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原産協会メールマガジン1月号 2011年1月25日発行 |
Index
□「原子力新年の集い」を開催
□会員向けに「原子力損害賠償制度セミナー」を開催
□「量子放射線利用普及連絡協議会」第12回会合を開催
□在日外国大使館・代表部招待レセプションを開催
□米国タフツ大学グローバル・リーダーシップ・インスティチュート(IGL)主催
高校生研修団一行が来訪
□原産協会HP(一般向け)の更新情報
□動画配信
□会員向けHPの更新情報
□英文HPの更新情報
本文
当協会は1月5日、恒例の「原子力新年の集い」を東京プリンスホテルで開催、協会会員企業、関係機関幹部をはじめ、国会議員4名、在日大使9名を含む、約1,400人が参集し、新しい年の幕開けを祝いました。
最初に、主催者として挨拶に立った今井敬会長(=写真)は、3年前のリーマンショックで非常に落ち込んだ経済が、一昨年の4月から回復に向かい、1年半、昨年の秋まで成長が続いたことにふれ、4月からの新年度には本来の潜在成長力である、「1ないし1.5%の成長に戻るのではないか」との期待を述べました。
また、昨年10月にベトナムの原子力導入計画のパートナーに日本が選ばれたことについて、大変に喜ばしい、原産協会としても、10年来、ベトナムの原子力の人材養成等について協力をしてきた立場から、大変に喜んでいると述べました。
続いて、日本の原子力発電の現状についてふれ、現在着工中の原子力発電炉は2基、地元の了解を得て準備中の炉が7基あり、ゆっくりであるが確実に着実に進行していると述べ、原子力発電の発電量についてはほぼ5年前の水準に達している。一時60%まで落ち込んだ稼働率についても、最近では71%とかつての水準に近づいているとし、今年はこれを80%台に定着させるということが大いに期待される、と強調しました。
今後、国内外の原子力発電の発展のためには、人材の確保が非常に重要なことから、産官学一体となった人材養成体制の構築が必要である、との姿勢を示しました。
松下忠洋・経済産業副大臣 | |
和田隆志・内閣府大臣政務官 | |
清水潔・文部科学省事務次官 (笹木竜三・文部科学副大臣の代読) |
来賓挨拶で、松下忠洋・経済産業副大臣は、出身地に立地する、九州電力川内原子力発電所3号機がいよいよ建設されることにふれ、「一緒になって全力を尽くしていきたい」と表明されました。
また、和田隆志・内閣府大臣政務官は、日本がアジアの中で、しかも中国とともにリーダーとして生き抜いていくためには、「原子力分野でリーダーシップをとって、平和的利用に向けて引っ張っていかなければならない」と、強調されました。
乾杯は、清水正孝・電気事業連合会会長(=写真)の音頭で行われました。
会場の様子 |
当協会は14日、会員を対象に、「原子力損害賠償制度セミナー」を東京・港区の航空会館で開催しました。
当協会では、原子力産業の海外展開に向けた動きが活発化していることから、本メールマガジンのシリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」などを通して原子力損害賠償に関する情報提供を行ってきました。同セミナーは、このシリーズを中心に制度についてまとめた冊子の発行を機に、原賠制度に対する基本的な事項や、海外展開の際の原賠リスクに留意が必要な事項などについて理解を広げ、ビジネスに役立ててもらうため、開催したものです。
セミナーの第一部では虎ノ門南法律事務所の加藤愼・弁護士(=写真)が、「原子力損害賠償制度」について解説。原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)は、①責任範囲②責任主体③その責任を果たすためのバックアップ――を定めており、民法が「過失責任の原則」を原則とするのに対し、原賠法では「無過失責任」を採用し、百%確実に被害請求できることなどを説明されました。
続いて、第二部では当協会の原賠担当者が、「海外展開に伴って発生する原子力損害賠償に関わるリスク」について解説しました。国によって法制や制度の内容に違いがあり、国境を越えた損害には被害国の原賠法は適用されないことに留意すべきだとしたほか、今後、国際条約の加盟および地域的な原賠制度に関する国際枠組みの構築が望まれる日本の状況についても触れました。
定員30名のところ、60名の参加を得て開催したセミナーの様子 |
□「量子放射線利用普及連絡協議会」第12回会合を開催
当協会は昨年12月15日、都内で「量子放射線利用普及連絡協議会」第12回会合を開催し、唐木 英明・東京大学名誉教授(日本学術会議副会長、内閣府食品安全委員会専門委員)から「放射線はなぜ嫌われるのか~食品の例から不安の原因を考える~」について、また、前(独)農業・食品産業技術総合研究機構理事・食品総合研究所長で、現聖徳大学・教授の林 徹 氏から「食品照射の過去・現在・課題」について、講演いただきました。
唐木氏は、「放射線がなぜ嫌われるか」について、放射線が嫌われる背景と、食品の残留農薬や食品添加物が嫌われる背景は同じと思われるため、食品の例から不安の原因を考えたことについて講演されました。人間が何か判断する際には、様々な危険を逃れるため、その判断を一瞬で行う必要があり、直感的な判断(ヒューリスティック)によることがほとんどです。人が正しい判断をするためには、豊かな知識と経験が必要ですが、現代は、「信頼する人=メディア」になっており、メディアの影響が大きいため、唐木氏らは、メディア対策の必要性を感じ、メディアとの勉強会(「食の信頼向上をめざす会」)や不適切な報道の防止に努めるリスク管理活動を実施していることなどを紹介されました。
林氏は、今回の講演が、食品総合研究所退職後、初めての食品照射に関する講演とのことで、今まで様々な配慮からなかなか実情を語れなかったことについても、お話いただきました。食品照射の歴史と共に、なぜ日本で食品照射が進まなかったのか、反対派の動きと役所の対応等々について、実体験をもとに話されました。最後に、長年食品照射に携わってきた後に、食品照射の仕事から離れて、食品照射について客観視した時に感じたことは、物事の成否を左右するものとして、「政治、社会、経済のダイナミズムに敵うものはない」ということであった、と講演を締めくくりました。
その後、質疑応答において、リスク教育や食品照射について、様々な議論がなされました。
詳しくは、以下をご覧ください。
http://www.jaif.or.jp/ja/sangyo/12th-kyogikai-report_ryoshi-hoshasen.pdf
当協会は、原子力開発に関する情報交換と理解を深めるため、1月17日、在日外国大使館・代表部の大使、外交官らを招き、レセプションを開催しました。
在日外国大使館・代表部等からは、大使8名をはじめ35ヶ国・地域の公使・参事官・書記官ら43名が参加しました(下記に参加国・地域リスト)。日本の原子力関係者、政府、原子力産業関係機関からは昨今の原子力の海外展開の動きを反映してか、前回に比べ大幅に増加した100名を超える参加者が来場し、積極的に情報交換をする姿が見られました。
懇談風景 |
今井会長は、歓迎の挨拶の中で、日本の原子力発電の現状と今後の展望について触れ、安全確保を第一に今後も原子力発電を推進していくと述べました。また、海外においても地球温暖化防止、エネルギー供給、人類の持続的発展に原子力発電が貢献するものであるという認識が高まっていることに触れ、日本の原子力産業界はその技術力と徹底した平和利用の原則の遵守の実績を有しており、原子力新興国の信頼と要求に応えて積極的に協力していきたいと述べました。
さらに、当協会と緊密に連携し活動している原子力国際協力センター(JICC)(JAIF International Cooperation Center)が人材育成、知識の普及、法制度整備などに関する協力を行っていることにも触れ、同センターを通じた交流が拡大することへの期待を表明しました。
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在日外国大使館・代表部等の参加者:43名
【大使参加国】8名
エジプト、欧州連合、グルジア、ガーナ、モンゴル、モロッコ、南アフリカ、英国
【外交官等の参加国・地域】35名
アルジェリア、オーストリア、バングラデッシュ、カナダ、デンマーク、エジプト、フィンランド、フランス(2)、ギリシャ、インド、イラン(2)、イラク、イタリア、マレーシア、メキシコ、モロッコ、オランダ、ナイジェリア、パキスタン、ロシア(2)、スペイン、スウェーデン、スイス(2)、台湾、アラブ首長国連邦、英国(2)、米国、ベトナム、イエメン、WANO-TC
□米国タフツ大学グローバル・リーダーシップ・インスティチュート(IGL)主催
高校生研修団一行が来訪
1月7日、米国タフツ大学のグローバル・リーダーシップ・インスティチュート(IGL)が主催する研修旅行の一環として、米国の高校生・教員等 31名が当協会を訪問し、当協会国際部が日本の原子力発電や米国との協力についてレクチャーを行いました(=写真下)。
IGLは、原子力と核拡散問題について研究するEPIIC(Education for Public Inquiry and International Citizenship)というプログラムを設置しており、今回はその一環として、米国の高校生に核兵器と原子力を取り巻く問題を理解してもらうために日本を訪れ、当協会の他、広島市長や、平和記念資料館、軍縮・不拡散促進センターなどを訪問しました。
当協会国際部は、IGLからの日本の原子力について知りたいという要請に応え、当協会の活動概要、日本の原子力発電の現状と国民理解、日米の原子力協力などについて説明しました。その後の質疑応答では、多くの学生から「原子力の国際管理構想についてどう考えるか」、「周辺国の原子力発電の発展を脅威に感じないか」、「周辺の環境に影響はないか」、「クリーンな代替燃料があっても原子力は必要か」などの質問があり、原子力に対する日本の考え方を積極的に学ぼうという姿勢が伝わってきました。
□原産協会HP(一般向け)の更新情報 ( http://www.jaif.or.jp/ )
*国内、海外ニュースは毎週および随時更新しております。
・平成23年1月5日「原子力新年の集い」における今井敬・原産協会会長挨拶(1/5)
□動画配信 ( http://www.jaif.or.jp/ja/jaiftv/ )
*原子力の将来に備える高レベル処分への環境整備と人材基盤の強化 (1/17配信)
□会員向けHPの更新情報( https://www.jaif.or.jp/member/ )
・【日本の原子力発電所の運転実績】12月分、2010年暦年データ(1/17)
□英文HPの更新情報( http://www.jaif.or.jp/english/ )
○Atoms in Japan (AIJ):週刊英文ニュース(15本 1/1-1/25)
○Information:[AIJ FOCUS]
・Address by Chairman Takashi Imai at JAIF’s New Year’s Party 2011
・Address by Chairman Takashi Imai at JAIF Chairman's Reception
[服部理事長]
・1/21(金) 青森県議会エネルギー政策勉強会での講演「原子力産業の国際展開」
(於:青森グランドホテル)
[石塚常務理事]
・1/13(木) 福島県双葉町役場訪問、井戸川町長表敬
福島県大熊町役場訪問、渡辺町長表敬
・1/14(金) 青森県庁訪問
◇役員の雑誌等への寄稿、インタビュー掲載記事◇
○服部理事長
・「燦」1月号
インタビュー記事 『新春特集「日本の資源・エネルギーと産業競争力」』
・原子力eye2月号
特集「グローバル化に必須-原子力協力協定の締結交渉加速を」
○石塚常務理事
・INDO WATCHER 1月号
プロの視点「核不拡散と原子力協力」
・エネルギーレビュー2月号
インタビュー記事 『読者の疑問に答える-「わが国の原子力技術の国際展開」』
マレーシアの原子力開発事情と原賠制度
今回は、化石燃料資源の豊富なマレーシアの原子力開発事情と原賠制度についてQ&A方式でお話します。
Q1.(マレーシアの原子力開発事情) 天然ガスや石油など、豊富な化石燃料資源を持つマレーシアの原子力開発はどのような状況ですか? |
A1.
・ 1972年に原子力応用センター(CRANE)が設立されて以来、マレーシアでは、研究炉や照射施設等を活用し、主に放射線利用の分野を中心とした原子力開発が行われてきました。
・ マレーシアは石油、天然ガスなどのエネルギー資源に恵まれており、1980年代後半以降、原子力発電は最後の選択肢と位置づけられてきました。
・ 近年は原油価格の高騰や資源枯渇の可能性、CO2排出量などが考慮されて、原子力発電導入に向けた動きが高まっており、我が国も協力に向けて2010年9月に協力文書を交わしました。
【A1.の解説】
マレーシアでは、1972年に原子力応用センターが設立され、原子力開発がスタートしました。その後、このセンターは原子力研究センターとなり、原子力庁(UTN)に改組され、さらに原子力技術研究所(MINT)と名称変更され、2006年科学技術革新省(MOSTE)の管轄下に原子力庁(ANM)として再編されています。また、規制部門は1985年に原子力許認可委員会(LPTA)として独立しています。
1982年6月には、マレーシア唯一の研究炉であるTRIGA-Mark II炉(TRIGA = Training, Research, Isotope Production and General Atomic)が臨界に達しましたが、原子力発電よりは放射線利用技術を中心として研究開発・商業化が進められました。そのため、マレーシアに原子力発電所はありませんが、医療・農業・製造業・健康及び環境など幅広い産業分野において放射線利用技術が応用されており、特に日本原子力研究所が協力した放射線プロセス技術は東南アジア諸国の中では高い水準にあります。
マレーシアでは1979年~80年に原子力発電利用の可能性を調査し、80年代中盤には原子力発電導入の基盤作りに着手しましたが、新たなガス田の発見やチェルノブイリ事故があったため、原子力発電は「最後の選択肢」と位置づけられ、2000年以降に必要に応じて再検討することとされていました。
マレーシアでは、良質な国産原油を輸出に回し、国内で消費する原油を中東から輸入する政策をとっていましたが、2000年代中頃から原油高騰によるエネルギー安全保障や、自国の資源枯渇の可能性(2011~2013年には石油純輸入国になり、2019年までには天然ガス油田が枯渇するとされている)、環境影響等が注目され、原子力発電への関心が再び高まってきています。
マレーシアの2007年の発電燃料構成は天然ガス65%、石炭26%、水力6%、石油3%ですが、マレーシア政府はこれを2020年までにガス33%、石炭36%、水力22%、「原子力と再生可能エネルギー」9%とする方針を発表しています。また、2021年までに2基の原子炉を導入するという計画において、日本、韓国、中国、フランスから炉を選ぶとの意向が示されており、我が国はマレーシアの原子力発電計画のための基盤整備に関して2010年9月に協力文書を交わし、原子力発電導入に向けた協力を進めようとしています。
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Q2.(マレーシアの原賠制度) 以前より研究炉のあるマレーシアの原賠制度はどのようになっていますか? |
A2.
・ マレーシアの原賠制度は、初の研究炉が臨界に達した2年後の1984年に「原子力エネルギー免許法」の一部として制定されました。
・ マレーシアの原賠制度は、無過失責任、責任集中、損害賠償措置、責任限度額、国の補償など、原賠制度の基本的原則がほぼ網羅されています。
・ マレーシアは現在、原子力損害賠償に関わる諸条約(パリ/改正パリ条約、ウィーン/改正ウィーン条約、補完基金条約(CSC))には加盟していません。
【A2.の解説】
「マレーシア国法 法令第304号 1984年原子力エネルギー免許法」は、原子力エネルギーの規制・管理、原子力損害に対する賠償責任に関する基準の確立、ならびにこれらに関わる事項を規定する法律として、マレーシア唯一の研究炉であるTRIGA-Mark
II が臨界に達した2年後の1984年に制定され、そののち2003年および2008年に改正されています。マレーシアの原賠制度はこの原子力エネルギー免許法の「第IX部 原子力損害に対する賠償責任(42~66条)」に規定されており、無過失責任、責任集中、損害賠償措置、責任限度額(施行当時の5,000万リンギットに相当する額)、国の補償(責任限度額を超える場合には、下院の決議による追加資金の拠出可能)など、責任限度額が5,000万リンギット(日本の1/24)であることを除いては、原賠制度の基本的原則がほぼ網羅されています。
また、「原子力損害」、「原子力事故」、「環境」、「核物質」、「放射性物質」、「放射性廃棄物」等の法律文言の定義は、本免許法の第Ⅰ部・総則に規定されています。
第IX部の条文概要は以下の通りです。
・ 「施設運転者」の定義(42条)
▽ 監督機関により原子力施設の運転者として免許を受けた者。
・ 施設運転者の賠償責任(43条)
▽ 原子力損害が、施設運転者の原子力施設内で起きた事故、または原子力施設から出た核物質、原子力施設に送られた核物質に関わる事故に起因する場合、施設運転者は原子力損害に対して賠償責任を負う。
▽ マレーシア国外から施設運転者の原子力施設への輸送で国内における事故の場合、施設運転者の原子力施設から国外への輸送でマレーシアから出国するまでの事故の場合、施設運転者は原子力損害に対して賠償責任を負う。
・ 輸送中の核物質に起因する原子力損害に対する賠償責任(44条)
▽ 核物質が、マレーシア国内の目的地へ向かう途中で、マレーシア国内において原子力事故が発生した場合、核物質が運び出された国の監督機関により核物質の輸送免許を受けた者が、発生した原子力損害に対する賠償責任を負う。
▽ マレーシア国外に向けマレーシアを経由して核物質を輸送する場合、当局の規定する財務保証を確保し、核物質の搬出国の承認証明を当局に提出すること。
・ 絶対・専属責任(45条)
▽ 原子力損害に対する施設運転者の賠償責任は絶対的なものである。特に規定の無い限り、施設運転者以外の者が原子力損害に対して賠償責任を負うことは無い。
・ 賠償責任の免責(46条)
▽ いかなる者も、武力紛争、戦争行為内戦、暴動、または異常に巨大な自然災害による事故によって生じた原子力損害に対して賠償責任を負わない。
▽ 原子力施設自体の損害およびサイト内にある関連施設、核物質の輸送機関の損害に対して賠償責任を負わない。
・ 求償権(47条)
▽ 他の者と交わした契約書に求償権が存在する場合、被害者の故意の場合、核物質を盗んだ者に生じた原子力損害が生じた場合に、施設運転者は求償権を有する。
・ 環境への原子力損害に関する政府の損害賠償請求(48条)
▽ 環境への原子力損害が発生した場合、マレーシア政府、マレーシアの州政府、又はその双方が適宜、賠償請求を行う。
・ 原告の重大な過失または故意(49条)
▽ 原子力損害が、損害を被った者の重大な過失又は第三者の故意による場合、裁判所は施設運転者による賠償金の支払いを免除する場合がある。
・ 本法による以外の賠償責任(50条)
▽ 施設運転者が本法46条に基づく賠償責任を負わない核物質の輸送機関に対する原子力損害について、本法以外で負うべき賠償責任はこれを妨げない。
・ 施設運転者として指定された核物質輸送業者または放射性廃棄物取扱者(51条)
▽ 監督機関は、核物質の運送業者または放射性廃棄物の取扱者の要請により、当該施設運転者の同意を得て、それらの者を当該施設運転者に代わる施設運転者として指定することができる。
・ 賠償責任を負う複数の施設運転者(52条)
▽ 複数の原子力施設運転者の賠償責任に関わる原子力損害の場合、損害が合理的に分離不能である場合に限り、関与した全ての施設運転者が連帯責任を負う。
・ 1件の原子力事故に関わる複数の原子力施設の単一運転者が追うべき賠償責任(53条)
▽ 1件の原子力事故に、同一の施設運転者に属する複数の原子力施設が関与する場合、59条(賠償責任の上限)の金額を上限として各原子力施設について賠償責任を負う。
・ 原子力損害とみなされる非原子力損害(54条)
▽ 原子力損害と原子力損害以外の損害などが原子力事故により生じた場合、それらの損害が原子力損害と合理的に分離できない範囲に限り、原子力損害とみなされる。
・ 運送業者証明書(55条)
▽ 施設運転者は、核物質の運送業者に、(賠償措置の)財務保証を提供する証明書を与えなければならない。
・ 同一サイト内にある複数の原子力施設(56条)
▽ 当局は、同一サイト内にある同一施設運転者の複数の原子力施設を、単一の原子力施設と見なすと決定することができる。
・ 原子力事故の調査(57条)
▽ 原子力事故は、直ちに原子力エネルギー委員会に報告しなければならない。
▽ 原子力エネルギー委員会は、原子力事故の原因および損害の範囲を調査する。
・ 検査および処置の強制(58条)
▽ 原子力事故の発生後、原子力エネルギー委員会は、放射線に被曝した者に健康診断の受診を求めたり、病院に移送し退院可能になるまで拘留したり、検死を行うなど、適切な措置を下すことができる。
▽ これを拒否するなどした者は犯罪となり、刑罰を科される。
・ 賠償責任の上限(59条)
▽ 原子力損害に対する施設運転者の賠償責任は、1件の原子力事故につき、本法施行の時点において5,000万リンギット(約51億円)に相当する額を上限とする。
▽ 当局は原子力施設の規模・性質、発生した損害の範囲等を考慮し、本法施行の時点において1,200万リンギット(約12億円)に相当する額を上限とする範囲で、上記とは異なる賠償金額の上限を定めることができる。
・ 財務保証(60条)
▽ 施設運転者等は賠償措置のための財務保証を確保・維持しない限り、当局は原子力施設を運転するための免許、又は核物質を輸出入するための免許を発行しない。
・ 政府による補償(61条)
▽ マレーシア政府は、必要と見なした場合、保険またはその他の財務保証により損害賠償請求を満たせない場合に限り、有責の施設運転者に補償を与え、必要資金を提供することができる。
▽ ただし、政府が提供した補償金と、保険又はその他の財務保証の収入の合計は1件の原子力事故につき第59条(賠償責任の上限)で定められた上限金額を上回らないものとする。
▽ 1件の原子力事故に起因する原子力損害の賠償請求額が上限金額を超えると思われる場合、下院が国益のために必要と見なした場合、決議により追加資金を拠出できる。
・ 裁判手続きへの介入(62条)
▽ マレーシア政府が政府補償を与える予定である場合、最終判決前であれば、裁判所は政府がいつでも裁判に介入することを認めるものとする。
・ 権利及び訴訟の時効(63条)
▽ 本法に基づく損害賠償請求権は、原子力事故の発生日から20年で消滅するものとする。訴訟は被害者が損害を知ってから20年以内に起こさない限り認められない。
・ 盗難、紛失、投棄、または廃棄された核物質に関する時効(64条)
▽ 原子力損害が、盗難・紛失・投棄・廃棄された核物質に付随する原子力事故に起因する場合、63条(権利及び訴訟の時効)に基づき損害賠償請求訴訟を起こす期間は、盗難・紛失・投棄・廃棄された日ではなく、原子力事故の日から起算される。
・ 請求額が上限金額を超える場合(65条)
▽ 原子力損害額が59条(賠償責任の上限)の上限を超え、マレーシア政府が補償を行う意志があるときには、政府の申請により、管轄裁判所は補償金の公平な配分を保証するために必要な命令を下すものとする。
・ 適用の除外(66条)
▽ 他の法律による賠償請求権を妨げることなく、当局はリスクが小範囲であると認める場合、少量の放射性物質、核物質等の物質に関して、第IX部の規定から除外することができる。
なお、マレーシアは原子力損害賠償に関わる諸条約(パリ/改正パリ条約、ウィーン/改正ウィーン条約、補完基金条約(CSC))には加盟していません。
また、その他原子力関係国際条約への加盟については、
・ 原子力事故早期通報条約、原子力事故または放射線緊急事態における援助条約、核不拡散条約(NPT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)、IAEA保障措置協定(追加議定書は署名のみ)に加盟
・ 原子力安全条約、使用済み燃料安全管理・放射性廃棄物安全管理合同条約、核物質防護条約には非加盟
という状況にあります。
○ 原産協会メールマガジン2009年3月号~2010年9月号に掲載されたQ&A方式による原子力損害賠償制度の解説、「シリーズ『あなたに知ってもらいたい原賠制度』」の19回分を取りまとめ、小冊子を作成いたしました。
小冊子の入手をご希望の方は(1)送付先住所 (2)所属・役職(3)氏名(4)電話番号(5)必要部数をEメールで genbai@jaif.or.jp
へ、もしくはFAXで03-6812-7110へお送りください。
シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」のコンテンツは、あなたの声を生かして作ってまいります。原子力損害の賠償についてあなたの疑問や関心をEメールで genbai@jaif.or.jp へお寄せ下さい。
子どもは大人の鏡
子の小学校でカウンセリングなんていうものが行われている。学校生活になじめないとかいじめとか色々な悩みを抱えている生徒さんやご両親が学校に定期的に来る専門家に相談する場があるらしい。自分が子どもの頃はそんなものなかったよなーなんて、ちょっとびっくり。
昔もいじめとか不登校の問題って確かにあったけれども両親や学校の先生、回りの友達が対応して多くの場合はまた何ごともなかったように学校生活を再開するケースが多かった。が、今はどうも違うらしい。
人との付き合い方が希薄なのか。誰にも迷惑をかけたくないとか、自分を主張することに遠慮しすぎてどんどん袋小路に追いやられてしまっているような気がする。
大人は自分の子どもには「よい子」でいて欲しいと願う。でもこれが過度になり他の人にも好印象を与える「よい子」であってほしいとすると「よい子」の基準は人それぞれだから子どものくせに(というと怒られるか・・)大人みたいに無難なところに落ち着こうと考えて自己主張もしない、型にはまった、大人しい子が出来上がる。
最近の子どもは本当に忙しい。毎日、塾やおけいこごと、学力低下が叫ばれる今日、山のように宿題のプリントを学校から持ち帰る。そして終わったら疲れちゃって家でテレビゲームかマンガ・・・その証拠に、外の公園で同年代で集まって遊んでいる子供たちをあまり見かけない。昔は子ども同士で日暮れまで遊んでケンカして、いじめていじめられて、仲直りして、想定外のことばかり起きる状況の中でそれに適応する能力をつけていったものだけど。
子の作品「砂の城」 |
一番じゃなきゃだめと追い立てると「よい子」は親や周囲の期待に答えようと頑張っちゃう・・今の社会はそうさせていないか?でも、世の中そんなに甘くなくいからそう簡単に一番にはなれない。適応能力がなくて挫折から立ち直る術を知らない子どもはどうなるのか・・。
二番じゃだめなんですか?と発言して物議を醸した女性政治家がいたけれど、子どもをもつ母親だからこそ、今の社会に感じる一種の強迫観念めいたものに不安を抱いて思わず出ちゃった言葉なのだろうなと私は思っている。
子どもの社会は、大人の社会の縮図。
大人の社会がこうあらねばならぬとかそこからはみ出すものを許さないというようなギスギスしたものであると、その不安と緊張が子どもにも伝わり、子どもは他人の顔色ばかり伺う萎縮した子になり、やがてそういう大人を真似することになる。
今の若者は・・と嘆くのではなく、自分たちの社会の有り様も見直さないといけないのでは・・と最近とみに思う。 (アンマリダノママ)
◎「原産協会メールマガジン」2011年1月号(2011.1.25発行) 発行:(社)日本原子力産業協会 情報・コミュニケーション部(担当:木下、八十島) 東京都港区新橋 2-1-3 ヒューリック新橋ビル5階 TEL: 03-6812-7103 FAX: 03-6812-7110 e-mail:information@jaif.or.jp |
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