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敦賀2号機の不許可理由 「可能性を否定できない」は科学的な判断か?
二〇二四年十二月二十五日 原子力関連で令和六年(二〇二四年)最大のニュースと言えば、福井県の敦賀2号機の再稼働の不許可だろう。「不許可」自体もビッグニュースだが、それを決めた原子力規制委員会の「活断層の可能性は否定できない」という主観的な判断理由も、歴史に残るだろう。ただ何か釈然としない気持ちがわいてくるのはなぜだろうか。 原子力規制委員会(山中伸介委員長・委員五人)は十一月十三日、定例の会合で日本原子力発電株式会社が所有する敦賀原子力発電所(福井県敦賀市)の2号機(PWR・百十六万kW)の再稼働申請を不許可(不合格)とすることを全会一致で決めた。二〇一二年に原子力規制委員会が発足して以来、初めての審査不合格だ。2号機は一九八七年に運転を開始したが、二〇一一年にトラブルで停止したあと、二〇一五年十一月、新規制基準への適合性審査を同規制委に申請していた。不許可の理由は「活断層の可能性を否定できず」 私は原子力問題の専門家ではない。この問題を大手新聞や雑誌がどう報じたかに関心がある。どんな理由で不許可になったかを知るために当時の新聞を読んでみた。 審査の主な焦点となったのは、2号機から北へ約三〇〇mのところにある「K断層」が将来、地震を起こす活断層かどうか、そしてその活断層が原子炉直下まで延びている(連動もしくは連続している)かどうかの二点だ。 まずは各紙を見てみよう。朝日新聞(十一月十四日付)は「活断層否定できず」の見出しで「規制委は活断層の可能性は否定できないと判断した」と報じ、さらに「原電の説明が十分な根拠をもって受け入れられなかった」という理由を挙げた。毎日新聞(十一月十四日付)は「原子炉直下に活断層があることを否定できず新規制基準に適合しない」と報じた。東京新聞(十一月十四日付)も「原子炉直下に活断層がある可能性を否定できない」とした。さらに読売新聞(十一月十四日付)は「規制委の審査チームは『活断層の活動性、連続性とも否定できない』と判断した」と報じ、産経新聞(十一月十四日付)も「原子炉直下に活断層が走る可能性を否定できない」と報じた。 つまり、どの新聞も「活断層の可能性を否定できない」という理由を挙げて報じたことが分かる。処理水に反対した地方紙はおおむね不許可を称賛 この不許可の決定に対し、予想通り、反原発路線の朝日、毎日、東京は「否定できない以上、不許可は当然である」と断じた。念のため、地方紙の社説をネットで見つけて読んでみた。おもしろいことに気づいた。どういうことかといえば、福島第一原発の処理水の海洋放出に反対する社説を載せていた地方紙(神戸新聞、中国新聞、北海道新聞、信濃毎日新聞、西日本新聞、京都新聞など)は、今回も「不許可」に対して、「再稼働を認めないのは当然だ」「妥当な判断だ」と称賛していることだ。 要するに、原発に否定的な新聞社は「可能性を否定できない」という、私から言わせれば、極めて科学から程遠い判断理由に対して疑問を呈していないことだ。科学的なデータを突き詰めて解析した結果、不許可はやむを得ないといった論調なら科学的な匂いを感じ取ることができるが、そういう論調ではない。「悪魔の証明」は危うい論理 地方紙の社説を読むといとも簡単に「可能性を否定できないなら、廃炉は当然だ」と主張している。世の中に「可能性を否定できる」現象などない。どんなテクノロジーでも「良くない出来事が決して起きないことを証明せよ」と言われたら、それを事前に証明することは不可能である。これはよく「悪魔の証明」と言われる。 そういう危うい論理にもかかわらず、いとも簡単に「不許可は当然だ」と堂々と主張しているところを見ると、最初から結論は決まっているように思える。なにしろ、ほぼ環境や人体へのリスクがゼロに近い処理水の放出にも反対したくらいだから、「どうみても活断層が動く可能性を否定することは無理だよね」という判断に傾くのは自然の流れである。そもそも原発自体に否定的なのだから、どんな証拠を突きつけられても、活断層の恐れがあるから再稼働は認めないという判断に行く着くのは理の当然である。産経新聞だけは果敢に反対の論陣を張る 大手各紙を見ていて、つくづく感じたのは主要な新聞を読んでいても、細かい科学的な議論が分からないということだ。ただ、産経新聞だけは「悪魔の証明は禁じ手だ」(七月十七日付)、「規制委の偏向審査 強引な幕引きは許されぬ」(八月七日付)、「効率性と対等性の新風を」(九月二十六日付)と一貫して審査の偏向ぶりを指摘していた。 真骨頂は、長辻象平・産経新聞論説委員の書いた「『悪魔の証明』を求める原子力規制委 敦賀2号機の受難」と題した八ページにわたる論稿(月刊「正論」二十四年十月号)だ。長辻氏は「K断層は両側からの圧縮力で生じる逆断層だが、ぐにゃぐにゃで左右に湾曲し、しかも、とぎれとぎれでふらついて息も絶え絶えという代物だ」と形容して、「2号機に脅威を及ぼす断層の姿からはほど遠い」と指摘する。 そして、各紙が「原電による審査資料の無断書き換えと誤記」((筆者注 「無断書き換え」という表現は、原電が意図的にデータを改ざんした、と読める。))と報じた点に関しても、長辻氏は「規制委の審査官が『ここが変わったとかではなく、きちんとした形で更新して最新の形で審査資料として提出するよう』指示したのを受けて更新したところ、『説明なしの書き換え』ととがめられた」と書いている。誤記に関しても「肉眼で観察したものを、新たに顕微鏡で詳細に確認した結果を修正したものだ。そこに悪意はなかったとされて、審査は再開されたが、規制委はその間に原電本店への立ち入り検査を行った。印象操作と批判されても仕方あるまい」と書いている。 ついでに言うと、天野健作氏(大和大学社会学部教授・元産経新聞)が書いた「敦賀原発『不合格』にみる公正審査の疑わしさ」と題した論稿(十一月十四日「国際環境経済研究所」のウェブサイトに掲載)も非常に参考になる。 長辻氏や天野氏の論考を読むと、ことの真相の一端を知ることになるが、これに対する反論も当然あるだろう。私としては、真実に少しでも迫る論争記事を読みたいのだが、残念なことにそういう論争的な記事を大手新聞は載せてくれない。 やはり現状では真相(深層も含め)を知るには、主要各紙を丹念に読み比べることしかなさそうだ。「予防原則の乱用」が怖い 最後にひと言。今回の不許可報道で私が危惧の念を抱くのは「予防原則の乱用」が広がる恐れだ。「良くないことが起きる可能性が否定できない」という論理がまかり通れば、どんなテクノロジーも為政者の思うままに規制できてしまう。現に敦賀2号機の再稼働に対しても、「疑わしきは安全な側に判断すべきだ」(朝日新聞七月二十七日付)という主張が見られる。この主張は、少しでも疑わしき点があれば、あるテクノロジーや化学物質の使用、化学工場の運転などを止めるということを意味する。 一般に「予防原則」は、科学的な因果関係が十分証明されていなくても、規制措置を可能にする考え方を指す。この論理は「可能性を否定できないときは、安全側に立つ」という論理とほぼ同じである。こういう論理がまかり通ると石炭や天然ガス火力は廃止になり、原発の稼働も中止になるだろう。すでに約三十年間、世界で流通している遺伝子組み換え作物にしても、「将来何か良くないことが起きる可能性を否定することは難しい」という判断を為政者がくだせば、いとも簡単に流通や栽培を禁止することも可能になってしまう。これを機に「可能性を否定できない」という論理の適用を限定させる科学的な議論が必要だろう。 もう一言。原発を動かすかどうかは、日本全体の未来を左右する極めて社会経済的な問題である。原子力規制委員会(五人の委員)に経済学やエネルギー、社会心理学など社会工学的な専門家がいないのはどうにも腑に落ちない。国民の代表である政治の側からの参戦をもっと期待したい。
- 25 Dec 2024
- COLUMN
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規制委 革新軽水炉導入を見据え事業者らとの意見交換開始
原子力規制委員会は12月9日、電力事業者・メーカーを招き革新軽水炉の規制に係る技術的意見交換会の初会合を開いた。〈資料は こちら〉同委では随時、電力関係の原子力部門責任者と技術面での意見交換を行うCNO会議を行っている。今春からは三菱重工業が開発を進めている革新軽水炉「SRZ-1200」を中心に、新型炉の導入に向けた規制対応が焦点となってきた。「SRZ-1200」は、「超安全」(Supreme Safety)、「地球に優しく」(Zero carbon & Sustainability)、「大規模な電気を安定供給」(Resilient light water Reactor)がコンセプト。現行規制基準の理念を踏まえ、「さらに新たな安全メカニズムを取り入れて、地震・津波の他、自然災害への対応、大型航空機衝突・受動的安全システム等の安全対策」を図ること目指し、基本設計が進んでいる。今回の意見交換では、第1ラウンドとして、このような安全対策を中心に、原子力エネルギー協議会(ATENA)の佐藤拓理事他、原子力発電所を有する各電力会社のグループリーダー・課長クラスが出席し説明。原子力規制庁の技術基盤グループらが、今後の規制対応に係る課題を指摘するなどした。佐藤理事は、PWRを有する電力事業者4社と三菱重工とで開発を進めている「SRZ-1200」について、「設計がかなり進んできたが、この先を進めるに当たっては、予見性が不明確な部分がある」と、事業者としての規制面での問題点を強調。さらに、現在検討が進められている次期エネルギー基本計画を見据え、「原子力を一定程度確保する必要があり、新しい原子炉を開発していかねばならない」とした上で、産業界として、今後の新型炉に係る規制対応を議論していく必要性を述べた。メーカー側からは、三菱重工原子力セグメントSRZ推進室長の西谷順一氏が、技術的観点から説明。シビアアクシデント対策やテロ対策に備えた「特定重大事故等対処施設」との関連について、「合理的範囲での設計思想」を図る必要性を述べたほか、福島第一原子力発電所事故を踏まえ、「これまで想定されていないような溶融炉心残存についても冷却水の注水を継続する」として、より厳しい事象に対しても安全対策の強化に努めていく姿勢を強調した。
- 10 Dec 2024
- NEWS
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前原子力規制委員・石渡氏 新知見を活用する重要性を強調
原子力規制委員会の委員を2期10年間(2014年9月~2024年9月)務めた石渡明氏が11月18日、日本記者クラブで記者会見を行い、自然ハザードに対する同委の対応を振り返るとともに、元旦に発生した能登半島地震で得られた知見、今後の原子力規制行政に係る課題について意見を述べた。同氏は、委員在任時、地震・津波関連の審査を担当。最近、11月13日に新規制基準適合性に係る審査で「不合格」となった日本原子力発電敦賀発電所2号機の「審査書案」取りまとめや、2023年に「GX脱炭素電源法」検討の中、原子力発電所の60年超運転も視野に入れた規制制度の見直しに関して、委員の中でただ一人反論するなど、現行の原子力規制行政のあり方に対し頑なに厳しい態度を示してきた。石渡氏は、東日本大震災時、東北大学に在任。現地調査を踏まえ、「津波引き波」、「津波火災」など、津波被害対策の重要性を強調。当時の経験が、原子力規制委員会委員を引き受ける上で「大きな比重になった」という。福島第一原子力発電所は過酷事故に至ってしまったが、石渡氏は東北電力女川原子力発電所に関して、敷地高さ15mに対し、実際の津波高(13m)は「地震により1m地盤が沈降したため正にギリギリだった」と説明。活断層に関して、石渡氏は、これまでの審査から、「上載地層法」と「鉱物脈法」による判断を技術的見地から紹介。新規制基準を初めてクリアした九州電力川内原子力発電所1・2号機を例に、設置変更許可後、2016年4月に発生した熊本地震(M7.3)の経験などを踏まえ、自然ハザードへの対応に関し、「不確定さが大きい」と述べ、新たに得られた知見に対し現行の規制要求でも満足することを確認する「バックフィット」の重要性を強調した。石渡氏は、地質学、岩石学、地球化学が専門。委員在任時、会合の中で、「令和3年台風10号」が宮城県に上陸した観測史上初の台風であったことを指摘し、自然ハザードに対する議論を随所で喚起するなど、いわば「理科年表」的な存在でもあった。今回の会見の中で、同氏は、能登半島地震について、委員退任も近くなった8月の現地調査を振り返り、4mもの隆起があった地盤変動に関し、「関東大震災の隆起1mに比しても非常に大きな地殻変動。こんな状況を生きている間に目にするとは思わなかった」と強調。今後の原子力規制行政に向け、「日本は自然ハザードが起きやすい。絶えず改善していく必要がある」と述べた。
- 20 Nov 2024
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敦賀2号機 規制委が「不合格」を決定
原子力規制委員会は11月13日の定例会合で、日本原子力発電敦賀発電所2号機(PWR、116万kW)に係る新規制基準適合性審査について、「適合するものであると認められない」とする審査結果を正式決定した。2013年に原子力発電所の新規制基準が施行されてから、試験研究炉や核燃料サイクル施設も含め、「不合格」が決定した初の事例となる。本審査については、8月28日の同委定例会合で「審査書案」が了承された後、1か月間のパブリックコメントに付せられていた。敦賀2号機における地震・津波関連の審査では、同機敷地内の「D-1破砕帯」(原子炉建屋直下を通る)の延長近くに存在する「K断層」の活動性および連続性が焦点となり、「K断層」について、「後期更新世(約12~13万年前)以降の活動が否定できない」、「2号機原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性が否定できない」ことを確認。今回の結論に至った。敦賀2号機の審査は、2015年11月に申請がなされており、9年越しでの結論となった。審査申請当時の委員5名中、4名が既に入れ替わっているが、今回の決定に際しては各委員の意見が一致。その中で、プラント審査担当の杉山智之委員は、「許可を与えるには、すべての基準に適合していることを一つ一つ説明する必要がある。一方で、許可しない決定には『適合しないケースを一つ示せば十分』だが、決してそのケースだけに特化した審査が行われてきたわけではない」と発言し、規制委の審査経緯や事業者の主張について、広く社会に説明していく必要性を示唆した。定例会終了後の記者会見で、山中伸介委員長は、初の事例となる今回の判断に関し、「論点を絞った審査となったが厳正に審査した」と、規制委員会としての姿勢を強調。加えて、審査の中で、申請書に係る疑義が生じたことに関し、「異常な状態だった」とも述べ、事業者に対し厳しく反省を促した。今回の審査結果を受け、日本原子力発電は「大変残念」とした上で、敦賀2号機の設置変更許可の再申請、稼働に向け、必要な追加調査の内容について、社外の専門家の意見を踏まえ具体化していく、とのコメントを発表した。
- 13 Nov 2024
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島根2号機 特重施設の原子炉設置変更許可取得
原子力規制委員会は10月22日、中国電力島根原子力発電所2号機について、テロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)に係る原子炉設置変更許可を発出した。同機については、2021年9月に新規制基準適合性審査をクリア。本体施設の設計・工事計画認可日から起算し、5年を満了する2028年8月29日が特重施設の設置期限となっている。今後の再稼働に向けては、現在、10月28日の燃料装荷開始、12月上旬の原子炉起動、同月下旬の発電開始を予定し、使用前事業者検査などが進められている状況だ。今回の原子炉設置変更許可を受け、中国電力では、「引き続き特重施設等の設置工事を進める」として、その設計・工事計画認可申請に係る審査に適切に対応し、発電所の安全確保に万全を期していく、とのコメントを発表した。現在、再稼働している12基のプラントは、いずれも特重施設の運用が開始している。一方で、新規制基準施行後、再稼働に至っていないプラントで、特重施設に係る原子炉設置変更許可が発出されているのは、島根2号機の他、日本原子力発電東海第二(特重施設の原子炉設置変更許可:2021年12月)、東京電力柏崎刈羽6・7号機(同2022年8月)、東北電力女川2号機(同2023年10月)で、いずれもBWRだ。
- 24 Oct 2024
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規制委 原子力災害時の屋内退避で中間まとめ
原子力規制委員会の検討チームは10月18日、原子力災害時における屋内退避の運用について、中間まとめを示した。これまで、放射性物質の放出に伴う住民避難など、防護措置の目安について記載した原子力災害対策指針では、外部被ばくを避けるため、UPZ(原子力施設から概ね5~30km圏内)の住民は屋内退避するとされていたが、その解除に関しては示されていなかった。能登半島地震の発生により、複合災害や厳冬期の対応に係る不安も高まり、規制委では4月より効果的な運用に向け、専門家も交え検討を開始。福島第一原子力発電所事故を踏まえた新規制基準で要求される重大事故対策の有効性を前提に、原子力災害の事態進展を、「炉心損傷防止ケース」、「漏えいケース」、「ベントケース」の3つに分類し、OSCAARと呼ばれる解析コードを用いて線量評価のシミュレーションを行った。今回の中間まとめでは、重大事故対策が成功したと判断される原子炉の状態、屋内退避の開始および解除の判断、その継続および避難への切替えなどを、7つの合意事項として整理。屋内退避を続ける期間については、全面緊急事態に至ってから、3日間を目安としている。避難への切替えは、地方自治体からの情報提供などを踏まえ、国が総合的に判断するものとした。福島第一原子力発電所事故時には孤立住民が問題となり、昨今は新型コロナに伴い密室における感染症対策にも関心が高まっている。合意事項では、屋内退避実施中の考慮事項として、「被ばくを直接の要因としない健康等への影響を抑えることも必要」と指摘。住民に対し、先行きに関する状況が把握できるよう、原子炉施設の状態、緊急時モニタリングの情報、生活維持に係る情報(支援物資の配給、電気・ガス・上下水道の復旧など)をわかりやすく提供する必要性を述べている。検討チームでは今後、地方自治体からの意見も聴取し、年度内を目途に最終報告書を取りまとめる予定。
- 21 Oct 2024
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高浜1号機 初の50年超運転へ
関西電力の、高浜発電所1号機(PWR、82.6万kWe)が10月16日、高経年化技術評価に関する保安規定の変更を、原子力規制委員会から認可された。1974年に運転を開始した同機は、国内で最も長く運転する原子力発電所だが、今回認可されたことで、国内初の50年超運転(11月14日)に向かうこととなった。同機は現行制度に基づき、すでに最長60年まで運転可能な認可を得ているが、30年を超えて運転する場合、事業者は10年ごとに安全上重要な機器や構造物の劣化を考慮した管理方針を定め、認可を受ける必要がある。また、2025年6月には、60年超の運転を可能とする改正原子炉等規制法を含む「GX脱炭素電源法」が施行されるため、同1号機は新制度に基づき、改めて60年までの運転について認可を受けなければならない。
- 17 Oct 2024
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原子力規制委 長﨑委員と山岡委員が就任
原子力規制委員会委員の任期満了に伴う交替として、カナダ・マクマスター大学教授の長﨑晋也氏、名古屋大学名誉教授の山岡耕春氏が9月19日付で就任した。任期は5年間。同日、行われた同委臨時会議で、山中伸介委員長の不在時などの際、その職務を代行する委員長代理として、伴信彦委員が指名された。新任委員の審査会合などにおける担務は、長﨑委員が核燃料施設・研究炉、バックエンド関係、福島第一原子力発電所廃炉他、山岡委員が自然ハザード(地震・津波など)関係と、それぞれ退任する田中知委員、石渡明委員を引き継ぐ。新体制のスタートに際し、山中委員長は、原子力規制委員会の組織理念の筆頭に掲げられる「独立した意思決定」の重要性をあらためて強調。その上で、委員らに対し「議事については、是非積極的・活発に発言して欲しい」、「重要な案件を取り扱う場合は、必要に応じ委員全員に賛否・意見を問うので、それぞれの見解を明確に示してもらいたい」と求めた。同委では、5か年の中期目標を策定してきており、現行の「第2期中期目標」は年度内にその対象期間を終了する。山中委員長は、次期中期目標の検討に向け、2025年2月頃の策定を目指し、議論を本格化させる考えを示した。臨時会議終了後、就任会見に臨んだ長﨑委員は「これまで培ってきた経験と知識を常にアップデートしながら、法と科学と技術のエビデンスに基づき、職務を全うしていきたい」と、山岡委員は「科学においては『正直である』、自然に対しては『誠実に向き合う』ことを信条に据え、原子力の規制に精一杯取り組んでいきたい」と、それぞれ科学的・技術的見地に立脚して責務を果たす姿勢を強調。長﨑委員は、東京大学大学院新領域創成科学研究科助教授、同院工学系研究科教授を経て、12年間にわたりカナダに在住した経験を持つ。北米の原子力規制行政との違いや改善点に関して問われたのに対し、「カナダ原子力安全委員会(CNSC)、米国原子力規制委員会(NRC)とも比較して、規制のプロセス・内容についてはまったく遜色ない」との見方を示した。同委員は、上杉鷹山の名言「なせば成る なさねば成らぬ何事も 成らぬは人のなさぬなりけり」を座右の銘としているという。原子力規制委員会には、現状に慢心せず「海外の規制機関を引っ張っていくくらいの組織を目指していくべきだ」と、熱く抱負を語った。山岡委員は、臨時会議で「地球の内部、地下のことは目に見えない。大変な問題を扱うことになる。慎重に何よりも科学的であることを大事にしていきたい」と発言。会見の場でも、昨今の能登半島地震発生、南海トラフ地震臨時情報などに鑑み、「地震に関する知見は日々新しくなるので、立ち止まらずに考えていきたい」と、予断を持たずに審査に当たる姿勢を示した。また、2023年に発生したトルコ・シリア地震を例に、「最近は良質なデータが得られるようになった」として、海外の知見を積極的に取り入れるとともに、現地を実際に見ることの重要性を強調。新規制基準適合性審査が進行中の北海道電力泊発電所にも近く視察に訪れる見通しだ。同委員は、趣味について問われたのに対し、「最近は植物観察にはまっている」と答えた。なお、退任する田中委員、石渡委員は、それぞれ2期10年にわたり委員を務めた。18日に記者会見に臨んだ石渡委員は「色々な新しい分野の勉強の期間でもあった」と振り返り、また、田中委員は「今後どういうふうにして、地層処分関係のルールをつくっていくのか、まだこれからスタートのところだ」と、今後の原子力規制における課題に言及した。
- 20 Sep 2024
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規制委 「常陽」のRI生産で「審査書案」了承
原子力規制委員会は、9月4日の定例会合で、日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町、ナトリウム冷却型、熱出力100MW)における医療用ラジオアイソトープ(RI)の生産について、原子炉等規制法に照らし「適合している」とする「審査書案」を了承した。「常陽」は、2007年5月の定期検査入り以降、運転を停止中。2011年3月の東日本大震災を挟み、2023年7月に新規制基準適合性審査に係る原子炉設置変更許可に至っている。その後、原子力機構は2024年2月、RI生産用実験装置を追加する原子炉設置変更許可を申請。審査では、新規制基準許可以降に公表された火山に関する知見の反映を評価したほか、ほとんどの項目について、既許可申請書から変更する必要がないことを確認した。「審査書案」については、パブリックコメントを行わないことが委員間で了承され、今後、原子力委員会および文部科学相への意見照会を経て、正式決定となる運び。原子力機構では、「常陽」を活用し、次世代革新炉開発に向けた照射試験とともに、がん治療への高い効果が期待される医療用RIの製造能力の実証を行う計画。原子力委員会が2022年に策定した「医療用等RI製造・利用推進アクションプラン」では、医療用RIの一つであるアクチニウム225大量製造の研究開発強化を図るため、「常陽」を活用し2026年度までの製造実証を目指すとされている。核医学を中心としたRI関連分野を「わが国の強み」とするねらいだ。アクチニウム225を用いた治療は、病巣の内部からアルファ線を当てるもので、治療効果が高いほか、遮蔽が不要なため病室への入退室制限を緩和できるメリットもある一方、短寿命(半減期10日)でもあり、世界的に供給不足となっている。「常陽」の運転再開は、新規制基準対応工事を経て2026年度半ばの予定。
- 05 Sep 2024
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規制委 敦賀2号機の審査「不合格」を了承
原子力規制委員会は8月28日の定例会合で、日本原子力発電敦賀発電所2号機(PWR、116万kW)に係る新規制基準適合性審査について、「安全上重要な施設(原子炉建屋等)は、将来活動する可能性のある断層等の露頭がないことを確認した地盤に設置する」との要求事項に適合しないことから、「原子炉設置変更を許可しない」とする「審査書案」を了承した。同案につき今後、パブリックコメントを実施することで一致し、これを踏まえ、正式決定となる運び。〈参考資料は こちら〉2013年に原子力発電所に関する新規制基準が施行されてから、試験研究炉や核燃料サイクル施設も含め、「不合格」との結論に至ったのは初めてのこと。原電は2015年に敦賀2号機の審査を申請。同社による地質調査に係るデータ疑義に伴い、審査が中断した時期があったが、敷地内の「D-1破砕帯」(2号機原子炉建屋直下を通る)の延長近くに存在する「K断層」の活動性および連続性が焦点となり、2023年9月以降、規制委審査チームは、計8回の審査会合、現地調査を実施。2024年7月26日に行われた同委審査会合では、「K断層」について、「後期更新世以降(約12~13万年前以降)の活動が否定できない」、「2号炉原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性が否定できない」ことが確認結果として示され、今回、「審査書案」としての取りまとめに至った。同日の審査会合後、原電は、「今後も追加調査やデータの拡充に取り組んでいく」として、同機の再稼働に向け取り組んでいく姿勢を示したほか、8月2日の臨時会合では、社外の技術者も加えた専門チームを交えた追加調査内容を説明した上で、引き続き「今後の対応について検討していく」とのコメントを発表している。原子力施設に係る審査において、特に地質・地震動については、断層活動性の見極めが人類史上以前であることなどから、規制基準に照らした判断が難しく、審査期間長期化の一因ともなってきた。今回の敦賀2号機に係る「審査書案」了承に際し、地震・津波審査担当の石渡明委員は「科学的判断の根拠を示した審査書だ」との見方を示す一方、プラント審査担当の杉山智之委員は「『白黒の判断』をつけることが簡単にできる分野ではない」と発言。山中伸介委員長は、定例会終了後の記者会見で、自身の委員就任以前に開始し、8年余に及んだ同機に係る審査期間を振り返り、「非常に大きな判断だった」と繰り返し強調するとともに、審査チームの労力にも言及し「十分に時間をかけて慎重に審査を進めてもらった」と所感を述べた。なお、山中委員長は、今後、見込まれる同機に係る再申請について、「何ら否定するものではない」との姿勢を示している。
- 29 Aug 2024
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原電 敦賀2号機の再稼働に引き続き取り組む
日本原子力発電は7月26日、敦賀2号機について同日、原子力規制委員会が地質関連の基準に関し「適合しているとは認められない」との確認結果を示したことを受け、コメントを発表。これまでの審査会合・現地調査での対応を踏まえ、「今後も追加調査やデータの拡充に取り組んでいく」として、引き続き同機の再稼働に向け取り組んでいく態度を鮮明にした。敦賀2号機(PWR、116.0万kW)に係る審査会合は2015年に開始。これまでの会合開催は計27回(プラント関係の審査も含む)に上る。原電による地質調査データの疑義に伴い中断した時期があったが、規制委の指導文書に従い補正申請が確認されたことから、2023年9月に再開。同発電所敷地内の「D-1破砕帯」(2号機原子炉建屋直下を通る)の延長近くに存在する「K断層」の活動性評価が論点となっていた。同社との質疑応答を踏まえ、審査チームは、2024年5月31日の会合で、「『K断層』の活動性を否定することは困難である」との確認状況を提示。6月6、7日には現地調査も行われた。7月26日の会合で、原電は、ボーリング調査等を通じた「K断層」の分析結果を示し、従来からの説明通り、連続性は認められないと説明したが、規制委の審査チームは同社の説明に科学的な根拠は乏しい点があるなどと指摘し、「K断層」と「D-1破砕帯」の連続性を否定できないとの認識を示した。前回の会合(6月28日開催)で、審査チームからは、7月の会合をもって敦賀2号機の現行補正申請に関する審議をしめくくる方針が示されていたが、同社は、必要な再調査の実施を含めて、「K断層」の活動性および連続性に関する追加的な検討を行う方針を表明。現行の補正書に記載した内容(論理構成や評価基準の変更など)を超えることが見込まれるため、再補正を視野に入れており、その時期などについては検討中とした。地震・津波審査担当の石渡明委員は、現行補正書に関する審査結果をまとめ、7月31日の規制委定例会合で報告する考えを示した。同日は、原電も出席し、今後の再補正に関する方針等を説明する見通しだ。2013年の新規制基準施行以前、規制委は発足当初より、旧原子力安全・保安院を引き継ぎ、敦賀発電所を含む6発電所について、有識者による破砕帯評価を実施。現地調査やピアレビューを踏まえ、「D-1破砕帯」については、同年5月に「耐震設計上考慮する活断層」との評価結果が示されている。これを受け、原電では、2つの国際レビューチームによる評価を実施し、同年8月にこれを覆す見解を発表。2014年2月には、地球物理学分野で権威のある「米国地球物理学連合」も、この問題に注目し、同社による主張を支持する論文を学会誌に掲載した。こうした国際的評価も踏まえ、原電は2015年11月、「敷地に分布する破砕帯は『将来活動する可能性のある断層等』ではないことを確認した」として、敦賀2号機に係る新規制基準適合性審査を規制委に申請し、説明に当たってきた。同機は1987年2月に運転開始。2011年5月の定期検査入りから停止が続いている。
- 29 Jul 2024
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規制委 福島第一廃炉作業の改善策を議論
原子力規制委員会は7月16日、特定原子力施設監視・評価検討会を開き、福島第一原子力発電所における廃炉作業の改善策等について東京電力から報告を受け、今後の取り組みなどをめぐって議論した。東京電力は福島第一の廃炉作業において、昨年10月から今年4月にかけ、作業員の負傷などを含むトラブルが相次いで発生したことを重視し、5月初旬から作業員全員が参加する形で作業点検を実施、6月7日に完了していた。作業点検件数(再開件数)は995件、うち防護措置の改善件数は675件だった。先の特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合(6月20日開催)において、作業点検の分析結果について報告した同社は、重大な見直しが必要な事案は確認されなかったが、廃炉の現場は通常炉より複雑な作業が多く、人への依存が高いという面があり、リスクアセスメントの強化やリスクアセスメント教育の強化等の改善策が必要であるとの認識を示していた。その際、規制委から背景要因を深堀りし、さらに踏み込んだ分析が必要との指摘がなされていた。指摘を踏まえて同社は、共通要因分析を通じて得られた改善策と今後の取り組みについて、この日の検討会で報告した。要因分析については、昨年10月に発生した増設ALPS配管洗浄作業における身体汚染、今年2月に発生した高温焼却炉建屋からの放射性物質を含む水の漏洩など4つの事案を対象とし、分析を通じて運用・設備・教育の面での改善策を6つに整理した。また、得られた改善策を現場に活かすための今後の取り組みについて同社は、必要な手順書の見直しや危機意識を高めるための安全教育の強化、CR(Condition Report)のさらなる活用、「変化があった場合は必ず立ち止まること」のワンボイスによる浸透をはかる等の取り組みを進める、とした。報告を受け、規制委からは福島第一の廃炉現場は通常の発電所とは異なることが常態化しており、作業の幅も広いため、CRの活用についても膨大な数になる可能性がある等の指摘がなされ、サイトの状況を考えて効果的に実施する必要があるとの認識が示された。東京電力は、「通常の発電所とは異なることを踏まえ、ひとつひとつトライし、実効性ある改善を図りたい」などと応じた。検討会を担当する伴信彦委員は「福島第一では膨大な作業が同時並行し、複雑な作業もある。再発防止対策をつくるだけでなく、実効的に機能しているかまで確認する必要がある」とし、今後も検討会で福島第一の作業改善について必要な議論を続けたいとの考えを示した。
- 16 Jul 2024
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規制委・審査会合 敦賀2号機の敷地内断層の評価めぐり議論
原子力規制委員会(規制委)は6月28日、原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合を開き、日本原子力発電(原電)の敦賀2号機(PWR、116万kW)敷地内に認められたK断層の連続性に関して議論した。規制委の審査チームは、K断層の活動性と連続性(K断層と原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性)の観点から同断層を評価する方針で、原電の説明および規制委が実施した現地調査の結果を踏まえて検討を進めている。この日の会合で原電は、ボーリング調査結果等をもとに同断層を分析したところ、破砕帯との連続性は認められないと説明した。審査チームは同社の説明に関する指摘事項や確認事項を示し、7月に開催予定の次回審査会合において説明するよう求めた。また審査チームは、次回会合でK断層評価に関する審議をしめくくり、敦賀2号機の新規制基準への適合性を判断する方針を示した。原電は、次回会合において断層の活動性に関する同社の見解を改めて説明する。これまでに、原電は現地ボーリング調査の結果分析等を踏まえて断層の活動性、連続性はいずれも認められないと説明したが、活動性に関して審査チームは、前回の審査会合(5月31日開催)において、活動性を否定する科学的根拠に乏しいとの見解を示していた。K断層の活動性と連続性をどう評価するかが、敦賀2号機の新規制基準への適合性を判断する重要なポイントになっているため、規制委がどのような技術的判断を示すかに注目が集まっている。なお、原電が敦賀2号機の再稼働にむけた新規制基準の適合性確認申請を行ったのは2015年11月5日。その後、2023年8月末に補正申請しているが、敷地内断層の評価を中心に議論が進められ、審査はおよそ9年にもおよんでいる。
- 01 Jul 2024
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規制委 大飯3-4号の30年超運転認可
原子力規制委員会は6月26日、関西電力大飯原子力発電所3-4号機(PWR、出力各118万kWe)について、新たな法令のもと、運転開始から30年を超えるプラントに要求される長期施設管理計画を認可した。高経年化した原子炉に対する規制の厳格化を含めた「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(GX脱炭素電源法)成立後、初の事例。昨夏に成立した同法では、規制側(原子炉等規制法)として、原子力事業者に対し、「運転開始から30年を超えて運転しようとする場合、10年以内ごとに、設備の劣化に関する技術的な評価を行い、その劣化を管理するための計画を定め、原子力規制委員会の認可を受けること」を規定。一方、利用側(電気事業法)には、「原子力発電の運転期間は最長で60年」との現行の枠組みは維持。事業者が予見しがたい事由による停止期間に限り、60年の運転期間のカウントから除外することを定めている。法令は2025年6月に本格施行されることとなっており、現在は準備期間中。大飯3-4号機らには、それぞれ1991年12月、93年2月に運転を開始し、既に30年を経過していることから、施行日までに新法下による長期施設管理計画の認可が求められていた。関西電力は、2023年12月に同計画の認可を申請。今回の認可を受け、「国内外の最新知見を積極的に取り込み、プラントの設計や設備保全に反映していくことで、原子力発電所の安全性・信頼性の向上に努めていく」とのコメントを発表した。
- 28 Jun 2024
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高浜3・4号機の40年超運転を認可 規制委
原子力規制委員会は5月29日、関西電力の高浜発電所3・4号機(PWR、各87.0万kW)に係る20年間の運転期間延長について認可することを決定した。高浜3・4号機は、それぞれ2025年1月、6月に法令に定める40年の運転期間を満了する。関西電力は2023年4月、両機について「運転期間を60年」とする認可申請を規制委員会に行った。同社では、設備の劣化状況評価に関して、安全上重要な機器および構築物に対し、1基当たり約4,200機器に及ぶ20年の延長期間を想定した健全性評価を実施し、問題ないことを確認している。規制委は、審査会合や現地調査を通じ、40年超運転に必要な事業者による特別点検が適切に行われていることなどを確認。29日の定例会合では、5名の委員長・委員いずれからも異論なく、運転期間延長の認可が決定された。今回の延長認可を受け、関西電力は、「原子力発電所の安全性・信頼性の向上に努め、地元を始めとする皆様の理解を賜りながら、原子力発電を重要な電源として活用していく」とのコメントを発表。現在、同社の原子力発電プラント7基がフル稼働している状況だ。原子力発電プラントの40年超運転の認可は、関西電力高浜1・2号機、同美浜3号機、日本原子力発電東海第二、九州電力川内1・2号機に続き、これで計8基となる。そのうち、高浜1・2号機、美浜3号機が既に40年超運転に入っており、新規制基準施行後、再稼働の先陣を切った川内1号機も7月に40年超運転入りとなる見通し。
- 29 May 2024
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規制委・技術会合 福島第一の点検状況報告受ける
原子力規制委員会(規制委)は27日、特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合を開き、福島第一原子力発電所における作業点検実施の状況等について東京電力から報告を受けた。昨年10月に増設 ALPS 配管洗浄作業における身体汚染が発生して以降、今年4月までに作業員が負傷するなどのトラブルが相次いで発生したことから、同社では再発防止策の検討に加え発電所が一体となって作業の安全性を高める必要があるとし、5月初めから全ての作業員が参加する作業点検を実施している。報告によると、同社は各作業において把握しているリスク要因ごとのリスク分析が不足していたとの認識に立ち、現場状況を確認したうえで作業に応じたリスク要因を再評価。関係する作業員が双方向で議論できる環境を作って改善内容を導出し、認識を共有する方法をとって点検を進めている。5月23日時点で約730件の点検を実施した。これまでに重大な見直しにつながる事案はみられていないものの、今回の点検によって最新の現場状況を踏まえた更なる作業安全性向上のための現場改善等が抽出されたことから、作業手順の改善や放射線防護装備の運用指示の明確化などの改善を行っている。報告を受け、規制委の伴信彦委員は「共通要因が得られればそこにきちんと対応すべき」などとし、背景要因なども把握し必要な対策をしっかり講じる必要があるとの認識を示した。そのほか、原子力規制庁からは作業員の声をどのように改善につなげていくかが重要などとする意見が示され、次の会合で作業点検および分析の結果について東京電力からの報告を受け、背景要因についても議論することとした。このほか、この日の会合では福島第一発電所の廃炉作業にともなう各種の廃棄物処理等の計画についても東京電力から報告を受け、技術的な確認が行われた。このうち、ALPS(多核種除去設備)から発生するスラリー(泥状の廃棄物)を安全に保管するための安定化処理設備については、主に閉じ込め性能に関して報告を受け、基本的な考え方を確認。今後、設備運用やメンテナンス時における閉じ込め性能に関して詳細な点を確認することとした。他の技術的な論点として非常用電源に対する考え方や脱水物の保管の安全性などについても順次、検討を進めていく方針だ。保管容量の面でスラリー安定化処理設備の設置、運用は着実に進める必要があり、東京電力は今年度内に認可を受けて2025年度に設備の詳細設計を行い、工事に着手。2026年度にも運用を開始する計画を示している。原子力規制庁は同社に、全体のまとめ資料の提出をはじめ、審査に必要な情報を早めに提出するよう求めた。
- 29 May 2024
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高浜3・4号機のSG取替で「審査書案」
原子力規制委員会は、5月15日の定例会合で、関西電力より申請されていた高浜発電所3・4号機の蒸気発生器取替を認可する「審査書案」を了承した。今後、原子力委員会および経済産業相への意見照会を経て、正式決定となる運び。関西電力は、高浜発電所3・4号機の経年劣化事象に鑑み、長期的な信頼性を確保する観点から、予防保全策として蒸気発生器一式を取り替えることとし、立地自治体からの了承を得て、2023年4月に規制委員会に認可を申請。それぞれ、2026年6~10月、同年10~27年2月に実施予定の定期検査で取替工事を行う計画だ。いずれも、現行の「51F」型から最新設計の「54FⅡ」型に取り替えるもので、伝熱管材料を耐応力腐食割れ(SCC)性能に優れた合金(インコネル690)に変更することや、振止め金具の組数変更(2本から3本へ)による耐流動振動性の向上が主な改良点。実際、高浜4号機では、2023年12月開始の定期検査において、全3台の蒸気発生器のうち、2台で計4本の伝熱管に損傷が確認されている。原子力規制庁の説明によると、蒸気発生器の取替は、原子力発電所の高経年化対策が課題となり始めた1990年頃からこれまでに、国内計13基で実績がある。2013年の新規制基準施行後では、今回の高浜3・4号機が初の認可事例(原子炉設置変更許可)となる見込み。なお、高浜3・4号機は、それぞれ2025年1月、6月に法令に定める40年の運転期間を満了することから、現在、20年間の運転期間延長に係る審査が行われている。
- 15 May 2024
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規制委・検討会 能登半島地震の検討状況を報告
原子力規制委員会(規制委)は8日の会合で、今年1月1日に発生した能登半島地震の知見収集にあたっている技術情報検討会から報告を受けた。現時点で、ただちに規制基準の見直しにつながるような知見はみられていないものの、今後も関係機関や学会等による調査で得られる知見を収集し、同検討会で情報共有するとともに、規制上の取り扱いについて検討する方針が報告された。同検討会は、2月7日の規制委で今回の地震について得られた知見を調査し報告するよう指示されたことを受け、地殻変動による海岸隆起など地盤の変動や変形の状況、また津波の到達などに関して得られた知見を収集している。政府の地震調査研究推進本部が地震動や津波に関して得られた知見を分析、評価している段階にあり、今後も同本部はじめ関係機関からの情報を集め、知見の充実をはかる方針が示された。また地震の影響で北陸電力の志賀原子力発電所の変圧器が故障し、外部電源5系統のうち2系統が使用できない状態になった件については、現在、故障の原因について同社が調査しており、その結果等について情報収集を進めるとした。3月27日に開催された同検討会の議論では、規制要求において外部電源が大きな地震に耐えることを求めていないため、その意味では特段問題はないとの認識が示された一方で、継続的な安全性強化の観点から事業者の北陸電力に対応を求める等の見解が示されていた。これらの報告に関して、規制委の石渡明委員は「数年にわたり、群発地震があった。前震ともいえる地震活動が続いていて、そうした研究もなされていた。群発地震の知見も集める必要があるのではないか」と指摘、同検討会で必要な情報を収集することになった。今回の地震により、原子炉施設の安全確保に問題は生じなかったが、発電所の一部設備に故障が発生するなどしたため、北陸電力は志賀原子力発電所敷地内外の点検作業や設備故障の原因調査を実施。故障した設備の復旧作業を段階的に進めている。
- 08 May 2024
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放射線審議会 ICRP2007年勧告の国内法令取り入れで部会設置へ
放射線審議会は4月23日に総会を開き、航空機乗務員の被ばく管理ガイドラインの見直し、国際放射線防護委員会(ICRP)2007年勧告の国内法令への取り入れ方等について審議し、今後、部会を設置するなどして必要な検討を進めることを決めた。航空機乗務員の宇宙線被ばく管理に関するガイドラインは、年間5mSvを管理目標値として航空会社に自主管理を求めたもので、2006年に策定された。以来、約18年経過している。その間にICRPが、航空飛行時の宇宙放射線からの防護に関する刊行物「ICRP Pub.132」を、また国際原子力機関(IAEA)が職業上の放射線防護に関する刊行物「GSG-7」などを発刊し、航空機乗務員の被ばく管理に関していくつか新たな考え方が示されている。民間航空機の飛行ルートに関しても、ロシアによるウクライナ侵攻によって2022年以降、欧州線が北極付近への迂回ルートをとることが増え、ロシア上空を通過する従来ルートより被ばく線量が高めになっている可能性が指摘されている。総会では、こうした状況の変化を的確にフォローアップし、論点を整理した上でガイドラインの見直しを進めてはどうかとの事務局(原子力規制庁)案が提案され、了承された。出席した各委員からは、被ばく線量の最新の状況を確認することや現場での被ばく管理の状況を確認した上で、必要な見直しについて議論を進めるべき、といった意見が出され、論点の整理や部会設置案など今後の検討にむけた準備を進めることになった。またICRP2007年勧告の国内法令への取り入れに関しては、これまで同審議会で進められてきた議論を踏まえ、外部被ばくと内部被ばくに分けて2つの部会を設置し、本格的に検討を開始することになった。2007年勧告に準拠した公衆の内部被ばくに関する刊行物はまだ発刊されていないため、その刊行を待ち技術的な情報が揃ってから部会を設置するなどの案も事務局から示されたが、各委員の意見を踏まえて2つの部会を設置し、内部被ばくに関しては職業人に関する検討から始めることになった。部会の設置、検討開始は来年度になる見通し。ICRPの2007年勧告は1990年勧告以来、放射線防護体系の総論的な勧告となるもので、国内法令への取り入れは多くの時間と作業量を要し、社会経済への影響も大きいため、同審議会ではどのように取り入れるか、その影響はどうか、また海外の状況確認や具体的な検討に必要な事項の調査などを進めてきた。2020年1月の総会では検討の中間とりまとめが行われ、「外部被ばくと内部被ばくの線量係数、職業被ばくと公衆の被ばくの線量係数を同時に法令に取り入れることが適当」との考え方が示された。昨年7月に開催された前回の総会では、検討が必要な技術的な事項や海外の状況確認がなされ、部会の設置やスケジュール等の案を準備することが了承されていた。
- 24 Apr 2024
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規制委 原子力災害時の屋内退避で効果的運用を議論へ
原子力規制委員会(規制委)は4月22日、原子力災害時に屋内退避する場合の、効果的な運用を明確化するための検討チームを始動した。規制委の伴信彦委員、杉山智之委員が担当する。原子力規制庁および内閣府(原子力防災)の担当官に加え、放射線や原子力防災などの外部専門家、地方自治体の関係者をメンバーとして、今年度内に検討結果をとりまとめる。原子力災害対策指針では、原子力発電所が全面緊急事態となった場合にUPZ(概ね5~30km圏)内の住民は屋内退避をすることとしているが、屋内退避の解除や避難への切替え等の判断は示されていない。このため、検討チームは2月14日の規制委で了承された、屋内退避の対象範囲及び実施期間の検討に当たって想定する事態の進展の形屋内退避の対象範囲及び実施期間屋内退避の解除又は避難・一時移転への切替えを判断するに当たって考慮する事項──の3点を検討課題とし、地方自治体等の意見も踏まえて効果的な運用の考え方や必要な事項をまとめる。会合のなかで、伴委員は検討の進め方について「最悪の状況だけ考えて安全側に保守的であれば良いというわけではない。現実的で柔軟な対応を考えていきたい」との基本的な考えを示した。検討チームは今後、日本原子力研究開発機構(JAEA)の確率論的事故影響評価コード「OSCAAR(オスカー)」を用い、炉心損傷により放射性物質が外部に放出する場合に想定される事態の進展をシミュレーションする予定で、炉心損傷に至らない場合を含めて3つのケースで事態進展の形を検討。その結果をもとに、屋内退避の効果的な運用について検討を進めていく。検討課題のうち、「解除又は避難・一時移転への切替えを判断するに当たって考慮する事項」については、福島第一原子力発電所の事故など過去の事例を踏まえることとし、現実的かつ効果的な運用が行えるよう議論を進める方針だ。この課題に関連して敦賀市の藤村弘明危機管理対策課長は「住民への広報のタイミングや範囲も検討に加えていただきたい。能登半島地震以降、住民の皆さんの意識は高まっている」と指摘し、安定ヨウ素剤の確実な配布についても検討に含めることを要望。規制委は、住民への周知とヨウ素剤配布について、検討課題に含めて必要な議論を行う考えを示した。内閣府では屋内退避についてのわかりやすいリーフレットを作成し、各自治体に配布するなど、地域住民への理解促進につとめているが、今後とりまとめられる検討の結果をどう周知していくかも重要な課題になる。
- 22 Apr 2024
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