■国際協力活動
|
□インド原子力学会参加訪印団を派遣
|
当協会は11月23日から29日にかけて、インドの原子力関係者幹部との懇談及び原子力関連施設の視察を行う訪印団を派遣しました。これは、11月24日から26日にインド・ムンバイで第19回インド原子力学会年会(INSAC-2008)が開催されるにあたり、これを機に最近のインドの原子力事情を把握することとしたものです。訪印団には、当協会日印協力調査会の主査を務める東工大・関本教授、また日立GE、東芝、三菱重工および伊藤忠商事からの参加がありました。
インド原子力学会年会は、参加者数約600名、インド国内の原子力関係企業や原子力研究所、学識者等が中心でしたが、日本を始めフランス、韓国等海外からの参加もありました。開会セッションでは、ラオ・インド原子力学会会長の挨拶のほか、カコドカール・インド原子力委員長、ジェインNPCIL総裁、ナイク・ラーセン・アンド・トゥブロ(L&T)会長、および本学会で優秀科学者賞を受賞したフランスの物理学者であるヴァンドリエス博士が講演を行いました。
服部理事長は「世界的な原子力ルネッサンスと日本の役割」と題して講演し、原子力ルネッサンスは国際協力によって実現すること、その前提として3S(核不拡散、安全性、セキュリティ)が基本原則であること、また日本が継続して原子力発電所を建設してきた経験から、日本の技術・経験によって原子力ルネッサンスに貢献できることなど述べました。参加者からは、日本が建設工程と予算管理の面で優れた能力を持っていることに高い関心が寄せられました。また、当協会の日印原子力協力調査会主査である関本博・東京工業大学教授は、「CANDLE高速炉の実用設計」と題して講演し、講演後インドの研究者から多くの質問が寄せられました。
|
INSAC・2008 開会セッション |
INSAC・2008における服部理事長の講演 |
学会期間中に、カコドカール原子力委員長らとの会合を行いました。
カコドカール委員長よりまずインドの原子力開発状況について説明があった後、服部理事長より日本の最近の状況について、主にもんじゅの進捗状況、再処理施設の建設状況、廃棄物問題、原子力発電所の稼働率低迷等について説明を行いました。カコドカール委員長は、日本との協力について、今すぐに始めることは無理であろうが、前進させるために話し合うことが大切だと述べられました。服部理事長からも、日本にはまだまだインドの原子力産業の情報が少なく、まず互いを良く知ることが大事であると伝えました。
学会終了後には、NPCILのジェイン総裁および幹部との会合を行いました。
ジェイン総裁からは、政府間の交渉は時間がかかるが、産業界は青信号がついたらいつでも出て行けるように準備しておきたいと述べられました。服部理事長からは、政府間の交渉はまだ始まっていないが、まずはこのような直接のコミュニケーションを継続し相互理解を図りたいと伝えました。
|
インディラ・ガンジー原子力研究所の 高速増殖実験炉(FBTR) |
マドラス原子力発電所の中央制御室 |
その後、ムンバイ北部にある総合重機メーカーのラーセン・アンド・トゥブロ(L&T)社を訪れ、コトワル副社長等幹部との懇談およびPFBRの蒸気発生器製造施設の見学を行いました。
会合が終わった26日の夜(現地時間)、同時多発テロが発生しましたが、団一行に被害はなく、翌27日朝、スケジュール通り空路ムンバイを離れ東海岸のチェンナイに移動しました。チェンナイにはサイクロンが来ており、悪天候の中さらに車で1時間半のカルパッカムに移動し、FBRの研究開発を行っているインディラ・ガンジー原子力研究所(IGCAR)、マドラス原子力発電所(MAPS/インド初の国産化加圧重水炉、220MWe×2基)、建設中の高速増殖原型炉(PFBR/電気出力50万kW)の視察を行いました。
|
□カザフスタン共和国の原子力産業関係者との懇談
|
カザスフスタン共和国の政府及び政府機関の原子力関係者一行(エネルギー・鉱物資源省のタケレコフ原子力産業部長を団長に、産業・貿易省、カザトムプロム、カザフスタン原子力大学の専門家、計8名から構成。社団法人ロシアNIS貿易会(ROTOBO)が実施する、原子力関連産業に携わる人材育成事業(経済産業省委託)による来日)が、平成20年12月16日、当協会を訪問しました(=写真)。
一行は、約1週間の滞在中、カザフスタンにおける原子力産業の発展に係わる政策立案や原子力広報活動に役立てるために、日本の政府、原子力関係機関・団体を訪問し、日本の経験や取組状況を学ぶことにしています。当協会では、16日午前に、当協会スタッフより、日本の原子力産業発展の歴史と現状に関する講義を受講するとともに、午後には原子力産業界の関係者との懇談会に出席しました。
懇談会では、日本側から電力会社、メーカー、商社、原子力機関の関係者が出席し、両国の相互理解を図るために、カザフスタン側より、同国の原子力政策や体制、原子力産業の実情や展望について、紹介していただきました。カザフスタンのウラン生産は現在、カナダ、オーストラリアに次ぎ、世界3位であるが、2010年には1位(世界シェアの30%、15000トン)を目標としていること、2030年までに、海外企業との連携により、燃料サイクル全般(転換・濃縮・燃料加工)の構築を実現していく計画があるとし、原子力分野における人材育成に関する両国の交流促進、日本の原子力技術の導入(特にウラン生産、純金属、希少金属生産や燃料製造分野)への期待を寄せました。また、両国間の原子力平和利用協力協定の締結を見据え、有望な協力分野等についての意見交換をしました。
|
|
□日台原子力安全セミナーが台湾で開催、代表団を派遣
|
第23回日台原子力安全セミナーに参加するとともに原子力関係施設を視察する目的で、同セミナー参加原産協会代表団(団長:浅野晴彦・中部電力副社長、計22名)が12月1日〜5日、台湾を訪問しました。
日台セミナーは、当協会が台湾との間で、原子力安全に係わる情報・意見の交換ならびに原子力関係者の交流を図るため、1986年(昭和61年)以来毎年、関係機関の協力を得て、日台交互に開催しているものです。
第23回日台セミナーは、台北から車で西に約1時間行った桃園県龍潭にある核能研究所の国際会議場で開催されました。セミナーには、台湾側から、蔡春鴻・原子能委員会主任委員(大臣)、葉陶然・核能研究所長、林文昌・台湾電力公司原子力発電處長ら、約130名が参加しました。日本代表団は、セミナー終了後、核能研究所と建設中の第4原子力発電所(龍門)を見学しました。
セミナーは、最初に、日台両代表者による挨拶が行われ、続いて双方から原子力開発の現状報告が行われました。その後、特別講演として日本原子力研究開発機構による「高エネルギー粒子加速器施設の放射線管理と環境保護」が発表されました。台湾には医療用の加速器建設計画があり、この発表は、台湾側からの強い要望により行われました。続いて「改良型沸騰水型原子炉(ABWR)の建設経験交流」、「原子力発電所の長寿命化」、「新潟県中越沖地震後の関連問題」、「放射性廃棄物管理」、「台湾及び日本における放射線利用の現状と展望」、「原子力ルネサンスの諸課題」の各テーマにつき、日台双方から発表が行われました。
一日半にわたるセミナー期間中、活発な質疑応答が行われましたが、特に日本の地震対策、放射性廃棄物問題、原子力分野の人材育成については、多くの質問が出されました。これは、台湾も2006年に大地震で原子力発電所が被害にあったこと、現在台湾では低レベル廃棄物の最終処分場サイトを探していること、台湾も日本と同じく原子力の人材育成が課題であることが背景にあると思われました。また、台湾は6名の発表者のうち2名が女性であり、女性の活躍が目立ちました。
第4原子力発電所は、台北の東約40kmの貢寮郷にあり、日本以外で建設中の最初のABWR発電所です。展望台(開閉所屋上)からの視察と、バスによる現場周回の見学を行いました。1号機の建設はほぼ終わり、2号機はタービン建屋の建設が最盛期という感じでした。施設見学は、事前に建屋内の見学を要望していましたが、危険であるとの理由で叶いませんでした。バス見学の印象として、建設現場は日本に比べてかなり雑然としているように感じました。なお、1号機の運転開始は、当初来年(2009年)の7月であったが、遅れそうです。
|
参加者記念撮影 |
龍門建設現場
|
□台湾の地元議員団の日本原燃、女川和原子力発電所見学に協力
|
台湾で建設中の龍門発電所(ABWR)の地元議員団34名が12月8日に来日し、日本原燃の低レベル放射性廃棄物埋設センターと二又風力発電所、東北電力女川原子力発電所を見学しました。当協会は、同議員団の原子力施設訪問アレンジに協力し、見学に同行しました。
台湾電力公司は、北部の台北県貢寮郷で4番目の原子力発電所となる龍門発電所(ABWR)を建設中です。台湾電力の同行者の話では、現在の総合工事進捗率は約85%で、9月の台風による冠水の影響で工程に少し遅れがでているとのことです。
台湾電力龍門建設所は、原子力施設が安全に運転され地元で受け入れられている実際の状況を貢寮郷はじめ建設所周辺の人々に理解してもらう目的で、地元議員団の日本の施設訪問を計画。貢寮の郷長、議長、副議長、議員、職員、村長を中心に総勢34名の議員団となりました。
議員団は、数日前降った雪が残る12月8日、日本原燃の低レベル放射性廃棄物埋設センターと二又風力発電所、翌9日に東北電力女川原子力発電所を見学しました。一行の主な関心は、立地施設の地元への経済的貢献、施設の安全確保、周辺環境/海水への影響で、いずれの見学先でもこれらの問題について熱心に質問しました。
見学に同行した当協会職員は、日本原燃も女川発電所も(二方風力発電所も)、社員の皆様のご尽力により暮らしを支える重要な産業として地元にとけこんでいること、また、原子力以外の発電施設を見学する機会があまりないので、「二方風力発電所」が世界初の「蓄電型」風力発電所と知り、風力発電でも安定して電力を供給するための技術開発が進められていることを新鮮に感じたとの印象でした。
|