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米規制委、テキサスの中間貯蔵施設計画に建設・操業許可発給
米原子力規制委員会(NRC)は9月13日、中間貯蔵パートナーズ(ISP:Interim Storage Partners)社がテキサス州アンドリュース郡で計画している使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CISF)に対し、建設・操業許可を発給した。連邦政府の原子力法に基づくこの認可により、ISP社は差し当たり最大5,000トンの使用済燃料と231.3トンのGTCC廃棄物(クラスCを超える低レベル放射性廃棄物)を、CISFで40年間貯蔵できる。同社はまた、今後20年間にCISFを5,000トンずつ7段階で拡張するプロジェクトを実施し、最終的に最大4万トンの使用済燃料を貯蔵する計画。その際は、NRCが各段階で改めて安全面と環境影響面の審査を行い、今回の建設・操業許可に修正を加えることになる。ISP社は、米国の放射性廃棄物処理・処分専門業者であるウェイスト・コントロール・スペシャリスツ(WCS)社と、仏国オラノ社の米国法人が2018年3月に立ち上げた合弁事業体(JV)。同JVに対しては、日立造船のグループ企業で、使用済燃料の保管・輸送機器の設計や輸送業務等を専門とする米国のNACインターナショナル社が乾式貯蔵関係の技術支援を行っている。米エネルギー省(DOE)が2010年に、ネバダ州ユッカマウンテンにおける使用済燃料最終処分場の建設計画を中止した後、WCS社は2016年4月、テキサス州の認可を受けて操業している「低レベル放射性廃棄物処分場」の隣接区域で、CISFを建設・操業するための認可をNRCに申請。その後、オラノ社とのJV設立を経て、同JVが2018年6月に修正版の申請書を提出していた。この申請について、NRCスタッフは貯蔵施設の技術的な安全・セキュリティと環境影響を評価するとともに、付属の行政判事組織である原子力安全許認可会議(ASLB)が複数の関係訴訟で下した裁決についても審査を実施。同申請について、今年7月に「環境影響声明書(EIS)」の最終版を発行したほか、技術審査の結果を取りまとめた「安全性評価報告書(SER)」の最終版を、今回の建設・操業許可と併せて発行する。なお、NRCが使用済燃料の集中中間貯蔵施設に対して建設・操業許可を発給したのは、今回が2回目。初回は2006年、プライベート・フュエル・ストーレッジ(PFS)社がユタ州で進めていた建設計画について発給したが、建設サイト周辺で必要となる認可を先住民族の土地所有権などが絡む問題で内務省が発給しなかったため、同社は2012年12月にこの計画を断念している。NRCはこのほか、ホルテック・インターナショナル社がニューメキシコ州リー郡で進めている同様の計画に関しても、2018年から申請書の審査を実施中。2020年3月には同計画のEIS案文をパブリック・コメントに付しており、建設・操業認可発給の可否については2022年1月に判断するとしている。(参照資料:NRC、ISP社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Sep 2021
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米イリノイ州で2つの原子力発電所の存続に向けた法案が成立
米イリノイ州の議会上院は9月13日、州内の原子力発電所に経済的支援を提供する包括的クリーンエネルギー法案(SB 2408)を37対17で可決した。これにより、同法案は州議会の上下両院で承認されたことになり、早期閉鎖が予定されていたバイロン(120万kW級のPWR×2基)とドレスデン(91.2万kWのBWR×2基)2つの原子力発電所の運転継続が可能になった。同法案はまた、州内2つの石炭火力発電所によるCO2排出量を抑制することから、2050年までに同州で使用する電力を100%クリーンエネルギー化する道を拓くことになる。同法案は今後、イリノイ州のJ.B.プリツカー知事の署名により、正式に成立する。イリノイ州では、米国最大手の原子力事業者であるエクセロン社がこれら2つの原子力発電所を運転しているが、電力市場の自由化にともないこれらの採算が悪化。数億ドル規模の赤字に陥ったことから、同社は2020年8月、「今後も州政府の政策立案者と協議を続けるものの、これらの発電所は2021年9月と11月に早期閉鎖する」と発表した。同社の働きかけを受けたイリノイ州議会では、今年2月にN.ハリス上院議員が原子力支援プログラムを盛り込んだ包括的エネルギー法案を議会に提出し、様々な審議を経て9月9日に州議会の下院が83対33で同法案を可決。その後上院では、下院で修正された事項等について9月13日に票決が行われた。この日は、エクセロン社がバイロン発電所の運転継続で燃料交換を行うか、永久閉鎖して燃料を抜き抜くか判断しなければならない最終締め切り日だったが、同社はその前日、「この法案が州議会で可決成立し、州知事が署名した場合に備えて、両発電所では燃料交換のための準備を進めている」と表明。同社のC.クレイン社長兼CEOはその中で、「当社の経営再建に向けて、またクリーンエネルギーへの投資で地球温暖化に対処するため、州知事や州議会議員、労組のリーダーらが法案の成立に向けて尽力してくれたことに感謝する」と述べた。同CEOは、このような活動を通じて世界的レベルの原子力発電所を運転する従業員の雇用が確保され、環境上の恩恵が公平に与えられるとした。同社の説明では、今回の法案を通じて原子力発電所にはクレジット毎に配電電力の割合に基づいて補助金が毎年支払われる。これによって、この地域のエネルギー市場で見られる構造上の問題が緩和され、風力や太陽光と同様、原子力にもクリーンエネルギーとしての貢献に補償を提供。イリノイ州が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成する重要な一助になる。同法案はまた、経済問題のためにバイロンとドレスデンの両発電所と同様、早期閉鎖のリスクにさらされているブレードウッド原子力発電所(120万kW級PWR×2基)にも存続の機会がもたらされる。さらに、ラサール原子力発電所(117万kWのBWR×2基)についても、「CO2の影響緩和クレジット・プログラム」が施行される5年間は、運転の継続が可能になる。今回の法案が州議会で可決されたことについて、J.B.プリツカー州知事は9月13日、「消費者および地球温暖化防止ファーストの法案であり、100%クリーンエネルギーで賄う将来に向けて意欲的な基準が設定された」と指摘。「イリノイ州民も地球環境も、これ以上待つことはできないので、歴史的方策となる今回の法案には出来るだけ早急に署名したい」と述べている。(参照資料:イリノイ州議会、エクセロン社、イリノイ州知事の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Sep 2021
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米規制委「ボーグル3号機のケーブル配置は不適切」と指摘
米国の原子力規制委員会(NRC)は8月27日、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で建設中の3号機(PWR、110万kW)の電気ケーブル用配管について、NRCスタッフが特別に実施した検査の暫定的な結果を公表した。それによると、同機では緊急時に原子炉を安全に停止させる際、冷却ポンプや関連機器につながる安全系のケーブルとそれ以外のケーブルが適切に隔てられていなかった。またNRCは、建設現場でプロジェクト管理を担当するサザン・ニュークリア社が安全系の電気ケーブル用配管について品質保証上の問題点の確認や報告を行わず、是正プログラムも実施しなかったと指摘している。現状のまま建設工事が進むことになれば、NRCは同機の監視体制を強化すると表明。工事の完了までに電気ケーブル用配管の設置状況が改善されなかった場合、NRCは同機の燃料装荷や運転開始を承認しない方針だが、同機ではまだ燃料が装荷されていないため、サザン・ニュークリア社の改善措置で周辺住民のリスクが増大する恐れはないと強調している。ジョージア州のボーグル発電所では、サザン社の最大子会社であるジョージア・パワー社と複数の地元公営電気事業者の出資により、ウェスチングハウス(WH)社製AP1000を米国で初めて採用した3、4号機を2013年から建設中。2017年にWH社が倒産申請した後は、EPC(設計・調達・建設)契約を放棄した同社に代わり、サザン社のもう一つの子会社であるサザン・ニュークリア社が全体的なプロジェクト管理を引き継いだ。サザン・ニュークリア社はまた、完成した3、4号機の運転を担当することになっている。NRCは6月21日、3号機の建設現場で電気ケーブル用配管の設置修正作業が行われたのを受けて、その根本原因と品質保証上の影響範囲を究明するため、7月2日まで特別検査を実施すると発表した。電気ケーブル用配管は主に専用の配管とトレイで構成されており、緊急時に安全系機器に確実に電力が送られるようケーブルを支持する構造。商業炉でこれらの機器が万が一にも作動しない事象が発生するのを防ぐ観点から、NRCは同検査でサザン・ニュークリア社が修正作業の実施に至った際の行動、特に品質保証プロセスや原因分析などに焦点を当てたとしている。サザン・ニュークリア社側では今後、NRCの暫定的な結果を検討した上で指摘を受け入れる、もしくは追加説明をNRCに文書で提出することが可能である。NRCとしては、最終的な判断を下して文書化した決定事項を一般公開する前に、同社の追加説明など入手可能な情報をすべて考慮に入れる考えである。 3号機の建設工事では昨年12月に初装荷燃料が建設現場に到着しており、4月に始まった温態機能試験も7月末に完了した。しかし、新型コロナウイルスによる感染の影響軽減で現場の労働力は昨年4月以降、約20%削減されており、試験や品質保証関係で追加の時間が必要になったことから、ジョージア・パワー社は7月末、3、4号機の送電開始時期を現行スケジュールから3~4か月先送りし、それぞれ2022年第2四半期と2023年第1四半期に延期したと発表している。(参照資料:NRCの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 31 Aug 2021
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米ナインマイルポイント原子力発電所で水素製造の実証プロジェクト
米国最大手の原子力発電事業者であるエクセロン・ジェネレーション社は8月18日、ニューヨーク州北部のオスウェゴ郡で運転するナインマイルポイント原子力発電所(60万kW級と130万kW級のBWR各1基)で、水素の現地製造の可能性を実証するプロジェクトを実施すると発表した。米エネルギー省(DOE)から提供される補助金により、水素の現地製造がもたらす将来的なメリットを評価するのが主な目的である。これにともない、同社は水素の製造に必要な装置(電解槽)の入手でノルウェー国籍のNel Hydrogen社と連携するほか、DOE傘下のアルゴンヌ国立研究所とアイダホ国立研究所、および国立再生可能エネルギー研究所と協力。水素を同発電所内で一貫的に製造、貯蔵、活用できることを実証する。エクセロン社の発表によると、同プロジェクトでは具体的に、原子力発電から派生する副産物の水素を経済的に供給していくことができる見通し。(安全に回収・貯留した上で、100%無炭素な電源として市場に提供する可能性を探り、将来は輸送その他の目的に産業利用することになる。同社のD.ローデス原子力部門責任者(CNO)は、「プロジェクを実施する沢山の候補サイトの中から当社はニューヨーク州を選んだが、これは同州の公益事業委員会(PSC)が2016年、州北部の原子力発電所に補助金を提供する支援プログラムも含め、意欲的な温暖化防止政策『クリーン・エネルギー基準(CES)』を採択したことによる」と指摘。同州の州政府とは強い結びつきがあるとの認識を表明した。DOEの補助金は、DOEのエネルギー効率・再生可能エネルギー局(EERE)、水素・燃料電池技術室が推進する「H2@Scaleプログラム」からエクセロン社に提供される。この構想でDOEは、水素を適正な価格で製造・輸送・貯留・活用できることを実証し、様々な産業部門を脱炭素化する方策を模索。CO2の排出量も削減して大気汚染の影響を緩和するほか、経済的に不利な条件下にあるコミュニティには利益をもたらしたいとしている。今回のプロジェクトではまた、Nel Hydrogen社が2022年に約260万ドルの「プロトン交換膜式(PEM)電解槽(0.125万kW)」をナインマイルポイント発電所に納入する。同社はノルウェーの水素技術企業であるNel ASA社の米国子会社で、その8月11付けの発表によると、エクセロン社は同原子力発電所で水素を自給した上で、タービン冷却や化学制御関係の要件を満たす計画。また、Nel Hydrogen社の電解槽を適切に運転して、原子力発電所における水素製造の経済的実行可能性を実証するほか、DOEの「H2@Scaleプログラム」の支援で、CO2を排出せずに製造した水素の大規模輸出に向けて詳細計画をもたらしたいとしている。(参照資料:エクセロン社、DOE、Nel Hydrogen社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Aug 2021
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米イリノイ州の原子力発電所の運転を継続させるため下院議員がバイデン大統領に嘆願書
キンジンガー下院議員©Kinzinger米イリノイ州選出のA.キンジンガー下院議員は8月23日、同州内でこの秋、早期閉鎖が予定されている2つの原子力発電所の運転を継続させるため、J.バイデン大統領と同政権幹部に対し法的な緊急時の権限を早急に行使するよう嘆願する書簡を送付した。米国最大手の原子力発電事業者であるエクセロン・ジェネレーション社は2020年8月、イリノイ州内で経営が悪化したバイロン原子力発電所(120万kW級PWR×2基)とドレスデン原子力発電所(91.2万kWのBWR×2基)をそれぞれ、今年9月と11月に早期閉鎖すると表明。バイロン発電所については閉鎖予定日が目前に迫っていることから、「少なくとも、これらの発電所に財政支援と公平な市場条件を付与する法案がイリノイ州議会と連邦政府議会で新たに成立するまで、これらの発電所が運転継続できるよう配慮してほしい」と訴えている。米国の電力市場が自由化された地域では、独立系統運用事業者(ISO)や地域送電機関(RTO)が運営する容量市場(※「電力量(kWh)」ではなく、「将来の供給力(kW)」を取引する市場)で取引が行われている。バイロン発電所では現行の運転認可が満了するまで残り約20年、ドレスデン発電所でも10年ほど残っているが、どちらも近年はエネルギー価格の低迷や、北東部の代表的なRTO「PJMインターコネクション(PJM)」の容量オークションで化石燃料発電に競り勝つことができず、数億ドル規模の赤字に陥っている。また、エクセロン社によると、連邦エネルギー規制委員会(FERC)が近年指示したオークション関係の価格規則は、クリーン・エネルギーに対するイリノイ州の財政支援策を台無しにし、容量オークションでも化石燃料発電を優遇。イリノイ州では2016年12月、州内の原子力発電所への財政支援策を盛り込んだ包括的エネルギー法案が成立し、クリントンとクアド・シティーズの両原子力発電所では早期閉鎖計画が回避されたものの、バイロンとドレスデン両発電所については財政問題が悪化していた。キンジンガー議員は今月6日、エネルギー省(DOE)経由で民生用原子力発電所に財政的な信用を付与するプログラムを盛り込んだ「既存の原子力発電所維持のための法案(H.R.4960)」を、M.ドイル議員と共同で連邦議会下院に提出した。また、B.パスクラル下院議員がその前の週、原子力発電所の発電量に応じて連邦政府による課税額の控除を可能にするため提出した「CO2排出量ゼロの原子力発電に対する税控除法案(H.R.4024)」に対しては、共同提案者となることに合意している。大統領宛て書簡の中でキンジンガー議員は、過去9年間に全米で7基の商業炉が閉鎖され、失われたベースロード用の無炭素発電設備は530.6万kWにのぼると指摘。これにバイロンとドレスデン2つの発電所が加わり新たに430万kW分が閉鎖となるほか、2025年までにパリセードとディアブロキャニオンの両発電所で合計306.7万kW分が失われる。さらに米国では、3つの原子力発電所で756.6万kW分が閉鎖の危機にさらされているのに対し、1996年以降、新たに運転開始した商業炉はワッツ・バー2号機(116.5万kW)1基のみであるとした。原子力発電設備のこのような縮減傾向は、発電事業の信頼性や経済、関係する数千もの雇用、環境の健全性を脅かすものだと同議員は強調。これらはエネルギー供給の自立やCO2を排出しない十分なベースロード電源の保持、地球温暖化の防止など、国家の防衛・セキュリティやレジリエンスにも関わる問題になるため、到底受け入れられないと述べた。同議員は、バイロンとドレスデン2つの原子力発電所の運転を継続させる際、行使可能な法的権限として「国防生産法」と「連邦電力法」を挙げている。国防生産法は、緊急時に産業界を直接統制する権限を政府に与えるもの。「連邦電力法」では、緊急事態への対応等で両発電所の運転継続が必要であると、DOE長官から連邦エネルギー規制委員会(FERC)に提案することが可能になる。今回の書簡については、「イリノイ州議会がこれら2つの原子力発電所で運転を継続できなかったことは、驚くべき失策で、連邦議会も最終的に私の超党派法案を支持する意向を示してくれたが、原子力発電所に財政的信用を付与するプログラムの実行には時間が必要だ」と述べた。同議員は自らが提出した法案により、経営難に苦しむ全米その他の原子力発電所を保持できるとしても、バイロンとドレスデンの両発電所を助けられる可能性は低いと指摘。その上で、「私の地元コミュニティや選挙区民からの強い要望もあり、バイデン政権に利用可能な法的権限がある以上、見て見ぬふりは出来ない。これらの発電所の運転継続に全力を尽くしたい」としている。(参照資料:A.キンジンガー下院議員、エクセロン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 26 Aug 2021
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米国ボーグル3、4号機、完成時期を延期
米国で約30年ぶりの新設計画として、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で3、4号機(各PWR、110万kW)を建設中のジョージア・パワー社は7月29日、両機の送電開始時期を3~4か月先送りし、それぞれ2022年第2四半期と2023年第1四半期に延期したと発表した。両機で採用されたAP1000型炉を開発したウェスチングハウス社が2017年3月に経済破綻して以降、ジョージア・パワー社は両機の完成スケジュールをそれぞれ、2021年11月と2022年11月としていた同社は昨年4月、新型コロナウイルスによる感染の影響を軽減するため、建設サイトの労働力を約20%削減した。今回のスケジュール変更は、このような労働生産性の低下に加えて、試験や品質保証関連で追加の時間が必要になったことを理由として挙げており、この遅れによりプロジェクト全体の建設コストも上昇する見通し。同プロジェクトに45.7%出資するジョージア・パワー社の追加負担額は、4億6,000万ドルになる見込み。2013年の3月と11月に始まった3、4号機増設プロジェクトでは、ジョージア・パワー社のほかに、オーグルソープ電力が30%、ジョージア電力公社(MEAG)の子会社が22.7%、ダルトン市営電力が1.6%出資している。3号機の建設工事では2020年10月に冷態機能試験が完了した後、同年12月に初装荷燃料が建設サイトに到着。ジョージア・パワー社は今回、同機の温態機能試験が特に大きな問題もなく、無事に完了したことを明らかにしている。ジョージア・パワー社の発表によると、完成スケジュールを先送りしたことで同社が負担する建設コストは計92億ドルに達する。同社がこれまでにジョージア州の公益事業委員会(PSC)から承認を受けた建設コストは総額73億ドルであるため、これを超える金額についてはこれから承認を得ることになる。同プロジェクトではまた、建設期間中に顧客が電気代を通じて負担している金額に影響が及ぶのを防ぐため、出資企業の投資利益率を下げる措置が特別に取られている。プロジェクトの進行が一か月遅延する毎に、この利益率も徐々に下がっていくため、投資したコストを最終的にどれだけ回収できるかは、4号機が完成する頃に実施予定の包括レビューで明らかになる。ジョージア・パワー社のC.ウォマック社長兼CEOは、「この建設プロジェクトは、当社がジョージア州で60~80年にわたり、低コストで信頼性の高いCO2フリーの電力を提供していくための重要な投資案件だ」と説明。「これらを確実に実行することは、当社の顧客やジョージア州のみならず米国にとっても重要であり、必ず実行したい」との決意を述べた。3号機の温態機能試験では、同社は核燃料なしでシステムの温度や圧力を通常運転時のレベルまで上昇させ、機器やシステムが正常に機能することを確認。今回、この試験が完了したことから3号機の建設進捗率は99%に到達。4号機も含めたプロジェクト全体の進捗率は約93%となっている。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Aug 2021
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米規制委、テキサス州の中間貯蔵施設建設計画に環境影響声明書発行
米原子力規制委員会(NRC)は7月29日、使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CISF)をテキサス州アンドリュース郡で建設・操業するという中間貯蔵パートナーズ(ISP:Interim Storage Partners)社の計画について、「環境影響声明書の最終版(FEIS)」を発行した。この計画にともなう環境影響を審査した結果、NRCスタッフは環境庁(EPA)に提示する結論として「認可の発給を勧告する」とFEISに明記。EPAが同FEISの受領を連邦官報に掲載して少なくとも30日が経過後、NRCは認可の発給判断を下すが、その際の条件として、NRCは同計画の安全・セキュリティ面や技術面を保証する「安全性評価報告書(SER)の最終版」を発行しなければならない。NRCは現在、この評価作業を別途進めている。ISPは、米国の放射性廃棄物処理・処分専門業者であるウェイスト・コントロール・スペシャリスツ(WCS)社と、仏国のオラノ社の米国法人が2018年3月に立ち上げた合弁事業体(JV)である。米エネルギー省(DOE)が2010年に、ネバダ州ユッカマウンテンにおける使用済燃料最終処分場の建設計画を中止した後、WCS社は2016年4月、テキサス州の認可を受けて操業している「低レベル放射性廃棄物処分場」の隣接区域で、CISFを建設・操業するためのライセンス取得をNRCに申請。その後、オラノ社とのJV設立を経て、同JVが2018年6月に改めて申請書を提出していた。その後の2020年5月、NRCはCISF建設計画に関する環境影響声明書の案文(DEIS)を公表。「サイト周辺の自然環境などに悪影響が及ぶ可能性は認められない」と結論付けた上で、120日間のパブリック・コメントに付した。また、DEISの判明事項を公表するため、公開協議を4回にわたってウェブ上で開催。FEISを取りまとめるに当たっては、約1万600人の一般国民が提出した約2,500件のコメントを分析評価したとしている。この申請が承認された場合、ISP社は差し当たり最大5,000トンの使用済燃料、および「クラスCを超える低レベル放射性廃棄物(GTCC廃棄物)」をCISFで40年間貯蔵することができる。同社はそれ以降の20年間で、CISFを5,000トンずつ7段階で拡張するプロジェクトを実施し、最終的に最大4万トンの使用済燃料を貯蔵する計画である。なお、このCISF建設計画に対しては、地元テキサス州のG.アボット知事が2020年11月、NRCに宛てた書簡の中で反対意見を表明。「テロリストや妨害工作員の攻撃で放射性物質が流出すれば、当州のパーミアン盆地にある世界最大規模の油田が閉鎖リスクにさらされるかもしれない」と述べており、NRCに対してはISP社の申請を却下するよう要請している。また、同州に隣接するニューメキシコ州のM.J.グリシャム知事もその数日前、同様の反対意見をNRC宛ての書簡に明記。「DEISには重大な欠陥があり、CISFが当州の環境や経済、州民の健康と安全に及ぼす悪影響に適切に取り組んでいない」と指摘した。また、最終処分場の具体的な建設計画が浮上しない中、両州の州境から約60kmの地点で建設されるCISFが、実質的に最終処分場に変わる可能性に懸念を表明している。(参照資料:NRC、ISP 社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 02 Aug 2021
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オコニー原子力発電所で2度目の運転期間延長を申請
米国のデューク・エナジー社は6月21日、サウスカロライナ州で保有・運転しているオコニー原子力発電所の3基(PWR、出力各約90万kW)について、2度目の運転期間延長を原子力規制委員会(NRC)に申請したと発表した。これら3基は1973年(1、2号機)と1974年(3号機)に送電開始しており、2013年と2014年に当初の運転期間である40年に加えて、20年間の運転継続を許された。現在の運転認可は2033年と2034年まで有効で、デューク・エナジー社は2回目の運転期間延長により、これら3基をそれぞれ80年間運転する計画。2053年と2054年まで南北両方のカロライナ州で、顧客に無炭素な電力を供給したいとしている。NRCは現在、同社の申請文書に漏れなどの不備がないか点検中。受理できると判定した場合は、付属の行政判事組織である原子力安全許認可会議(ASLB)に公聴会の開催要請を発出することになる。デューク・エナジー社によると、同社最大の原子力発電設備であるオコニー発電所の運転期間再延長は、CO2排出量の削減で同社が設定した意欲的な目標を達成するための重要な最初の一歩。原子力がなければこの目標の達成は難しいと同社は考えており、2019年にはオコニーも含め国内6サイトで運転する全11基の商業炉で、2度目の運転期間延長を申請する考えを明らかにしていた。同社のこれらの原子力発電所は2020年、石炭や石油で発電した場合との比較で約5,000万トンのCO2排出抑制に貢献しており、その発電量は同社が無炭素電源で発電した電力量の83%を占めている。同社はまた、再生可能エネルギーの供給大手でもあり、2025年までに1,600万kW分の設備容量を再エネで新たに確保する方針。それ以外にも、先進的原子力技術や大規模送電網の機能向上、蓄電池の活用で投資を行うなど、CO2を出さない発電技術の模索を続けている。こうした背景から、同社は2030年までに同社の発電事業にともなうCO2排出量を少なくとも50%削減し、2050年までには実質ゼロ化を目指すとの目標を設定。これらの達成に向けて、保有する原子力発電所の運転を今後も継続するとしている。同社のK.ヘンダーソン原子力部門責任者(CNO)は、「CO2を排出しない様々な電源で一層多くの電力を生み出すことは、当社の顧客にとっても重要なことだ」と指摘。その上で、「原子力はその中でも実証済みの技術であり、南北のカロライナ州で数10年にわたって安全かつクリーンな電力を提供している」と述べた。同CNOはまた、「これらの顧客コミュニティにおける経済成長の原動力として、原子力発電所は高サラリーの雇用創出や多額の税収など、様々な恩恵をもたらしている」と強調した。米国では約100基の商業炉のうち、90基以上がこれまでにNRCから初回の(20年間の)運転期間延長を認められた。このうち、ターキーポイント3、4号機とピーチボトム2、3号機、およびサリー1、2号機に関しては、NRCがすでに2回目の運転期間延長を承認、それぞれ80年間の稼働を許可している。NRCはさらに、ポイントビーチ1、2号機とノースアナ1、2号機についても同様の申請を審査中である。(参照資料:デューク・エナジー社、NRCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 23 Jun 2021
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米仏のエネ相 温暖化対策の共同声明に原子力を盛り込む
米エネルギー省(DOE)と仏エコロジー移行省の両大臣は5月28日、共同声明を発表。地球温暖化の防止に向けた共通の目的や解決策を共有し、パリ協定に明記された野心的な目標を達成するため、先進的原子力技術の利用も含めて協力する方針を明らかにした。地球温暖化にともなう近年の深刻な影響を早急に緩和するため、両省は最先端の科学技術や研究を活用。画期的な技術革新やエネルギー技術の利用を通して、一層安全でクリーンなエネルギーにより繁栄した未来を実現するための政策を進める。仏エコロジー省のB.ポンピリ大臣 ©Ambassade de France au JaponDOEのJ.グランホルム長官と仏エコロジー省のB.ポンピリ大臣によると、両国は今回、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するという共通目標の下で団結。そのためには、CO2を排出しない既存の技術すべてを活用する必要がある。また同時にCO2を排出しない新しいエネルギー源やシステムの研究開発や建設を加速する。こうしたエネルギーシステムの効率性・信頼性を確保しながら、再生可能エネルギーと原子力発電を統合することは、低炭素なエネルギー源への移行を加速する上で非常に重要である。また、CO2を出さない様々な電源やシステムに対しては、有利な融資条件等を幅広く提供する必要があるとした。こうした観点から両国は、CO2排出量の実質ゼロ化に向け、既存の「エネルギーの移行」、および新しい技術の開発で協力していくことを約束した。脱炭素化に貢献する革新的な発電システムとしては、小型モジュール炉(SMR)やマイクロ原子炉など先進的な原子力技術が含まれるが、これらのシステムによって再生可能エネルギー源のさらなる拡大や、地方の電化率の向上を図り、輸送部門の脱炭素化を促す水素製造などを促進。さらには、水不足の地域に対する飲料水の提供支援や、様々な産業の排出量クリーン化に向けて原子力を活用していく。両国はまた、地球温暖化がもたらした脅威を、エネルギー部門の再活性化やクリーン産業・技術のブレイクスルーとして活用すると表明した。米仏の関係省庁や産業界は、先進的原子力技術や長期のエネルギー貯蔵、先進的な輸送部門、スマート・エネルギー・システム、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)といった革新的な脱炭素化エネルギー技術を複数の部門で開発中だ。これらはすべて、CO2を排出しないエネルギーの生産に大きく貢献するだけでなく、クリーンエネルギーへの移行にともない、高サラリーかつ長期雇用が保証されるとしている。今回の協力について、仏エコロジー省のB.ポンピリ大臣は「パリ協定の意欲的な目標の達成など、地球温暖化に効果的に取り組むには、世界の主要な経済大国が力を合わせて解決のための技術力を統合しなければならない」と述べた。DOEのグランホルム長官も、「世界で技術革新を牽引している米仏は、2050年までのCO2排出量実質ゼロ化に向けて、不可逆的な道筋を付けるための活動を強化する」と表明。原子力や再生可能エネルギー、CCUSなどのあらゆる無炭素技術を活用する方針を強調した。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 31 May 2021
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米規制委、サリー発電所で2回目の運転期間延長を承認
米原子力規制委員会(NRC)は5月4日、バージニア州のサリー原子力発電所1、2号機(各87.5万kWのPWR)について、ドミニオン・エナジー社が申請していた2回目の運転期間延長を承認したと発表した。この承認により、これら2基はそれぞれ2052年5月と2053年1月まで80年ずつ運転継続することが可能になった。NRCはこれまでに、フロリダ州のターキーポイント3、4号機(各76万kWのPWR)とペンシルベニア州のピーチボトム2、3号機(各118.2万kWのBWR)について、2回目の運転期間延長を承認。運転開始後80年間の運転継続が許された原子力発電所は、今回のサリー発電所で3件目となる。サリー1、2号機はそれぞれ1972年と1973年に営業運転を開始しており、NRCは両炉について2003年3月、初回の運転期間延長として当初の運転認可期間の40年に20年追加することを承認した。その後、ドミニオン・エナジー社は2018年10月にさらに20年間ずつの運転期間延長をNRCに申請。NRC事務局は今回この申請を承認した根拠として、2020年3月に同申請の安全面について最終安全性評価報告書(FSER)で最終的な確認をしていることと、環境影響評価について2020年4月に補足文書の最終版(FEIS)を発行したことを挙げている。また、NRCの原子炉安全諮問委員会(ACRS)も別途、同申請の安全面について審査を行い、今回の事務局と同じ結論を得ている。ドミニオン・エナジー社はこの承認について同日、「バージニア州でサリー発電所が電力供給している41万9,000世帯に対し、2033年以降も引き続き信頼性の高い廉価なクリーンエネルギーを供給できることになった」とコメントした。同社はサリー発電所に続き、同じバージニア州のノースアナ原子力発電所1、2号機(各約100万kWのPWR)についても2020年9月に2回目の運転期間延長を申請。これら2つの原子力発電所は、同社がバージニアとノースカロライナの両州で供給する電力の約三分の一を賄っているほか、バージニア州においては無炭素電力の92%を供給していると強調した。ドミニオン・エナジー社のD.ストッダード原子力部門責任者(CNO)は、「顧客だけでなく地球環境や地元経済にとっても良いニュースだ」と表明した。同CNOによればサリー発電所の運転期間延長は、バージニア州の「クリーン経済法」が義務付けた「2045年までに州内の電力を100%無炭素化する」という目標の達成上非常に重要。また、同州では引き続き経済成長が促され、米国南部や中部大西洋地域におけるクリーンエネルギー生産をバージニア州が主導するための一助になる。同発電所ではさらに、900名分以上の高給雇用が確保され、経済面や税制面でも追加の利益がもたらされると指摘している。(参照資料:NRC、ドミニオン・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 May 2021
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「ATENAフォーラム2021」がオンライン開催
「原子力エネルギー協会」(ATENA)がこれまでの活動状況を報告し、原子力産業界の関係者が取り組むべき課題を共有する「ATENAフォーラム2021」が2月18日、オンラインにて開催された。門上ATENA理事長ATENAは2018年7月に電力会社他、メーカーなども含めた原子力の安全性向上に向けた産業界を挙げての組織として発足し、(1)事業者に対する効果的な安全対策の導入促進、(2)産業界の代表者としての規制当局との対話、(3)安全性向上の取組に関する社会とのコミュニケーション――の役割を担っている。門上英ATENA理事長の活動報告によると、福島第一原子力発電所事故後の事業者の取組状況を踏まえ、現在、サイバーセキュリティ対策など、19の共通技術課題を抽出し検討が行われている。原子力発電プラントの40年超運転の関連では、原子力規制委員会との技術的意見交換も踏まえ、安全な長期運転に向けて、(1)長期停止期間中の保全、(2)設計の経年化評価、(3)製造中止品の管理――に係るガイドラインが9月に策定された。山中原子力規制委員フォーラムに来賓挨拶として訪れた原子力規制委員会の山中伸介委員は、「安全性の向上には規制側と被規制側の双方による対話が必要」と述べ、経営層に限らず様々な階層での信頼関係をベースとしたコミュニケーションの重要性を強調。今後のATENAの活動に向けては、「グッドプラクティスを事業者全体で共有できる機能」、「安全を担う人材育成」に期待を寄せた。コーズニックNEI理事長また、海外から、マリア・コーズニック米国原子力エネルギー協会(NEI)理事長、リチャード・A・メザーブ電力中央研究所原子力リスク研究センター(NRRC、2014年に設立された日本の組織)顧問、ジョージ・アポストラキス同所長、ウィリアム・E・ウェブスター・ジュニア原子力安全推進協会(JANSI)会長が、ビデオメッセージにて講演。コーズニック氏は、気候変動問題に直面する世界情勢を踏まえ、「クリーンエネルギーの礎を築かねばならない。原子力はどんなときも一刻も動きを止めない安定したカーボンフリーのエネルギー源」と、原子力の役割を強調。さらに、「世界では原子力利用の機運が高まっている」と展望を述べ、ATENAとともに「クリーンエネルギーの未来」の創造に向け努力していく考えを示した。メザーブ氏は、福島第一原子力発電所事故後の日本において、産業界と規制機関とのコミュニケーションには一定の評価を示す一方、「国民は原子力に対し未だに懐疑的だ。信頼獲得には長い時間を要する」と指摘。アポストラキス氏は、事業者による安全性向上の取組に関し、NRRCが研究開発を進める確率論的リスク評価(PRA)の国際的比肩を課題としてあげ、それぞれATENAへの協力姿勢を示した。JANSIの会長に就任し間もなく3年となるウェブスター氏は、原子力の安全性向上に向けた枠組として、発電所を運転する事業者、国の安全規制機関に加え、産業界の支援グループをあげ、米国のNEI、原子力発電運転協会(INPO)、電力研究所(EPRI)による成功事例にも触れながら、「個々の問題に協力して取り組み、国際的コミュニティとも緊密なつながりを持つ」重要性を強調した。パネルディスカッションの模様フォーラムでは、遠藤典子氏(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティチュート特任教授)をモデレーターとするパネルディスカッションも行われ、加藤顕彦氏(日本電機工業会原子力政策委員会委員長)、倉田千代治氏(電気事業連合会原子力開発対策委員会委員長)、近藤寛子氏(東京大学大学院工学系研究科)、山﨑広美氏(JANSI理事長)、玉川宏一氏(ATENA理事)が登壇。ATENAの果たすべき役割の他、社会からの信頼獲得や人材育成などについても意見が交わされた。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
- 19 Feb 2021
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米エネ省、使用済燃料輸送用車両の試作・試験で許可取得
米エネルギー省(DOE)の原子力局は2月9日、使用済燃料(SNF)と高レベル放射性廃棄物(HLW)の輸送用として予備的に設計した8軸(車輪が8対=16輪)のハイテク鉄道車両「Fortis」について、米国鉄道協会(AAR)からプロトタイプを製造し試験を開始するための許可が得られたと発表した。DOEはすでに、「Fortis」開発の次の段階であるプロトタイプの製造・試験契約の締結に向けて、契約オプションに関する情報提供依頼書(RFI)と市場調査通知(SSN)を産業界に向けて発出済み。予備設計通りのプロトタイプの製造と試験の実施で契約を2つに分けるオプションと、製造と試験を一本化したオプションの2種類について情報や意見の提供を求めている。首尾良く契約が結ばれて、試験車両が完成するまでに約18か月を要する見通しだが、DOEとしては5年以内に「Fortis」の運用を可能にする方針である。米国では「1982年放射性廃棄物政策法」に従って、DOEが全米の原子力発電所敷地内や中間貯蔵所に保管されているSNFとHLWの処分と、処分場までの輸送義務を負っている。SNF等の輸送容器(キャスク)は主に鋼鉄製の円筒型で、外部への漏洩防止のため溶接かボルトで密閉されている。重さも80~210トンに達することから、DOEは主に鉄道の利用をキャスクの輸送手段として想定している。「Fortis」はSNFキャスクのように大型のコンテナの積載に適したフラットな設計の車両で、ハイテク・センサーやモニタリング・システムを搭載。これらによって、輸送時に起こり得る11種類の状況をリアルタイムでオペレーターに伝えることができる。予備設計は今年初頭、パシフィック・ノースウエスト国立研究所の技術支援により完成しており、AARは鉄道産業界の厳しい設計基準に照らして「Fortis」を製造し、試験するようDOEに要求している。なお、DOEは「Fortis」のほかに、高レベルの放射性物質を輸送する12軸の車両「Atlas」の開発も進めている。「Atlas」ではすでに、単一車両のプロトタイプを使った試験をコロラド州プエブロで実施中。DOEは2020年代半ばまでに、これら車両の両方について運転許可をAARから取得するとしている。(参照資料:DOEの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 17 Feb 2021
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ブルガリアと米国、民生用原子力分野の協力促進で覚書締結
ブルガリアと米国の両政府は10月23日、民生用原子力発電分野における両国間の戦略的協力を加速するため、了解覚書を締結したと発表した。ブルガリアのB.ボリソフ首相は、「原子力は環境に最もやさしいクリーンなエネルギー源の一つであるため、(米国との協力を通じて)最新世代の一層安全な原子力技術の活用と原子燃料調達先の多様化を進めていきたい」とコメントしている。ブルガリアでは1989年に共産党の独裁政権が崩壊した後、民主制に移行。北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)にも加盟するなど、西欧化が進んでいる。しかし、国内で稼働していた出力44万kWの古いロシア型PWR(VVER)4基は西欧式の格納容器を持たない型式であったため、EUへの加盟条件として2007年までにこれらすべてを閉鎖。現在は、比較的新しい100万kWのVVER×2基(それぞれ1988年と1993年に運転開始)で国内電力需要の約35%を賄っている。米国との今回の覚書締結は、2019年11月にボリソフ首相と米国のD.トランプ大統領が原子力を含む様々なエネルギー分野の協力拡大で合意したのに続くもの。その際、具体的な協力拡大分野として、ブルガリアの残りのVVER用に米国(のウェスチングハウス社)から原子燃料を供給するため、許認可手続きの迅速な進展を両国政府の協力により支援する、などが挙げられていたブルガリア政府はまた、2012年に建設工事を中止したベレネ原子力発電所を完成させるため、2019年3月に各国から戦略的投資家を募集。同年12月には、中国やロシア、韓国、仏国の原子力企業と並んで、米国のGE社を候補として選定したことを明らかにしていた。今回の覚書には、ブルガリア・エネルギー省のT.ペトコワ大臣と米国務省のC.フォード国際安全保障・不拡散担当国務次官補が調印。ボリソフ首相が同席したほか、M.ポンペオ国務大臣はテレビ・モニターから調印式に参加した(=写真)。ペトコワ大臣によると、同覚書によって両国間の将来のエネルギー協力に新たな推進力と盤石な基盤がもたらされ、ブルガリアが最も優先するエネルギー源の多様化という目標の達成に貢献。同国にとって原子力発電は戦略的に重要なものであり、エネルギーの供給保証だけでなくCO2排出量の削減にも寄与できるとした。また、今回の発表のなかでブルガリアは、米国の新しい安全な民生用原子炉技術に高い関心を表明。2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指すというEUの「グリーンディール」投資計画案を実行に移すためにも、両国の覚書を通じて最新世代の安全確実な原子力技術で原子力プログラムを拡大する方針である。同覚書ではさらに、米国とブルガリアの双方がそれぞれの原子力産業の支援に向けた協力を希望。原子力技術の責任ある利用に向けて、人的資源と関係インフラの開発・維持に努めたいとしている。ブルガリアとしては、原子力の平和利用抜きでEUの「グリーンディール」目標を達成することは出来ないと認識しており、価格が手ごろで低炭素経済への移行においても重要要素である原子力は、国や地域、および欧州レベルのエネルギー供給保証を確保する上で非常に重要な役割を果たす。今回の覚書によって、両国は安全・セキュリティ面で高いレベルの基準を満たしつつ、教育・訓練を含む人的資源開発に重点を置いて原子力技術を活用していく考えである。(参照資料:ブルガリア内閣(ブルガリア語)と米国務省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 30 Oct 2020
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ポーランドの原子力開発プログラムに米国が協力
米エネルギー省(DOE)は10月19日、ポーランドの民生用原子力発電開発プログラムに協力するため、同省のD.ブルイエット長官が両国の政府間協力協定に署名したと発表した。この署名は同日、ブルイエット長官がポーランドのP.ナイムスキ戦略エネルギー・インフラ特任長官と協議した後に行われたもので、両国がエネルギー関係で30年間という長期の協定を結ぶのは初めてとなる。調印された文書は今後ポーランドのワルシャワに送られ、今週後半にもナイムスキ特任長官側が署名、双方が発効要件すべてを満たしたと確認する外交文書を交わした後、正式発効する。ポーランドの原子力発電開発プログラムに対する米国の協力は、今年6月にポーランドのA.ドゥダ大統領がホワイトハウスを訪問した際、ポーランドによる米国産LNGの輸入拡大などとともにD.トランプ大統領との共同声明に盛り込まれていた。同協定では今後18か月以上にわたり、ポーランドの原子力発電プログラムを実行に移す方策や必要となる資金調達方法について、両国が協力して報告書を作成すると規定。この報告書は、米国が今後原子力発電所の建設パートナーとして長期にわたってポーランドのプログラムに関与し、ポーランド政府が国内で原子力発電所の建設加速に向け最終判断を下す際の基盤となる予定である。同協定ではまた、関係企業への支援や規制、研究開発、人材訓練などで政府が主導する両国間の協力分野を特定。欧州でのプロジェクト等に共同で協力していくため、サプライチェーンの構築や原子力に対する国民の意識を高めることなどが明記された。DOEの発表によると、D.トランプ大統領はポーランド国民に対してエネルギーの供給保証を約束。「ポーランドやその近隣諸国が、(ロシアのような)唯一の供給国からエネルギーを人質に取られることが二度とないよう、代替エネルギー源の利用を保証する」と明言した。今回の協定は大統領のこの約束を果たすためのものであり、具体的にはエネルギー関係でポーランドとの戦略的パートナーシップを強化し、ポーランドのエネルギー・ミックスを多様化、高圧的な供給国に対するポーランドの依存度を下げるとしている。ポーランドでは今月初旬、複数年にわたる同国の改定版原子力開発プログラムを内閣が承認しており、第3世代あるいは第3世代+(プラス)のPWRを600万~900万kW分、建設することを確認。同プログラムを提出した気候・環境省のM.クルティカ大臣は「2033年に初号機を運転開始した後は、2~3年毎に後続の原子炉を起動していき2043年までに6基の建設を終えたい」と述べていた。DOEのブルイエット長官は今回、「ポーランドが国家安全保障と民主主義的主権を維持していく際、米国はともに協力する」と強調。エネルギーの供給保証で重要な点は、燃料やその調達源、供給ルートを多様化することだとトランプ政権は信じており、原子力はポーランド国民にクリーンで信頼性の高い電力を提供するだけでなく、エネルギーの多様化と供給保証の促進をも約束すると述べた。次世代の原子力技術は、米国が欧州その他の地域の同盟国とエネルギー供給保証について協議する上で、欠くべからざるものだと表明している。ポーランドのナイムスキ特任長官も、今回の協定はクリーン・エネルギーのみならず、その供給保証も視野に入れたものであり、ポーランドは一層幅広い状況の中で今回の戦略的協力を捉えていると指摘。同協定は「地政学的安全保障と長期的な経済成長、技術の進展、およびポーランドにおける新たな産業部門の開発につながる」としている。(参照資料:DOE、ナイムスキ戦略エネルギー・インフラ特任長官(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Oct 2020
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11月3日の「もう一つの大統領選挙」にも注目
11月3日の投票日まで、残り数週間を切ったアメリカ大統領選挙。実は同日、もう一つ大統領選挙がある。西太平洋ミクロネシアのパラオ共和国だ。アメリカの制度をそっくり取り入れたので、任期4年、3選禁止も同じで、9月22日に予備選を終え、本選を待つばかりとなっている。人口約1万8000人、面積も屋久島ほどのミニ島嶼国だが、進展する日米豪インドによる自由で開かれたインド太平洋構想、太平洋島嶼国を巡る中国・台湾の綱引き、さらには厳しさ増す米中対立など同国を取り巻く国際環境は大幅に変わった。こちらの大統領選も注目したいところだ。パラオと言えば、日本人にとっては2005年4月の天皇、皇后両陛下(当時)による太平洋戦争の激戦地ペリリュー島への慰霊のご訪問が印象深い。約1万2000人が犠牲となった。有数の親日国、戦前の日本統治の名残で多くの日本語が残る。ダイトウリョウもそうだ。しかし戦後とくに冷戦期後半、地域一帯は米ソ対立の角逐の場となった。1985年、ソ連はミクロネシアのキリバスと漁業協定を締結。漁業権により同国が巨額の金を手にしたのを見たメラネシアのバヌアツも翌年、ソ連と国交を樹立、ソ連は見返りに軍の補給基地や港湾を手にした。しかし89年に冷戦が終わり、91年にはソ連も消滅、ロシアが手を引くと米国もこの地域への関心を後退させていった。取って代わったのが中台だ。親中派の馬英九政権時代は一時休戦したものの、今も「一つの中国」承認を島嶼国に執拗に求める中国と台湾のせめぎ合いが続く。筆者がキリバスを訪れた2007年、かつてのソ連のレーダー基地は、台湾によって熱帯農業の畑に替わっていた。当時のトン大統領が中国との外交関係を止め、台湾に替えたからだ。熱帯農業は台湾の得意の分野のひとつ。指導員の前任地はアフリカのマラウイだった。マラウイはキリバスとは逆に、外交関係を台湾から中国に乗り替えたため、彼はマラウイにいられなくなり転勤してきたのだった。筆者とのインタビューで同大統領は「『一つの中国』はキリバスの政策ではない。どこの国とも友好関係を持ちたい」と語っていた。もっともな話である。太平洋島嶼国の大半の気持ちだと思う。昨年、キリバスはメラネシアのソロモン諸島とともに外交関係を再び中国に戻した。畑は今度、何に使われるのだろうか。太平洋島嶼国の残る台湾承認国はミクロネシアのナウルとマーシャル諸島、ポリネシアのツバル、それにパラオのみとなった。承認替えの決め手は経済援助や投資、つまりお金の力がやはり大きい。「島にとって中国は新しい財源が増えたという認識」(島嶼国ウォッチャー)なのだ。本音は中台の争いに巻き込まれたくなくても、国のサバイバルのため、中国から財源を引き出す国もある。そこでパラオ。現在のレゲンメサウ大統領は2期目、過去にも大統領を2期務めた大物で、これまでに非公式も含めると何十回と日本を訪れた親日派にして親台派のため、ポスト・レゲンメサウが一段と注目されるわけだ。決戦は3500票余りを獲得したウィップス(通名スランゲルJr.)元上院議員と、2000票に少し届かないオイロー副大統領の2人が戦う。ウィップス候補は母親がアメリカ人で、レ大統領支持者の3~5割や女性グループ票などを固め最有力、一方オイロー候補はレ大統領が後継に推したものの票差は大きく、勝利には予備選3位のトリビオン元大統領と4位のシード元上院議員合わせて2000票強の取り込みが不可欠だ。2人とも親中派のため、当選後は台湾から中国への鞍替えが噂されている。このほか、先日亡くなった日系のナカムラ元大統領の名前を冠したナカムラ利権と呼ばれる開発派の票や、親族内の票などもあり、支持層は必ずしも一枚岩とは言えないらしい。「ウィップス候補が地滑り的勝利(6000票以上)をする可能性があり、その場合の対中姿勢は是々非々、オイロー候補が僅差で勝利すると、ナカムラ利権派と親中派が政権中枢に入る可能性もある」とは現地の事情に詳しい島嶼国ウォッチャーの予測だ。選挙に先立ち8月末、エスパー米国防長官がパラオを訪れた。米高官の訪問は86年のシュルツ国務長官(当時)以来とあって、西太平洋におけるアメリカのプレゼンスの再確認とも、中国への牽制とも、さまざまな憶測を呼んだ。さらにレ大統領が港湾や基地、飛行場の建設などを要請し、対米関係の緊密化を改めて求めたことも、選挙後への備えではないかと観測された。片や自由で開かれたインド太平洋構想、片や一帯一路構想、米中の覇権競争に太平洋も波立ち始めたようだ。
- 16 Oct 2020
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米国、ロシアからのウラン購入について「反ダンピング調査停止協定」の20年延長を決定
米商務省は10月6日、今年の年末で満了する予定だった「ロシアからのウラン購入に関する反ダンピング課税調査の停止協定」を2040年まで延長するなど、同協定案の中の複数項目での修正でロシアの原子力総合企業ロスアトム社と合意し、双方がそれぞれの政府を代表して同協定の最終修正版に調印したと発表した。延長された同協定の有効期間中は米国内ウランのロシア産ウラン割合が軽減されることから、商務省のW.ロス長官は「米国の原子力産業界の再活性化につながるとともに、米国の戦略的な利益を長期的に満たすものだ」と評価。トランプ政権が推進する「アメリカ・ファースト」政策が、国際的な通商協定においてさらなる成功を納めたと強調している。米国は1980年代の後半、国内の濃縮ウラン所要量の約12%を輸入しており(※注1)、輸入分の約10%がソ連製の濃縮ウランだったと見られている。分量としてさほど大きいものではなかったが、国内のウラン採掘業者は1991年11月、「ソ連が濃縮ウラン輸出でダンピングを行っている」と商務省に提訴。商務省はその直後に崩壊した旧ソ連邦のカザフスタンやウクライナ、ロシア等に対し、ダンピング停止協定に署名させている。同省はまた、1992年にこれ以上の反ダンピング課税調査の実施を中断する一方、これらの国からのウラン輸出量を制限することを決めていた。今回更新された「反ダンピング課税調査の停止協定」では、修正案がパブリック・コメントに付された9月11日時点の内容が踏襲されており、以下の項目が含まれている。・現行協定を少なくとも2040年まで延長して、ロシア産ウランの輸入量を定期的にチェック。それにより、潜在的可能性として米国の原子燃料サイクルのフロントエンドが損なわれることを防ぐ。・現行協定では、ロシア産ウランの輸入量を米国の総需要量の約20%までとしていたが、今後20年間でこの数値を平均約17%まで削減、2028年以降は15%以下にする。・既存の商業用ウラン濃縮産業の保護策を強化し、同産業が公平な条件の下で競争できるようにする。・国内のウラン採掘業者や転換業者の保護でかつてない規模の対策を講じる。現行協定でロシアは、濃縮役務のみならず天然ウランと転換役務の販売で輸出割り当て枠一杯の利用が許されていたが、修正版ではこの割り当て枠の一部のみ利用が可能。ロシアが輸出できるのは平均で米国の濃縮需要量の約7%相当、2026年以降は5%以下となる。・商務省が今回の協定延長交渉を実施していた時期、あるいはそれ以前に米国の顧客が締結済みだったロシア産ウランの購入契約については、それを全面的に履行することが許される。(参照資料:米商務省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)(注1)出典:広島大学平和センター・友次晋介氏「ロシア解体核兵器の平和利用―メガトンからメガワット計画再訪」
- 08 Oct 2020
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米議会上院、原子力リーダーシップ法案を盛り込んだ次年度の国防予算法案を承認
米国議会上院のエネルギー天然資源委員会は7月23日、「原子力エネルギーリーダーシップ法案(NELA)(S.903号)」を盛り込んだ修正版の国防省2021会計年度(2020年10月~2021年9月)予算法案(国防権限法:NDAA)(S.4049)が、同日の上院本会議において86対14で可決されたと発表した。NELAはエネルギー天然資源委員会のL.マコウスキー委員長(=写真)が昨年3月に提出していたもので、原子力エネルギー開発における米国のリーダーシップの再構築が目的。具体的にはエネルギー省(DOE)が推進している先進的原子炉概念の実証、これらの多くで使われるHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)の供給、および原子力関係の人材育成などに焦点を当てている。NELAが支持する先進的原子炉であれば同委員長が選出されたアラスカ州の遠隔地域や、軍事基地その他の大都市においても安全でクリーンかつ信頼性の高い安価なエネルギーを供給できる大きな可能性があると主張している。共和党員であるマコウスキー委員長と民主党所属のC.ブッカー上院議員は今年6月、NELAに賛同する20名の超党派議員グループ(同委員長とブッカー議員含む)の連名で上院軍事委員会のJ.インホフェ委員長(共和党)とJ.リード幹部(民主党)宛に書簡を送り、NDAAにNELAが盛り込まれるよう支援を要請。この書簡の中で同委員長は、国家安全保障における原子力の貢献を強調した。また、上院本会議におけるNDAA審議の場で、同委員長とブッカー議員はその他の上院議員15名とともに、NELAの文言を盛り込んだNDAAの修正案を提出していた。なお、議会下院では7月21日に下院版のNDAA(H.R.6395)が295対125で可決されたが、これにはNELAが盛り込まれておらず、最終版の可決成立までには双方の内容を擦り合わせる必要がある。マコウスキー委員長は上院採決の後、「革新的な原子力技術の開発は米国の経済や環境、世界的リーダーシップの確保という点で多大な代償をともなうため、米国は非常に長い期間こうした技術の開発で大幅な遅れを取ってきた」と説明。国防省は論理的に見て、先進的原子炉の中でも遠隔地での建設が容易な超小型原子炉の最初の顧客になる可能性が高いとしている。(参照資料:上院・エネルギー天然資源委員会の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 30 Jul 2020
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米国際開発金融公社、国外の原子力開発計画に対する資金提供の禁止措置を解除
米国政府の独立機関として民間の開発プロジェクトに資金提供を行っている国際開発金融公社(DFC)は7月23日、小型モジュール炉(SMR)や超小型原子炉の建設など、国外の原子力開発プロジェクトに対する財政支援を可能とするため、DFCの「環境・社会政策と関係手続き(ESPP)」の中で資金提供の禁止措置を解除したと発表した。DFCはこれまで、これらのプロジェクトへの資金提供を禁じてきたが、今回の政策等の変更により、DFCは十分な電力が得られない発展途上国のコミュニティに適正価格のエネルギーをもたらすとともに経済成長が促されるよう、原子力というCO2を排出しない安全確実な電源を提供するための支援を約束。米国が核不拡散体制の強化に向けた保障措置を促進し国内原子力企業の競争力を増強する一方、独裁的な体制下の国々の資金調達に新たな選択肢を提供することができると述べた。DFCはまた、エネルギー省(DOE)の下に創設された原子燃料作業部会(NFWG)が今年4月、「米国が原子力で再び競争上の優位性を取り戻すための戦略」を公表した事実に言及。今回政策を変更したことで、この戦略の主要な勧告事項――核不拡散政策との整合性や国家安全保障を維持しながら、関連する輸出も拡大するという方針が実行に移されるとしている。DFCの今回の決定は、政策変更の提案について30日にわたって一般国民から意見を募集した後に下された。これには米国議会や政府機関、非政府組織、民間部門など外部の幅広いステークホルダーが参加しており、DFCが受け取った800件以上の見解のうち98%がこの政策変更を支持。中でも、米国議会の議員らは超党派でDFCに新しい政策への転換を勧告。これには上院のC.クーンズ議員やL.マコウスキー議員のほか、下院のA.キンジンガー議員などが含まれている。このような支持を背景に、DFCは世界でも最も厳しい安全基準を順守しつつ、新興国市場に対する先進的原子力技術の輸出を最優先に支援していく考えである。DFCの前身は、米国企業の新興国への投資を支援していた半官半民の海外民間投資公社(OPIC)である。2019年10月に、米国国際開発庁(USAID)の一部と統合・改組した上でDFCが発足した。DFCのA.ベーラーCEOは「世界中の同盟国のエネルギー需要に応えるという米国の支援努力において重要な一歩が刻まれた」と明言。限られたエネルギー資源の中で、DFCは途上国の経済成長を加速する適正な立場に置かれることになったと強調した。DOEのD.ブルイエット長官は今回、D.トランプ大統領が設置したNFWGの主要勧告の実施に向けてDFCが動き出したことを称賛。過去3年以上の間にDOE高官は、米国の民生用原子力技術を切望する国の政府や民間産業界と会談を重ねてきたが、OPICが必要な財政支援を禁じていたことなどから技術の輸出は実現しなかった。同長官によれば、このような禁止措置の解除は世界中のエネルギー供給保証を強化する健全な行動であり、その他の国々が信頼性の高いベースロード電力を国民のために確保しつつCO2の排出量削減目標を達成するのを支援することにもつながるとした。米原子力エネルギー協会(NEI)のM. コースニック理事長も、DFCの決定は米国の国家安全保障や経済成長を加速させるだけでなく、地球温暖化の防止目標達成にも寄与すると指摘。ロシアや中国のように国営原子力企業を有する国との競争では、米国企業が一層公平な条件で戦えるようになると評価している。(参照資料:DFCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 28 Jul 2020
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米国で建設中のボーグル3号機、原子炉容器に「一体化上部カバー」の据え付け完了
米ジョージア州でA.W.ボーグル原子力発電所3、4号機(各110万kWのPWR)を増設中のジョージア・パワー社は5月12日、3号機の原子炉容器上部に「一体化上部カバー(IHP)」を据え付けたと発表した(=写真)。同プロジェクトは米国で約30年ぶりの新設計画であり、3号機の燃料初装荷および両炉それぞれの2021年11月と2022年11月の完成に向け、建設工事はまた一歩前進したと強調している。米国で初めて、ウェスチングハウス社の「AP1000」設計を採用した両炉のIHPは、高さ約15 m、重さ約216トンの一体型機器で、長さ5 km以上の電気ケーブルなどが納められている。高度な訓練を受けた運転員が原子炉容器内の核反応を監視・制御する際に使用する。IHPの据え付けは、原子炉容器を開放した状態で実施する試験に続いて行われたが、同社によればこの試験で、3号機の主要安全システムから原子炉容器まで水流が滞りなく通じることが実証された。また、同炉で燃料を装荷する前の重要試験となる耐圧漏洩試験と温態機能試験の実施準備が整ったとしている。このほか同社は、4号機でも格納容器を取り囲む遮へい建屋のパネル16段のうち12段まで設置したと説明。遮へい建屋は「AP1000」設計に特有の構造で、格納容器の外側に壁をさらに一層追加することで、原子炉構造物を外部からの衝撃から防護することになる。ジョージ―ア・パワー社は3、4号機建設工事の進展では、それぞれ157体の燃料集合体を初装荷燃料として発注し、格納容器に上部ヘッドの設置が完了している。また、緊急時対応で初めての演習を実施し、緊急時に周辺住民を確実に防護するためのプランについて包括的なレビューを行った。さらに両炉の運転で必要な複数年の運転員訓練を、原子力規制委員会(NRC)の検定試験をもって完了した。これらのほかに、過去数か月間には3号機の運転員が機器・システムの試験や安全な起動で重要となる機器をモニター・制御するため、中央制御室の運用を開始。同炉の遮へい建屋には、重さ約910トンの円錐形の屋根を設置している。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 14 May 2020
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米規制委、使用済燃料の中間貯蔵施設建設計画について環境影響声明書案を発行
米原子力規制委員会(NRC)は5月6日、中間貯蔵パートナーズ(ISP: Interim Storage Partners)社がテキサス州アンドリュース郡で建設・操業を提案している使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CISF)について、「サイト周辺の自然環境などに悪影響が及ぶ可能性は認められない」と結論づけた環境影響声明書(EIS)の案文を4日付けで発行、120日間のパブリック・コメントに付したと発表した。NRCスタッフは今後、提出されたコメントを十分考慮した上でEIS最終版を2021年5月にとりまとめる予定。また、同時並行的に実施している安全・セキュリティ面の分析評価に関しても、同じ時期に結果報告書(SER)を公表するとしており、NRCの委員はこれらの文書に基づいてCISFの建設と操業について最終的な可否を判断することになる。ISP社は、米国のウェイスト・コントロール・スペシャリスツ(WCS)社と仏国オラノ社の米国法人が2018年3月に立ち上げた合弁事業体(JV)。同社のCISFは、米エネルギー省(DOE)が2010年にネバダ州ユッカマウンテンで使用済燃料最終処分場の建設プロジェクトを中止した後、中間貯蔵対策として民間で計画されている2つの集中中間貯蔵施設構想の1つである。CISFでは差し当たり第1フェーズで約5,000トンの使用済燃料を貯蔵するが、最後の第8フェーズで合計4万トンまで貯蔵可能となるよう設備を拡張していく。完成すれば、米国全土の商業用原子力発電所から使用済燃料入りのキャニスターを鉄道で同施設まで輸送するとしており、WCS社は2016年4月に同施設を建設・操業するためのライセンス審査申請書をNRCに提出。その後オラノ社とのJV設立を経て、2018年6月に同JVが改めて申請書を提出していた。EIS案文を作成するにあたり、NRCはCISFの建設・操業から使用済燃料の輸送、最終的な廃止措置に至る全段階の環境影響を評価。対象分野はサイトの土壌や地層、表層水と地下水、動植物や史跡/文化財、マイノリティへの配慮など多岐にわたった。また、新型コロナウイルス感染にともなう緊急事態を考慮し、NRCはEIS案文に対するコメントの提出期間を当初計画よりも延長した。この期間中に、アンドリュース郡周辺で複数回の公聴会やWEB上のセミナーも開催する予定で、その際、予備的調査の結果や提出されたコメント等を紹介する。ただし、新型コロナウイルスによる緊急事態の状況に応じて、国民が関わるプランについては今後も継続的に再評価を行うとしている。(参照資料:NRCとISP社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 11 May 2020
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