キーワード:SMR
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米国 国家エネルギードミナンス評議会を設立
米トランプ大統領は2月14日の大統領令により、大統領府内に、エネルギー政策の司令塔となる、国家エネルギードミナンス(支配)評議会を設立した。D. バーガム内務長官が議長を務め、C. ライト・エネルギー省(DOE)長官が副議長を務める。他メンバーには、国務長官、財務長官、国防長官、司法長官、農務長官、商務長官、運輸長官、環境保護庁の管理者、経済政策や国家安全保障問題担当の大統領補佐官らを含む。同評議会は、最終的には国内のエネルギー生産を増やすことによって「エネルギー支配を達成する」ための戦略について大統領に助言することを目的としている。評議会は、大統領から、100日以内に提言と既存の権限下で可能な行動の両方を含む計画の提出を要請されている。同大統領令では、この計画によって「信頼性の高いエネルギーの緊急性など、エネルギー支配に関連する事項について国民的な意識を高める」と指摘。「インフレを押し下げ、経済を成長させ、高賃金の雇用を創出、製造業における米国のリーダーシップを再確立し、人工知能(AI)で世界をリードする。世界中の戦争を終わらせるために商業的および外交的な手段を振るい、力によって平和を回復する。そのためには、信頼性が高く手頃な価格のあらゆる形態のエネルギー生産を拡大しなければならない」と強調する。アメリカのエネルギー支配を政策の基軸に据え、原油、天然ガス、ウラン、石炭、バイオ燃料、地熱など、潤沢な国内資源を活用し、外国からの重要鉱物の輸入依存を減らし、経済を成長させる方針を示している。同協議会は、許認可、生産、発電、流通、規制、輸送、輸出を含むエネルギー産業を取り巻くプロセスを改善するための戦略について大統領に助言する。また、官僚的な形式主義や不必要な規制を廃し、民間部門の投資の拡大、イノベーションの促進など、エネルギー支配を達成するための長期目標を含む、より多くのエネルギー生産を可能にするための国家エネルギー支配戦略を大統領に提出する役目も担う。エネルギー生産の増大という政策目標を実現させる行動の例として、発電設備容量の急速かつ大幅な増加、エネルギーインフラの迅速な承認に加え、閉鎖された発電所の運転再開へ向けた取組みの促進や、小型モジュール炉(SMR)の早期運開を挙げている。
- 28 Feb 2025
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インド 米仏と原子力協力を一層拡大へ
インドのN. モディ首相は2月13日、米ワシントンでD. トランプ大統領と2期目就任後初となる首脳会談を実施した。会談後の共同声明で両首脳は、石油、ガス、原子力を含む米印エネルギー安全保障パートナーシップを再確認した。特に原子力については、大規模な現地化と可能な技術移転を通じて、米国の設計による大型炉や小型モジュール炉(SMR)をインドに共同で建設する計画を前進させ、米印原子力協定を完全に実現すると表明。また印政府による、原子力法及び原子炉に対する民事責任法(Civil Liability for Nuclear Damage Act: CLINDA)の改正に関する2月1日の発表を受け、民事責任の問題に対処し、原子炉の製造及び展開における両国の産業界の協力促進のため、CLINDAに準拠した二国間取決めの確立に合意した。モディー首相は訪米に先立つ2月12日、フランス・パリでE. マクロン大統領と会談。会談後の共同声明では、両者は原子力がエネルギー安全保障を強化し、低炭素経済に移行するためのエネルギーミックスの不可欠な部分であるとの共通認識を強調。両国の民生用原子力分野における協力、特にジャイタプール原子力発電所プロジェクト関連での取組みを確認した。また、民生用原子力協力に関する特別タスクフォースの第1回会合が1月に開催されたことを歓迎したほか、SMR及び先進型モジュール炉(AMR)のパートナシップ確立に関する基本合意書に署名。さらに、印原子力省(DAE)と仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)間で、印・原子力エネルギー・パートナーシップ国際センター(GCNEP)と仏・国立原子力科学技術研究所(INSTN)を通じた原子力専門家の訓練及び教育における協力に合意した。なお、モディー首相はマクロン大統領とともに、2月10日~11日にパリで開催されたAIアクションサミットの共同議長を務めている。
- 26 Feb 2025
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NEAマグウッド事務局長が来日 都市大で講演
OECD/NEA(原子力機関)のマグウッド事務局長がこのほど来日し、東京都市大学で講演した。講演会は同大とNEAが人材交流を目的にMOUを締結したのにあわせて開催された。マグウッド事務局長は、「次代を担う原子力:新たなチャンスと取り組むべき課題」と題し、次世代炉や小型モジュール炉(SMR)導入の展望に加え、原子力利用の加速に向けた資金調達や、規制の在り方、政策支援、市場環境、インフラ整備における課題と対策について、1時間ほど講演した。事務局長は、「2050年のカーボンニュートラル、世界の原子力発電設備容量を現在の3倍にするために、既存炉の長期運転、SMRの建設拡大、原子力の非電化用途の拡充など、同時並行で実施する必要がある。そのためには大きく4つの課題(サプライチェーン、法規制、政策と市場、インフラ整備)をクリアしなければならない」と述べた。特に今日の電力市場は、「長期的な環境対策とエネルギー安全保障が十分に考慮されておらず、出力調整可能なエネルギーに大きな価値がある」と指摘した。また、「各国政府がFOAK(初号機)リスクに対処するための政策の立案、新規原子力建設の資金調達を支援するための政府保証が重要であり、世界銀行のような国際金融機関が大きな役割を果たさねばならない」と語った。そして、「NEAでは、学生を対象としたさまざまなワークショップを各国で開催し、関係省庁や機関、そして産業界の専門家と科学技術について議論する機会を提供している。この講演に参加されている東京都市大学の学生の中にも、良いアイデアをお持ちの方がいるかもしれない」と述べ、学生の参画を促した。事務局長は、「長年にわたり原子力の仕事をしてきたが、原子力の評価は時代とともに変化してきた。私がこの世界に踏み入れた頃は、原子力は経済的に成り立たず廃れていく産業だと考える人が多くいたが、のちに原子力ルネサンスと呼ばれる時代が訪れた。しかし、福島第一原子力発電所の事故のような、業界内に大きな影響を与える出来事があり、そこから多くの教訓を学び、今に至っている。近年では多くの国が、原子力をエネルギーミックスの一部として取り入れるようになっており、今こそ原子力が本領を発揮する好機だ」と強く訴えた。
- 26 Feb 2025
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韓国造船企業 SMR駆動によるコンテナ船の設計を発表
韓国のHD現代グループの韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)社は2月12日、米国ヒューストンで開催された“New Nuclear for Maritime Houston Summit”にて、小型モジュール炉(SMR)駆動によるコンテナ船の設計モデルを初公開した。KSOE社はこれまでに、SMRを適用した15,000 TEU((TEU(twenty-foot equivalent unit、20フィートコンテナ換算)。コンテナ船の積載能力やコンテナターミナルの貨物取扱数などを示すために使われる、貨物の容量のおおよそを表す単位。))級コンテナ船モデルについて、米国船級協会(ABS)の基本設計承認(AIP)を取得。今回公開した設計モデルは、実際の設備や安全設計の考え方を取入れ、経済性と安全性を向上させたものだ。原子力船は従来の船舶と異なり、エンジン排気装置や燃料タンクを必要としない。KSOE社は、これまで大型のエンジンルーム設備が占めていたスペースを最適化し、追加のコンテナを収容できるようにして経済性を向上させた。また、安全性を確保するために、ステンレス鋼と軽水による二重タンク方式の海上放射線遮蔽システムを採用し、堅牢な安全基準を確保している。さらにKSOE社は、世界的なエネルギー技術企業である米ベーカー・ヒューズ社と協力して、超臨界二酸化炭素ベースの推進システムを採用し、既存の蒸気ベースの推進システムと比較して熱効率を約5%向上させた。この技術の導入により、原子力船の経済性と環境上の利点がさらに向上する。KSOE社は、韓国北西部の京畿道龍仁市にある未来技術試験センターに海上原子力実証施設を設立し、安全性設計の検証と試験を行う予定だ。ABSのP. ライアン最高技術責任者は、「原子力船は、カーボンニュートラルが台頭しつつある現在の造船市場においてゲームチェンジャーになり得る。ABSとKSOE社は、世界の造船市場における海上原子力技術の商業化の加速に貢献する」と語った。海事業界では、炭素排出量を削減し、持続可能性の目標を達成するため、海事用途の原子力技術への関心と投資が高まっている。KSOEグリーンエネルギー研究所のS. パク所長は、「原子力船の商業化に必要な国際的な規制を確立するため、主要な船級協会だけでなく、国際的な規制機関との協力を強化している」「陸上のSMR製造プロジェクトをはじめとし、2030年までに海洋原子力ビジネスモデルの開発を目指す」との展望を示した。KSOE社は2024年2月から米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社と次世代SMRの共同研究を行い、関連技術の開発を加速している。同年12月には、米国ワイオミング州に建設中のテラパワー社の先進炉「Natrium」の主要機器の製造を受注した。
- 21 Feb 2025
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米テネシー州 原子力プロジェクトへの支援を拡大
米テネシー州のB. リー知事は2月10日、州議会において2019年の知事就任から7回目となる一般教書演説を行い、2026会計年度(2025年7月~2026年6月)の予算案について明らかにした。原子力関係予算では7,000万ドル(約105億円)を計上している。リー州知事は、「テネシー州が原子力イノベーションをリードし、アメリカの未来を保障する」と語った。知事自身の提案により2023年、州政府が5,000万ドル(約75億円)を投じて、原子力関連企業の同州への拠点移転支援や同州の大学・研究機関における原子力教育の発展を目的とする原子力基金が創設されている。知事はこの基金の創設を契機に、テネシー州が米国の最先端のエネルギー企業から注目を集めていると指摘。米新興企業のケイロス・パワー社やX-エナジー社のほか、仏オラノ社の米国法人オラノUS社がテネシー州に拠点を置いている現状に言及し、先進的な原子力企業の一層の誘致を目指し、同基金への1,000万ドル(約15億円)の追加投資を予算案に含めていると説明した。ケイロス・パワー社は、テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」にてフッ化物塩冷却高温炉の「ヘルメス」実証プラントの建設工事を開始している。X-エナジー社は、米・大手化学メーカーであるダウ・ケミカル社のテキサス州メキシコ湾沿いに位置するシードリフト市の製造施設で、Xe-100を4基連結させた発電所の建設を計画。また、オラノUS社が遠心分離方式によるウラン濃縮施設の建設候補地に同州オークリッジ市を選定している。また知事は、同州のテネシー峡谷開発公社(TVA)がSMR建設用地として事前サイト許可を有する、クリンチリバー・サイトにおける小型モジュール炉(SMR)開発支援に向けた基金を創設。5,000万ドル(約75億円)を拠出し、テネシー州を次世代原子力のリーダーとして位置づけると表明した。TVAは今年1月、SMRの建設を検討している主要な公益事業会社や開発者、サプライヤー、建設パートナーと共同で、クリンチリバー・サイトにおける、GE日立製のSMR「BWRX-300」の建設を加速するために、DOEの第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから8億ドル(約1,202億円)の助成金を申請している。このほか、原子力関係の予算案には以下を含む。原子力諮問委員会の勧告に従い、原子力関係従業者の教育支援のため、職業教育投資(Governor’s Investment in Vocational Education: GIVE)に1,000万ドル(約15億円)の追加投資。商業用核融合発電のための米国初の規制枠組みの策定に260万ドル(約3.9億円)。さらに知事は、米国全土および世界中から、米南東部への移転を検討している多くの企業関係者と会うが、その決断は、エネルギー、労働者の有無に左右される、と言及。原子力が労働者階級の家庭にとって重要なのは、エネルギーがなければ、経済発展も雇用創出も無くなるからだ、と強調した。知事は、新興企業、新技術、研究開発を戦略的に支援し、経済の多様化、雇用の促進を図るほか、職業訓練、技術教育を拡大し、テネシー州の若者たちに雇用を確保し、テネシー州が米国最大のイノベーターたちの新たなフロンティアになることを目指す、との決意を表明した。
- 20 Feb 2025
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米国 アリゾナ州で新規建設案が浮上
米アリゾナ州のアリゾナ・パブリック・サービス(APS)社は2月5日、同州にある他電力会社2社と、州内において原子力発電の追加導入を検討すると発表した。APS社はアリゾナ州最大の電力会社。石炭火力発電所の他、州都フェニックス市の西に位置するパロベルデ原子力発電所(PWR×3基、各141.4万kWe)を1986年から運転している。同州のソルト・リバー・プロジェクト(SRP)社、ツーソン電力(TEP)社とともに、同州の増大するエネルギー需要に対応するため、先進的な原子炉の導入可能性評価に共通の関心を持っている。APS社はSRP社およびTEP社と協力して、原子力発電所の新規建設を検討し、閉鎖予定の石炭火力発電所を含む、幅広い候補地を評価する取組みを主導する。3社は、原子力は信頼性が高く、安価でクリーンなエネルギーであり、経済成長に貢献する、多様なエネルギーミックスの重要な構成要素であるとの認識で一致している。APS社のT. ゲイスラー社長は、「アリゾナ州のエネルギー需要が急激に増大する中、原子力発電所の新規建設には10年以上かかる。エネルギー源の選択肢の検討を今すぐ始めなければならない。他のエネルギー源とともに新たな原子力発電の実現可能性を評価していく」と語った。3社は追加の原子力発電所として、小型モジュール炉(SMR)と、可能であれば大型炉の設置を検討している。アリゾナ州で建設候補地の予備調査を開始するにあたり、すでに米エネルギー省(DOE)のクリーンエネルギー実証局(OCED)および原子力エネルギー局(NE)による第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラム下の助成金を申請している。助成が承認されれば、3年間のサイト選定プロセスと、米原子力規制委員会(NRC)への事前サイト許可(ESP)申請に向けた準備が加速されることになる。3社は共同作業により、早ければ2020年代遅くにサイトを選定、2040年代初めには追加の原子力発電所の運転開始を計画している。
- 17 Feb 2025
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インド初の民間原子力会社が誕生へ
インドのN. シタラマン財務大臣は2月1日、2025年度(2025年4月~2026年3月)連邦予算を発表した。原子力発電設備容量を2047年までに少なくとも1億kWに引き上げるとともに、2,000億ルピー(約3,500億円)を投じて小型モジュール炉(SMR)の研究開発を推進する「原子力エネルギーミッション」を開始、2033年までに少なくとも国産SMR5基の運転開始をめざす方針を表明した。さらに、原子力法および原子力損害賠償法の改正を進め、民間部門との連携強化を図る考えだ。政府報道情報局(PIB)は2月3日、N. モディ首相名で同連邦予算における原子力発電に関する声明を発表した。声明では、原子力開発がエネルギーの安定供給確保や、化石燃料依存の低減に寄与すると述べ、自身が掲げる「先進インド構想(ヴィクシット・バーラト((バーラトは、ヒンディー語で「インド」の意味。)))」の目標に合致すると強調。長期的なエネルギー移行戦略の一環として、原子力を大幅に推進し、エネルギーミックスの主要な柱とする方針を示した。同声明のなかで、政府は今後、ヴィクシット・バーラトに向けた原子力エネルギーミッションを推進し、民間部門と連携して、以下の目標の達成をめざすとしている。- バーラト小型原子炉(BSR)の設置- バーラト小型モジュール炉(BSMR)の研究開発- 原子力エネルギーに関する新技術の研究開発このうち、BSRは22.0万kWの加圧重水炉(PHWR)で、従来のPHWRを民間向けに改良したものとされる。鉄鋼、アルミニウムなどのエネルギー集約型産業の拠点近傍に設置し、脱炭素化を支援する狙いがある。計画では、民間事業者が土地や資本等を提供し、インド原子力発電公社(NPCIL)が現行の法的枠組みのもとで設計や運転、保守等を担う。民間によるBSRの建設に向け、NPCILは2024年12月31日付けで提案依頼書(RFP)の募集を既に開始している。さらに新たな動きとして、インドのコングロマリットの「ナヴィーン・ジンダル・グループ(Naveen Jindal Group)」がこのほど、原子力企業のジンダル・ニュークリア・パワー(Jindal Nuclear Power)社を設立し、原子力分野への参入を発表したことが、複数のメディアで報じられている。それによると、ジンダル・ニュークリア社は、今後20年間で1.8兆ルピー(約3.2兆円)を投じて、BSRを含む先進技術を活用し、1,800万kWの原子力発電所を建設・所有・運転する計画だ。同社は、インドで初めて原子力発電分野に投資する民間企業となる。1962年原子力法は、民間部門による原子力発電参入を禁止しており、原子力省(DAE)傘下のNPCILとバラティヤ・ナビキヤ・ビデュト・ニガム社(BHAVINI、高速炉の建設と運転の事業者)の2つの国営企業に限定されていた。しかし、2015年の法改正により、インド国営火力発電会社(NTPC)のような政府系公社がNPCILと提携が可能となっていた。今回のジンダル・ニュークリア社の設立は、インドにおける原子力発電の新たな時代の幕開けを示している。
- 14 Feb 2025
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カナダとポーランドが原子力協力協定を締結
カナダのJ. トルドー首相は1月28日、ポーランドのワルシャワを訪問し、ポーランドのD. トゥスク首相と原子力協力協定に調印した。カナダ企業が原子力技術、燃料、サービスを提供することで、ポーランドのクリーンエネルギー部門を支援し、石炭火力発電の段階的廃止を加速させ、地域全体のエネルギー安全保障を強化することが期待されている。また、両国に高レベルの雇用機会を創出するとともに、原子力協力、不拡散、安全、安全保障に対する両国共通のコミットメント強化にも貢献するとしている。2023年2月、両国の原子力規制機関である、カナダ原子力安全委員会とポーランド国家原子力機関は、小型モジュール炉(SMR)に関する協力覚書を締結し、SMR技術に関連するベストプラクティスと技術レビューに関する交流を深める道を開いた。ポーランドはまだ商業規模での原子力発電を行っていないが、大型炉とSMRの両方を建設する計画である。カナダ輸出開発公社は2024年12月、ポーランド北部ポモージェ県のルビアトボ–コパリノに建設を予定する同国初の原子力発電所のプロジェクト向けに、カナダのサプライヤーによる製品およびサービスの提供への支援を目的とした、最大14.5億米ドルの融資可能性の意向書を発行した。加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は同社のダーリントン・サイトで、2029年末までにGE日立製のSMR「BWRX-300」の営業運転の開始を計画している。ポーランドもBWRX-300の導入を計画しており、カナダの状況を注視している。カナダ原子力協会(CNA)のJ. クリスティディスCEOは、「原子力エネルギーは、世界のエネルギー安全保障に対するカナダのコミットメントの礎。本協定締結は、カナダが経済成長とイノベーションを促進しながら、強靭で低炭素なエネルギーシステムを構築するために同盟国をどのように支援できるかを例示するもの」と述べ、カナダの原子力技術の輸出を促進し、両国における高レベルの雇用創出と原子力産業へのさらなる投資の可能性に期待を寄せた。
- 13 Feb 2025
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IHI ルーマニア向け米製SMRのモックアップ製作を受注
IHIは2月5日、ルーマニア南部ドイチェシュテイの石炭火力発電所跡地に計画されている米国ニュースケール社製SMR(小型モジュール炉)建設プロジェクトにおいて、原子炉建屋の壁となる鋼製モジュールのモックアップ製作を、同プロジェクトを共同推進するサムソンC&T社より受注したと発表した。〈IHI発表資料は こちら〉同プロジェクトは、石炭火力発電所の跡地にSMR6基からなる「VOYGR-6」を建設するもの。海外向けPWRの鋼製モジュールを供給した実績のあるIHIは、今回のモックアップ製作により、ルーマニア南部ドゥンボビツア県のドイチェシュテイで13年前に閉鎖された旧・石炭火力発電所サイトに、出力7.7万kWの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた「VOYGR-6」(合計出力46.2万kW)の建設を計画。現在、サイト準備が進められている。鋼製モジュール製作の工程を検証することで、建設工事の工期短縮にも期待を寄せている。モックアップ製作は、同社横浜工場で行い、2025年4月までに完了する予定。IHIでは、2021年度に米国ニュースケール社に出資を決定。SMR実現に向けた技術開発に取り組んでいる。長年培ってきた原子炉の主要容器の製作経験と技術力を活かし、今後もSMRを始めとする原子力発電事業を通じ、カーボンニュートラルの実現に貢献していくとしている。同プロジェクトは、ルーマニアの国営原子力発電会社であるニュークリアエレクトリカ(SNN)と民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社の合弁企業であるロパワー・ニュークリア(RoPower Nuclear)社を中心に進められている。「VOYGR」は、蒸気発生器と圧力容器の一体化により、小型かつシンプルな設計で安全性を向上させている。ルーマニアでは、事業計画段階から、建設を見据えた基本設計の契約締結など、進捗があったほか、新興国としてガーナでも建設計画の動きがある。
- 13 Feb 2025
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英政府 新規建設支援で規制緩和の方針を発表
英政府は2月6日、K. スターマー首相の掲げる「変化に向けた計画(Plan for Change)」の一環で、原子力を活性化するというマニフェスト公約を実現すべく、英国の新規原子力発電所の建設に向けた規制緩和の方針を発表。イングランドとウェールズで多くの原子力発電所の建設が承認される見通しとなった。今回の規制緩和により、小型モジュール炉(SMR)を英国で初めて建設する道を開くとともに、何千もの新たな高レベルの雇用を創出、英国全土にクリーンで安全かつ低コストのエネルギーを供給し、経済成長を実現させる計画。スターマー首相は英国を原子力エネルギーの世界競争に復帰させると、意気込んでいる。英政府による最近の計画法の改正、インフラプロジェクトに係る司法審査の現在の3回から1回への制限、環境規則への常識の適用に続き、成長を優先させるため、時代遅れの規則を破棄し、NIMBY((公共に必要な施設だということは認めるが、それが自らの居住地に建設されることには反対する住民やその態度を意味する。))にノーを突きつける動きと評価されている。サイズウェルC(SZC)を含め、英国の主要なインフラプロジェクトは計画決定に際し、地元の反対運動家などによる訴訟の結果、訴訟費用と不確実性の増加に見舞われていた。今回の発表では、「英国は長きにわたり、決定が『困難すぎる』とか『長期にわたる』という理由で、遅延や妨害に悩まされてきた。英国は世界初の原子炉開発国であるが、1995年のサイズウェルBの運転を最後に原子力発電所の建設は行われておらず、よりクリーンで安価なエネルギーの利用をめぐる世界的な競争において、遅れをとっている」と言及。「英国の原子力産業界は、規制によって息の根を止められ、投資は崩壊。現在建設中の発電所はヒンクリーポイントC(HPC)のみ。企業が計画許可を取得するために3万ページに及ぶ環境アセスメントを作成するなど、不必要な規則によって何年も遅延が生じた」「投資家たちは、信頼性が高く安価な原子力発電所の建設を急ぎ、英国の野心的な計画を支える重要な近代的なインフラ、例えばスーパーコンピューターなどを支援したくとも妨げられてきた」と、これまでの状況を説明している。英政府は、全国的に原子力発電所の建設を容易にするために計画規則(Planning Rules)を改正し、雇用を創出、長期的には電気料金の引き下げ、そして国民に多くの収入をもたらす方策として以下を掲げる。計画規則に初めてSMRを含め、企業が必要とする場所で建設を可能にする。原子力発電所の建設は既存の8サイト限定を廃止。原子力発電所はイングランドとウェールズであれば、どこでも建設が可能に。原子力発電所の計画規則の有効期限を撤廃。プロジェクトが期限切れにならず、長期的な計画が可能に。首相直属の原子力規制タスクフォースを設置。より多くの企業が英国に原子力発電所を建設できるよう、規制の改善を主導する。スターマー首相は、「英国では何十年も原子力発電所が建設されていない。我々は失望させられ、取り残されてきた。英国のエネルギー安全保障は、プーチン(露)に長きにわたり人質に取られ、彼の気まぐれで英国のエネルギー価格が急騰してきた。この状況に終止符を打つ。原子力発電所の建設を支援するルールに変更し、安価なエネルギー、成長、雇用というチャンスへの長きにわたる妨害者たちにNoを突きつける」「現政権は変化をもたらすために選ばれた。英国を現状維持の眠りから引きずり出し、変化に向けた計画を加速させるために必要な抜本的な決断を下す」と強調した。英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のE. ミリバンド大臣は、「建設、建設、建設(Build, build, build)が英国のクリーンエネルギー計画のすべて。英国民は長い間、世界的なエネルギー市場で脆弱な立場に置かれてきた。唯一の解決策はクリーンな電力の新時代を築くことだ」と語った。英国では現在、原子力発電所の建設が8サイトに限定されているが、これは2011年以降見直されていない時代遅れの計画規則の一部。更新される計画枠組みは、投資プロセスを合理化し、開発業者がプロジェクトに最適なサイトを特定、より幅広い選択肢からの開発を可能にするもの。開発業者は、計画プロセスの事前申請段階でできるだけ早く候補地を提示することが奨励され、全体的なスケジュールが早まることが期待される。また、初めてSMRなどの先進技術が盛り込まれ、AIデータセンターなどのエネルギー集約型産業施設との併設に柔軟性をもたらすとしている。SMRは従来の原子力発電所よりも建設費が安く、工期も短い上、必要なサイト面積も狭いため、より多様な場所に建設できる。但し、人口密集地域や軍事エリアによる制約、地域社会の関与、高い環境基準などの立地に関する厳格な基準も引き続き維持するとしている。英国は現在、原子力発電所の建設に最もコストが掛かる国のひとつと考えられている。立地プロセス改革と並行して、タスクフォースが高い安全基準とセキュリティ基準を確保しながら、投資を促し、新しい原子炉設計の承認の迅速化と、開発業者と規制当局との関わりの合理化を目指す。具体的には、英国を国際パートナーとより緊密に連携させ、海外で承認された原子炉設計の迅速な承認のほか、高コストな変更を最小限に抑制し、重複する問題を扱う複数の規制当局が存在する場合、重複を減らし、プロセスを簡素化する方法を検討、規制上の決定が安全かつ均衡のとれたものとする作業が含まれる。この作業は、ヒンクリーポイントC(HPC)などのプロジェクトが直面している問題の解決に役立つという。HPCでは、欧州の3つの規制当局が原子炉設計について異なる評価を下したことが遅延とコスト増の原因と指摘されている。スターマー首相とミリバンドDESNZ大臣は2月6日、ランカシャー州にある英国立原子力研究所(NNL)のプレストン施設を訪問。新設を加速するという政府方針を受け、研究所員らと意見交換を行った。NNLは英国を代表する原子力の民生利用の国立研究所として、英国全体に原子力発電のメリットを確実に届け、英国をクリーンエネルギー大国にするために貢献したいと表明した。原子力発電による経済効果英EDFエナジー社は1月27日、英経済コンサルタント会社による、既存8サイトの原子力発電所による経済的影響の調査報告を公表。これまでに英国経済に1,230億ポンド(約23.4兆円)の貢献をしてきたことを明らかにした。1976年から現在にかけて運転している、改良型ガス冷却炉(AGR)を有する7サイトの発電所と、1995年に運転開始した加圧水型炉(PWR)の1サイトの発電所が調査の対象。総額1,230億ポンド(粗付加価値:GVA)は、発電電力や年31,000人もの直接・間接雇用、50年近くにわたるサプライチェーンへの投資の結果である。サプライチェーン支出の90%以上が英国内を拠点とする約1,500社に向けられており、国内サプライチェーンへのプラスの影響を強調している。また、これらの原子力発電所の稼働により約2.1兆kWhを発電し、11億トンのCO2排出の回避に貢献したと言及。これは英国の自動車からの16年間のCO2排出量に相当するという。EDFエナジー社によると、2024年の英国の原子力発電電力量は373億kWhで安定しており、少なくとも2027年までこのレベルを維持したい考えだ。同社は2024年12月、4サイトで運転中の8基の改良型ガス冷却炉(AGR)すべてを運転期間延長することを決定している。SZCプロジェクトが順調に進捗EDFエナジー社がイングランド東部サフォーク州で建設を計画するSZCプロジェクトの共同マネージングディレクターらが、国会における“Nuclear Week”の期間中の1月28日、SZCプロジェクトの進捗状況を国会議員に報告した。EPR-1750(172万kWe)を2基建設するSZCプロジェクトはその大半を政府が所有し、現在はサイト内で土木工事が進行中である。ディレクターらは、コンサル会社のプロジェクトに対する独立評価が、EPR建設プロジェクトにおける大幅なスケジュールおよびコスト超過につながった落とし穴を回避できる可能性が高いと結論づけたことを報告。また、同プロジェクトが予定通り予算内での完成が予定されていることや、HPCの設計の複製により、これまでに10億ポンド(約1,905億円)の開発コストを削減し、英国全土の290のサプライヤーと25億ポンド(約4,762億円)相当の契約がすでに合意されていること、最終的に英国全土で7万人以上の雇用の創出や建設費の70%以上が英国企業に支払われ、ライフサイクルを通じて英国への1,000億ポンド(約19.1兆円)以上の経済効果が予想されていることなどを報告した。
- 12 Feb 2025
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カナダ OPG社プロジェクトで米BWXTと契約
米国のBWXテクノロジーズ(BWXT)社の1月27日の発表によると、同社は加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)のピッカリングB原子力発電所の30年間の運転期間延長に向けた改修プロジェクト、ならびにOPG社のダーリントン・サイトにおける小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の建設プロジェクトに係る、総額10億カナダドル(約1,058億円)のコンポーネント製造契約を締結した。BWXT社は、ピッカリングB発電所(5~8号機、CANDU炉、各54万kWe)の30年間の運転期間延長に向けた改修プロジェクト向けに、オンタリオ州ケンブリッジの原子力機器製造工場で48台の蒸気発生器を製造する。製造期間7年で、エンジニアなど250人以上の高レベルの雇用を創出するという。カナダのエンジニアリング会社であるアトキンス・リアリス社、建設大手のエーコン社の合弁企業であるCanAtom社からの受注。ピッカリングB改修プロジェクトには、各原子炉とその関連機器(圧力管、カランドリア管、フィーダーパイプ、および蒸気発生器を含む)の主要コンポーネントの取外しと交換が含まれる。OPG社は本改修プロジェクトによる高レベルの雇用の維持と確保を含め、カナダのGDPにおいて406億ドル(約4.3兆円)の経済効果を見込む。5~8各機は1983年~1986年にかけて営業運転を開始し、計4基でオンタリオ州の電力需要の約10%をまかなっている。改修作業の完了は2030年代半ばと予定されている。なおピッカリングA(1~4号機、CANDU、各54.2万kWe)の2、3号機はすでに閉鎖、2024年10月に1号機、12月に4号機が閉鎖し、全機閉鎖されている。当初、ピッカリングBの2024年12月31日以降の商業運転は許可されていなかったが、オンタリオ州政府は2025年以降の運転を支持し、OPG社は2023年6月、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に2026年末までの運転期間延長を申請。CNSCは公聴会を経て、2024年10月に同機の2026年12月31日までの運転認可を発給した。OPG社は2026年末の運転を停止後、改修作業を開始する。オンタリオ州政府は2024年1月、OPG社によるプロジェクトの開始段階において、エンジニアリングや設計作業のほか、長期調達部品の確保のため、20億カナダドル(約2,116億円)の財政支援をすると表明。OPG社は、ダーリントン原子力発電所1~4号機やブルース・パワー社が進めるCANDU炉の改修プロジェクトから得られる知見をピッカリングにも反映するとしている。またBWXT社は、GE日立・ニュークリアエナジー(GEH)社とBWRX-300(BWR、30万kWe)初号機向けの原子炉圧力容器(RPV)の製造契約を締結した。RPVは炉心、冷却材、支持構造を含む、BWRX-300で最大のコンポーネント。BWXT社は、GEH社製BWRX-300のサプライヤーグループに初めて参加した企業であり、GEH社と2023年3月に、RPV関連のエンジニアリング解析、設計支援、製造および資機材調達の準備契約を締結している。ダーリントン・サイトでは事前のサイト準備作業は完了しており、OPG社はCNSCからの建設許可取得後、初号機の建設を2025年後半に開始、営業運転を2029年末までに開始したい考えだ。同サイトには合計4基のSMR建設を計画している。BWXT社は2024年4月、オンタリオ州ケンブリッジの原子力機器製造工場に8,000万カナダドル(約85億円)を投資すると発表している。オンタリオ州を含む、世界的な原子力発電需要の拡大を見込み、同工場の大型原子力機器の設計・製造施設を拡張、製造能力を増強する作業が進行中である。
- 07 Feb 2025
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米TVA SMRプロジェクトのパートナーを選定
米テネシー州のテネシー峡谷開発公社(TVA)は1月23日、テネシー州オークリッジ近郊にある同社のクリンチリバー・サイトにおける小型モジュール炉(SMR)の建設プロジェクトの初期計画と評価にあたり、米国のベクテル社とサージェント&ランディ社、およびGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社をパートナーに選定し、スケジュールとコスト見積りを共同で作成することを明らかにした。作業期間は1~2年以内と見込んでいる。建設にあたっては、作業プロセスの統合を促進させる、統合プロジェクトデリバリー(IPD)モデルを採用する。TVAの技術協力パートナーである加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社も、IPDモデルを発電プロジェクトに採用し成功を収めており、オンタリオ州のダーリントン・サイトにおけるSMR「BWRX-300」建設プロジェクトでも同モデルを活用しているという。TVAクリンチリバー・プロジェクトのB. ディーシー上級副社長は、「目標とする予算とスケジュール遵守のために企業間で協力し、リスクを共有、コストを削減していく」と語った。TVAはクリンチリバー・サイトについて2019年12月、米原子力規制委員会(NRC)より、SMR建設用地として事前サイト許可(ESP)を取得済み。TVAは合計電気出力が80万kWを超えない2基以上のSMRを同サイトで建設することを想定し、2016年5月にNRCにESPを申請していた。またTVAは、GEH社のBWRX-300(BWR、30万kWe)がSMRの中でも最も実現性が高いと判断。2022年8月にGEH社とクリンチリバー・サイトでBWRX-300を建設するための計画策定と予備的許認可を支援する契約を締結。さらに、2023年3月、BWRX-300の建設を計画している加OPG社、ポーランドのシントス・グリーン・エナジー社とともに、GEH社が世界中で同炉の建設プロジェクトを円滑に進められるよう、BWRX-300の標準設計を開発することで合意、GEH社と3事業者間で技術協力契約を締結した。なおTVAは1月17日、ベクテル社、BWXテクノロジーズ社、デューク・エナジー社、電力研究所(EPRI)、GEH社、アメリカン・エレクトリック・パワー社(AEP)傘下のインディアナ・ミシガン・パワー社、サージェント&ランディ社などから構成されるパートナー連合を結成し、米エネルギー省(DOE)の第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから8億ドル(約1,242億円)の助成金を申請したことを発表している。ただしTVA理事会は、クリンチリバー・サイトでのSMR建設を承認する決議をまだ行っていない。理事会の承認とDOEの助成金交付により、BWRX-300建設の初期活動の加速化が期待されている。またGEH社による同日17日の発表によると、デューク・エナジー社とBWRX-300の標準設計ならびに許認可を進める活動に投資する契約を締結した他、AEP社がインディアナ州スペンサー郡にあるインディアナ・ミシガン・パワー社のロックポート石炭火力発電所サイト内にBWRX-300を設置する可能性について表明したという。DOEの助成金プログラムは2024年、米国内の原子力産業を強化し、米国初のSMR配備への支援、先進原子力技術のサプライチェーンの確立を目的に創設された。TVAのJ. ライアッシュCEOは、「この助成金が交付されれば、クリンチリバー・サイトでのSMRの建設が2年前倒しされ、早ければ2033年に営業運転が開始される」「この資金調達により、国内のサプライチェーンの確立を支援し、コストとリスクを軽減するための教訓とベストプラクティスを共有することで、より広範なSMR展開への道が開かれる」と指摘した。
- 04 Feb 2025
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米国 閉鎖したデュアン・アーノルドの運転再開を申請
米大手電力会社でフロリダ州に本拠地のあるネクストエラ・エナジー社は1月24日、2024年第4四半期の決算説明会の中で、経済性を理由に永久閉鎖したデュアン・アーノルド原子力発電所(BWR、62.4万kWe)の運転再開に向けて、米原子力規制委員会(NRC)に許認可の変更を要請したことを明らかにした。同発電所は保存状態も良好で、運転許可が復活すれば、早ければ2028年末に運転を再開できるとしている。なお同説明会の中で、J. ケッチャムCEOは、小型モジュール炉(SMR)の導入可能性についても言及。社内でSMRに特化したチームを立ち上げたが、SMRはいまだ技術開発や許認可の面で不確実性が高く、大規模な実現は2030年代後半になるだろうとの見通しを示した。米国のアイオワ州にあるデュアン・アーノルド発電所は1975年2月に運転開始、45年以上の運転の後、2020年8月に永久閉鎖した。2034年2月まで、運転が認可されていたが、2018年7月、発電所所有者のネクストエラ・エナジー・リソーシズ社は顧客の電力会社であるアライアント・エナジー社と既存の電力購入契約の5年間短縮に合意し、2020年10月の閉鎖を決定した。さらに、同年8月の暴風雨で冷却塔などが損傷。原子炉自体に損傷はなかったものの、予定より2か月早く閉鎖した。デュアン・アーノルド発電所の永久閉鎖後、2022年4月までにすべての使用済み燃料がサイト内の乾式貯蔵施設に移された。廃止措置方式は遅延解体(SAFSTOR)を採用しており、設備を安全に保管し、残留放射能の崩壊後、2075年に最終的な解体および除染活動を開始し、2080年までに作業を完了させる予定だった。ネクストエラ・エナジー社は、傘下にフロリダ・パワー・アンド・ライト社ならびにネクストエラ・エナジー・リソーシズ社を所有。これら傘下企業を通じ、フロリダ州でターキーポイント3、4号機(PWR、各82.9万kWe)とセントルーシー1、2号機(PWR、各105万kWe級)、ニューハンプシャー州でポイントビーチ1、2号機(PWR、各64万kWe)、ウィスコンシン州でシーブルック発電所(PWR、129.6万kWe)を運転している。米国では電力需要の増大と無炭素電源への関心の高まりから、閉鎖した原子炉を運転再開させる動きが広がっている。経済性を理由に2022年5月に閉鎖されたパリセード発電所(PWR、85.7万kW)は、現在の所有者であるホルテック・インターナショナル社が政府の融資保証の支援を受け、NRCへの運転認可の再交付申請を含め、運転再開の準備を進めている。コンステレーション・エナジー社はマイクロソフト社のデータセンターへの20年間の売電契約締結により、2024年9月、同じく経済性を理由に2019年9月に閉鎖したスリーマイル・アイランド1号機(PWR、89万kW)の運転再開を決定、NRCへの手続きを開始している。
- 03 Feb 2025
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韓国製SMR 欧州市場に参入へ
韓国水力・原子力(KHNP)は1月23日、ノルウェーとスウェーデンで小型モジュール炉(SMR)の導入を目指す各企業と協力体制を構築し、自社開発のSMR「i-SMR」で欧州市場へ参入する方針を明らかにした。KHNPは1月20日に、ノルウェー・オスロで新興エネルギー企業であるノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社と、1月21日には、スウェーデン・ストックホルムでプロジェクト開発企業のシャーンフル・ネキスト(KNXT)社とそれぞれ業務提携の了解覚書(MOU)を締結し、SMR分野で緊密に協力することで合意。ノルウェーやスウェーデンの自治体では、SMRの導入による地域経済の活性化やエネルギー自立に向けた取組みを検討しており、KHNPは両社と連携し、i-SMRの導入に向けた情報共有、建設候補地の予備的実行可能性調査(F/S)、スマートネットゼロシティ((i-SMRと太陽光や風力などの再生可能エネルギーを組み合わせて、エネルギーの安定供給とCO2排出ネットゼロを実現する都市構想。))の開発に取り組んでいくとしている。ノルウェー国内では原子力発電導入に向けた調査に率先して取組む自治体の数が急激に増加。ノルスク社はSMRの建設、所有、運転を目指し、国内の複数のサイト候補地で各自治体や電力集約型産業と連携したSMRの導入検討や建設可能性の調査を実施している。ノルウェー政府は2024年6月に、原子力発電導入を検討する委員会を設立した。ノルウェーには発電炉の開発、運転、規制、許認可プロセスの経験はなく、同委員会は原子力発電所建設の将来的な可能性について多様な側面から幅広く検討・評価し、2026年4月までに政府に報告書を提出することになっている。一方、スウェーデン政府の原子力発電所新設計画に沿って、KNXT社はスウェーデン南東部の予備的なサイト調査を完了し、SMR開発に注力している。スウェーデンは脱原子力政策を撤回し、大規模な原子力発電開発に向け、大きく舵を切っている。2022年の総選挙によって誕生した中道右派連合の現政権は、40年ぶりに原子力を全面的に推進しており、2023年11月には、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップを発表した。同ロードマップには、2035年までに少なくとも大型炉2基分、さらに2045年までに大型炉10基分を新設することなどが盛り込まれている。KHNPは、独自開発したSMRと、国内外におけるこれまでの建設・運転経験に基づき、欧州のSMR市場での地位を確立・強化する考え。KHNPのJ. ファンCEOは「今回の合意はKHNPが欧州のSMR市場に参入する重要な機会になる」とし、「KHNPの技術ノウハウに基づき、世界のカーボンニュートラルの実現に貢献し、持続可能なエネルギーの未来をリードする」と語った。i-SMRは、電気出力17万kWの一体型PWRで、概念設計と基本設計は2023年末に完成。大型炉に比較して大幅に工期を短縮する、モジュール工法を採用している。KHNPは2020年、i-SMR開発プロジェクトに着手。同プロジェクトは2023年に国家研究開発プロジェクトに位置付けられ、韓国政府のバックアップの下でプロジェクト全体を管理するi-SMR開発機構が発足。KHNPや韓国原子力研究院(KAERI)のほか、韓国電力技術(KEPCO E&C)、韓電原子力燃料(KNF)や斗山エナビリティなど、韓国の主要原子力関連企業が参加している。
- 03 Feb 2025
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スロバキア 小型高速炉の導入を計画
英国で2021年に設立された先進炉開発企業のニュークレオ社は1月15日、スロバキアの主要な原子力企業であるJAVYS社とVUJE社各社と締結した枠組み協定の内容を明らかにした。同協定によると、閉鎖されたスロバキアのボフニチェ原子力発電所(V-1)1~2号機のサイトにおいて、ニュークレオ社が開発する第4世代の鉛冷却高速炉「LFR-AS-200」(20万kWe)を最大4基建設する計画。コストは32億ユーロ(約5,178億円)と試算されている。スロバキア国営のバックエンド企業であるJAVYS社との協定では、使用済み燃料管理を実施する合弁会社「使用済み燃料利用開発センター(CVP)」設立に向けた条件を設定。JAVYS社が51%、ニュークレオ社が49%の株式を保有する。ボフニチェ原子力発電所(V-1)の1、2号機(VVER-440、各44万kWe)はそれぞれ2006年、2008年に閉鎖され、現在JAVYS社が所有、廃止措置を実施中である。ニュークレオ社は、JAVYS社が所有・操業する施設で貯蔵されている使用済み燃料を、フランス政府の協力を得て、再処理する。その後ニュークレオ社がフランスで計画しているMOX燃料製造施設で燃料加工の上、CVPが開発・建設するLFR(鉛冷却高速炉)で再利用する方針である。深地層処分を必要とする放射性廃棄物の量を減らし、スロバキアにおけるクローズド・燃料サイクルの確立に貢献したい考えだ。スロバキアの大手原子力エンジニアリング企業であるVUJE社との協力では、VUJE社の数十年にわたる原子力発電所での経験、特に原子炉の建設と試運転、および高速炉技術開発分野での豊富な経験を活用。CVPが実施する初期の実現可能性調査とその後の活動への参画など、LFR開発に共同で取組むこととしている。ニュークレオ社のS. ブオノCEOは「原子力分野での50年にわたる経験と既存の原子力インフラを持つスロバキアは、先進的モジュール炉(AMR)の新技術の開発、試験、実用化において、非常に重要で戦略的なパートナーである」「本プロジェクトは、他の欧州諸国でも実施可能であることを例示するもの。使用済み燃料の再利用は、欧州の今後数百年のエネルギー自立を保証し、競争力のある安定した価格で、EU産業の競争力を高めるために必要なステップである」と述べ、スロバキアの産業にとっての機会であるだけでなく、欧州原子力エネルギー部門全体のパラダイムシフトであると強調した。欧州委員会が立ち上げた「欧州SMR産業アライアンス」は2024年10月、ニュークレオ社のLFRを、環境に優しく、安定し、コスト効率の良いエネルギー源の確保に役立つとして支援対象とする、9件のSMRプロジェクトの一つに選定している。ニュークレオ社は2023年以来、スロバキアの原子力産業および政府の主要企業と積極的に接触。同年12月には、スロバキア経済省およびJAVYS社と、協力機会の模索とAMR開発を目的とする覚書を結んでいる。2024年7月には、スロバキアのVUJE社と、スロバキアにおけるAMRと先進的な燃料サイクルの開発の協力強化で合意していた。
- 29 Jan 2025
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IEA 原子力投資の増加を予測 SMRに注目
国際エネルギー機関(IEA)は1月16日、報告書「原子力エネルギーの新時代への道(The Path to a New Era for Nuclear Energy)」を発表した。報告書は、世界的な電力需要の急増を背景に、政策支援や投資、小型モジュール炉(SMR)の技術開発などが原子力発電の成長を後押しする一方、コスト超過、プロジェクトの遅延リスク、資金調達などの課題に対処する必要があると指摘している。IEAは原子力について、24時間供給可能で大規模展開できる、クリーンで実証済みの電源・熱源であると評価、再生可能エネルギーを補完するとともに、エネルギー・セキュリティや排出量削減に寄与するエネルギー源であるとしている。<原子力発電の現況>2023年現在、原子力発電は世界の総発電電力量の約9%を占め、30か国以上で410基以上が運転中。水力発電に次ぐ第2位のシェアを誇る低排出電源である。IEAによると、現在、原子力3倍化に向けた取組みなど、40か国以上で原子力発電の利用拡大に向けた支援が行われており、原子力への関心は、1970年代の石油危機以来最高水準に達している。現在建設中の原子炉は63基、発電設備容量は7,000万kWを超え、1990年以降で最高水準の一つとなっている。また、ここ数年では、新規建設や既存発電所の運転期間延長の取組みも活発化しており、2025年には原子力発電量が過去最高を記録する見通しである。さらに、新規建設と既存発電所の運転期間延長の両方を合わせた、原子力への投資額は、2023年には約650億ドル(約10兆1,000億円)に上昇し、10年前のほぼ2倍の水準となった。一方で、IEAは、現在運転中の原子力発電所の70%以上が先進国に集中しているものの、平均運転年数が36年以上と比較的古く、原子力シェアも減少傾向にあると指摘。世界の原子力市場の勢力図が、中国をはじめとする新興国へと変化しつつあり、2017年以降に建設が開始された原子炉52基のうち、48基が中国(25基)またはロシア(23基)の設計であると分析した。また、現在建設中のプロジェクトの大半が中国で行われており、中国が2030年までに原子力発電設備容量で米国と欧州を上回るとの見通しを示している。IEAはまた、燃料供給に関するリスクにも言及しており、特にウラン濃縮については、世界の濃縮能力の40%をロシアが占めている現状を問題視。将来へのリスク要因であるとし、燃料分野におけるサプライチェーンの多様性を高める必要性を強調した。また、近年の米国やフランスなどでの大型炉建設における大幅な遅延やコスト超過などの課題も克服すべきとした。<原子力投資の見通し>IEAは、世界の原子力投資は今後増加すると予測しており、大型炉が主要な投資対象となる一方で、SMRが急成長する可能性に言及している。現行のエネルギー政策に基づく「公表政策シナリオ」(STEPS)では、SMRの発電設備容量が、2050年に4,000万kWに拡大すると予測。また、各国政府による誓約目標が期限内に完全に達成されることを想定した「発表誓約シナリオ」(APS)では、政府の支援強化により、2050年までに1,000基以上のSMRが導入され、総発電設備容量は1億2,000万kWに達するとの見通しを示した。これに伴い、SMRへの投資額も大幅な伸びが予想され、現在の50億ドル(約7,800億円)から2030年には250億ドル(約3兆9,000億円)を超え、2050年までに累計投資額は6,700億ドル(約104兆円)に達する見通し。IEAは、データセンター(DC)の拡大等を背景に、安定的で低排出な電源としてのSMRへの関心が高まっていると分析している。現在、DC向け電力供給として合計最大2,500万kWのSMR建設計画が進行中であるという。また、近年では10%未満にとどまっていた先進国の設計を採用する大型原子力プロジェクトの割合が、欧州や米国、日本での新規着工により、APSでは2030年までに40%に増加、その後は半数を超えると予測した。さらに、SMRの広範な導入により、2050年までに新規建設の60%以上が、米国または欧州の設計が採用されるとの見方を示した。但し、IEAは、SMRの成功と導入のスピードは、2040年までにコストを大規模水力や洋上風力と同水準にまで引き下げられるかどうかにかかっているとも指摘している。<原子力プロジェクトへのファイナンス>IEAは、APSでは、2030年までに原子力への年間投資額が1,200億ドル(約18兆7,000億円)にのぼると見ており、この投資の規模を考えると、公的資金に依存するだけでは不十分であり、民間投資の促進が不可欠であるとの見方を示している。一方で、原子力プロジェクトは、その規模の大きさや資本集約性、長い建設期間、技術的複雑さから資金調達が難しく、コスト超過や工期遅延が頻発しており、投資家にとって大きなリスク要因となっている。こうしたなか、IEAは、政府の支援が商業銀行による資金提供を後押しするカギと強調。予測可能なキャッシュフローの保証や建設リスクの政府負担が、プロジェクトの資金調達を容易にするとした。また、長期の電力購入契約や差金決済取引(CfD)、規制資産ベース(RAB)モデルといったリスク軽減策が、安定した資金調達を支える仕組みとして重要性が増しているとした。さらに、IEAは、新規の大型原子炉建設プロジェクトは、建設段階での資金調達が難しいとされる一方、既存発電所の運転期間延長プロジェクトは、運転中の資産を対象とするため、銀行からの資金提供を受けやすいと指摘。また、SMRについては、その規模の小ささから建設期間が短く、投資回収期間が従来型プロジェクトの半分程度に短縮される可能性があることから、投資コスト全体の大幅削減につながる可能性があるとした。また、昨今のグリーンボンドなどの環境金融商品が、新たな資金源として注目を集めており、原子力への資金調達の幅を広げる可能性も併せて指摘している。また、IEAは、原子力事故のリスクに関して、影響を十分に補償する体制を確保するとともに、原子力事業が持続可能に運営できる仕組みの重要性を強調。日本の原子力損害賠償法に言及し、例外的な事象による原子力事故を除き、原子力事業者に損害賠償責任を無制限に課す現行制度について、「大きな財務的テールリスク((統計的な分布における「尾(テール)」に該当するリスクを指す。発生確率は非常に低いが、発生した場合には甚大な影響を及ぼす可能性があるリスクを指す。))を伴う」と指摘した。 ※図表の入った詳細版を、こちらで公開しています
- 22 Jan 2025
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フランス SMRの再設計作業を開始
フランス電力(EDF)の子会社であるNUWARD社は1月6日、同社製小型モジュール炉(SMR)である「NUWARD」の再設計作業を開始したことを明らかにした。EDFとNUWARD社は2024年6月、プロジェクトの遅延や予算超過を避けるためにNUWARD SMRの設計を見直し、既存の実証済みの技術を利用し、設計を最適化する計画を決定。その後まもなく、英国の原子力発電所の新設計画を牽引する政府機関「大英原子力(Great British Nuclear:GBN)」が実施するSMR支援対象選定コンペから撤退した。NUWARD社は、「ここ数か月に実施された研究は極めて重要であり、当社は電力会社と産業界の期待に完全に応えるべくSMR戦略を見直してきた。NUWARD SMRは、電気出力40万kW、熱出力約10万kWのコジェネのオプションを提供する。市場のニーズに適合した安全な製品を提供するため、原子力部門でよく知られ、完全に習得された実績ある技術コンポーネントのみから構成される設計に見直す」と説明。「NUWARD SMRの付加価値は、競争力と建設時間の最適化を目的とした、シンプルさとモジュール工法にある」と強調した。同社は現在、2026年半ばまでに概念設計を完成させ、2030年代に市場投入し、国内に初号機の建設を計画している。2019年9月、EDFは仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)などと協力して、欧州主導のSMR「NUWARD」(電気出力17万kWの小型PWR×2基)の開発を発表。2基の独立した原子炉圧力容器(RPV)を鋼製格納容器内に収納、格納容器は水中設置を特徴とし、基本設計段階に進んでいた。
- 17 Jan 2025
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チェコ 2040年までに原子力シェア68%へ
チェコ政府は2024年12月20日、欧州委員会(EC)に「国家エネルギー・気候計画」(NECP)の最終文書を提出した。2033年までに電力や熱生産における石炭利用を全廃し、再生可能エネルギーとともに、原子力発電を拡大する方針を明示。原子力を、対外エネルギー依存の低減や脱炭素化戦略の重要な柱と位置付けた。NECPは、EU加盟国が脱炭素化やエネルギー効率、再エネなどの実施計画を含む、気候変動目標と行動を詳述した文書。今回チェコ政府は、再エネの総発電電力量に占める割合を現在の約12%から2030年には31%、2050年には52%まで引き上げるとともに、原子力は、現在の約40%から2040年には68%にまでシェアを拡大させる方針を表明した。原子力の増分は、大型炉と中小型炉(SMR)の導入により賄うとしているが、まずは、既存原子力サイトのドコバニ(VVER-440、51.0万kWe×4基)とテメリン(VVER-1000、108.6万kW×2基)での増設を優先させる。チェコ電力(ČEZ)は2024年7月、最大4基の増設プロジェクトの優先交渉者として、韓国水力・原子力(KHNP)を選定、今年3月末にも正式契約が調印されると見られている。現在、同プロジェクトの入札手続きについては、WE社が、韓国のAPR1000やAPR1400は同社の技術を組み込んでいると主張し、知的財産権と輸出管理をめぐってKHNPと係争中だ。こうしたなか、2025年1月9日、米エネルギー省(DOE)と韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、昨年11月に仮調印していた、原子力輸出及び協力の原則に関する覚書(MOU)に正式調印した。今回、両国政府が、原子力輸出協力の意向を明確に示したことにより、両企業間の交渉が今後円滑に進む可能性を指摘する向きもある。NECPはまた、石炭火力全廃後の、特に2035年以降のSMRの役割を強調、石炭火力をSMRに順次リプレースすることにより、地域暖房を含めたSMRの活用方針を打ち出した。既にČEZは、SMR初号機の建設サイトとして、テメリン・サイト南西部を選定済みで、地質調査など建設準備作業が進められている。2024年9月には、チェコ政府とČEZがSMR供給者7社の中から入札によって、英ロールス・ロイスSMR社をSMRの建設プロジェクトの優先サプライヤーに選定。SMR初号機の運転開始は2030年代半ばを予定しているが、大型原子炉の建設状況次第では、最大300万kW導入する可能性もあるという。そのほか、ČEZは、国内2基目、3基目のSMR建設候補サイトとして、チェコ北東部のポーランド国境に近いジェトマロヴィツェ(Dětmarovice)と北西部のドイツ国境付近のトゥシミツェ(Tušimice)を暫定的に指定している。両地点とも、ČEZの石炭火力サイトである。
- 15 Jan 2025
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米WE社 カナダで主要機器製造へ
米ウェスチングハウス(WE)社とBWXTカナダ社は12月12日、カナダ国内外における原子力発電の新規建設プロジェクトを支援する覚書(MOU)を締結したことを明らかにした。WE社は、新規建設プロジェクト遂行のため、カナダにおけるサプライチェーンの構築を進めている。今回のMOUは、BWXTカナダ社による、WE社製AP1000と小型モジュール炉(SMR)であるAP300の原子炉容器、蒸気発生器、熱交換器などの主要コンポーネントの製造を想定している。加オンタリオ州ケンブリッジに拠点を置くBWXTカナダ社は、PWR向け蒸気発生器、核燃料および燃料関連機器、重要プラント機器・部品など、原子力発電設備の設計、製造、試運転、関連サービスにおいて60年以上の経験とノウハウを有している。本社は米国にあるBWXテクノロジーズ社で、米国、カナダ、英国に事業所を置く。WE社は、カナダには西側諸国で最強の一つとされる原子力サプライチェーンがあり、米国のサプライチェーンと組合わせることで、新規建設を迅速に行う強力なプラットフォームになると考えている。WE社はカナダのオンタリオ州において、AP1000を4基建設するプロジェクトを計画しており、早ければ2035年までに完成するとしている。経済効果は建設段階で287億加ドル(約3.1兆円)、運転中に年間81億加ドル(約8,717億円)のGDP増となると試算している。なお、カナダ国外での建設ではカナダのサプライチェーンを通じて、1基あたり約10億加ドル(約1,076億円)のGDP増を見込んでいる。また、カナダ国内に12,000人の高賃金のフルタイム雇用が創出されるという。
- 19 Dec 2024
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米電力会社のSMRプロジェクト 加アトキンス・リアリス社が協力
米ワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウェスト社は12月12日、同社の小型モジュール(SMR)導入プロジェクトの実施に向けて、加のアトキンス・リアリス(AtkinsRéalis)社をオーナーズ・エンジニアに選定したことを明らかにした。エナジー・ノースウェスト社は、太平洋岸北西部で唯一稼働する原子力発電施設のコロンビア発電所(BWR、121.1万kWe)を所有・運転するほか、水力発電、風力発電、太陽光発電、蓄電池の事業を行っている。同社は今年10月、大手IT企業のAmazon社ならびに先進炉開発企業のX-エナジー社と、X-エナジー社製SMR「Xe-100」(ぺブルベッド型高温ガス炉、8万kWe)を4基(最大12基)建設するプロジェクトへの出資契約を締結した。エナジー・ノースウェスト社はAmazon社と複数年にわたる実行可能性調査の実施で合意したばかりであり、調査では環境、安全、許認可、リスク面に焦点を当てつつ総合的な分析を行う。プロジェクトが承認されれば、建設許可申請を行う計画だ。アトキンス・リアリス社(旧SNC-ラバリン=SNC-Lavalin)はCANDU 炉の技術管理者であり、原子力産業において70年以上の経験を有するエンジニアリングサービス企業。今回のオーナーズ・エンジニアリング契約に基づき、SMRプロジェクトの設計、許認可手続き、建設、試運転を支援する。作業は、ワシントン州リッチランドに最近開設されたおよそ3,000㎡のアトキンス社の最先端のエンジニアリング・技術センターで実施される。エナジー・ノースウェスト社は、アトキンス・リアリス社との協業により、AI(人工知能)革命をサポートするSMRの開発支援だけでなく、雇用創出、経済成長、クリーンで安定した電力供給によって、地域に長期的な利益をもたらしたいとしている。
- 19 Dec 2024
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