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原産協会メールマガジン6月号 2011年6月27日発行 |
Index
□第61回原産協会通常総会を開催
□JAIF地域ネットワークが「第2回 カフェ・円卓」(「食のコミュニケーション円卓会議」主催)へ開催協力
□服部理事長がロシア国際フォーラムATOMEXPOに参加・講演
□服部理事長がOECD/NEA主催「福島事故フォーラム」に参加・講演
□クルチャトフ研究所のベリホフ総裁による講演会を開催
□原産協会HP(一般向け)の更新情報
□会員向けHPの更新情報
□英文HPの更新情報
本文
当協会は6月20日、経団連会館で第61回通常総会を開催しました。平成22年度事業報告・収支決算案、平成23年度事業計画・収支予算案の承認に加え、定款一部変更の件、および来年4月から一般社団法人(非営利型法人)に移行するための定款変更などを諮り、満場一致で原案どおり承認されました。
総会の冒頭、今井敬会長(=写真)は挨拶の中で、東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福を祈り、被災・避難されている方々にお見舞いを述べたあと、「一日も早い被災地域の復興と、避難されている皆さんの帰宅を心よりお祈り申し上げる」と述べました。
福島第一原子力発電所の事故については、「千年に一度と言われている地震・津波が原因で生じたものであるが、結果的には、原子力発電の安全性に対する信頼を根本的に損ない、我が国のみならず、世界の原子力発電計画を、根底から揺るがすものとなったことは、誠に残念だ」と指摘しました。
また、「原子力発電について、今回の事故で被災した福島の復興を確実に行わない限り、その将来はないと認識すべきだ」と強調し、そのため、「政府はもとより、社会全体が一致団結して、福島の復興を支援していくことが大事である」と訴えました。
一方で、「安定した電力の供給は、社会文明や産業発展を支えてきた」とし、今後の原子力発電についても、「安全を大前提にして、資源のない我が国のエネルギー政策の中で、引き続き必要な電源であると考える」と表明しました。
さらに同会長は、脱原子力政策を決定したドイツやイタリアと同様に、世界の国が同じような政策をとることは考えられないと強調し、原子力新興国にも、原子力の安全技術を含め、適切な情報を提供していきたい、と強調しました。
総会にはまた、来賓として、笹木竜三・文部科学副大臣、中山義活・経済産業大臣政務官が臨席しました。
笹木副大臣は、「総理大臣が対策本部を務めている原子力事故対策本部の下で、我々各省庁一丸となってこの事故の収束、少しでも早い収束に向け一生懸命努力をしている。」と述べました。
中山義活・経済産業大臣政務官は、「何より大切なことは、徹底的な検証によって、日本の原子力技術、安全性について、一丸となって成し遂げることである。日本の科学を信じて、徹底的に検証し磨いていくことが、大切だと申し上げたい」と述べました。
第61回原産協会通常総会会場風景 |
□JAIF地域ネットワークが「第2回 カフェ・円卓」(「食のコミュニケーション円卓会議」主催)へ開催協力
「JAIF地域ネットワーク」は、5月30日、東京都中央区の堀留町区民館で開催された「第2回 カフェ・円卓」に協力参加(=写真)しました。
このイベントは、「食のコミュニケーション円卓会議」の主催により、福島第一原子力発電所の事故を受け、放射線・放射能に対する不安、また、食の安全が問われる今、「“放射性物質の基礎を学ぶ”―福島第一原子力発電所事故をめぐる状況からー」と題し、一般市民向けに
“肩の凝らないサイエンスカフェ形式” で開催されたものです。
日本原子力研究開発機構 量子ビーム応用研究部門マイクロビーム細胞照射研究グループリーダーの小林泰彦氏による「放射線の基礎知識」の講義に続き、JAIF地域ネットワークでは、「計ってみよう身近な放射線」と題した
“簡易測定器(ベータちゃん)等による放射線測定体験コーナー” を担当しました。簡易測定器を初めて手にするという人も多く、肥料(カリ)や湯の花、御影石などの試料を自由に測定していただき、参加者には目に見えない放射線を体感していただきました。
*簡易放射線測定器「アルファちゃん」「ベータちゃん」
http://www.c-technol.co.jp/detail_pages2/0344educate.html
*「食のコミュニケーション円卓会議」とは
食の問題について,円卓を囲むようなフラットな立場で,実りのあるコミュニケーション活動(学習会・意見交換など)を行っている団体。一般市民、専門家、食品関連会社社員など、さまざまな立場のメンバーで組織されています。
URL http://food-entaku.org/
□服部理事長がロシア国際フォーラムATOMEXPOに参加・講演
当協会の服部理事長は6月上旬、モスクワで開催された国際フォーラム「ATOMEXPO2011」に参加し講演するとともに、国営原子力企業ロスアトムのキリエンコ総裁らと懇談しました。さらに、国営原子力発電公社ロスエネルゴアトムの浮揚型原子力発電プラント(FNPP)関係者と会い、FNPPについて説明を受けました。
ロスアトム主催の国際会議・展示会併催イベント
ATOMEXPOは2008年以来、ロスアトムが主催しているもので、原子力展示会と国際会議を兼ねています。モスクワ市内中心部のクレムリン近くのマネージ中央展示センターで6月6日から3日間開催されました(=下写真)。
展示会には、ロスアトムを中心に燃料サイクル企業トヴェル、テネックス、原子力発電事業者のロスエネルゴアトム、原子力製造企業のアトムエネルゴマッシュ、原子力輸出業者のアトムストロイエクスポルト(ASE)などロシアの関係機関が勢揃いし、ロシアの原子力産業を世界に誇示していました。ロシア以外からは、中国核工業集団公司(CNNC)、フランス原子力庁(CEA)、フランス電力(EDF)、アレバ、アルストム、ドイツのシーメンス、ニューケム、カザフスタン原子力公社(カザトムプロム)、英ロールスロイスなどが出展。日本からの出展はありませんでした。
国際会議は、『原子力開発:中止か前進か』を基調テーマに4会場に分かれて各セッションが設けられました。ハイライトは、基調テーマを主題にしたプレナリー・セッションにおけるパネル討論で、パネラーの1人として服部理事長が参加しました。(=右写真)
ロシアの連邦テレビ局「ロシア24」の名司会者のソロビヨフ氏が進行を務め、約2時間に及ぶパネル討論が同局のインターネット・テレビでライブ中継されました。
服部理事長は、ラウンド・テーブルセッション『新規導入国のためのインフラ』にも参加したほか、ロスエネルゴアトムのアスモロフ第1副総裁が議長を務めたセッション『福島NPP事故の教訓』にも飛び入り参加しました。 |
国際会議では、日本の福島第一原子力発電所の事故を受けて、『フクシマ』という言葉が至る所で聞かれました。『フクシマ』の教訓を学ぶべきことが異口同音に述べられ、原子力の安全性強化と基準の見直しが強調されました。さらに、原子力はやはり必要であるとの指摘が行われ、エモーションに基づいて長期的なエネルギー戦略を決定すべきでないとのコメントもなされました。
国際会議には約1,000名が参加。展示会のみの見学者は約3,000名。
プレナリー・セッション パネル討論「原子力開発:中止か前進か」(6月7日)
服部理事長は、パネル討論において、福島事故について、安全設計という技術的な側面に加え、想定外事象が万一発生した場合の危機管理能力が十分でなかったと説明しました。
日本が、原子力発電の運転を積み重ねる中で、いつしか「厳格な規制基準に合致していれば安全は確保される」という錯覚に陥り、原子力がもつ潜在的な危険性に十分目を向けてなかったとし、安全文化の基本である、「謙虚に、何事にも疑問を持つ態度、想像力を働かせること」を怠ってしまったことが今回の事故の根幹にあると述べました。
また、今後、国の「エネルギー基本計画」における原子力の見直しも避けられず、新規建設についてはこれまでの計画どおりにいかないのは明白であると述べました。エネルギー需要増加、温室効果ガス問題という世界的課題への対処を含めて、エネルギーミックスのあり方について難しい判断を迫られていくと指摘。「今は、エネルギーの安定供給という使命を果たすため、まずは、既存の原子力発電所の安全性の強化を徹底したうえで、運転再開することが何よりも重要だと思う。立地地域の住民の理解を得るとともに、国民に安全、信頼を約束できるように、事業者はもとより、産業界、国家が一丸となり、安全確保に努めていくことが、日本の原子力関係者の責務である。」と強調しました。
このセッションでは、①IAEAの基準を拘束力のあるものにすべきかどうか、②国際緊急時対応部隊の必要性、③事故時の情報の量、スピード、頻度についての国際規則の必要性-の3点について、アンケート調査も行われ、会場参加者の多くが賛成意見を表明しました。
ラウンド・テーブルセッション「新規導入国のためのインフラ」(6月7日)
このセッションでは、ロスアトムのソコロフ顧問(前IAEA事務局次長)が議長を務め、イントロとして、60カ国がエネルギーミックスに原子力を考えており、2030年迄に新たに20カ国が原子力発電所を持つようになると紹介しました。
服部理事長は、『責任ある開発:先進国の役割』と題して講演。「持続可能な低炭素社会に向けた特効薬はないが、原子力抜きのソリューションもない」と述べるとともに、G8サミットで合意されたように、「福島事故の教訓を共有することが重要である」と強調しました。
また、新規導入国への支援については、「先進国の役割と責任であり、人材育成を中心に新規導入国のニーズに合った形で進められる必要がある。」として、日本での原子力国際協力センター(JICC)、国際原子力開発(JINED)、原子力人材育成国際ネットワークの活動について紹介しました。さらに、原子力の安全・安定運転には、ハードウエア、ソフトウエア、ヒューマンウエアがうまく揃う必要があり、ヒューマンウエアでは安全文化と技術倫理の定着が不可欠であると訴えました。
キリエンコ総裁との懇談
ATOMEXPO初日の6日午前、会場内貴賓室で、服部理事長は、キリエンコ総裁、ロクシン第1副総裁、スパスキー副総裁、ボリショフ原子力安全研究所長ら要人と会談しました。
キリエンコ総裁は冒頭、福島事故に対してお見舞いの言葉を述べたあと、福島事故の収束について「お手伝いできることは何でも協力する。このような事故の収束がどれだけ大切かはロシアが良く知っている。」と述べました。服部理事長は、これに対して感謝するとともに、「福島事故の経験を国際社会と共有して、世界の原子力の更なる安全強化に尽くしたい。これが日本の世界に対する責任である。」と応えました。
会談では、キリエンコ総裁から、2009年に署名され、昨年暮れにロシア議会で批准手続きが完了した日ロ原子力協定について、日本での早期批准の要望が表明されました。また、福島事故に関する情報について、原産協会からの情報提供が時宜を得て適切なものであり、大変有益であった旨が述べられました。
浮揚型原子力プラントで意見交換
6月7日、服部理事長はATOMEXPO会場内で、ロスエネルゴアトムの浮揚型原子力発電所(FNPP)プロジェクト担当者と懇談しました。
FNPPは、ロシアの極北や極東の僻地の低人口地域への熱電併給用に計画されたもので、これまでの原子力砕氷船で実績のあるKLT-40S炉、2基を使用。電気出力は2×35MW、熱供給は2×25Gcal/時。19%の濃縮ウランを使用し、燃料交換間隔は4年。ロシアは舶用炉について7,000炉年の豊富な運転経験を有しており、舶用炉開発を断念しなければならないような事故は起きていないとのことです。
FNPPの建造は、サンクトペテルブルクにあるバルチック造船所で2009年5月に始まり、翌2010年6月に進水。2012年末迄に機器等の据付を終えて、2013年にはカムチャッカ半島のビリュチンスク市の港湾に係留して熱電併給プラントとしての営業運転を開始する計画です。
ロスエネルゴアトムによると、この初号機に続いて、極北・極東地区で7基のFNPP計画を立てています。さらに別途、大型砕氷船計画もあるとのことです。
□ 服部理事長がOECD/NEA主催「福島事故フォーラム」に参加・講演
当協会の服部理事長は、6月8日にパリで開催されたOECD/NEA主催の「福島事故フォーラム:考察とアプローチ」に出席し、セッション2「アプローチ」にて、産業界の代表として「福島事故:将来に向けた行動-産業界の観点から」と題した講演を行いました。
本フォーラムでは、G8、OECD/NEA加盟国、ブラジル、インド、ルーマニア、南アフリカ、ウクライナ等37カ国の原子力規制機関が集まり、福島事故の知見と国際レベルでの今後の対応を議論しました。
発表資料はこちら。
当協会は6月13日、当協会と協力協定を有するロシア国立研究センター「クルチャトフ研究所」のエフゲニー・パーブロビッチ・ベリホフ総裁(=写真)が来日したのを機に、東京都内で「チェルノブイリ事故から25年~福島第一原子力発電所事故への教訓」と題する講演会を開催しました。
ベリホフ総裁は、「チェルノブイリ原発(旧ソ連製RBMK型炉4号機)事故は世界の原子力発展にも大きな影響を与えてしまった」と述べ、国際原子力事象尺度(INES)で同じ最悪のレベル7を記録した事故を述懐しました。1986年4月26日に事故が発生し、自らも事故3日目に上空のヘリコプターから炉心部を眺め、炉心燃料がすでになくなっていることを確認するなどの経験を通し、一刻も早い事故収束と周辺地域への放射能影響の低減などに努めた、と述べました。
事故当時は、減速材の黒鉛の火災による放射能拡大、水蒸気爆発による放射能拡散などの問題のほかに、再臨界の可能性もあり、地下水への汚染の可能性も否定できない状況。そうなれば、ウクライナだけでなく、欧州全体にも放射能汚染の拡大が心配されたことから、「英雄的作業」で炉の下にトンネルを掘って冷やす熱交換器の設置や、鉄板を地下に打ち込んで、地下水への汚染拡大を防いだ、としました。
その年の11月末には一応、プラント全体を覆うシェルター(いわゆる「石棺」)が完成したものの、内部は外から見るのと違って、スマートなものではなく、燃料が溶け金属やコンクリートと混ざって冷え固まってできた“溶岩”の放射線量は、一時間当たり数千レントゲン(数十Sv/時)と極めて高く、サンプル採取のためには、わずか数秒の時間しか作業ができなかったと振り返りました。
最大の課題は、炉心にあった燃料がいったいどこにいってしまったのか、その把握が重要であり、特殊なペリスコープや耐高放射線ビデオカメラを開発して内部を観察したり、原子炉建屋に最長十メートルほどの貫通部を設け、放射線量を測ったとのこと。中長期的には福島第一でも同様の措置が必要なことを強調しました。
チェルノブイリ原発4号機事故の炉心部の写真。全燃料が破壊されたか溶融して、吹き飛んだか、原子炉下部に落下した。 |
ベリホフ総裁は、福島の事故収束に向けて、チェルノブイリ原発の設計当事者でもあり、事故の収束に大きな力を発揮したクルチャトフ研究所の役割、能力、設備などを紹介し、原子力潜水艦の解体から放射能汚染土壌の除染・処分までの経験を活用できる、としました。
今後の世界の原子力発電動向については、「原子力なしでは安定した経済発展はできない」と述べ、「いまはエネルギー危機のさなかにある」と強調しました。
当協会が実施している「輸送・貯蔵専門調査会」では、原子燃料物質等の輸送および貯蔵に関する研究・技術開発動向、ならびに関連法令や技術基準の国際動向の現状などに関し、講演、関連施設の見学、意見交換を通じた専門情報の提供・交流活動を実施しています。当調査会の場を一層活用して頂くため、輸送貯蔵関係の若手技術者に貢献すべく、平成20年度より準会員制度を設けて、多くの方が参加できるように定例会合を開催しています。
昨年度の主なテーマは、①IAEA使用済燃料管理国際会議概要報告、②輸送・貯蔵兼用金属キャスクおよびリサイクル燃料備蓄センターの概要、③危険物の国際輸送規則、④PATRAM2010概要報告および参加報告(パネルディスカッションを含む)、⑤使用済燃料輸送容器の構造解析の概要、⑥原子燃料輸送と固縛の適用指針、⑦放射性同位元素の輸送実態についてなどでした。
今後も原子力開発利用の進展状況や会員のニーズに対応して活動を展開してまいりますので、多数の皆様のご参加をお待ちしています。
詳細は、http://www.jaif.or.jp/ja/seisaku/yuso_chosakai_activity.html
□原産協会HP(一般向け)の更新情報 ( http://www.jaif.or.jp/ )
*国内、海外ニュースは毎週および随時更新しております。
・福島第一原子力発電所の事故情報(毎日更新、PDF)
・平成23年6月20日「第61回原産協会通常総会」における今井敬・原産協会会長挨拶(6/21)
・福島第一原子力発電所に関する環境影響・放射線被ばく情報(随時)
-「福島第一原子力発電所事故の環境への影響」を追加(6/6)
【解説・コメント・コラム】
・OECD/NEA主催「福島事故フォーラム」(6/8 於フランス パリ)における服部理事長発表資料『Fukushima Accident: Actions
for the Future from Industry's Perspective』(英文)を掲載 (6/15)
□会員向けHPの更新情報( https://www.jaif.or.jp/member/ )
・【日本の原子力発電所の運転実績】5月分データ (6/6)
□英文HPの更新情報( http://www.jaif.or.jp/english/ )
・Atoms in Japan:英文原子力ニュース(AIJ)(随時)
・Earthquake Report、Information on Status of nuclear power plants
in Fukushima(毎日更新)
・「Environmental effect caused by the nuclear power accident at
Fukushima Daiichi nuclear power station」(随時)
・福島事故情報専用ページ「Information on Fukushima Nuclear Accident」を開設 (6/23)
[Information]
・Developments in Energy and Nuclear Policies after Fukushima Accident
in Japan (随時)
・Announcement of the 45th JAIF Annual Conference (6/23)
・Trend of Public Opinions on Nuclear Energy after Fukushima Accident in
Japan (6/16)
・JAIF President's presentation at the OECD/NEA Forum on the Fukushima
Accident (6/15)
・Operating Records of Nuclear Power Plants in May 2011 (6/2)
・Japan's NPP Status before and after the earthquake as of May 16,
2011 (5/17)
[服部理事長]
・6/4(土)~6/12(日) ロスアトム主催ATOMEXPO2011出席他に伴うロシア出張、
OECD/NEA主催Forum on Fukushima Accident出席に伴うパリ出張
・6/13(月) ロシア クルチャトフ研究所 ベリホフ総裁との懇談会(於:東海大学校友会館)
[石塚常務理事]
・6/6(月) 全原協および敦賀市との意見交換に伴う敦賀出張
・6/14(火) 若狭湾エネルギー研究センター評議員会に出席(於:敦賀市内 同センター)
・6/26(日)~7/2(土) 原子力発電技術フォーラム訪中団(主催:日本技術者連盟 国際原子力発電技術移転機構)に副団長として参加のため中国出張
[八束常務理事]
・6/6 (月) 北陸原子力懇談会 通常総会に出席(於:金沢ニューグランドホテル)
原子力損害の範囲、精神的損害の損害額
今回は、東京電力(株)福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の判定等に関する第二次指針と、指針追補の「精神的損害の損害額の算定方法」についてQ&A方式でお話します。
Q1.(福島原発事故による原子力損害の範囲―第二次指針) 原子力損害賠償紛争審査会により5月31日に決定された東京電力(株)福島第一、第二原子力発電所事故の原子力損害の範囲の判定等に関する第二次指針はどのような内容ですか? |
A1.
・ 第一次指針の対象外だった損害項目や範囲、一部の損害項目の具体的な損害算定方法の考え方を示す、第二次指針が原子力損害賠償紛争審査会(紛争審査会)により5月31日に決定、公表されました。
・ 第二次指針では、①避難等の指示に係る損害として、「一時立入費用」、「帰宅費用」、「精神的損害」、「避難費用の損害額算定方法」、「避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害の損害額算定方法」、②出荷制限等に係る損害として、「出荷制限指示等の対象品目の作付断念に係る損害」、「出荷制限指示等の解除後の損害」、③作付け制限指示等に係る損害、及び④風評損害が対象とされています。
・ 第一次、第二次指針の対象でないものも今後検討されることとなっており、7月頃に原子力損害の全体像に係る中間指針の策定が予定されています。
【A1.の解説】
原子力損害の範囲の判定等を行う紛争審査会により、第一次指針の対象とされなかった損害項目や範囲、一部の損害項目に関する具体的な損害算定方法の考え方を明らかにした、第二次指針が公表されました。
第二次指針の概要は以下の通りです。本文は文末のリンクからご覧ください。
①政府による避難等の指示に係る損害
[損害項目]
(1)一時立入費用
・ 「一時立入り」に伴う交通費、家財道具移動費用、除染費用等を賠償の対象とする。
(2)帰宅費用
・ 住居に戻るために負担した交通費、家財道具の移動費用を賠償の対象とする。
(3)精神的損害(避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害)
・ 避難等を余儀なくされた者が、正常な日常生活が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛を損害と認める。
[損害額算定方法]
(1)避難費用の損害額算定方法
・ 「交通費」、「家財道具移動費用」、「宿泊費等」の実費を損害額とする。領収書がない場合は客観的な統計データによる推計も認められる。
・ 「生活費の増加費用」は精神的損害の額に加算するのが合理的。
(2)避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害の損害額算定方法
・ 「生活費の増加費用」と合算した一定額とするのが合理的。
・ 宿泊場所等により差を設けることが考えられるが引き続き検討する。
(注:第二次指針公表の後、6月20日の第二次指針追補にて算定方法が示された。Q2参照)
②政府等による出荷制限指示等に係る損害
(1)出荷制限指示等の対象品目の作付断念に係る損害
・ 減収分及び追加費用を賠償の対象とする。
・ 勤務していた労働者の給与等の減収分が賠償の対象。
(2)出荷制限指示等の解除後の損害
・ 解除後の減収分及び追加費用も賠償の対象とする。
③政府等による作付制限指示等に係る損害
[対象区域及び品目]
・ 政府による作付け制限指示、放牧及び牧草等の給与制限指導、又は地方公共団体による作付けその他営農に係る自粛要請等(生産者団体による合理的理由に基づく措置を含む)があった区域及び対象品目に係る損害を対象とする。
[損害項目]
(1)営業損害
・ 減収分及び追加費用を賠償の対象とする。
(2)就労不能等に伴う損害
・ 勤務していた労働者の給与等の減収分を賠償の対象とする。
④いわゆる風評損害
(1)一般的基準
・ この指針で「風評被害」とは、報道等により広く知らされた事実によって商品又はサービスに関する放射性物質による汚染の危険性を懸念し、消費者又は取引先が当該商品又はサービスの買い控え、取引停止等を行ったために生じた被害を意味するものとする。
・ 放射性物質による汚染の危険性を懸念し、敬遠したくなる心理が平均的・一般的な人を基準として合理性を有していると認められる場合、「風評被害」についても相当因果関係があれば賠償の対象とする。
・ 損害業種毎の特徴等を踏まえ、類型化して相当因果関係を判断する。
・ 損害項目は①営業損害②就労不能等に伴う損害③検査費用(物)とする。
(2)農林漁業の「風評被害」
・ 次に掲げる産品に係るものは相当因果関係が認められる。
① 農林産物に係る出荷制限指示等が出た区域(県又は市町村単位。以下同じ。)の農林産物(食用に限る)
② 畜産物に係る出荷制限指示等が出た区域の畜産物(食用に限る)
③ 水産物に係る出荷制限指示等が出た区域の水産物(食用に限る)
・ 上記について農林漁業者が事前に自ら出荷操業又は作付けを断念したことによる被害も相当因果関係が認められる。
(3)観光業の「風評被害」
・ 事故発生県を拠点とする観光業の、事故後の解約・予約控え等による減収は相当因果関係が認められる。
・ 但し、減収は東日本大震災自体による減収の影響度合いの検討も必要。
第一次指針、第二次指針の対象でないものも、賠償すべき損害から除外されるものではなく、今後検討が行われることとなっており、7月頃に原子力損害の全体像に係る中間指針の策定が予定されています。
第二次指針本文はこちら
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2011/05/31/1306698_1_1.pdf
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Q2.(精神的損害の損害額) 6月20日の第二次指針追補による「避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害の損害額の算定方法」はどのようになりますか? |
A2.
・ 精神的損害は第二次指針において本事故に係る損害賠償の対象とされていましたが、その損害額の算定方法が6月20日の指針追補で示されました。
・ 避難生活等を余儀なくされた人であれば、年齢や世帯の人数にかかわらず、避難等をした個々人が賠償の対象となります。
・ 損害発生の始期は平成23年3月11日、損害額の算定期間は①事故発生から6ヶ月間(第1期)、②第1期終了から6ヶ月間(第2期)、③第2期終了後終期までの期間(第3期)、の3段階に分けて算定することが合理的とされています。終期は対象者が対象区域内の住居に戻ることが可能になった日とすることが合理的とされていますが今後検討されます。
・ 損害額は、第1期は一人月額10万円、但し避難所で避難生活をした期間は一人月額12万円、屋内退避区域にて屋内退避をした人は一人10万円(一括)、第2期は一人月額5万円が目安とされており、第3期については今後検討されます。
【A2.の解説】
第二次指針において暫定的な考え方が示された「避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害」と「生活費の増加費用」の算定方法について、「対象者」「損害額算定の基本的考え方及び算定期間」「損害額の算定方法」「損害発生の始期及び終期」に関する考え方を明らかにした指針追補が6月20日に決定されました。第二次指針追補の概要は以下の通りです。本文は文末のリンクからご覧ください。
①対象者
・ 対象区域のおける居住者等であって、避難、屋内退避等により正常な日常生活の維持継続が長期間にわたって著しく阻害された者を対象とする。
・ 年齢や世帯の人数にかかわらず、避難等をした者個々人が対象となる。
②損害額算定の基本的考え方及び算定期間
・ 差し当たり、算定期間を以下の3段階に分けることが合理的と認められた。
> 事故発生から6ヶ月間(第1期)。
> 第1期終了から6ヶ月間(第2期)。ただし警戒区域等が見直される等の場合には、必要に応じて見直す。
> 第2期終了後終期までの期間(第3期)。
③損害額の算定方法
・ 第1期については一人月額10万円、但し避難所等において避難生活をした期間は一人月額12万円。屋内退避区域の指定が解除されるまでの間、屋内退避をしていた者は一人10万円を目安とする。
・ 第2期については一人月額5万円を目安とする。
・ 第3期については今後の状況を踏まえ、改めて検討するのが妥当である。
④損害発生の始期及び終期
・ 損害発生の始期は避難等をした日にかかわらず平成23年3月11日とする。但し、緊急時避難準備区域内の対象者(子ども、妊婦、要介護者、入院患者等)が本指針が定められた日(6月20日)以降に避難した場合には、実際に避難した日を始期とする。
・ 損害発生の終期は、基本的には対象者が対象区域内の自宅に戻ることが可能となった日とすることが合理的であるが、具体的な帰宅の時期等を現時点で見通すことは困難であるため、なお引き続き検討する。
第二次指針追補本文はこちら
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2011/06/20/1307518_1_3.pdf
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