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米国 国家エネルギードミナンス評議会を設立
米トランプ大統領は2月14日の大統領令により、大統領府内に、エネルギー政策の司令塔となる、国家エネルギードミナンス(支配)評議会を設立した。D. バーガム内務長官が議長を務め、C. ライト・エネルギー省(DOE)長官が副議長を務める。他メンバーには、国務長官、財務長官、国防長官、司法長官、農務長官、商務長官、運輸長官、環境保護庁の管理者、経済政策や国家安全保障問題担当の大統領補佐官らを含む。同評議会は、最終的には国内のエネルギー生産を増やすことによって「エネルギー支配を達成する」ための戦略について大統領に助言することを目的としている。評議会は、大統領から、100日以内に提言と既存の権限下で可能な行動の両方を含む計画の提出を要請されている。同大統領令では、この計画によって「信頼性の高いエネルギーの緊急性など、エネルギー支配に関連する事項について国民的な意識を高める」と指摘。「インフレを押し下げ、経済を成長させ、高賃金の雇用を創出、製造業における米国のリーダーシップを再確立し、人工知能(AI)で世界をリードする。世界中の戦争を終わらせるために商業的および外交的な手段を振るい、力によって平和を回復する。そのためには、信頼性が高く手頃な価格のあらゆる形態のエネルギー生産を拡大しなければならない」と強調する。アメリカのエネルギー支配を政策の基軸に据え、原油、天然ガス、ウラン、石炭、バイオ燃料、地熱など、潤沢な国内資源を活用し、外国からの重要鉱物の輸入依存を減らし、経済を成長させる方針を示している。同協議会は、許認可、生産、発電、流通、規制、輸送、輸出を含むエネルギー産業を取り巻くプロセスを改善するための戦略について大統領に助言する。また、官僚的な形式主義や不必要な規制を廃し、民間部門の投資の拡大、イノベーションの促進など、エネルギー支配を達成するための長期目標を含む、より多くのエネルギー生産を可能にするための国家エネルギー支配戦略を大統領に提出する役目も担う。エネルギー生産の増大という政策目標を実現させる行動の例として、発電設備容量の急速かつ大幅な増加、エネルギーインフラの迅速な承認に加え、閉鎖された発電所の運転再開へ向けた取組みの促進や、小型モジュール炉(SMR)の早期運開を挙げている。
- 28 Feb 2025
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米テネシー州 原子力プロジェクトへの支援を拡大
米テネシー州のB. リー知事は2月10日、州議会において2019年の知事就任から7回目となる一般教書演説を行い、2026会計年度(2025年7月~2026年6月)の予算案について明らかにした。原子力関係予算では7,000万ドル(約105億円)を計上している。リー州知事は、「テネシー州が原子力イノベーションをリードし、アメリカの未来を保障する」と語った。知事自身の提案により2023年、州政府が5,000万ドル(約75億円)を投じて、原子力関連企業の同州への拠点移転支援や同州の大学・研究機関における原子力教育の発展を目的とする原子力基金が創設されている。知事はこの基金の創設を契機に、テネシー州が米国の最先端のエネルギー企業から注目を集めていると指摘。米新興企業のケイロス・パワー社やX-エナジー社のほか、仏オラノ社の米国法人オラノUS社がテネシー州に拠点を置いている現状に言及し、先進的な原子力企業の一層の誘致を目指し、同基金への1,000万ドル(約15億円)の追加投資を予算案に含めていると説明した。ケイロス・パワー社は、テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」にてフッ化物塩冷却高温炉の「ヘルメス」実証プラントの建設工事を開始している。X-エナジー社は、米・大手化学メーカーであるダウ・ケミカル社のテキサス州メキシコ湾沿いに位置するシードリフト市の製造施設で、Xe-100を4基連結させた発電所の建設を計画。また、オラノUS社が遠心分離方式によるウラン濃縮施設の建設候補地に同州オークリッジ市を選定している。また知事は、同州のテネシー峡谷開発公社(TVA)がSMR建設用地として事前サイト許可を有する、クリンチリバー・サイトにおける小型モジュール炉(SMR)開発支援に向けた基金を創設。5,000万ドル(約75億円)を拠出し、テネシー州を次世代原子力のリーダーとして位置づけると表明した。TVAは今年1月、SMRの建設を検討している主要な公益事業会社や開発者、サプライヤー、建設パートナーと共同で、クリンチリバー・サイトにおける、GE日立製のSMR「BWRX-300」の建設を加速するために、DOEの第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから8億ドル(約1,202億円)の助成金を申請している。このほか、原子力関係の予算案には以下を含む。原子力諮問委員会の勧告に従い、原子力関係従業者の教育支援のため、職業教育投資(Governor’s Investment in Vocational Education: GIVE)に1,000万ドル(約15億円)の追加投資。商業用核融合発電のための米国初の規制枠組みの策定に260万ドル(約3.9億円)。さらに知事は、米国全土および世界中から、米南東部への移転を検討している多くの企業関係者と会うが、その決断は、エネルギー、労働者の有無に左右される、と言及。原子力が労働者階級の家庭にとって重要なのは、エネルギーがなければ、経済発展も雇用創出も無くなるからだ、と強調した。知事は、新興企業、新技術、研究開発を戦略的に支援し、経済の多様化、雇用の促進を図るほか、職業訓練、技術教育を拡大し、テネシー州の若者たちに雇用を確保し、テネシー州が米国最大のイノベーターたちの新たなフロンティアになることを目指す、との決意を表明した。
- 20 Feb 2025
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米国 アリゾナ州で新規建設案が浮上
米アリゾナ州のアリゾナ・パブリック・サービス(APS)社は2月5日、同州にある他電力会社2社と、州内において原子力発電の追加導入を検討すると発表した。APS社はアリゾナ州最大の電力会社。石炭火力発電所の他、州都フェニックス市の西に位置するパロベルデ原子力発電所(PWR×3基、各141.4万kWe)を1986年から運転している。同州のソルト・リバー・プロジェクト(SRP)社、ツーソン電力(TEP)社とともに、同州の増大するエネルギー需要に対応するため、先進的な原子炉の導入可能性評価に共通の関心を持っている。APS社はSRP社およびTEP社と協力して、原子力発電所の新規建設を検討し、閉鎖予定の石炭火力発電所を含む、幅広い候補地を評価する取組みを主導する。3社は、原子力は信頼性が高く、安価でクリーンなエネルギーであり、経済成長に貢献する、多様なエネルギーミックスの重要な構成要素であるとの認識で一致している。APS社のT. ゲイスラー社長は、「アリゾナ州のエネルギー需要が急激に増大する中、原子力発電所の新規建設には10年以上かかる。エネルギー源の選択肢の検討を今すぐ始めなければならない。他のエネルギー源とともに新たな原子力発電の実現可能性を評価していく」と語った。3社は追加の原子力発電所として、小型モジュール炉(SMR)と、可能であれば大型炉の設置を検討している。アリゾナ州で建設候補地の予備調査を開始するにあたり、すでに米エネルギー省(DOE)のクリーンエネルギー実証局(OCED)および原子力エネルギー局(NE)による第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラム下の助成金を申請している。助成が承認されれば、3年間のサイト選定プロセスと、米原子力規制委員会(NRC)への事前サイト許可(ESP)申請に向けた準備が加速されることになる。3社は共同作業により、早ければ2020年代遅くにサイトを選定、2040年代初めには追加の原子力発電所の運転開始を計画している。
- 17 Feb 2025
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米国 DOE長官にライト氏
米上院は2月3日、C. ライト氏の第17代エネルギー省(DOE)長官就任を承認した。賛成59票、反対38票、棄権3票だった。ライト長官は、長官就任後に声明を発表。「トランプ大統領は、アメリカのエネルギー支配を回復するための大胆で野心的なアジェンダを示した。このビジョンの重要な要素は、米国がエネルギー開発とイノベーションにおいて世界をリードすること。DOEは、官僚的な形式主義を排除、常識的な解決策を優先し、米国人の創意工夫を育てることによって、これらの目標を達成していく」「米国民の増大するエネルギー需要を満たすため、米国の潤沢なエネルギー資源を開発し、グローバル・パートナーシップを強化し、新技術を進歩させることによって、エネルギーにおけるリーダーシップを強化する」「アメリカのエネルギーを解き放ち、人々の生活を向上させる」と抱負を語った。長官就任前の1月15日、上院のエネルギー・天然資源委員会でC. ライト長官候補に対する公聴会が開催された際に同氏は、「私の人生の情熱は、人々の生活をより良くすることであり、人々を貧困から救い出すためのエネルギー源に私のキャリアのすべてを費やしてきた。トランプ(次期)大統領はエネルギーに対する私の情熱を共有しており、長官として、手頃な価格で、信頼性が高く、安全なあらゆる形態の米国のエネルギーを活用して、彼の大胆な政策を断固として実施するために尽力する」と宣言。「エネルギーの優位性を回復するために、国内外で米国のエネルギーを解き放つ」「技術革新で世界をリードし、国際競争に勝つため商業用原子力や液化天然ガスを含むエネルギー生産を拡大し、エネルギーコストを削減していく」「そのためには、官僚主義の排除、民間投資の促進、家庭や企業にとってエネルギーをより手頃な価格にするために必要なインフラの構築を優先し、その際に障壁となる許認可プロセスを見直していく」と強調していた。なお同氏は、米国の長期的競争力の確保、エネルギー自立、および国家安全保障のために、原子力エネルギーと先進的原子力ソリューションの研究や新規原子力発電所の建設は不可欠と強調。データセンターや人工知能による電力需要が急増する中、原子力のような大規模なベースロード電源はエネルギー需要を満たし、重要な役割を果たすと指摘。その上で、DOEの先進原子炉実証プログラム(ARDP)の目標と、海外の敵対国の影響力増大に対抗する国内での濃縮ウラン生産の増強やHALEU燃料供給に係わる取組みを支持すると述べた。気候変動問題については、現実的かつ地球規模の課題であるとの認識を示し、異常気象に対処するための最善の道は、低コストで信頼性があり、安全な低炭素エネルギーを提供できるエネルギー技術を大幅に改良することであり、DOE傘下の国立研究所や民間セクターによる最先端の研究によって推進される絶え間ないイノベーションが必要と訴えた。ライト長官は、自らを科学オタク、技術オタク、生涯エネルギー起業家と紹介。マサチューセッツ工科大学で核融合を学び、カリフォルニア大学バークレー校の大学院で太陽エネルギーとパワーエレクトロニクスを研究したという。2011年にリバティ・エナジー社を創設し、石油、天然ガス、次世代地熱発電に取組み、次世代原子力エネルギーおよび新バッテリー技術の分野でも業務提携の経験を有する。マイクロ炉「オーロラ」と核燃料リサイクル開発を進めるオクロ社の取締役も務めた。長官就任を機にこれら民間企業の職は辞すという。なお上院は1月30日、D. バーガム氏の内務長官就任を承認した。同氏は、トランプ大統領にエネルギー政策の司令塔として新設された「国家エネルギー評議会(NEC)」の議長に昨年11月に指名されている。また、トランプ大統領は1月20日、D. ライト氏を米原子力規制委員会(NRC)の委員長に指名した。トランプ大統領は、バイデン前政権が進めた気候変動対策の重視から、化石燃料の積極開発へとエネルギー政策を大転換。大統領就任初日の1月20日に発令した多くの大統領令のうち、エネルギーや気候変動問題に関連するものでは、国内のエネルギー生産の増加と気候・環境規制の縮小の方針が示された。 「国際環境協定における米国第一主義」と題する大統領令では、気候変動に関する国際連合枠組条約に基づくパリ協定からの米国の再離脱を指示。米政権は1月27日に国連に通知しており、1年後に正式脱退となる。このほか、グリーン・ニューディールの終了と称し、気候危機への取組みに係る前政権の多くの大統領令や規制措置の撤回や改訂がなされ、2022年インフレ削減法のエネルギーインフラ規定の実施もその対象となっている。
- 05 Feb 2025
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米TVA SMRプロジェクトのパートナーを選定
米テネシー州のテネシー峡谷開発公社(TVA)は1月23日、テネシー州オークリッジ近郊にある同社のクリンチリバー・サイトにおける小型モジュール炉(SMR)の建設プロジェクトの初期計画と評価にあたり、米国のベクテル社とサージェント&ランディ社、およびGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社をパートナーに選定し、スケジュールとコスト見積りを共同で作成することを明らかにした。作業期間は1~2年以内と見込んでいる。建設にあたっては、作業プロセスの統合を促進させる、統合プロジェクトデリバリー(IPD)モデルを採用する。TVAの技術協力パートナーである加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社も、IPDモデルを発電プロジェクトに採用し成功を収めており、オンタリオ州のダーリントン・サイトにおけるSMR「BWRX-300」建設プロジェクトでも同モデルを活用しているという。TVAクリンチリバー・プロジェクトのB. ディーシー上級副社長は、「目標とする予算とスケジュール遵守のために企業間で協力し、リスクを共有、コストを削減していく」と語った。TVAはクリンチリバー・サイトについて2019年12月、米原子力規制委員会(NRC)より、SMR建設用地として事前サイト許可(ESP)を取得済み。TVAは合計電気出力が80万kWを超えない2基以上のSMRを同サイトで建設することを想定し、2016年5月にNRCにESPを申請していた。またTVAは、GEH社のBWRX-300(BWR、30万kWe)がSMRの中でも最も実現性が高いと判断。2022年8月にGEH社とクリンチリバー・サイトでBWRX-300を建設するための計画策定と予備的許認可を支援する契約を締結。さらに、2023年3月、BWRX-300の建設を計画している加OPG社、ポーランドのシントス・グリーン・エナジー社とともに、GEH社が世界中で同炉の建設プロジェクトを円滑に進められるよう、BWRX-300の標準設計を開発することで合意、GEH社と3事業者間で技術協力契約を締結した。なおTVAは1月17日、ベクテル社、BWXテクノロジーズ社、デューク・エナジー社、電力研究所(EPRI)、GEH社、アメリカン・エレクトリック・パワー社(AEP)傘下のインディアナ・ミシガン・パワー社、サージェント&ランディ社などから構成されるパートナー連合を結成し、米エネルギー省(DOE)の第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから8億ドル(約1,242億円)の助成金を申請したことを発表している。ただしTVA理事会は、クリンチリバー・サイトでのSMR建設を承認する決議をまだ行っていない。理事会の承認とDOEの助成金交付により、BWRX-300建設の初期活動の加速化が期待されている。またGEH社による同日17日の発表によると、デューク・エナジー社とBWRX-300の標準設計ならびに許認可を進める活動に投資する契約を締結した他、AEP社がインディアナ州スペンサー郡にあるインディアナ・ミシガン・パワー社のロックポート石炭火力発電所サイト内にBWRX-300を設置する可能性について表明したという。DOEの助成金プログラムは2024年、米国内の原子力産業を強化し、米国初のSMR配備への支援、先進原子力技術のサプライチェーンの確立を目的に創設された。TVAのJ. ライアッシュCEOは、「この助成金が交付されれば、クリンチリバー・サイトでのSMRの建設が2年前倒しされ、早ければ2033年に営業運転が開始される」「この資金調達により、国内のサプライチェーンの確立を支援し、コストとリスクを軽減するための教訓とベストプラクティスを共有することで、より広範なSMR展開への道が開かれる」と指摘した。
- 04 Feb 2025
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米オクロ社 データセンターの電力供給を加速
米国で先進炉と核燃料リサイクル開発を進めているオクロ社は1月17日、常用電源および非常用電源のプロバイダーであるRPower社と覚書を締結し、オクロ社が開発中の高速炉「オーロラ」発電所の電力とRPower社の天然ガス発電を組み合わせ、データセンター向けの電力供給モデルを展開していくことを明らかにした。RPower社は2021年に設立。重要インフラ企業に電力を提供することに特化しており、データセンターや石油・ガス産業を含むエネルギー集約型産業へのサービスに重点を置いている。オクロ社の顧客基盤は拡大しており、現在の受注残は1,400万kWに達しているという。オクロ社はRPower社と協力して、当面および長期的なエネルギー供給の問題に取り組む。将来的には天然ガス発電への依存から脱却し、拡張性のある持続可能な運用を可能にするとともに、原子力との組み合わせによって大規模容量の電力を必要とする既存のユーザーの他、新規の顧客も獲得したい考えだ。またオクロ社は1月28日、先進的な核燃料技術開発企業である米ライトブリッジ社と、燃料製造施設の共同建設に向けた実行可能性調査を実施、ならびに先進燃料リサイクルに関する協力を模索するための覚書を締結したことを明らかにした。両社は、オクロ社が開発する商業用燃料製造施設にライトブリッジ社の商業用燃料製造施設を併設することで、先行資本支出と継続的な運営費の両面で大きな相乗効果をもたらすことで合意。両社の持続可能な原子力エネルギーソリューションへの取組みは共通しており、先進的な燃料リサイクル技術開発において協力することによる新たなフロンティアの開拓に意気込みを示した。オクロ社は米エネルギー省(DOE)からアイダホ国立研究所(INL)敷地内に液体金属高速炉のマイクロ炉の「オーロラ」を建設するサイト使用許可を取得。INLから燃料材料の提供を受け、DOEおよび傘下の国立研究所と協力して先進的な燃料リサイクル技術の開発に取り組んでいる。ライトブリッジ社も二酸化ウランではなく金属ウラン合金を使用したLightbridge Fuelを開発。DOEの「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」プログラムから過去数年にわたり、Lightbridge Fuelの開発を支援する助成金の交付を受ける他、マサチューセッツ工科大学とテキサスA&M大学におけるDOEの原子力エネルギー大学プログラムを通じて、大学主導の研究に参加している。
- 31 Jan 2025
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米国 WE社が月面マイクロ炉開発を継続へ
米ウェスチングハウス(WE)社は1月7日、米航空宇宙局(NASA)と米エネルギー省(DOE)から月面に原子炉を設置する「月面原子力発電(FSP)」プロジェクト向けのマイクロ炉の概念設計開発を継続する契約を獲得したことを明らかにした。FSPプロジェクトは、NASAが米DOEとアイダホ国立研究所(INL)と協力して実施。月面や将来的には火星での使用も想定する、信頼性の高い電力供給源となる小型の発電用核分裂炉の概念設計の開発に重点を置いている。INLから獲得した今回の新契約は、フェーズ1でWE社が完了した設計作業をベースに、FSPシステムの設計と構成を最適化し、重要な技術要素の試験を開始するもの。NASAはフェーズ1の契約を延長して更に情報を収集、リスクの低いシステム設計をするための要件を設定し、フェーズ2で月面実証の最終的な原子炉設計の依頼を計画する。FSPプロジェクトの継続的な進展により、NASAが掲げる今後10年以内の月面実証という目標の達成が期待されている。NASAによると、FSPシステムは比較的小型で軽量なほか信頼性も高く、日射量等の自然条件や場所を選ばずに継続的に電力供給が可能。月面でFSPシステムの能力を実証し、火星等への長期ミッションに道を拓きたい考えだ。WE社は月や火星、その他の惑星軌道上にある宇宙探査機への電力供給や地表面での設置を目指して、マイクロ炉「eVinci」の小型版を開発している。eVinciは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却の可搬式原子炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要。近いうちにINL内で国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営するマイクロ炉のテストベッドで試験を行う予定である。月や火星、その他の惑星軌道上にある宇宙探査機への継続的な電力供給や地表面での設置において、設計がシンプルな同炉は、信頼性の高い自動稼働式の低質量発電システムを月面や人工衛星等に構築する技術として理想的であると、WE社は指摘する。また、この頑丈な炉は可動部分が非常に少なく、故障箇所を減らすことでミッションに応じて柔軟に対応可能。また、操作が簡単で、過酷な宇宙環境にも耐える高い信頼性を実現するとしている。WE社は2022年6月、宇宙用原子力技術の開発で協力中のNASAとDOEから、月面で稼働可能なFSPシステムの概念設計の提案企業に選定された。NASAの主導により有人宇宙飛行、月面着陸および持続的な探査活動を目指す「アルテミス計画」では、2020年代末までにFSPシステムを月面に設置するため、NASAとDOEはこれに間に合うようWE社を含む3社を選定。当初の仕様には、月面環境下で少なくとも10年間連続稼働する電気出力40kWであることのほか、システムが直径4メートル、長さ6メートルの格納シリンダー内に収まること、システムの総重量が6トン以下であること、月面着陸船のデッキまたは別の移動システムからの自律運転が可能であることなどが含まれていた。3社はシステムの初期概念設計を開発するため、INLと12か月契約を締結、各社に約500万ドルが支払われた。WE社は2023年6月、月着陸船やローバーの設計や配備を行うアストロボティック社と、NASAと国防総省(DOD)の宇宙開発技術プログラムでの協力可能性を探る了解覚書を締結している。
- 23 Jan 2025
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米WEと韓国企業 知的財産権をめぐる紛争を終結
米ウェスチングハウス(WE)社は1月16日、韓国電力公社(KEPCO)ならびに韓国水力・原子力(KHNP)との間で、知的財産権に関する紛争の終結で合意したことを明らかにした。併せて、WE社は韓国の両社と協力して、現在係争中の訴訟をすべて取り下げる予定であると表明。なお、和解の条件については、当事者間の合意により機密事項となっている。WE社のP. フラグマンCEO(今年3月末にCEOを退任予定)は、「世界的にベースロード電源の需要が高まる中、この合意は両社による新たな原子力プロジェクトを推進するための協力関係の基盤となる」と述べた。一方、KHNPのJ. ファンCEOは、「今回の合意は、両社のより一層緊密な協力関係を構築する契機となる」とし、世界市場での協力体制と競争力を強化する方針だ。この和解を受け1月16日、米エネルギー省(DOE)のJ. グランホルム長官は声明を発表、「民生用原子力部門で数十万人の雇用創出を維持し、数千億ドルの協力プロジェクトを進める道を開く可能性のある大きな成果。私はこれら関係企業とリーダーたちの献身、決意、忍耐力に感謝している」と述べた。WE社は、韓国のAPR1000やAPR1400が同社の技術を組み込んでおり、KHNPはWE社の同意なしに第三者にサブライセンス供与する権利も有しておらず、米政府から技術輸出に必要な承認を取得する法的権利を有しているのはWE社だけであると主張。知的財産権と輸出管理をめぐり、2022年以降、KEPCOならびにKHNPと係争を繰り広げてきた。国際仲裁ならびに米国での訴訟が進行しており、WE社は仲裁が2025年後半までに決着する可能性は低いとみていた。こうしたなか1月8日、米DOEと韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、2024年11月に仮調印していた、原子力輸出及び協力の原則に関する覚書(MOU)に正式調印。両政府が、原子力輸出協力の意向を明確に示したことにより、両企業間の交渉が今後円滑に進む可能性が指摘されていた。
- 20 Jan 2025
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米テラパワー 主要機器の供給者を決定
米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は12月18日、同社が開発する先進炉「Natrium」の主要機器の製造契約を締結したと発表した。製造されるコンポーネントと契約先は以下のとおり。原子炉ヘッド:スペイン・Equipos Nucleares(ENSA)炉心バレル、原子炉容器ガードベッセル、炉内構造物:韓国・斗山エナビリティ(旧斗山重工業)原子炉容器:韓国・HD現代重工業回転プラグ:カナダ・Marmenテラパワー社のC. レベスクCEOは、「Natriumはゲームチェンジャーな先進炉。初号機の建設に向けた適切なベンダーチームの結成により、この先進炉を商業化し、世界的なエネルギー需要の高まりに応えていきたい」と抱負を語った。Natriumは34.5万kWeのナトリウム冷却小型高速炉。熔融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを備え、負荷追従運転が可能。ピーク時には電気出力を50万kWまで上昇させ5.5時間以上稼働する。初号機は、電気事業者パシフィコープ社がワイオミング州南西部のケンメラーに所有する閉鎖予定の石炭火力発電所の近くに建設される。テラパワー社は、Natriumがクリーンエネルギーを生産するだけでなく、閉鎖する石炭火力発電所に代わり、エネルギー生産地域の経済を支え、建設やその後の運転期間における雇用を促進すると見込んでいる。同社は今年3月、米原子力規制委員会(NRC)に建設許可を申請、6月には起工式を挙行し、非原子力部の建設工事を開始した。Natriumは2020年10月、米エネルギー省(DOE)が支援する先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の「5~7年以内に実証可能な炉」に選定されたプロジェクトの1つである(もう1つは、X–エナジー社の高温ガス炉「Xe-100」)。テラパワー社はARDPを通じて、Natriumの設計、建設、運転特性を検証する。原子力部の着工は早くて2026年、運転開始は2030年を予定している。なお、テラパワー社は、マイクロソフト社創業者のビル・ゲイツ氏が設立、会長を務めるベンチャー企業。
- 24 Dec 2024
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米DOE 濃縮ウラン契約の供給者6社を選定
米エネルギー省(DOE)の原子力エネルギー(NE)局は12月10日、「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、米国における新たなウラン生産能力の拡大にインセンティブを与えるため、低濃縮ウラン (LEU) の調達契約を締結する6社を選定した。燃料分野において、ロシアの影響を受けない強靭なサプライチェーンを構築しつつ、全米の消費者が安価で信頼できる電力と高賃金のクリーンエネルギー関連の雇用を保証する、米政権の肝入りの施策である。DOE原子力局のM. ゴフ首席次官補代理は、「今回の調達契約は、米国におけるウラン濃縮能力の安全かつ責任ある構築を促進するもの。米国のエネルギー安全保障を強靭にするため、米国内における濃縮ウランの生産能力を向上させなければならない」として、今回の契約締結の意義を強調した。DOEが調達契約を締結したのは以下の6社。LEU供給で競争原理を生み出し、強力な投資の促進をねらう。American Centrifuge Operating, LLC(セントラス・エナジー傘下)General Matter, IncGlobal Laser Enrichment, LLCルイジアナ・エナジー・サービシーズ社(ウレンコ傘下)Laser Isotope Separation Technologies, IncOrano Federal Services, LLCDOEはLEUの新たな国内生産能力を掘り起こし、米国の既存の原子力発電所のほか、将来の先進炉の国内外での展開に必要な燃料供給を確保したい考えだ。DOEはこれらの契約を通じ、濃縮施設の新設、または既存の濃縮施設の拡張により生産されるLEUを購入する。契約は最長10年間、基本報酬として各社に最低200万ドル(約3.0億円)を支払う。DOEは今年6月、米国内産のLEU購入に関する提案依頼書(RFP)を発行。「米国への投資」アジェンダから27億ドル(約4,148億円)を支援することとしている。米国において、原子力は総発電電力量のほぼ2割を供給しており、急速に増加する電力需要を満たし、CO2削減が困難な産業プロセスと運輸部門の脱炭素化に貢献する最大のクリーンエネルギー源。米国のクリーンエネルギーへの移行において重要な役割を果たすと考えられている。米国は2023年にアラブ首長国連邦(UAE)で開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)において、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にするという公約を共同で主導した。この公約の達成には、米国は追加の原子力発電容量を配備する必要があるが、これには大型炉のほか、小型モジュール炉(SMR)、マイクロ炉など、あらゆる規模の新しい原子炉が含まれる。さらに既設炉の運転期間延長、出力向上や、閉鎖炉の運転再開を想定。これら設備容量拡大には、安定した燃料供給源が必要となる。ロシアは現在、世界のウラン濃縮能力の約44%シェアを保有。米国が輸入する燃料の約35%をロシア産が占める。J. バイデン大統領は今年5月、ロシアからのLEU輸入禁止法案に署名し、8月に発効した。一方で、米国の既存の原子力発電所が運転を中断することのないようDOEは、DOE長官が国務長官および商務長官と協議の上、特定の状況下で特定量のロシア産LEUに免除を与えるプロセスを発表。この規定に基づく免除は、2028年1月1日までに終了する。ロシアは11月、対抗措置として、ロシア産濃縮ウランの米国への一時的な輸出制限を決議した。脱炭素化やロシア産原子燃料への依存の回避、エネルギーセキュリティの強化を要因とする、世界的な原子力発電への評価の高まりを受け、世界的に濃縮役務の需要が増加している。英国に本拠地を置く、グローバルな濃縮事業者であるウレンコ社は、米国における濃縮ウランの需要増に応えるため、同社(ウレンコUSA)がニューメキシコ州ユーニスで操業する、米国で唯一の商業用濃縮プラントを拡張し、生産能力の拡大を目指している。同プラントは現在、米国の電力会社の濃縮ウラン需要の約1/3をカバーしている。なお、米原子力規制委員会(NRC)は12月11日、ウレンコUSAに対し、ウラン濃縮レベルを最大10%に引き上げるライセンス修正を承認した。NRCの承認により、既存の原子力発電所の燃料交換期間の短縮や、一部の先進炉への燃料供給が可能となる。
- 18 Dec 2024
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次世代炉導入に向け各国が協力体制を構築
SMRなどの革新的な原子炉の導入に向け、各国が協力体制を構築している。このほど米国はリトアニアと政府間協定を、英国はフィンランドと協力覚書を締結した。米エネルギー省(DOE)のJ. グランホルム長官とリトアニアのD. クレイビス・エネルギー相は11月26日、米国のワシントンで、リトアニアの民生用原子力発電プログラムの開発に協力する政府間協定を締結した。同協定は、特に第4世代小型モジュール炉(SMR)のリトアニアへの導入に焦点を当てた、米国初となる政府間枠組み。米国は、リトアニアと次世代炉開発における知見を共有するとともに、第4世代のSMRのビジネスモデル分析と開発可能性評価を実施し、リトアニアが掲げる2050年までのネットゼロ達成目標を支援する。リトアニアは、2025年2月に同国を含むバルト三国がロシアの電力網から完全に切り離され、欧州の電力網に接続する予定で、欧州域内でエネルギー輸出国としてシェアを拡げたい考えだ。協定ではSMR導入に係る協力に加えて、リトアニアにおける最高水準の安全とセキュリティの促進や民生用原子力施設の核物質防護・セキュリティの強化のほか、廃止措置、燃料管理、人材育成に係るベストプラクティスなどを協議する専門家交流も想定している。グランホルム長官は「安全、クリーンで信頼性の高い原子力エネルギーは、リトアニアのエネルギー政策上のカナメとなる」と強調。クレイビス・エネルギー相は、「リトアニアの増大するエネルギー需要を満たし、ネットゼロ目標の達成のため、米国の次世代炉開発の知見に期待している」と述べるとともに、リトアニアの地政学的な安全保障、長期的な経済成長、技術力向上にも資する、本協定の意義を強調した。リトアニアでは、イグナリナ原子力発電所(軽水冷却黒鉛減速炉:RBMK-1500×2基、各150万kWe)が1980年代から稼働していたが、欧州連合(EU)は、チョルノービリと同型であるRBMK炉の安全性への懸念から閉鎖を要求、リトアニアはEU加盟と引き換えに同発電所を2009年までに閉鎖した。イグナリナ原子力発電所近傍のヴィサギナスに日立製作所が主導する新規原子力発電所プロジェクトも浮上したが、福島第一原子力発電所の事故により、原子力発電に対する国民の支持は低下。2012年の同プロジェクトへの支持を問う国民投票では、新規建設に対する否定的な意見が優勢となり、計画は2016年に凍結された。リトアニアの総発電電力量は約57億kWh(2023年実績)で、その内、約73%を再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力)、約11%を火力発電(天然ガス)が占める。現在の電力消費量は約120億kWh。エネルギー部門の脱炭素化と電化には大量の追加電源が必要であり、2050年代には約6倍の740億kWhへの増大を予想する。そのため、エネルギーシステム全体の均衡を保ち、再生可能エネルギーへより多く投資することを可能にするSMRの導入を推進したいとし、2028年にはSMR建設の決定を目指している。 英国はフィンランドと一方、英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)とフィンランド経済雇用省は11月18日、民生用原子力エネルギー分野における協力覚書(MOU)を締結した。協力の対象分野は、SMRや先進モジュール炉(AMR)のような革新技術の導入、既存・新設炉を対象とした燃料供給の多様化、SMRやAMRの効率的な導入に係わる規制組織間の意見交換、資金調達、使用済み燃料最終処分を含む放射性廃棄物管理と廃炉、原子力安全とセキュリティ、人材育成など。これらの分野で知見やベストプラクティスを共有し、両国の産官学の政策・技術・学術関係者の交流や、民間企業間の緊密な協力によるビジネスの機会の促進を図る。両政府は、SMRやAMRなどの新原子力技術が、エネルギーセキュリティと気候変動の双方に革新的な解決策となる可能性を認識。発電だけでなく、熱生産および水素製造、その他の非電力用途の原子力技術の研究開発でさらに協力する機会を模索したいとしている。今回のMOUにより、英国の輸出信用機関である英国輸出信用保証局(UKEF)は、英国の商品やサービスを購入するフィンランドを拠点とするプロジェクトに対し、最大40億ポンド(約7,600億円)の融資支援が可能となる。UKEFは、英国製SMRのフィンランドへの導入を念頭に置いている。フィンランドの輸出信用機関であるフィンベラ(Finnvera)も、フィンランドの商品やサービスを購入する英国を拠点とするプロジェクトに対して同様に資金提供が可能になるという。
- 04 Dec 2024
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米国とウクライナ SMR導入プロジェクトで連携
アゼルバイジャンのバクーで開催された国連気候変動枠組条約第29回締約国会議 (COP 29)会期中の11月16日、米国のB. ジェンキンス国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)とウクライナのG. ガルシェンコ・エネルギー相は「小型モジュール炉(SMR)の責任ある利用のための基礎インフラ(FIRST)」プログラム下で実施する、三つのプロジェクト・パートナーシップを発表した。気候目標の達成、エネルギー安全保障、経済成長、先進的な原子力エネルギー利用において、ウクライナの戦後のリーダーシップ展望を支援するのが目的。FIRSTは米国務省(DOS)が主導し、核セキュリティ、原子力安全、核不拡散に関する最高レベルの国際水準の下で、エネルギー安全保障とクリーン・エネルギーの目標達成にSMRの可能性を探る国々を支援する。発表イベントには、駐アゼルバイジャンY. フシェフ・ウクライナ大使、米エネルギー省(DOE)M. ゴフ次官補代行、米アルゴンヌ国立研究所P. カーンズ所長、米電力研究所(EPRI)N. ウィルムハースト上級副所長も参加し、3,000万ドル(約46.2億円)を投じて、以下の三つの支援プロジェクトを開始する。SMRクリーン燃料パイロットプラント建設(フェーズ2)(Clean Fuel Project)ウクライナにSMRパイロットプラントを建設し、農業肥料の主成分である水素とアンモニアの生産を実証する。日本、韓国、ウクライナ、米国の多国籍官民コンソーシアムによって実施(COP 27で発表されたフェーズ1に続く)。プロジェクト・フェニックス中・東欧で進行中のプロジェクト・フェニックスを拡張し、ウクライナの石炭火力発電所を既存インフラを活用したSMR発電所にリプレースし、人材の再訓練を促進する。サイト調査と実現可能性調査を実施、包括的な送電網の統合戦略を策定し、石炭からSMRへの転換に関する助言を行う。SMRによるクリーン・スチール・ロードマップの作成(Clean Steel Project)SMRを利用した、ウクライナ鉄鋼産業の再建、近代化、脱炭素化のためのロードマップを作成、技術支援を行う。鉄鋼の生産にSMRによる電力、プロセス熱、水素を利用する道を開く。ガルシェンコ・エネルギー相はオンライン・スピーチで、「ウクライナは原子力に未来を託している。我が国はチョルノービリ事故を乗り越え、現在はロシアによる欧州最大の原子力発電所であるザポリージャ発電所の占拠という前代未聞の困難に直面しているが、既存の原子力発電所の近代化、新規原子力発電所の建設計画を実行し、前進を続ける」と語った。ウクライナでは、老朽化やロシアの攻撃により損傷した火力発電所のSMRへのリプレースを検討するほか、SMRの建設候補地として、チョルノービリ原子力発電所の周辺ならびに立入禁止区域内も検討されている。今年10月初め、国家立入禁止区域管理庁(SAUEZM)、原子力発電会社エネルゴアトム社、およびチョルノービリ原子力発電所の専門家が現地を視察、これらの場所がSMR建設に適しているか技術的な検討を行っている。なお、エネルゴアトム社は、エネルギー戦略の一環としてSMR導入計画を進めており、SMR開発会社と多くの協力覚書を締結している。
- 26 Nov 2024
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米規制委 実証炉「ヘルメス2」の建設許可発給へ
米原子力規制委員会(NRC)は11月20日、米ケイロス・パワー社によるテネシー州オークリッジでの「ヘルメス2」実証プラント建設プロジェクトに関し、建設許可の発給を決定した。近く発給される見込み。ヘルメス2は、米国で建設が承認された初の第4世代の発電炉(2万kWe)となる。ケイロス社は2023年7月、NRCにヘルメス2の建設許可を申請。NRCは2024年7月に最終安全性評価を、2024年9月にサイトの最終環境アセスメントを公表していた。ヘルメス2の稼働にあたっては、別途、NRCによる運転認可の審査と承認が必要である。今回のヘルメス2の建設許可発給の決定にあたり、NRCのC. ハンソン委員長は、「安全性を最優先にしながら、許認可手続きは非常に効率的に行われ、18か月足らずで発給を決定した。期間の短縮は、以前の審査で用いた関連する結論を迅速に適用した結果である」と述べた。迅速化には、簡素化されたヒアリング手続きの効果もあるという。ヘルメス2は、米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」に建設されるヘルメスに隣接。ヘルメスで採用される、フッ化物塩冷却高温炉(非発電炉、3.5万kWt)を2基ならびに共有する発電設備(2万kWe)を備える。安価でクリーンな熱生産を実証するため、TRISO燃料(3重被覆層・燃料粒子)と熔融フッ化物塩冷却材を組み合わせ、原子炉設計を簡素化しているのが特徴。2023年12月、NRCはヘルメスの建設許可を発給、今年7月には、土木工事(掘削作業)が開始されている。ヘルメスは、2023年12月、米原子力規制委員会(NRC)が50年以上ぶりに建設を許可した非水冷却炉で、2027年に運開予定だ。ケイロス社はこれらのヘルメス・シリーズで得られる運転データやノウハウを活用して、技術面、許認可面および建設面のリスクを軽減し、コストを確実化して、2030年代初頭に商業規模のフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR」(32万kWt、14万kWe)の完成を目指している。ケイロス社は今年10月、米IT企業大手Google社と、ケイロス社が開発する先進炉を複数基、合計出力にして最大50万kWeを2035年までに導入し、Google社のデータセンターに電力を供給する、電力購入契約(PPA)を締結している。
- 25 Nov 2024
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米ラディアント マイクロ炉開発に進展
米エネルギー省(DOE)は11月14日、スタートアップ企業のラディアント社が、アイダホ国立研究所(INL)で同社製マイクロ炉「Kaleidos」プロトタイプの試験に向けて、基本設計・実験機設計(Front-End Engineering and Experiment Design:FEEED) プロセスを完了したことを明らかにした。マイクロ炉「Kaleidos」は、早ければ2026年半ばにもINL内で国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営する世界初のマイクロ炉のテストベッドで試験を開始する。ラディアント社のT. シバナンダン最高執行責任者は、「FEEEDプロセス完了は大きなマイルストーン。多くの設計レビューを行い、概念安全設計報告書も提出。すべて予定通り、予算内で実施した」と語り、INL/NRICとの今後の連携に意欲を示した。米エネルギー省(DOE)は2023年10月、国内でマイクロ炉を開発するウェスチングハウス(WE)社、ラディアント(Radiant)社、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)の3社に対し、FEEEDプロセスの実施に向けて総額390万ドルをNRICを通じて提供。具体的には、燃料を装荷する実験炉の設計、機器製造、建設、およびNRICのマイクロ炉実験機の実証(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)用テストベッドを使った試験の計画策定を目指している。DOMEテストベッドは、INLで30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」の格納ドームを利用してNRICが改修中。同テストベッドはHALEU燃料を使用する最大熱出力2万kWの先進的な実験用原子炉を収容、初臨界時には安全性を重視した閉じ込め機能を持つ。産業界による新技術開発に伴うリスクを軽減して開発を促進させ、先進的な原子炉設計を概念段階から実証段階へと進め、実用化と商業化への道筋をつけることを目的としている。ラディアント社は引き続き、NRICと協力して「Kaleidos」試験計画の最終調整や、テストベッドへの設置に向けた長納期品の確保に着手する。なお、米WE社のマイクロ炉「eVinci」はFEEEDプロセスを今年9月に完了している。USNC社は高温ガス冷却マイクロ炉「Pylon」(0.1万kWe)を開発していたが、同社は破産申請ならびに業務継続を条件とする売却手続きを今年10月末から実施している。「Kaleidos」は電気出力0.12万kW、熱出力0.19万kWの高温ガス冷却炉。TRISO燃料(3重被覆層・燃料粒子)を使用し、運転サイクルは5年。コンパクト設計のすべてのコンポーネントは単一の輸送コンテナに梱包されるため、迅速な配備が可能。遠隔地のディーゼル発電機の代替から、病院、軍事施設、データセンターへのバックアップ電源や、熱供給、海水脱塩まで、幅広い用途に対応する。
- 21 Nov 2024
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トランプ次期米大統領 DOE長官らを指名
米国のトランプ次期大統領は、このほど、来年1月20日に発足する新政権のエネルギー省(DOE)長官、ならびに新設される国家エネルギー評議会の議長を指名した。なお就任にあたっては、米上院の承認が必要である。DOE長官には、エネルギーサービス会社リバティ・エナジー社のCEOである、C. ライト氏を、国家エネルギー評議会の議長には、ノースダコタ州知事のD. バーガム氏を指名した。なお、バーガム氏は内務長官にも指名されている。DOEの新長官に指名されたライト氏は、コロラド州に本社を置く2011年設立のリバティ・エナジー社の創設者。同社は北米で陸上の石油・天然ガス探査・生産企業向けに、革新的なサービスと技術を提供している。同氏は、先進炉のマイクロ炉「オーロラ」を開発するオクロ社の取締役も務める。トランプ次期大統領は、自身のソーシャルメディアに掲げる声明の中で、「クリスは、エネルギー業界の傑出した科学技術者で起業家。米国シェール革命を立ち上げ、米国のエネルギー自立を促進し、世界のエネルギー市場と地政学を変革した先駆者の一人」「DOE長官として、イノベーションを推進し、官僚的な形式主義に陥ることなく、米国の繁栄と世界平和の新たな黄金時代を先導する重要なリーダーとなる」と述べている。ライト氏はDOE長官の指名を受け、「世界中のあらゆるコミュニティにエネルギーの恩恵をもたらす気概を持ち、原子力、太陽光、地熱のみならず、現在は石油、ガス、次世代地熱に取り組んでいる。エネルギーが安全かつ安定し、手頃な価格で、人々の生活を向上させるのであれば、それがどこから来ても構わない」「国家に奉仕し、米国内外の市民に手頃な価格で信頼性の高いエネルギーを提供するという使命を継続できる機会を非常に光栄に思う」とコメントしている。国家エネルギー評議会議長への指名を受けたバーガム氏は、2016年からノースダコタ州知事を務め、現在2期目。それまでは政治経験がなく、ビジネスで成功を収め、全米の州知事の中で最も裕福な一人といわれている。米国の天然資源を保護・管理し、公有地の管理などで中心的な役割を果たす内務省の長官のほか、国家安全保障会議のメンバーも兼ねる。トランプ次期大統領によると、新設される国家エネルギー評議会は、「あらゆる形態の米国のエネルギーの許認可、生産、発電、流通、規制、輸送に関わるすべての省庁から構成」される。また、「官僚的な形式主義に陥ることなく、経済のあらゆる部門で民間部門の投資を強化し、長年にわたり続いてきた、全く不必要な規制より、イノベーションに焦点を当て、米国をエネルギー大国へと導く」という。さらに、「ライト氏とバーガム氏は長年の知己であり、共に仕事をしてきたチーム。米国のエネルギー支配を推進し、インフレを押し下げ、米国の外交力を拡大して、世界中の戦争を終結させる」との期待を示した。バーガム氏は自身のソーシャルメディアで、「米国のエネルギーを前進させるため、連邦政府組織間の前例のないレベルの調整を促進する。米国のエネルギー支配を確立して経済を活性化させ、消費者のコストを削減し、財政赤字削減のために数十億ドルの歳入を生み出す」「国の課題を解決するために規制よりもイノベーションに焦点を当て、米国のエネルギーをスマートに拡大し、敵国からエネルギーを買うのではなく、友好国や同盟国にエネルギーを販売し、世界をよりクリーンで安全なものにする」と、抱負を語った。
- 20 Nov 2024
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チェコ当局 韓国社選定に対する異議申し立てを棄却
チェコ政府内で独立した第三者機関である競争保護局(ÚOHS)は10月31日、チェコ電力(ČEZ)が原子力発電所増設プロジェクトの優先交渉者に韓国水力・原子力(KHNP)を選定した入札手続きに対する、米ウェスチングハウス(WE)社ならびに仏EDFによる異議申立てを、第一審で却下した。ČEZは今年7月、ドコバニとテメリン両原子力発電所における最大4基の増設プロジェクトの優先交渉者としてKHNPを選定した。しかし、入札に参加を認められなかったWE社と、選外となったEDFは翌8月、ÚOHS に入札手続きの見直しを求め、異議を申立てた。WE社は契約権限者による公共調達法の枠外となる国家安全保障上の例外適用に一部異議を唱え、また、WE社とEDFはKHNPの選定に関して公共調達の基本的原則に準拠しない違法性(公共契約の履行対象の大幅な拡大、優先交渉者であるKHNPの契約履行能力の欠如など)を訴えたが、ÚOHSは、WE社が例外適用を認識した時点から15日以内(2022年3月)の異議申立て期限を過ぎていること、また、例外適用により公共契約を行う契約権限者の特定の手続きに対する法的異議の申立ては受入れられないとして、行政手続きを終了させた。このほか、外国補助金規則の違反とする両社の主張については、契約権限者が公共調達法により従うべき手続きではないため、異議を却下した。ÚOHS は今回の一審判決の前日30日には、最終判決が出るまでKHNPとの契約締結の仮差止めを命じている。なお、今回の一審判決への不服申立ては、 ÚOHS長官宛てに控訴することで可能だ。今回の裁定を受けČEZは声明を発表。契約締結の仮差止めは通常の措置であるとし、ドコバニ発電所5、6号機の増設に関する最終契約についてはKHNP社と交渉が進行中であり、 ÚOHSの最終判決は、予定する来年3月末の契約調印に間に合うだろうとの見通しを示した。なおWE社は、「KHNPのAPR1000およびAPR1400設計は、WE社がライセンス供与した技術を利用、KHNPはその基本技術を所有しておらず、WE社の同意なしに第三者にサブライセンス供与する権利も有していない。米政府から技術輸出に必要な承認を取得する法的権利を有しているのはWE社だけである」として、知的財産権と輸出管理をめぐり、現在、国際仲裁および米国で訴訟が進行中である。WE社とKHNP間で係争が続く中、11月1日、米エネルギー省(DOE)と韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、原子力輸出及び協力の原則に関する覚書(MOU)に仮調印した。両国の当局者は、最高水準の不拡散、安全、保障措置、安全保障を支持しつつ、原子力の平和利用を促進するという相互のコミットメントを再確認し、両者は民生用原子力技術の輸出管理を強化するとしている。同時に、気候変動対応、グローバルなエネルギー移行の加速化及びサプライチェーンの確保などの分野での協力も拡大し、両国の産業に数十億ドルの経済効果と数万人の雇用をもたらすと強調している。両国企業間の紛争にも係らず両政府の協力意向を明確に示し、原子力輸出管理分野のコミュニケーションを通じて将来の紛争防止を図り、今後グローバル市場で両国間の原発輸出協力を緊密に行いたい考えだ。
- 11 Nov 2024
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米テラパワー HALEU製造施設の建設契約を締結
米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は10月30日、HALEU((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の供給拡大に向け、米ASP アイソトープ社と、①南アフリカにおけるウラン濃縮施設の建設、②テラパワー社が開発するナトリウム冷却小型高速炉「Natrium」への燃料供給―に関するタームシート((最終契約の締結にいたるまでの過程で、契約書に盛り込むべき重要事項をまとめたもの))を締結した。テラパワー社は、米ASP アイソトープ社による南アフリカでのHALEU製造施設の建設に出資し、同施設で製造されるHALEUを購入。米ワイオミング州南西部のケンメラーで開発されているNatriumおよびエネルギー貯蔵システムに利用する計画である。購入したHALEUは、テラパワー社と米エネルギー省(DOE)が先進炉実証プログラム(ARDP)を通じて共同出資する、米グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社がノースカロライナ州ウィルミントンのサイトに建設する燃料加工施設で加工される。テラパワー社のレベスクCEOは、「当社は『Natrium』用に安定したHALEUサプライチェーンを確保するために懸命に取り組んできた。今回の合意は、国内および同盟国におけるHALEU製造の商業化に向けた当社の取組みの一例」と強調した。テラパワー社は、米国内でHALEU製造促進に向け、複数の戦略的契約を締結している。その中には、HALEUの商業化に関するセントラス社とのMOU、HALEU金属化パイロットプラントの建設に関する仏フラマトム社との契約、ワイオミング州産ウランの供給可能性に関するウラニウム・エナジー社との調査契約が含まれる。ASP アイソトープ(ASPI)社は2021年に設立されたが、前身は1980年代の南アフリカにおけるウラン濃縮プログラムにさかのぼる。さまざまな業界で使用されるアイソトープ製造の技術とプロセスの開発を専門とする先端材料企業。HALEUウラン濃縮施設の建設とNatriumへの供給は、ASPIの子会社である米Quantum Leap Energy 社が行う。ASPI社によると、濃縮施設で製造される予定のHALEUの長期供給契約も締結される予定であり、テラパワー社は施設の完成後10年間で製造されるHALEUの独占購入権を持つことを想定している。また、ASPI社がHALEUの供給について第三者と交渉したり、別のASP技術べースのウラン濃縮施設に取組まないようにする独占期間を示す条項がタームシートには含まれているという。ASPI社は、従来の遠心分離プロセスを使用した濃縮施設の建設と比較して、大幅に低いコストと短い時間で、自社の濃縮技術をHALEU製造施設に導入できると考えている。従来、医療や半導体業界向けの高濃縮同位体の製造と商業化に重点を置くが、開発中の濃縮技術を使用し、原子力発電分野向けの同位体濃縮を実施する計画だ。Natrium は34.5万kWeのナトリウム冷却高速炉。熔融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを備え、電力負荷の変化に追従する柔軟な運転が可能。米ワイオミング州で閉鎖予定の石炭火力発電施設の近くに建設され、今年6月には起工式が開催された。今年3月末に米原子力規制委員会(NRC)に建設許可を申請している。原子力部の着工は早くて2026年、運転開始は2030年を予定している。
- 08 Nov 2024
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米DOE オクロの燃料製造施設の概念設計を承認
米エネルギー省(DOE)は10月15日、米国で先進炉開発を進めるオクロ社のマイクロ炉「オーロラ」向け燃料製造施設の概念安全設計報告書(CSDR)を承認した。今回の承認は、先進的な燃料リサイクル技術を実証する重要なステップ。なお、DOEは今年1月、同燃料製造施設の安全設計戦略(SDS)を承認している。オクロ社は、引き続きアイダホ国立研究所(INL)と協力して施設設計を完了し、建設開始前にDOEの承認を得る予定。この燃料製造施設はINL敷地内に設置される。1964年~1994年にINLで稼働していた実験増殖炉EBR-IIの使用済み燃料から高濃縮ウランを回収、低濃縮ウランと混合・希釈してHALEU((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))とし、燃料を製造する。オクロ社は、初の商用オーロラ発電所をINL敷地内に2027年に設置し、製造した燃料を装荷する計画だ。INLは電気化学プロセスを使用して、2028年12月までにEBR-II燃料から約10トンのHALEUを回収する計画。オクロ社は、2019年に競争入札で獲得したINLとの契約により、内5トンのHALEUの利用が可能である。DOEはHALEUの使用中も使用後もその所有権を保持する。「オーロラ」はHALEU燃料を使用する液体金属高速炉のマイクロ原子炉で、電気出力は0.15~5万kW。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能なほか、放射性廃棄物をクリーン・エネルギーに転換することもできる。DOEは2019年12月、先進的原子力技術の商業化を支援するイニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の一環として、INL敷地内で「オーロラ」の建設を許可。これを受けてオクロ社は翌2020年3月、原子力規制委員会(NRC)に「オーロラ」初号機の建設・運転一括認可(COL)を申請したが、NRCは、審査の主要トピックスに関する情報がオクロ社から十分に得られないとして、2022年1月に同社の申請を却下した。オクロ社は同年9月、「オーロラ」の将来的な許認可手続きが効率的かつ効果的に進められるよう、NRCとの事前協議を提案する「許認可プロジェクト計画(LPP)」をNRCに提出している。
- 29 Oct 2024
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米DOE HALEUサプライチェーン確立に前進
米エネルギー省(DOE)の原子力エネルギー(NE)局は10月17日、バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、HALEU((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の国内サプライチェーン確立を支援するため、濃縮役務を提供する国内4社と契約を締結した。バイデン政権は、国内に強固で信頼性の高いHALEUサプライチェーンを確立することにより、先進炉の実証と展開を支援、高レベルの雇用を創出し、同分野における米国のリーダーシップを確立したい考えだ。DOEは、2035年までに100%のクリーンな電力、2050年までにネットゼロの達成という政府目標を達成するためには、HALEU燃料を使用する先進炉の活用が欠かせないと予測。2020年代末までに先進炉用のHALEU燃料が40トン以上必要となるという。DOEのJ. グランホルム長官は、「先進炉の稼働により原子力発電は前進を続け、今後何世代にもわたり米国最大の無炭素電源を確保することとなる。今回の契約締結は、クリーンで信頼性の高い電力需要の高まりに応え、国内にHALEUサプライチェーンの構築を目指す、現政権の最新の取組みの現れ」と強調。ホワイトハウスのA. ザイディ国家気候アドバイザーは、「現政権の民間原子力部門への数十億ドルの投資は、閉鎖した原子力発電所の再稼働や、新しい原子炉の稼働、燃料サプライチェーンの構築など、全米各地で原子力産業を躍進させ、大きな成果をもたらしている」と評価した。NE局は、現在開発中の小型で運転サイクルが長い多くの先進炉では、高効率化のためにHALEUが必要になると指摘。今回の契約により4社間でHALEU製造の「競争原理」を生み出し、DOEが最適な企業を選択できるようにするという。契約は最長10年間、基本報酬として各社に最低200万ドル(約3億円)を支払う。契約を締結した4社は、 ルイジアナ・エナジー・サービス(Louisiana Energy Services:Urenco傘下)、オラノ・フェデラル・サービス(Orano Federal Services)、ジェネラル・マター(General Matter:新興企業)、アメリカン・セントリフュージ・オペレーティング(American Centrifuge Operating:Centrus Energy傘下)。予算の確保状況にもよるが最大27億ドル(約4,028億円)の契約が可能だという。DOEは今年1月、濃縮サービスに関する提案依頼書(Request for Proposals:RFP)を発行していた。これは、2020年エネルギー法によりDOEが民間による国内研究、開発、実証、商業利用のためHALEUへのアクセスの確保を目的に、インフレ抑制法(IRA)から資金手当てを得て実施する「HALEU利用プログラム」の一部である。今回の契約を通じてDOEが取得するHALEUは燃料に加工され、DOEの先進的原子炉実証プログラム(ARDP)を通じて開発中の、テラパワー社のNatriumやXエナジー社のXe-100などに供給される。なお、10月8日には、国内6社とHALEU再転換事業のサプライチェーン支援に関する契約が締結されている。米国では現在、商業レベルのHALEUの濃縮および再転換を行っていない。実証レベルでは、セントラス社が2023年11月、オハイオ州パイクトンのポーツマス・サイトにある米国遠心分離濃縮プラント(ACP)で20kgのHALEUを製造し、DOEに初納入した。現在、同社は年間900kgのHALEU製造フェーズに移行している。
- 21 Oct 2024
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Amazon SMRプロジェクトを支援
米大手テック企業のAmazon社は10月16日、米X-エナジー社が開発する小型モジュー炉(SMR)の商業化に向けて、約5億ドル(約750億円)を出資すると発表した。主に、同社の気候変動対策に関する誓約のための基金(Climate Pledge Fund)から拠出する。今回の出資には、多国籍ヘッジファンドCitadel社、オルタナティブ投資会社Ares Management社、エネルギーに特化した未公開株式投資会社NGP社、ミシガン大学も参加する。同基金は2020年、Amazon社が20億ドル(約3,000億円)を投じて設立。2040年までに同社事業の温室効果ガス排出量を実質ゼロとするために、持続可能な技術やサービス開発を支援している。Amazon社は電力需要が拡大し続ける中、再生可能エネルギーへの投資を継続するとともに、新たな電源としてカーボンフリーで規模の拡大が柔軟な原子力発電に着目。とりわけ、設置面積が小さく、送電による逸失を最小限にするためにデータセンターなどのサービス施設の近傍に設置可能で、建設期間が短いSMRを活用する考えだ。両社は今回の出資により、2039年までに米国内で合計500万kWe以上のX-エナジー社製SMRの稼働を目指す。Amazon社は自社のデータセンター事業を支えるため、SMR建設プロジェクトへの直接投資と長期の電力購入契約(PPA)を通じて、増大する電力需要に対応する考えだ。さらに両社は、SMR導入と資金調達のモデルを確立することで、標準化させることを狙っている。X-エナジー社への具体的な支援策としてAmazon社は、SMR設計や機器製造、許認可取得活動、およびテネシー州オークリッジのTRISO燃料(3重被覆層・燃料粒子)製造施設の第一期の完成作業のほか、ワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウェスト社のX-エナジー社製SMR×4基による合計32万kWeの建設プロジェクトに直接資金を投入。12基、合計96万kWeへの拡張も視野に入れる。Amazon社は、原子力発電への投資はその拠点となる地域社会に雇用などの経済的効果をもたらすと指摘している。X-エナジー社製SMRは「Xe-100」と呼ばれる電気出力8万kWの小型高温ガス炉で、TRISO燃料を使用。連結して32万~96万kWの発電容量への拡張が可能。米エネルギー省(DOE)が2020年、先進的原子炉実証プログラム(ARDP)で5~7年以内に実証(運転)を目指し、支援対象に選定した二つの設計のうちの一つである。X-エナジー社は、米・大手化学メーカーであるダウ・ケミカル社のテキサス州メキシコ湾沿いに位置するシードリフトの製造施設で、Xe-100を4基連結させた発電所の建設を計画。エナジー・ノースウェスト社とは2023年、同社のコロンビア原子力発電所(BWR、121.1万kW)の隣接地でXe-100を採用した発電所を建設する共同開発合意書を締結している。またAmazon社はドミニオン・エナジー社と、同社がバ―ジニア州で所有・運転するノースアナ原子力発電所(PWR、100万kW級×2基)の近傍に、少なくとも30万kWeのSMR設置を検討する契約を締結したことを明らかにした。ドミニオン社は今年7月、将来的なエネルギー需要を見据え、同発電所でのSMR導入の実現可能性を評価するため、SMR開発企業を対象に「提案依頼書(RFP)」を発行している。バージニア州には米マイクロソフト社、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社をはじめ、世界の巨大データセンターのうち、約35%にあたる約150施設が立地している。ドミニオン社の予測によると、バージニア州の電力需要は毎年5%以上増加しており、今後15年間で倍増するという。生成AI(人工知能)の普及により、データセンターの電力消費量が急増する中、大手テック企業では、再生可能エネルギーへの投資とともに、信頼性の高い原子力の活用を進める動きが活発化している。米マイクロソフト社は今年9月、大手電力会社のコンステレーション・エナジー社と閉鎖済みのスリーマイル・アイランド(TMI)1号機(PWR、89万kWe)を再稼働させ、マイクロソフト社のデータセンターに電力を供給する、20年間の売電契約の締結を発表。また同機と同じくペンシルベニア州にあるサスケハナ原子力発電所(BWR、133.0万kW×2基)に隣接するデータセンターを今年3月、米Amazon傘下のAWS社が買収した。10月14日には、Google社と米原子力新興企業のケイロス・パワー社が2035年までに複数の先進炉導入による電力購入契約(PPA)を締結したばかり。
- 18 Oct 2024
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