのコーヒーや化粧品、キーホルダーやグラス。そのほかにも浜通り地方のオリジナルTシャツなど、ローカルな商品がいっぱい置いてあります。 私もたくさん買わせていただきました。 イシノリ それと驚いたのは、店内に“オープンスペース”があって、そこで靴を脱いでのんびりおしゃべりできるところ。かなりフリーダムね。 店内にはくつろげるスペースもあり、電車待ちの高校生が自由に楽しめるそうだ うん。たしかにこんなに自由で人が温かい駅はない テル 勝手に作っていく「小高マップ」なんて典型ですが、このように場を提供するだけで、あとは高校生たちが自由に楽しみながら地元・小高をアピールしてくれる。 頼もしいですよね。 イシノリ 誰に強制されたわけでもないのにね。 佐藤代表が、「現在進行形で新しいカルチャーが生まれている」とおっしゃってましたが、これは楽しい! 説明してくださった三村さん 地元の高校生のアイデアも採用している アツシ おっと盛り上がってるところ恐縮ですが、10分押してます。 はーい。 16:00 浅野撚糸フタバスーパーゼロミル 施設名 浅野撚糸フタバスーパーゼロミル TEL 0240-23-7648 web https://asanen.co.jp/dakishimetefutaba/ 見学コース あり(事前予約) 定休日 月曜日 営業時間 10時00分~18時00分 住所 福島県双葉郡双葉町中野舘ノ内1−1 クルマで走っていると双葉町の再開発エリアに、一際異彩を放つ建屋が現れる。クルマから降りてエントランスへ近づくと、ガラス張りの建屋がショッピングモールのように明るい。ここが浅野撚糸株式会社の新工場だ。 岐阜を本拠とする同社の浅野雅己社長は、福島大学で青春時代を過ごした。震災後に被災地を訪れた際に地元・双葉町長の復興へ向けた力強い言葉に、強く胸を打たれ、双葉町に工場を新設することを決意したという。そして同社の新工場「フタバスーパーゼロミル」が、2023年4月、スタッフ20名でスタートした。当初は地元からの採用が思うようにいかず、岐阜から人員を派遣していたが、現在では、定期的な地元スタッフの採用に成功しており、現在22名が働いている。 こちらは工場見学のコースが2種(40分コース/70分コース)整備されており、広報担当スタッフがじっくりと工場の概要を説明してくれる。設備を目の前で見ることができ、すべてオープンで、撮影もOKだ。我々は今回70分コースをお願いした。 工場は9名のスタッフで交代しながら、24時間稼働(深夜は無人で機械のみ稼働)している。ベトナムからの技能実習生も受け入れており、我々が訪れた際にも実習生が合糸機等の稼働状況の確認作業をしていた。 スーパーZEROという糸は、通常の糸およびお湯に溶ける糸(水溶性の糸)を撚ったのち、高温の蒸気をあてて、糸の縮れを固定しタオル製造段階で水溶性の糸を完全に溶かすことで、それまで掛かっていた解け残った糸が膨張するという原理を利用している。この膨張した糸により、吸水性が飛躍的に高まるのだ。 糸を撚る機械は、廃業する同業者たちから譲ってもらった20〜30年以上も前のシロモノで、今ではもう手に入らない。地下約220mの地下水をくみ上げて140℃まで高め、蒸気として使用している。試行錯誤を重ねた結果、撚糸の中心部まで蒸気をあてる方法として、1つずつ人の手で穴を開けた段ボールに撚糸を入れるという現在の方法が編み出された。なお、140℃のスチームを出す機械(スチームセッター)は、ここ双葉町と岐阜本社の2か所に設置されている。 旅先での会話を読む テル 施設見学の冒頭、同社の土屋所長補佐よりお話がありましたが、「工場の設備だけでなく働くスタッフを見てほしい」と。その言葉の意味がよくわかりました。 タケコ この工場は人で成り立っていましたね。 案内してくださった子安さんは、入社2年目だそうですが、入社早々に地元の岐阜から福島へ派遣されたそうです。 見知らぬ土地で、「不便なこともあるけれども、双葉の未来を作っているようで楽しい」とおっしゃっていたのが印象的です。 1年と言われていた双葉町への派遣期間を、自ら延長を申し出て、2025年3月まで双葉町で働くことになっているそうですよ。 撚糸機の説明をする子安さん 撚った糸に高温の蒸気を当てるスチームセッター アツシ 設備もすべて丸見えで撮影OKですし、事務所に至っては「ガラス張り」で丸見えでしたね。 子安さんが「ちょっと恥ずかしい」とおっしゃっていたのもよくわかります。 イシノリ すべてオープンにしていく、心意気ですかね。 こうして訪れた人たちの心をガッチリと掴む(笑) 1Fに広がるショップでは、多様な素材の製品が販売されている 2Fのアウトレットショップ アツシ こちら、工場を見学できるだけでなく、きちんとショップも併設されています。2Fにはアウトレットショップも イシノリ 貧乏性でアウトレットにばかり足が向いてしまいました。 こちらで購入したエアーカオルを、ジムでもヘビーユースしています。たしかに吸水が違う!水泳で使用する吸水シートと違い、肌触りもいいですね。 はちみつりんごみるく 1FにはKEY’S CAFÉもあり、お食事もできる タケコ 1Fにはカフェも併設されています。広々とした空間で居心地がいいので、ついつい長居してしまいました。 こちらのカフェも、浅野撚糸さんの社員さんが担当されているそうです。 テル 私も子安さんイチ推しの「はちみつりんごみるく」をいただきました。これが実に美味しい。 福島県産のリンゴを使用されているそうですよ。 下から見てもよくわからない屋根だが 上から見るとこのようにデザインされている イシノリ そういえばこちらの施設、上空から鮮やかな「0」のマークが見えるようですが、本来は「町のシンボル」として道路からも見えるはずだったそうです。 「設計ミスで見えなくなっちゃった」って(笑) しかも看板は補助金対象外なので、全額自己負担! アツシ おっと、その手のウラ話はやめていただいて! 実はカフェに長居しすぎて、10分押してます。 はーい。 18:00 ほっと大熊にチェックイン! 施設名 ほっと大熊 TEL 0240-23-5767 web https://okumakouryu.jp/hotokuma フロント営業時間 6時00分~22時00分 住所 福島県大熊町大川原南平1207番1 大熊町役場に隣接する「大熊町交流ゾーン」。その一角を占めるのが、宿泊温浴施設「ほっと大熊」だ。 「ほっと大熊」周辺には、コンビニ(7時00分~20時00分)もあれば、飲食店もある。 さらに万が一に備え、「ほっと大熊」施設内も充実している。広い共有スペースには、電子レンジやちょっとした調理器具が揃っている。それにくわえて、カップ麺、冷凍食品、アルコール類、おつまみ系の自動販売機が充実している。 フロント営業時間外でも、スタッフは常駐しているので安心である。大熊を拠点に動く場合、ぜひとも泊っていただきたい。 ただし、かなりの人気施設なので御予約はお早めに。 旅先での会話を読む ほっと大熊の入り口。なんだかあたたかい 広々とした共有スペースがあり、設備は自由に使える アツシ こちらはとにかく大人気で、なかなか予約が取れないんですよ! 今晩はファミリールームに男子3名が、ツインルームに女子1名が宿泊です。 イシノリ 温浴施設にくっついた宿泊所だというのであなどっていたら、なんのなんの。リゾートホテルばりのお部屋で驚いた。 到着したのが夜だったからわからなかったけど、あのテラスはヤバい。気持ちよさそう。 テル ぜひ家族で訪れたいですね。 子連れには、共有スペースにあるさまざまな設備もうれしい。 タケコ あちらの共有スペースは飲み物がすべてフリーで供されています。お菓子も好評だそうですよ。 それとフロントのスタッフさんが優しくて、地元に帰ってきたような気分になれますね。 ファミリールームにはテラスも ファミリールームには2寝室のほか、広々としたリビングルームもある。ここでゆっくり談笑できる イシノリ それと温泉コーナーの目玉の一つ、無料マッサージチェアね。 なかなかの高級機だというウワサは聞いてた。 アツシ 期待値をはるかに上回ってきましたね。 外界から遮断され、からだ全体が包まれる。まさにモビルスーツのコックピット! テル 我々3機が並んだ姿はさしずめ「黒い三連星」ですかな(笑) イシノリ アハハハ カッコいい! この勇姿をタケコに撮ってもらえばよかった(笑) アツシ アタクシ、「オルテガ」を名乗らせていただいてもよろしいでしょうか!! タケコ マッサージチェアの置いてある方から元気いっぱいな声が聞こえて、何事かと思っていましたが... みなさんだったのですね。楽しそうで何よりです。 イシノリ で、でたな。京言葉! 19:00 食事処 池田屋 店名 食事処 池田屋 TEL 090-2936-7322 定休日 日曜日 営業時間 11時00分~21時00分(要確認) 住所 福島県双葉郡大熊町下野上金谷平542-2 神奈川県から移住した店主が、2024年5月に大熊町でオープンした定食屋兼居酒屋さん。大熊町に住む人や復興に携わる人にとって、待ちに待った飲食店だったという。しかも夜は居酒屋として営業しており、暗闇に輝くお店の明かりが、地域の防犯にも貢献しているそうだ。 「孫をいい自然環境で育てたい」との思いで移住を決意した店主。当初はお店をやるつもりはなかったが、あまりに周りに何もなくて不便であることから、「みんなのためにもお店を開くことにしました。以前も飲食店をやっていたから」とにっこり笑う店主。あたたかい。 上述の通り、「ほっと大熊」のある「大熊町交流ゾーン」には、居酒屋さんや食堂が複数軒あるが、大熊町を訪れる人々は少なくない。どのお店にせよ、事前の予約を強くお勧めする。 実は我々も油断しており、「大熊行けばお店が何軒かあるよ~」との声に安心しきっていたのだが、当然のごとくドコモ満席である。誰もが美味しいものを食べたいのだ。 そんな経緯で出会えた「池田屋」さん。定食以外にも数多くのサイドメニューがあり、ガツガツといかせていただきました。ごちそうさま。 旅先での会話を読む アツシ いやいやアタクシとしたことが大変な失態で。「ほっと大熊」周辺のお店はどこもかしこも満席でしたね。 そりゃそうですよねぇ。 イシノリ 「ほっと大熊」の駐車場見て驚いたもん。クルマだらけで。 「交流ゾーン」を我々のようなサラリーマンが、1日の仕事を終えてニコニコしながら歩き回ってるから、イヤな予感したのよね。 案の定どこのお店もお客さんでいっぱい。正直、コンビニ弁当も覚悟した。 テル 大熊町の帰還が進まないとはいえ、復興作業に携わっていらっしゃる方々が大勢いらっしゃいますからね。 今回はその“勢い”の一端を垣間見ましたね。この町は元気がいい。 タケコ 池田屋さんにお電話して「どうぞ!」と言われたときにはホッとしました。 アツシ そんな我々をあたたかく迎えてくださった「池田屋」さんの店主さんですが、大熊町のお隣、浪江町のご出身で、30年ほど前から神奈川県で生活されていたそうです。 震災から再び立ち上がった大熊町の姿を見て、そしてなによりも孫をのびのびとした環境で育てたいとの思いで、ここならばと移住を決意されたそうです。 テル このように移住された方が、地元の人々や大熊町を訪れた人々の食事処として、町を支える重要な役割を果たすというケースもあるのですねぇ。感じ入りました。 避難された方々の帰還が思うように進まない中、これからはこうした移住者の方々による新しいまちづくりという要素も、無視できなくなってくるかもしれません。 食券機にはガッツリ系の定食メニューが並ぶ 店内の壁に貼られた一品料理も注文可能だ タケコ 地元の食材だというサラダが、とても美味しかったですね。福島県はトマトの産地ですものね。 明日お邪魔するワンダーファームさんも確か... イシノリ 元木さんのワンダーファームね! あそこはトマト三昧よ。以前取材したとき、「トマト神社」もあった(笑) アツシ そうです。みなさん、明日もスケジュールはいっぱいいっぱいです。 今晩も早めにお開きとまいりしましょ~。 はーい。 1日を動画で見る
- 25 Jan 2025
- CULTURE
-
「ほっこり ふくしま あったかフェア」大宮駅で開催
福島県産の米・食品・地酒を展示・販売し、観光スポットを紹介する「ほっこり ふくしま あったかフェア2025 魅力発見! 観光&大物産展」(主催=ほっこりふくしまあったかフェア実行委員会)が1月12、13日、JR大宮駅構内で開催された。福島県・埼玉県の後援により毎年1月に行われているもの。コロナ禍も沈静化し人々の往来も復活している。福島県では、4月より大型観光キャンペーンを企画しており、今回のイベントはそのプレデスティネーションとなる。場所は、大宮駅でも特に多くの人々が行き交う東北・上越・北陸新幹線ホーム近くで、近隣の商業施設とコンコースで直結する西口イベントスペース。3連休の最終日となる会期2日目の13日、会場は、土産ものとして菓子を買い求める家族連れでにぎわいを見せ、福島産の米をPRするキャンペーンクルー「ふくしまライシーホワイト」らが振る舞う地酒試飲コーナーにも多くの人々が訪れた。折しも「成人の日」。午後からは振り袖姿の新成人の姿も見られた。イベントでは、「福島環境・未来アンバサダー」として除染で発生する除去土壌の再生利用に係る啓発にも取り組むタレント・なすびさんのトークショーが行われ、浜通り地域を拠点とした映画制作など、若手クリエイター支援の動きも紹介。なすびさんは降壇後も来場者との記念撮影に応じた。13日夕刻はイベントもクライマックス。会期中計6回行われたフラダンスショーは、最終回、ステージ直前まで多くの人で溢れる盛況なった。パフォーマンスショーを披露した「HAPPYふくしま隊」は、福島の美味として、「クリームチーズのみそ漬」、「相馬もちパイ」を推奨。菓子類も人気を博しており、アンケートに回答すると福島銘菓「ままどおる」がプレゼントされるコーナーも設けられた。福島県産の食品は、都内のアンテナショップ「日本橋ふくしま館 MIDETTE」でも購入することができる。
- 14 Jan 2025
- NEWS
-
人口に膾炙する福島
毎年師走になると、過去に起きた大きな災害を振り返ることにしています。その度に、当時紙面を賑わせた大きな災害が、別の災害の記憶で塗り替えられていることに驚きます。他者の不幸を記憶し続けることは辛く、時に面倒なことでもありますから、それはやむを得ないことかもしれません。しかし記憶の劣化は、必ずしもその災害の歴史が終わることではないのでは。今福島で起きている災害後の世代交代を見て、そう感じています。格式なき伝統私が相馬市に住んでいた時、700年以上の歴史ある城下町なのに老舗が少ないことを不思議に思ったことがあります。その理由を地元の方に尋ねた時に返ってきた答えは、「代が変わると、和食から洋食とか、料理自体変えてしまうことも多いからねえ」というものでした。当時は半信半疑だったのですが、最近それを目の当たりにする機会がありました。郡山で行われた「テロワージュふくしま」というイベントに参加させていただいた時のことです。テロワージュとは「テロワール」と「マリアージュ」を組み合わせた造語で、その主旨は地元のお店で地域の食材・料理・お酒のマリアージュを楽しむ、というものです。会場となった和食店「丸新」は、名前の上では4代目。しかしその業種は米屋、蕎麦屋と変遷し、当代になってから和食店に転じたそうです。その場に日本酒「南郷」を提供されていたのは40代で官僚から転職したという矢澤酒造。こちらは先代の名を継ごうとしたところ、むしろ「あなたの味なのだから名前を変えなさい」と勧められ、やむなく酒造にご自身の名前をつけたとのことでした。ちなみにその厨房では若い板前さんが、調理用白衣にヘッドフォンという斬新な姿で、「和食と音楽を一緒に楽しみたい」と、ノリノリでDJを務めておられ、既に次世代への変化の芽を感じさせる空間でもありました。世代と共に業種が変わり、店が変わり、名前が変わる。それは格式ある伝統とはかけ離れています。しかし恐らくそれこそが、福島の「文化継承」の在り方なのだと思いました。ものがたりの始まりでは、過去に拘泥しない代替わりは、歴史もまた風化させてしまうのでしょうか。私はむしろ、ある出来事は代替わりして初めて歴史になるのでは、と感じています。2011年の災害を風化させぬよう、記録を残そうとする活動はこれまで数多くなされてきました。その中で、当時のことを紙芝居にして語り継ぐ、という活動があります。迫力のある絵と共に情感込めて語られる紙芝居は今も人気を博しており、昨年は東京国際映画祭でも上映されたほどです。なぜ忠実な史実ではなく、紙芝居が世界に受け入れられたのか。それは、その語りが時代と共に変化し得る隙間を持っているからだと思います。「伝記は断じて小説になってはならないが、つねに小説的であるべきである」という言葉があります。伝記に限らず、1度きりしか起こらなかった事実が歴史となるためには、小説的な面白みをもって何度も読み返される必要があるのだと思います。災害は本来辛くて何度も思い出したくない出来事です。それを正しく記録・伝承するだけでは、それは何度も読み返したい歴史にはならないでしょう。そう考えれば、災害が歴史となるためには読者がその歴史に自分自身を投影できる、「行間」が必要なのだと思います。過去を忠実に再現することにこだわらず、むしろ倒木更新のように過去を糧にする。そうやって、今ようやく福島の災害は、何度でも読みたい福島へと昇華しつつあるのかもしれません。未だ倒木たりえず反対に、風化を恐れる人々が、解釈の隙間を与えない事実ばかりを発信し続ければ、むしろその事実が人口に膾炙(かいしゃ)されることを阻んでしまうでしょう(そもそも人口に膾炙の意味もまた、なますやあぶり肉のように何度も食べたい美味しいもの、という意味があります)。私自身の反省でもありますが、「自分こそが過去の事実を知っている」と驕る人々が「福島」「原子力」を語り続けることで、むしろ事実が他の方の口に上る機会を奪っているかもしれません。「科学的事実に基づいた議論」ばかりが先行するコロナ禍の経験談も同様です。限られた専門家の口で繰り返されるものがたりは、小説からも旨いものからも程遠く、すぐに古色蒼然とした思い出に過ぎなくなってしまうのではないでしょうか。柳緑花紅の福島を何度も読み返しながら、未だ倒木たりえない自身を反省する日々です。
- 12 Dec 2024
- COLUMN
-
福島第一2号機の燃料デブリ 分析に向け原子力機構へ
東京電力は11月12日午後、福島第一原子力発電所2号機から試験的取り出しとして採取した燃料デブリを、日本原子力研究開発機構の大洗原子力工学研究所に輸送を完了した。翌13日には、車両への積載作業の模様を紹介した動画を公開。14日には、原子力規制委員会の事故分析検討会で、作業状況について説明を行った。〈東京電力発表資料は こちら〉福島第一原子力発電所廃止措置ロードマップで、燃料デブリ取り出しは2号機より着手することとされており、試験的取り出しのため、今夏、テレスコ式装置(短く収納されている釣り竿を伸ばすイメージ)を、原子炉格納容器(PCV)にアクセスする貫通孔の一つ「X-6ペネ」から挿入し準備を開始。ガイドパイプの接続手違いによる作業中断も生じたが、10月30日に同装置は燃料デブリに到達し、11月7日には試験的取り出しを完了した。原子力機構に輸送された燃料デブリは今後、数か月から1年程度をかけて分析が行われ、本格的取り出しに向けて、工法、安全対策、保管方法の検討に資することとなる。燃料デブリを受入れた原子力機構では、分析に必要な設備・装置を有する照射燃料集合体試験施設(FMF)で、その性状を評価し、炉内状況推定の精度向上を図っていく。同機構廃炉環境国際共同センター(CLADS)技術主席の荻野英樹氏は12日夜、大洗原子力工学研究所で行われた記者会見の中で、「取り出された燃料デブリは0.7g程度」としながらも、今後の試料分析に際し「結晶構造がどのような温度変化をたどって、どのくらいの速さで事象が進捗し形成されたかが推測できる」と述べ、技術的立場から試験的取り出しの意義を強調した。分析が完了後、使用目的のない残りの燃料デブリについては東京電力に返却される。〈原子力機構発表資料は こちら〉今後、燃料デブリの分析・評価の中心となる大洗原子力工学研究所の構内・近隣には、走査型電子顕微鏡などの高度な分析機器を備えた日本核燃料開発、材料研究や学生の実習受入れでも実績のある東北大学金属研究所が立地している。段階的に燃料デブリの取り出しが進む中、分析・評価の成果は、将来的に廃炉人材の育成や事故耐性燃料(ATF)の開発にも活かされそうだ。
- 14 Nov 2024
- NEWS
-
福島第一2号機 燃料デブリの試験的取り出し完了
東京電力は11月7日、福島第一原子力発電所の2号機において、燃料デブリの試験的取り出しを完了した。〈東京電力発表資料は こちら〉廃止措置ロードマップで、いわば「本丸」となる燃料デブリ取り出しの初号機とされる2号機については、原子炉格納容器(PCV)の内部調査に向けて、英国との協力で開発したロボットアームの導入を予定している。今回、試験的取り出しのため、テレスコ式装置(短く収納されている釣り竿を伸ばすイメージ)を、PCVにアクセスする貫通孔の一つ「X-6ペネ」から挿入。8月22日にガイドパイプが挿入されたが、接続の手違いにより一旦作業が中断した。9月10日に、パイプの復旧作業および現場確認が完了し作業を再開。同日、「テレスコ装置の先端治具が隔離弁を通過した」ことで、試験的取り出し作業が開始となった。その後、同装置先端部のカメラからの映像が遠隔操作室のモニターに適切に送られていないことが確認されたが、10月24日にはカメラ交換作業を完了し、28日に試験的取り出し作業を再開、30日に燃料デブリに到達することができた。試験的取り出しで採取した燃料デブリは、日本原子力研究開発機構大洗研究所などの構外分析施設に輸送し、詳細分析が行われる。同研究所に隣接する日本核燃料開発では既に電子顕微鏡などを用いた分析準備も進められており、分析結果は、今後の本格的取り出しに向けた作業計画の立案や、従事者への教育・訓練にも資することとなる。今回の燃料デブリの試験的取り出し完了を受け、武藤容治経済産業相は11月8日、閣議後の記者会見の中で、「より本格的な廃炉作業を迎える中で重要な一歩となる」と、その意義を強調。加えて、今後の分析を通じ廃炉進捗に資する情報・知見の取得を期待するとともに、東京電力に対しては、引き続き安全確保に万全を期し作業を進めていくよう求めた。
- 08 Nov 2024
- NEWS
-
中西準子氏 環境リスク管理学で文化勲章
政府は10月25日、2024年度の文化勲章受章候補者7名を発表した。原子力・放射線分野では今回、中西準子氏(横浜国立大学名誉教授)が受章する。同氏は、環境リスク管理学の分野で、環境政策の立案や法整備に貢献。科学的定量化に基づく環境リスク評価・リスク管理のスキームを世界に先駆けて提唱するなど、産業技術の発展や原子力災害対策で功績があった。先端技術の製品化に係る工業ナノ材料開発の他、2011年の福島第一原子力発電所事故後は、放射能汚染、避難、除染に関して、住民らが自身で判断するために有用なリスク情報の提供にも取り組んできた。食品中の放射性物質に係る基準値の理解に向けては、「原発事故と放射線のリスク学」などを著し、放射線分野のリスクコミュニケーション啓発にも努めている。今回の受章決定は、研究成果として、「化学物質環境リスク研究の国家拠点形成や環境問題での政策立案に活かされた」ことが高く評価されたもの。高度経済成長が停滞し始めた1970年代は公害が喫緊の社会問題となっており、同氏は、都市工学の視点から、化学物質の広域大気濃度推定モデル開発など、環境汚染の定量的評価に着目し技術面で貢献。産業技術総合研究所にも籍を置き、化学物質リスク管理の社会実装に取り組んできた。受章決定に際し、中西氏は、「少し先の時代の声に耳を傾けつつ、研究を進めてきた」とするとともに、高等教育に携わってきた経験から「多くの学生たちの知性と応援もあった」とのコメントを発表した。2013年には瑞宝重光章を受章している。今年度の文化勲章は、中西氏の他、「あしたのジョー」や「おれは鉄兵」の著者として知られる漫画家のちばてつや氏も受章する。
- 28 Oct 2024
- NEWS
-
規制委 原子力災害時の屋内退避で中間まとめ
原子力規制委員会の検討チームは10月18日、原子力災害時における屋内退避の運用について、中間まとめを示した。これまで、放射性物質の放出に伴う住民避難など、防護措置の目安について記載した原子力災害対策指針では、外部被ばくを避けるため、UPZ(原子力施設から概ね5~30km圏内)の住民は屋内退避するとされていたが、その解除に関しては示されていなかった。能登半島地震の発生により、複合災害や厳冬期の対応に係る不安も高まり、規制委では4月より効果的な運用に向け、専門家も交え検討を開始。福島第一原子力発電所事故を踏まえた新規制基準で要求される重大事故対策の有効性を前提に、原子力災害の事態進展を、「炉心損傷防止ケース」、「漏えいケース」、「ベントケース」の3つに分類し、OSCAARと呼ばれる解析コードを用いて線量評価のシミュレーションを行った。今回の中間まとめでは、重大事故対策が成功したと判断される原子炉の状態、屋内退避の開始および解除の判断、その継続および避難への切替えなどを、7つの合意事項として整理。屋内退避を続ける期間については、全面緊急事態に至ってから、3日間を目安としている。避難への切替えは、地方自治体からの情報提供などを踏まえ、国が総合的に判断するものとした。福島第一原子力発電所事故時には孤立住民が問題となり、昨今は新型コロナに伴い密室における感染症対策にも関心が高まっている。合意事項では、屋内退避実施中の考慮事項として、「被ばくを直接の要因としない健康等への影響を抑えることも必要」と指摘。住民に対し、先行きに関する状況が把握できるよう、原子炉施設の状態、緊急時モニタリングの情報、生活維持に係る情報(支援物資の配給、電気・ガス・上下水道の復旧など)をわかりやすく提供する必要性を述べている。検討チームでは今後、地方自治体からの意見も聴取し、年度内を目途に最終報告書を取りまとめる予定。
- 21 Oct 2024
- NEWS
-
東京電力本社で91回目の「復興大バザール」
東京電力は10月9日、東京都千代田区の本社本館にて、福島県産品・宮城県産品を中心に取り扱う社員向け販売会「復興大バザール」を開催した。今回で91回目を数える同販売会は、「三陸・常磐もの」の魅力を発信する人気イベントで、定期的に年4回実施している。農産品、水産加工品、菓子、酒類など、200以上の商品を取り揃えたほか、福島の伝統工芸品である「だるま」のおみくじガチャや、福島ご当地の人気キャラクターグッズが当たる抽選会も行われ、会場は11時オープンと同時に多くの東電社員とその関係者が訪れ、僅か3時間半で約730名が詰めかけ、完売した。同社は2013年3月より、福島県産品を扱う社内販売会をスタートさせ、被災地である福島の復興の後押しを進めてきた。2年前より宮城県産品を扱い、また、社員食堂のメニューなどとも連動しこれまで継続してきている。昨年開始されたALPS処理水の海洋放出以降、これまでに禁輸措置の影響を受けているホタテやホヤなど水産物の支援にも取り組んできている。三陸・常磐ものの鮮魚は、東京豊洲市場での評価が高く人気がある。なお、10月1日から11月4日まで、三陸常磐ものネットワークによる、三陸常磐ウィークスと銘打って、応援キャンペーンが開催されている。このネットワークには、1200もの企業、団体等が会員となり、三陸常磐ものを支え、盛り上げている。この機会に食卓に並べてみてはいかがだろうか。
- 10 Oct 2024
- NEWS
-
中国による日本産水産物の輸入規制が緩和に向け動く
福島第一原子力発電所のALPS処理水海洋放出開始に伴い、現在も続く中国による日本産水産物の輸入規制が緩和される方向で動き出した。岸田文雄首相は9月20日、IAEAのラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長と電話会談。会談後、記者会見を行った岸田首相は、「IAEAの現行のモニタリングが拡充され、その中で、中国を含む3か国の専門家による採水等のサンプリングや、分析機関間の比較が実施されることで一致した」と説明。加えて、これまでの日中政府間における事務レベルの協議に関して言及し、「中国側は、日本産水産物の輸入規制措置の調整に着手し、基準に合致した日本産水産物の輸入が着実に回復されることとなった」と述べた。今後の具体的道筋については明らかされていないが、駐日中国大使館に対するこれまでの度重なる説明や情報発信に加え、今回の追加的なモニタリング実施計画も踏まえ、両国間が共通認識に至ったものとしている。福島第一原子力発電所事故後、諸外国・地域で設定された輸入規制は49の国・地域(EUは一つとしてカウント)で既に撤廃。その一方で、ロシア、中国、香港、マカオ、韓国、台湾では、検査証明書の要求も含め、輸入規制が継続している。岸田首相は、会見の中で、日本産食品などに係る科学的根拠に基づかない輸入規制の「即時撤廃」を求めていく姿勢をあらためて強調。今回の中国側による動きに関して、「追加的なモニタリングの実施を踏まえ、当然、日本産水産物の輸入が着実に回復されるもの」と、期待を寄せた。ALPS処理水の海洋放出は、2023年8月に開始し、約1年が経過。IAEAは、日本政府との間で署名された「ALPS処理水の取扱いの安全面のレビューに関する付託事項」(2021年7月)に基づき、海洋放出開始以前から、これまで安全性レビューミッションを日本に派遣してきた。2024年4月には、海洋放出開始後、2回目となるミッションとして、IAEA職員の他、国際専門家9名(アルゼンチン、英国、オーストラリア、韓国、中国、フランス、ベトナム、米国、ロシア)で構成するタスクフォースが訪日。その結果、「関連する国際安全基準の要求事項と合致しないいかなる点も確認されなかった」とする報告書を公表している。坂本哲志農林水産相は9月24日の閣議後記者会見で、まず北陸・東北地方の大雨被害に万全の対応を図ることをあげた上、同25~30日にイタリア・シラクーザで開催されるG7農業相会合への出席について言及。世界の食料安全保障の確保を参加国に対し呼びかける姿勢を示すとともに、日本産食品の輸出先多角化に向け、「日系のみならず現地系スーパーやレストラン、新興国、地方都市等の新たな市場開拓が重要」と強調した。坂本農水相は8月にも、香港で開催されたアジア最大級の食の見本市「Food Expo PRO 2024」を訪れ、日本産食品の輸出拡大に向けてトップセールスに臨んでいる。
- 24 Sep 2024
- NEWS
-
処理水放出から一年 新聞は「歴史の記録者」としての任に堪えられるか
二〇二四年九月二十日 新聞の役割とは何だろうか。世の中で起きている数々の現象を伝えることが主な役割であることは間違いない。だが、もうひとつ重要な使命として、歴史的な記録資料を残すことが挙げられる。三十年前の日本がどんな状況だったかを知ろうとすると、やはり新聞が筆頭に上がるだろう。では、福島第一原発の処理水放出から一年経ったいまを記録する資料として、新聞はその任に堪えているだろうか。 処理水の放出から一年が経った八月下旬、どの新聞社も特集を組んだ。中国が日本産水産物の輸入を禁止したことによって、その後、日本の水産物がどうなったかは誰もが知りたい情報だろう。そして福島の漁業がどうなったかも知りたいはずだ。そういう観点から、新聞を読んでみた。福島の漁業に活気は戻っていない? 毎日新聞の社会面(八月二十三日付)を読んだ。主見出しは「福島の海 活気返して」で、副見出しは「操業制限 漁師、東電へ不信なお」。地元の漁師を登場させ、「放出への不安や東電への不信感を拭えずにいる。いまも操業制限が続いており、かつてのような活気は戻っていない」と処理水の放出から一年経っても、活気は戻っていないと極めて悲観的なストーリーを載せた。 その一方で、福島の水産物の価格は高い水準を維持し、放出前より高値を付けることもあり、風評被害は出なかったと書く。ならば福島の水産物の明るい部分もあるはずだが、そのレポートはない。逆に、国と東電は「関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない」と約束したのに、海へ放出し、いまも県漁連は反対の姿勢を崩していないと書き、国や東電への不信感を強く印象づける記事を載せた。 さらに三面では、東京電力は二三年十月から風評被害を受けた漁業者や水産加工業者などに賠償手続きを開始したが、約五五〇件の請求のうち、支払いが決まったのは約一八〇件(約三二〇億円)しかなく、賠償が滞っている様子を強く訴えた。しかも、大半は門前払いで泣き寝入りだという大学教授のコメントも載せた。同じ三面の別の記事では水処理をめぐるトラブルを取り上げ、見出しで「後絶たぬトラブル 東電に疑念」と形容するなど東電への批判を繰り返した。 かなり偏った内容(歴史的記録)に思えるが、同じ毎日新聞でも千葉支局の記者がルポした千葉版の記事(八月二十七日付)は違った。こちらは見出しが「福島原発でヒラメ飼育 1号機『普通の服装』で見学 処理水の安全、魚でテスト」と、敷地内の様子を極めて素直な目線でレポートしていた。これを読む限り、処理水の放出と廃炉作業は少しずつではあるが、前進している印象を与える。 ただ、毎日新聞からは水産物のその後の全体像はつかめず、一紙だけでは歴史的記録としては不十分なのが分かる。東京新聞はネガティブな印象を強調 毎日新聞の記事は全体として悲観的なトーンだが、東京新聞はさらにネガティブだ。一面で「七回で五・五万トン 収まらぬ漁業被害」「今も反対、政府は責任を」「首相近く退陣 漁師不安」と不安を強調し、二面では「汚泥 待ち受ける難題 タンク解体」「過酷作業 被ばくの不安」と、今度はタンクの「解体」や汚染水の処理過程で発生する「汚泥」の保管・処分をどうするかという難題が立ちはだかると厳しい内容を載せた。記事からは課題は分かるものの、前進している材料は全く見えない。これも歴史的記録の一面しか伝えていないように思える。読売・産経はホタテの脱中国に着目 毎日新聞と東京新聞を読む限り、暗い気持ちになるが、読売新聞(八月二十五日付)を読むと、一面で「処理水放出一年異常なし」、社会面では「処理水放出 不屈の漁業」「国内消費拡大・輸出『脱中国』へ」との見出しで明るい面を強調した。社会面の記事では「風評被害の拡大も懸念されたが、好調な国内消費や支援の声に支えられ、漁業関係者らは踏みとどまってきた」と書き、希望を持たせる印象を与えた。 社会面記事は、北海道湧別町のホタテ漁の写真を載せ、「今の湧別町には活気がある。官民挙げて取り組んだ消費拡大キャンペーンの結果、国内消費が好調であるためだ」と書いた。ホタテはふるさと納税の返礼品としても人気があり、別海町は二三年度の寄付額が百三十九億三百万円と前年度の二倍になったという内容も載せ、脱中国に向けて欧米への輸出にも取り組む様子を力強く伝えた。 三面では「政府、水産業支援を継続」という文言を見出しにし、「タンク解体、来年にも開始」とほぼ計画通りに進む様子を伝えた。 読売新聞の記事を読むと、毎日新聞や東京新聞とは全く逆の印象を受ける。毎日新聞に登場する漁業関係者は東電への批判を口にするが、読売新聞では漁業関係者が以前の日常に向けて頑張っている様子が伝わってくる。 産経新聞(八月二十五日付)は三面で「ホタテ輸出 脱中国進む、上期ゼロ、米向けなど急増」との見出しでホタテの輸出が増えている様子を伝えた。ホタテに着目した点は、読売新聞と同じであり、内容も読売新聞と似ている。朝日は意外に穏当か では、朝日新聞はホタテの状況をどう報じたのだろうか。八月二十四日付の社会面を見ると、「ホタテ『王様』復活なるか 国内消費上向き 中国への輸出見通せず」との見出しで「(中国への輸出の)主役だったホタテは行き場を失い危機的な状況に一時陥ったが、国内消費は上向きで回復に向かっている」と明るい要素もあることを報じた。国は基金や予備費を使い、約一千億円を投入、北海道の森町などは水産加工業者からホタテを買い取り、全国の学校給食に無償提供したと書き、自治体の奮闘ぶりを紹介した。また、ホタテの輸出量は減ったものの、米国、ベトナム、タイの三か国が中国の禁輸で行き場を失った分の約五割をカバーしたとも書いた。「楽観はできない」と書きつつも、朝日の記事は読売のトーンに近く、意外に穏当な内容だ。歴史的な記録は全紙が揃って初めて成立? これまでの記事を読み、みなさんは新聞の歴史的な記録を残す価値をどう思われただろうか。同じ現象を報じた歴史的な記録と言いながら、中身は新聞によってかなり異なることが分かるだろう。どの新聞も現象の一断面を切り取って記録していることがよく分かる。 つまり、一紙や二紙では歴史の記録者としての任は果たせない。裏返せば、新聞社の数(記者の数)が多いほど、歴史の多面的な現象を後世に伝えることが可能になる。そういう意味では、いま新聞の販売部数(記者の数も)が減少の一途をたどり、新聞社がつぶれそうな状況になっているのは、多様な歴史的な記録物を残す観点からみると極めて由々しき事態だといえる。 では、新聞社を残す方法はあるのだろうか。提案したいのは、読売新聞の読者はたまには産経新聞を読む、そして朝日新聞の読者はたまには毎日新聞や東京新聞を読むといった「交互購読」で大手五紙を共存させる方法だ。新聞社が減れば、いまの歴史の真実を後世に残す手立てが消えることに通じる。処理水から一年経った各紙の記事を読み比べてみて、そのことに気づいた。前回のコラムの最後に「重大なことに気づいた」と書いたのは、このことである。
- 20 Sep 2024
- COLUMN
-
環境省WG 除去土壌の再生利用で基準案示す
福島第一原子力発電所事故に伴う除去土壌の再生利用、減容化技術、最終処分について検討する環境省の3ワーキンググループ・チームは9月17日、合同会合を行い、環境再生の取組について審議した。〈配布資料は こちら〉今回の合同会合に先立ち10日、環境省は、IAEAより除去土壌の再生利用などに関し専門家会合が取りまとめた最終報告書を受領。同報告書は、技術的・社会的観点から日本の取組に対し助言を行うもので、「これまで環境省が実施してきた取組や活動はIAEAの安全基準に合致している」と、評価している。福島県内で発生した除去土壌については、中間貯蔵施設(大熊町・双葉町)に一時保管中。中間貯蔵後30年以内(2045年3月まで)に県外で最終処分を完了するため、必要な措置を講ずることが放射性物質汚染対処特別措置法で規定されている。福島県外の除去土壌についても、現在、仮置場などに保管されており、県内外で発生する除去土壌の処理を安全に進めるため、今回の合同会合では、再生利用の基準案が示された。周辺住民や工事作業者の「年間追加被ばく線量が1mSv/年を超えない」よう、再生資材化した除去土壌を行うとしている。福島県内で発生する除去土壌の保管量は約1,300万㎥(東京ドームの約11杯分に相当)。県外最終処分量を低減するため、環境省では、福島県出身のタレントで「福島環境・未来アンバサダー」を務めるなすびさんを起用した特設サイトや、国内各地での「対話フォーラム」などを通じ、除去土壌の再生利用に向け理解活動に努めている。既に、技術開発公募を通じ、実証事業も行われており、例えば、福島県飯舘村の長泥地区では、農業利用として、直接、食に供さない花きの試験栽培(再生資材で盛土した上に覆土することで農用地を造成)が行われている。今回、示された再生利用の基準案は、こうした実証事業で得られた知見を踏まえたものだ。なお、これまでも福島第一原子力発電所事故後の風評などをめぐり、多くの意見を述べてきた三菱総合研究所はこのほど、中間貯蔵施設に一時貯蔵される除去土壌に関し、「2024年度は最終処分の具体化への重要な目標年」との認識に立ち、提言を発表。社会的合意形成に向け、最低限必要な事項として、「最終処分に向けた取組の全体像を示すこと」、「物量・安全性などを定量的に示すこと」、「意思決定のプロセスを示すこと」をあげ、対応のあり方を考察している。
- 19 Sep 2024
- NEWS
-
福島第一2号機 燃料デブリ試験的取り出しの動画公開
東京電力は9月12日、福島第一原子力発電所2号機で行われている燃料デブリ試験的取り出し作業の動画を公開した。初の燃料デブリ取り出しを実施する2号機では、本格作業に向けてロボットアームの導入が計画されているが、今回、テレスコ式装置(短く収納されている釣り竿を伸ばすイメージ)を、原子炉格納容器(PCV)にアクセスする貫通孔の一つ「X-6ペネ」から挿入。少量の試料サンプリングを実施し、その分析結果を踏まえ、今後の取り出し量拡大につなげていく方針。同装置は、押し込みパイプ、ガイドパイプ外筒、ガイドパイプ内筒を介し、先端治具をワカサギ釣りのイメージでPCV内部に吊り降ろす。先端治具では約3gの試料を採取。各パイプを挿入の逆手順で引き抜き、運搬用ボックスに収納するという手順だ。8月22日より開始された作業で、押し込みパイプ(1.5m×5本)の接続準備中、現場の最終チェックにおいて、その1本目が計画していた順番と異なることが確認されたため、作業が中断。押し込みパイプの復旧作業および現場確認が完了したことから、9月10日より作業が再開した。今回、公開された動画は、テレスコ式装置のアーム箇所に設置された先端治具監視カメラ、アーム先端部カメラ、アームテレスコ下部カメラ、アームチルト部カメラの4か所の映像。東京電力として、試験的取り出し作業の着手とみなす「同装置の先端治具が隔離弁を通過する」状況(9月10日午前7時20分)を写している。同社の広報担当者は、9月12日の定例記者会見で、映像を示しながら、同日の状況として、「ガイドパイプは約170cm挿入(PCVへは約90cm程)され、『X-6ペネ』内でトラブルなく作業が進んでいる」と説明。翌13日の見通しとして「テレスコ式装置は水平で最大に伸びた状態になる」と述べた。今後の作業に向け、「発生し得る事案を想定し、それに応じた予防対策・対応方針を検討する」とした上、「引き続き安全最優先で緊張感を持って取り組んでいく」と強調。総勢60~70名(協力会社含め)の体制で当たっている状況下、週明け以降の作業予定について質問されたのに対し、「一歩一歩進捗した段階で見通しを示す」と、予断を持たずに対応していく姿勢を示した。東京電力では8月19日より、ホームページ内に「燃料デブリポータルサイト」を開設し、福島第一1~3号機の燃料デブリに関するわかりやすい情報発信に努めている。
- 13 Sep 2024
- NEWS
-
処理水放出から一年 奇しくも朝日と産経が 絶妙なコンビで中国批判
二〇二四年九月六日 福島第一原発の処理水の海洋放出が始まって、一年がたった。大手新聞がどんな報道をしたかを読み比べしたところ、驚愕の事実を発見した。なんと朝日、毎日、産経の各新聞が足並みを揃えたかのように、中国の日本産禁輸を批判する内容を載せた。特に朝日と産経が似た論調を載せたのは極めて異例だ。いったいどんな論調なのか。最大の武器は「自己矛盾」を突くこと だれかを批判するときに最も効果的な武器は、相手の言い分の「自己矛盾」を鋭く突くことである。相手に「痛いところを突かれた。勘弁してくれ」と言わしめる急所を突く論法である。 では、処理水の自己矛盾とは何だろうか。 中国政府は処理水を「核汚染水」と呼び、国民の健康と食品の安全を守るためと称して日本からの水産物の輸入を禁止した。これは言い換えると「日本の沖合で取れた魚介類は核汚染水で汚染されていて危ないから、中国の消費者には食べさせない」という国家の意思表示である。 ところが、中国の漁船は日本の沖合に堂々と来て、魚介類を取り、中国で販売している。同じ太平洋の海で捕獲しながら、日本の漁船が取って、日本に持ち帰った魚は危ないが、中国の漁船が取って、中国の港に持ち帰った魚は安全だという中国の論理は、どうみても自己矛盾の極みである。 中国の禁輸措置を批判する場合、いろいろな言い方はあるだろが、私は、大手新聞がこの自己矛盾をどう報じたかに注目した。朝日新聞は地図入りで矛盾を指摘 すると、なんと朝日新聞は八月二十四日付朝刊の一面トップで「処理水放出 漁続ける中国 日本産禁輸でも近海で操業」という大見出しで中国の自己矛盾を大きく報じた。 記事によると、当初、中国は日本の汚染水は放出から八か月で中国の沿海に届くと言っていた。この通りだとすれば、中国の漁船が中国の沿海で漁をすることは不可能になる。ところが、そんな事情にお構いなく、中国の沿海では八百隻を超える漁船が漁を続けている。中国の漁師は「もし汚染があれば、国(中国政府)は我々に漁をさせない」と意に介さない様子だ。福建省全体からは日本沖の太平洋に向かう漁船が毎日出漁している。 さらに日本の近海でも中国の漁船が多数出漁し、北海道の東方沖の公海にはサンマ、サバ、イワシなどの中国漁船が活発に活動している。そうした中国漁船の操業状況がひと目で分かるよう、朝日新聞は「明るい部分ほど盛んに操業」との解説を入れた日本周辺の海図を載せた。この記事を読んだ朝日新聞の読者はきっとこう思ったに違いない。 「中国は言っていることと、やっていることが全く矛盾している。日本産水産物の輸入を禁止したのは、食の安全とは全く関係ないことがこれで分かった」。 この朝日新聞の記事は、中国の矛盾した態度を鋭く突く、拍手喝采ものの傑作だろう。産経新聞も朝日新聞と同様に鋭く突いた 驚いたのは、産経新聞の八月二十五日付朝刊の一面トップ記事と、三面の特集記事を見たときだ。朝日新聞とそっくりの内容なのだ。三面の見出しは「中国、禁輸でも日本沖で操業」と、朝日新聞の「日本産禁輸でも近海で操業」とほぼ同じ内容だ。 産経新聞の三面記事の前文の締め言葉は、「中国は禁輸措置の一方、中国漁船が日本沖で取った海産物を自国産として流通させる矛盾した対応を取り続けている」と厳しく断じた。 そして、産経新聞も朝日新聞と同様に、「中国漁船が操業している日本周辺の水域」と題した地図まで載せた。そのうえで、はっきりと「中国漁船が福島県や北海道の東方沖の北太平洋でサンマやサバの漁を続けている。同じ海域で日本漁船が取ったサンマは日本産として輸入を認めない半面、中国漁船が中国の港に水揚げすれば、中国産として国内で流通させている。日本政府関係者は不合理としか思えないと批判する」と書いた。 言わんとしていることは産経も朝日と同じである。おそらく新聞の題字(ロゴ)を隠して記事を読み比べたら、どちらが産経か朝日か見分けにくいだろう。毎日新聞も社説で矛盾を指摘 おもしろいことに、毎日新聞も八月二十四日付社説で中国の矛盾した態度を指摘した。社説は後半で「中国政府は『食品の安全と国民の健康を守る』と禁輸を正当化しながら、中国漁船による三陸沖の公海などでの操業は規制していない。これでは矛盾していると言わざるを得ない」ときっぱりと言い放った。 朝日、毎日、産経が横並びで中国の禁輸措置を「矛盾」と形容して批判する記事は、そうそうお目にかかれない。朝日新聞の記事を喜ばない読者もいる! 最後に、この一連の報道に関する、私のちょっとした考察を述べてみたい。 普段は真逆の朝日と産経が的確な記事を報じたわけだが、それぞれの読者層からは、いったいどう評価されているのだろうか。今回の朝日の記事を私は高く評価するが、左派リベラル層はおそらく苦々しく思っていることだろう。 朝日新聞が一年前に中国の禁輸に対して「筋が通らぬ威圧やめよ」と書いたところ、「朝日はおかしくないか。批判すべきは海洋放出を強行した政府ではないか」と主張するネット記事が出た。そう、左派リベラル層が朝日に期待しているのは中国への批判よりも、日本政府や巨大企業への鋭い批判である。だとすると、朝日新聞が地図まで示して中国の矛盾を鋭く突けば突くほど、朝日の読者層は「最近の朝日はおかしくないか」との思いを募らせるであろうことが想像される。一方、産経の論調は首尾一貫しており、読者層は「よくぞ書いた」と喝采を送っていることだろう。 朝日新聞の記者とて、矛盾が明らかな以上、中国の禁輸の矛盾を書かないわけにはいかない。ただ、記者が鋭い記事を書いても、それを喜ばない読者層がいることを思うと、記者の悩ましいジレンマが伝わってくる気がする。 処理水の報道をめぐっては、もうひとつ重大なことに気づいた。それは次回に詳述する。
- 06 Sep 2024
- COLUMN
-
三菱総研「ALPS処理水の海洋放出量を拡大する検討も重要」
福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出が開始してから、8月24日で丸1年を迎えた。同日、福島県を訪問した岸田文雄首相は、いわき市小名浜魚市場の視察、県漁業協同組合連合会との意見交換に臨み、地元水産物「常磐もの」の美味しさを絶賛する一方、ALPS処理水の海洋放出を理由とした一部の国による輸入停止の継続に関し、「科学的根拠に基づかず、極めて遺憾なことだ」と、強い懸念を表明した。こうした中、三菱総合研究所は、ALPS処理水の海洋放出に関するコメントを22日に公表。海洋放出開始前後における諸外国・地域の反応を整理した上で、長期にわたる福島第一原子力発電所廃炉作業を見据え、処理水放出について「まだ序盤に過ぎない」との見方を示し、今後、プロセスの定期的見直しと改善を行いながら、風評被害の排除とリスク管理を最後まで続ける重要性を提言している。同コメントは、三菱総研の社会インフラ事業部他が随時、ウェブサイト上で原子力問題の議論を喚起するコラム「カーボンニュートラル時代の原子力」の一環。関係省庁による三陸・常磐産品の販売促進イベント、在京外交団向け説明会、バナー広告や解説動画を通じた発信など、政府主体の継続的取組を評価するとともに、日本原子力文化財団実施の「2023年度原子力に関する世論調査」結果や、2023年度版原子力白書の記載にも言及し、ALPS処理水の安全性について「国民の間に一定程度浸透している」ことを首肯する見方を示した。さらに、福島第一原子力発電所の廃炉完遂に向け、「処理水などを保管する1,000以上のタンク群を減らす」ことの重要性をあらためて強調。これに関し、トリチウム総量が「多いケース」と「少ないケース」のそれぞれについて、2051年度までの放出シミュレーション結果を試算した上で、「地上保管によるリスクを可能な限り低減するためには、ALPS処理水の海洋放出量を拡大する検討も重要」などと指摘している。今回のコメントは、まとめとして、「現在見込まれる約30年間という放出期間に鑑み、この1年は序盤に過ぎない」と、今後も、予断を持たずに対応していく必要性を述べるとともに、技術的観点からの一般論として「30年間もの期間をトラブルゼロで過ごすことは、どんな機器であっても難しい」と強調。その上で、「トラブルを未然に防ぐための対策と、トラブル発生時における迅速かつ適切な対処を徹底すべき」と提言している。
- 27 Aug 2024
- NEWS
-
農水相 ALPS処理水海洋放出に伴う禁輸の「即時撤廃」求める
坂本哲志農林水産相は8月15日の閣議後記者会見で、現在も一部の国・地域で続く日本産農林水産物・食品に係る輸入規制の現状について述べた。同日から17日までを予定する香港訪問に関連し、記者からの質問に答えたもの。坂本農水相は、16、17日、アジア最大級とされる食の見本市「Food Expo PRO 2024」で日本産農林水産物・食品のトップセールスを行うほか、その輸出拡大に向けて、香港政府関係者との会談や現地食品製造・販売事業者の視察などに臨む。会見の中で、坂本農水相は、福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出を受け、香港政府が10都県産の水産物の輸入を禁止していることに対し、「いずれも科学的根拠に基づかないものであり、極めて遺憾だ」と強調。一方で、香港について「わが国の農林水産物の重要な輸出先」との認識をあらためて示した上で、今回の訪問で予定する同政府関係者との会談に向け、「規制の即時撤廃を要請する」考えを述べた。福島第一原子力発電所事故後、諸外国・地域で設定された輸入規制は、49の国・地域(EUは一つとしてカウント)で既に撤廃。その一方、香港の他、ロシア、中国、マカオ、韓国、台湾が現在も規制を継続している。中でも、昨夏に開始したALPS処理水の海洋放出に伴い、中国とロシアでは全都道府県の水産物が輸入停止となっている状況だ。中国で続く輸入規制に関し、坂本農水相は、これまでの二国間会談や国際的議論を通じた即時撤廃の働きかけに言及した上、「引き続き科学的根拠に基づかない輸入規制措置に関して、政府一丸となって強く働きかけていく」と強調した。農水省が8月2日に発表した2024年上半期の農林水産物・食品輸出額によると、中国は対前年同期比43.8%減、香港は同10.5%減。輸出額の減少が最も大きい品目は、ホタテ貝(生鮮等)の同142億円減で、中国・香港による日本産水産物の禁輸措置が減少要因とみられている。一方で、海外バイヤーの日本招へい、国内加工業者の海外派遣など、国内の水産業を守る政策パッケージが成果をあげており、ホタテ貝の輸出額は、ベトナム、タイ、米国向けで、それぞれ対前年同期比約7.9倍、約3.5倍、約1.6倍と、増加している。
- 16 Aug 2024
- NEWS
-
東京電力が新橋で水産物のPR 今日まで
福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出が開始して、間もなく1年。一部の海外諸国による日本産水産物の輸入停止措置などを踏まえ、東京電力では、全国各地でのイベントや販売促進会、社内販売などを通じ、全社員・全グループが一丸となって国産水産物の消費拡大に取り組んでいる。一方、北海道では2024年上半期の水産物輸出額が前年同期比で半減しており、依然として厳しい状況だ。こうした中、同社はこのほど、東京・JR新橋駅前SL広場を中心に毎年開催される「新橋こいち祭」に初めて出店。7月25、26日の期間中(両日とも、15時~20時30分)、「常磐もの」を使った「さんまのポーポー焼き」(サンマのすり身に味噌と薬味を混ぜて団子にした漁師飯)や福島の酒を提供する「発見!ふくしま」の他、昨年11月にSL広場で行われた復興応援イベント「ホタテ祭り」でも盛況だった「ホタテ応援隊」のブースを設け、福島県・北海道の美味を振る舞う。開催初日の25日には小早川智明社長が応援に駆け付け、「ホタテ串焼き」の調理・販売に当たった。「ホタテ応援隊」のブースは、JR新橋駅日比谷口を出てすぐ。駅のコンコースにも香ばしさが漂う。15時の開場後、小早川社長がブースに立った16時半頃には、ホタテを求める来場者の列ができ、仕事帰りの人たちが繰り出す19時半過ぎには既に売り切れとなる人気ぶりだった。ブース対応後、取材に応じた小早川社長は、これまでの国産水産物販売支援に対する謝意を繰り返し強調。7月16日に通算7回目(今年度3回目)を完了したALPS処理水の海洋放出については、「これからもしっかりと安全を第一に進めていき、海域の放射能測定データを示していく」と述べた。会場内、C11形SLの脇に設置された温度計は34℃。17時頃からは小雨がぱらつきながらも、さらに賑わいを増し、「かにみそ甲羅焼き」、「うに貝焼」の他、福島特産の桃を用いたアイス「ふしぎなピーチバー」(竹内まりやのヒット曲に因んだ命名)など、様々な美味が食欲をそそった。同氏は、まず「食べてもらう」ことと強調し、今後も着実に応援していく姿勢を示した。「新橋こいち祭」は、バブル崩壊後の90年代半ば、新橋界隈に務めるサラリーマンらに「“小一”時間楽んでもらう」思いで地元商店会が始めたもの。近年では、若者連れも多く、27回目となる今回、2日間で約14万人の動員を見込む。
- 26 Jul 2024
- NEWS
-
太平洋・島サミット ALPS処理水海洋放出も理解へ
太平洋・島サミット(PALM10)が7月16~18日、都内で開催された。同サミットは1997年以降、日本と太平洋島しょ国とのパートナーシップを強化することを目的として、3年ごとに日本で開催されているもの。前回、2021年は、コロナの影響によりテレビ会議方式で行われた。〈外務省発表資料は こちら〉岸田文雄首相は、会期中、17日までに、ツバル、バヌアツ、ニウエ、パプアニューギニア、パラオ、マーシャル諸島、フィジー、サモア、クック諸島、トンガ、ソロモンの各首脳と会談。福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出に関し、岸田首相が「今後も安心を高めていく」旨、発言したのに対し、各国首脳からは歓迎の意が示された。ALPS処理水の海洋放出に関しては、2023年7月4日、IAEAラファエル・グロッシー事務局長より、安全性レビューを総括する「IAEA総括報告書」が、日本政府に対し手交された。それを受け、8月24日に海洋放出が開始。2024年7月16日には、都合7回目の海洋放出が完了した。なお、IAEAは、ALPS処理水取扱いに関し、同年4月23~26日に海洋放出開始後2回目となる国際専門家からなる安全性レビューミッションを日本に派遣した。7月18日、現地調査、関係機関との議論などを通じた調査結果として、「国際安全基準の要求事項と合致しないいかなる点も確認されなかった」とする報告書が公表された。
- 18 Jul 2024
- NEWS
-
学術会議シンポ 福島第一の安全確保も取り上げる
「安全工学シンポジウム2024」が6月26~28日、日本学術会議講堂(東京・港区)で開催された。同シンポは学術会議主催のもと、毎年、「国民安全の日」(7月1日)の実施時期に合わせ、多分野の学協会が共催し行われているもの。今回は、能登半島地震にも鑑み、大地震への備えや災害避難に係るセッションが多く設定されるとともに、AI導入や労働環境に対する関心の高まりなど、昨今の社会変化から、会期中を通じ、ソフト技術の信頼性や「安全とリスク」の考え方も広く議論された。27日には、「福島第一原子力発電所の安全確保」と題するパネルディスカッションが行われ、山本章夫氏(名古屋大学教授大学院工学研究科教授、進行役)、阿部守康氏(東京電力福島第一廃炉推進カンパニーバイスプレジデント)、岩永宏平氏(原子力規制庁東京電力福島第一原子力発電所事故対策室長)、高田孝氏(東京大学大学院工学系研究科教授)、斉藤拓巳氏(東京大学大学院工学系研究科教授)、更田豊志氏(元原子力規制委員会委員長)らが登壇した。現在、福島第一原子力発電所は、事故炉としての特性から原子炉等規制法上、「特定原子力施設」と位置付けられ、運転中の原子力発電所とは異なる規制対応がなされている。両者を比較したリスクの違いについて、事業者の立場から、阿部氏が整理。運転中の発電所については「運転に伴うリスク。つまり、運転しなければリスクはない」、その一方で、福島第一原子力発電所については「既に存在するリスク」と大別。設計で対処されていない様々なリスク、公衆・作業員へのリスクなど、「錯綜したリスク状況」にあるとした上で、長期にわたる廃炉作業に向け「このような状況をどのようにマネジメントしていくか」と、問題意識を示した。これに関し、原子力規制委員会は「中長期リスクの低減目標マップ」を策定し、随時、東京電力と意見を交わしているが、岩永氏は、将来的に燃料デブリを取り出し、発生する廃棄物を安定的に管理することなどを見据え、「技術的に経験のない領域において、求められる規制活動はどうあるべきか」と、課題を提起。さらに、「現在の技術水準で達成できるリスク低減の姿は、いかなるものか」と述べ、技術的課題と安全規制の適切なあり方については、模索中であることを示唆した。アカデミアの立場から、高田氏は、福島第一原子力発電所のリスク源の特徴として、「運転中の原子力発電所に比べ、安定な状態でエネルギー源も小さい」とした上で、「大規模な事故が発生しても、放射性物質の放出量はかなり少ない」、その一方で、「小規模な事故でも微量の放射性物質の放出があり得る」と説明。低頻度事象には緩和策、高頻度事象には防止策を、それぞれ充実させ、両側面について、「バランスを踏まえ、着実にリスクを減らす取組が重要」などと指摘した。また、斉藤氏は、廃棄物管理について発言。発生、前処理、保管、処分といった一般的な流れをあらためて整理した上で、福島第一原子力発電所由来の廃棄物の特徴として、多様な素性、発生量・時期が不透明、放射性核種の総量は限定的なことなどをあげた。原子力損害賠償・廃炉等支援機構の技術委員を務める更田氏は、使用済み燃料の取り出しや、燃料デブリ取り出しに関する課題・技術戦略の動向について説明。リスク管理に関しては、サイト周辺への影響は殆ど考えられず、むしろ現場に携わる作業員の安全管理を問題視した。また、燃料デブリなどの廃棄物処分に関し「地層処分しかないのでは」との見通しも述べた。
- 02 Jul 2024
- NEWS