lights on with nuclear

 [JAIF]原産協会メールマガジン

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イルミネーション 原産協会メールマガジン12月号
2011年12月27日発行

Index

■原子力政策推進活動

 □「量子放射線利用普及連絡協議会」第14回会合を開催
 □ 「スカーフクラブあおもりサロン」勉強会開催を支援

■国際協力活動

 □モンゴルの原子力研修グループの来訪
 □フィンランド原子力関係者との協力
 
□第29回「台日工程技術研討会」への参加

■会員との連携活動

 □第12回「会員情報連絡協議会」を開催
 □第3回「原産会員フォーラム」を開催

■福島支援クラスターによる活動

 □原産協会役職員による被災・避難自治体訪問活動

■ホームページの最新情報

■原産協会役員の最近の主な活動など

■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【32】


本文

■原子力政策推進活動

「量子放射線利用普及連絡協議会」第14回会合を開催

 当協会は11月22日、(独)日本原子力研究開発機構・高崎量子応用研究所にて「量子放射線利用普及連絡協議会」第14回会合を開催し、(独)日本原子力研究開発機構・量子ビーム応用研究部門長の南波秀樹氏から「最近の量子ビーム/放射線利用研究開発について-その動向と成果-」を、また、文部科学省研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室長の原克彦氏から「量子ビーム研究開発・利用の推進方策について」ご講演いただきました。

 原子力機構の南波氏からは、日本における放射線利用の経済規模について、放射線利用総額は4兆1千億円にのぼり、原子力エネルギー利用総額の4兆7千億円とほぼ同額であることが紹介された後に、量子ビームの「観る:原子・分子レベルで観察する」、「創る:原子・分子レベルで加工する」、「治す:がん等を治療する」の3つの機能を中心に、大学や産業界と連携しつつ、医療・工業等の幅広い分野において量子ビーム・放射線利用研究開発がなされていることが紹介されました。

 文部科学省・原氏からは、量子ビーム研究開発・利用についての①科学技術政策上の位置づけ②推進に関する平成24年度概算要求③今後の推進方策について、の講演がありました。現在、光・量子基盤技術の研究開発に関する事業の改善を検討しているほか、平成23年6月に科学技術・学術審議会の先端研究基盤部会に置かれたプラットフォーム委員会において、これまで個別に整備・運用されてきた研究基盤を全体としてとらえて「研究基盤政策」を確立し、量子ビームを含めた研究基盤施設の効果的・効率的な整備・運営や横断的利活用の促進を推進する方策を検討中(平成24年4月頃に委員会一次報告(案)を審議・決定予定)であることが紹介されました。

 詳しくは、以下をご覧ください。
    「量子放射線利用普及連絡協議会」第14回会合・議事メモ  (PDF, 222KB)

 

「スカーフクラブあおもりサロン」勉強会開催を支援

 当協会のJAIF地域ネットワークは12月6日、青森市内に於いて、青森市民グループ 「スカーフクラブあおもりサロン」のメンバーを対象とした放射線の食品への影響に関する勉強会の開催支援を行いました。

 今回の勉強会は、一般消費者に特に関心の高い“放射線の食品への影響”に関して、詳しく勉強する場として、講師に (独) 日本原子力研究開発機構 小林 泰彦氏(量子ビーム応用研究部門マイクロビーム細胞照射研究グループリーダー)をお招きし、「放射線の健康影響について:食品の暫定規制値の考え方」と題し、開催されました。

 講師である小林氏は「放射線はもともと自然界にあるもので、食べ物にも入っているもの。自然放射線と人工放射線を比較し、人工放射線だから危険ということはない。食品の中にも天然の発がん性物質が存在する。そういった事実を知り、判断基準にしてほしい。また、規制値については、かなり安全側に立って決められたもの。規制値を超えたものは即危険なもの、という事ではない」と強調されました。

 参加したメンバーからは「放射線に関心が高まっている今、今回の勉強会で得た知識を生かして今後の広報活動に繋げていきたい」「風評被害を少しでもなくしていきたい」「食品の規制値の考え方は今後も継続して勉強していきたい」等のご意見をいただきました。



勉強会風景

 

■国際協力活動

モンゴルの原子力研修グループの来訪

 モンゴルの原子力エネルギー庁(NEA)の一行8名が12月6日、原子力に関する研修および情報交換のため、当協会を訪問しました。一行は、11月27日から12月9日の日程で来日したもので、このうち3名は原子力発電導入プロジェクトに関する調査委員会のメンバーです。

 モンゴル側からは、概要以下のような説明を受けました。

 モンゴルは、約300万人の人口で、2009年の発電容量は全土合計で105万kWです。ウラン探査と採鉱は、ソ連との協力で第二次世界大戦終結直後から始まり、実績としては旧ソ連の採鉱分535トンがこれまでの採鉱したウランのすべてです。それもすべてがソ連に持ち去られたが、ソ連の探査によると、モンゴルのウランの推定埋蔵資源は140万トンと世界第一位の可能性が強いと見られています。

 モンゴルはウランの他、銅・金・レアメタルも豊富で、政府ではこれをテコに、探査・採鉱・精錬等の近代的鉱業立国にしたいとの意向をもっているが、資金も技術も自前では不十分な状態です。現在、モンゴルの地下資源を求めて、露・加・仏・カザフスタン・米・独・日・印・中・韓が探査・採鉱での協力を申し入れています。

 モンゴルでは、中央部やゴビ地域に2020年代に最大で合計480万kWの原子力発電プラントを建設することと、西部で中小型炉を電気と熱・蒸気の併給方式で建設することの検討を進めており、中小型炉に関しては2009年5月のロシアのプーチン首相の訪蒙時に建設支援を確認しています。またウランの探査・採鉱・精錬をめざし合弁会社も設立されています。

 モンゴルでは、2006年に国営ウラン開発企業MonAtom LLCを創設し、また天然鉱物資源開発のための法整備も進めています。

 わが国では、2006年の小泉首相のモンゴル訪問時に、モンゴル側から原子力発電分野の人材育成で日本に協力要請があり、研究員や留学生の受入れも始まっています。2009年7月にはモンゴルのNEAとわが国経済産業省資源エネルギー庁が原子力協力文書(DOC)に署名しています。

ドルノド県のウラン資源量(ソ連時代の調査)



 ソ連の調査結果では、ドルノド県のウラン推定鉱量は、砂岩系92.7万トン、火山岩系18.3万トン、花崗岩系10.0万トン、ペグマタイトや交代変成岩系19.0万トンと総計が140.0万トンで、採鉱可能なウランは63,573トンに上ります。

モンゴルの主要ウラン産出地




モンゴル原子力エネルギー庁の来訪者一行8名との交流

 

フィンランド原子力関係者との協力

 11月下旬、フィンランドのエネルギー・原子力関係者が来日しました。当協会は関係者一行の国内原子力関係機関訪問に対する協力および、フィンランド原子力協会との交流を行いました。

フィンランド原子力学会訪問団受入れ協力
 フィンランド原子力学会一行17名(団長:E.K.プスカ・国立技術研究センターVTT主席研究員)が11月21日から27日来日し、日立、東芝、三菱重工のほか、浜岡および高浜原子力発電所を訪問しました。団員はフィンランドの電力会社(TVO、Fortum、Fennovoima)、規制機関(STUK)などから。フィンランド原子力学会は主要な原子力先進国を毎年訪問していますが、今回は日本を選択したとのことです。日本を選んだ理由の一つには、同国で計画中の新規原子力発電2基との関係もあるとのことです。



フィンランド原子力学会一行 前列左から3番目がプスカ団長(女性)
琴平神社前にて


フィンランド原子力協会との会合
 11月28日から12月1日にかけては、ハカミエス経済産業大臣、ストゥッブ欧州・貿易大臣含むフィンランドのエネルギー産業界の団が、日本との経済交流促進を目的に来日しました。この機会に当協会は、同エネルギー産業界団のメンバーであるフィンランド原子力協会と会合をもちました。

 フィンランド原子力協会からは概要以下のような説明・協力要請を受けました。
 上記関係者からの情報などから、フィンランドにおける新規計画情報についてまとめると以下の通りです。

 フィンランドは2020年までに、原子力発電で50%以上の電力を、再生可能エネルギーで40%近くを賄う計画です。新規原子力計画に対しフィンランド議会は下記の2社にたいして原則決定(Decision in Principle)を出しており、次のステップは政府の建設許可待ちとのことです。

 1.TVO社
 オルキルオト原子力発電所4号機の候補としては仏EPR、東芝ABWR、日立・GE ESBWR、三菱EU-APWR、韓国APR-1400

 2.Fennovoima社

 

第29回「台日工程技術研討会」への参加

 当協会は、11月20日から25日に中国工程師学会主催で台湾・ハワードプラザホテル台北で開催された第29回「台日工程技術研討会」に事務局スタッフを派遣しました。同研討会には、日本側から伊藤達雄・三重大学名誉教授(団長)ほか62名が、台湾側から許俊逸・主任委員(大臣級)ほか約100名が参加しました。



20日に開催されたレセプション

 「台日工程技術研討会」は、中国工程師学会と台湾科学技術協会との共催で、年に1回、台湾で開催されています。研討会の目的は、台湾の産業技術の向上へ寄与するため、日本の先進技術と研究を、日本の専門家からの指導や議論を通じて、台湾の各関連部署へと普及することです。またそれによって、両国における先進技術の交流と協力の増進を目的としています。研討会の開催にあたっては、日本から研究者や専門家を講師として招聘し、講演会や実地指導、関係者との討論を行い、台湾側が抱えている問題の解決に貢献してきました。これまでにのべ1,000人を超える日本人講師が、研討会に参加してきました。

 1980年に第1回が開催されて以来、今年で29回目を迎え、台湾の産業技術発展に研討会が果たす役割は大きく、各界から研討会に対する期待も増しているとのことです。特に今年は、中国工程師学会創立100周年にあたり、また、日本は東日本大震災の復興対策へ全力を挙げていることもあり、今年の研討会は震災対策を中心とした例年にはない特別な研討会となりました。

 検討会の主な概要は以下の通りです。

 ○開幕セレモニー
 21日午前の総統府訪問(副総統と面会)に引き続き、午後からは開会セレモニーが開催されました。挨拶に立った許俊逸主任委員は、研討会の規模が年々拡大し、日台両国のエンジニアリング業界で最も重視されるものとなったと強調。火曜日から各分科会に分かれる日本人講師たちと複合災害への対策についてディスカッションしたいと述べました。



挨拶する許主任委員

 台湾高鉄の欧薫事長は、台湾にとっても安全は常に最優先課題であり、日本の経験から学ぶことは多いとした上で、今後日台が協力して大陸中国での新たなビジネス展開を模索したいとの抱負を述べました。

 日本側から挨拶した交流協会の渡邊明夫主任は、「天然資源の乏しい日台にとって、事業を下支えする技術で生き残りを図ることは重要」と指摘。日台民間投資取決(実質的な貿易協定)を通じて、緊密な連携体制を構築していきたいと強調しました。

 ○原子力分科会
 原子力分科会は22日に台湾電力公司の本社で開催されました。分科会前に日本人講師は徐懷瓊副總經理(副社長)と面会。その後、岡本孝司教授による福島事故に関する分科会と、中部電力島本氏、中国電力秋山氏による具体的な地震対策に関する分科会の2グループに分かれました。


徐副社長と面会
 

分科会の様子。正面右上のモニターは台湾電力の
発電所会議室とつながっている

 島本氏は「浜岡原子力発電所における重要免震棟の設計および建設」について、秋山氏は「島根原子力発電所における地震計の仕様および設置」について講演。出席した台湾の大学、電力、規制当局の地震担当専門官らと活発なディスカッションが交わされました。

 ○テクニカルツアー
 地震対策の分科会グループはその後、台湾大学内にある国立地震エンジニアリング研究センター(NCREE)を訪問。NCREEの専門家とのディスカッションの後、日本と比較すると規模は小さいが、振動台等を見学しました。

NCREEにて。専門家同士の白熱した耐震
エンジニアリングに関する議論の模様
 

 

 

■会員との連携活動

第12回「会員情報連絡協議会」を開催

 当協会は12月8日、第12回「会員情報連絡協議会」を東京・霞が関の東海大学校友会館で開催し、(独)科学技術振興機構顧問で東京大学名誉教授の北澤宏一氏がエネルギー政策の選択肢に係る調査報告について講演しました。

 北澤氏は、自身が委員長を務めた日本学術会議の東日本大震災対策委員会のエネルギー政策の選択肢分科会でまとめた「エネルギー政策の選択肢に係る調査報告」に基づき、わが国の今後の電力供給源に係る6つのシナリオ( A.原子力発電即停止、B.原子力発電5年で停止、C.原子力発電20年で停止、D.原子力発電寿命で停止、E.原子力発電現状維持、F.原子力発電増強)に関する説明を行いました。この中で、北澤氏は、すべてのシナリオを実行する上で、省エネルギーが前提条件になること、国の安全保障も関わってくること、国民の理解と合意が必要になること、諸外国の動向に目を向けるなどが重要であり、どのシナリオも解決すべき課題とリスクがあることを強調しました。

 

第3回「原産会員フォーラム」を開催

 当協会は11月25日、第3回「原産会員フォーラム」を東京・平河町のルポール麹町で開催しました。同フォーラムは、会員相互の情報交換・ネットワーク作り目的としているもので、今回は約80名が参集、講演会と懇親会を行いました。

 講演会では、(財)日本エネルギー経済研究所特別顧問で前国際エネルギー機関(IEA)事務局長の田中伸男氏が、「将来の世界のエネルギーシナリオと福島後のエネルギー戦略」と題し、IEAのWorld Energy Outlook 2011にもとづいた講演を行いました。田中氏は、景気後退への懸念、中東、アフリカ諸国の政治的混乱、福島原子力発電所の事故、過去最高水準となった石油輸入金額など、不確実な要因が増大した中に世界のエネルギーマーケットはあるなど、世界のエネルギーに関する現状について説明しました。日本のエネルギー政策については、安全保障、コスト、さらに地球環境保護の観点から、最良のエネルギーベストミックスを選択するべきであり、省エネ、再生可能エネルギーに加え、安全確保を前提に原子力は重要なオプションであるとし、福島原子力発電所の事故の教訓を世界と共有することにより、世界の原子力発電がより安全となると強調しました。

 なお、当日配布いたしました資料につきましては、当協会の会員専用ホームページに掲載しております。

 

■福島支援クラスターによる活動

原産協会役職員による被災・避難自治体訪問活動

 当協会では“うつくしまふくしま ふるさとカレンダー2012”を作成し、被災・避難している自治体13自治体(田村市、南相馬市、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村、いわき市、川俣町)をそれぞれ訪問し、カレンダーをお届けいたしました。

 福島第一原子力発電所事故により、避難先での不自由な生活が続く中で、これまでみなさまから頂きましたご意見は、「手元にカレンダーがない」との声でした。そこで当協会では5月に、福島の四季折々の風景や季節ごとのイベント・お祭りなどを背景とした“ふるさとカレンダー”を作成し、みなさまにお届けしたところ、よい評判を頂きました。

 これから平成24年を迎えるにあたり、当協会では“うつくしまふくしま ふるさとカレンダー2012”を作成し、被災・避難している13自治体(田村市、南相馬市、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村、いわき市、川俣町)について、12月7日から21日の間でそれぞれ訪問し、カレンダーをお届けいたしました。

 また、市役所や町役場、村役場のみなさまからは、復興に向けたビジョンやプランの策定状況、除染活動・事業に関する現状、放射線に関する講演会開催などについて、いろいろなご意見を頂きました。

 各自治体からは、いろいろなご意見をお伺いすることができ、今後も引き続き、それぞれのニーズに合った協力支援活動を展開していきます。

 

■ホームページの最新情報

原産協会HP(一般向け)の更新情報 ( http://www.jaif.or.jp/ )

*国内、海外ニュースは毎週および随時更新しております。


会員向けHPの更新情報 https://www.jaif.or.jp/member/

英文HPの更新情報http://www.jaif.or.jp/english/

[Information]

[福島事故情報専用ページ] 「Information on Fukushima Nuclear Accident

■原産協会役員の最近の主な活動など

[服部理事長]


[石塚常務理事]

[八束常務理事]

■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【32】

自主的避難等に関する指針、紛争解決センター
 今回は、中間指針追補にて示された自主的避難等に関する指針と、紛争審査会が原子力損害に関する紛争を解決するために設置した「紛争解決センター」についてQ&A方式でお話します。

Q1.(自主的避難等に関する指針)
中間指針で示されなかった自主的避難等に係る原子力損害について、どのような指針の追補が出されたのですか?

A1.


【A1.の解説】
 2011年8月5日に公表された中間指針において、政府による避難指示等に基づくものではなく自主的に行なわれた避難(自主的避難)に係る損害については、引き続き検討することとされていました。

 これに関して12月までの間に原子力損害賠償紛争審査会による調査・検討が行われ、2011年12月6日に自主的避難等に係る損害についての中間指針追補が公表されました。

 避難指示等対象区域の周辺地域では、事故発生当初に十分な情報が無い中で大量の放射性物質放出による放射線被曝の危険を回避しようと考えて自主的に避難した者、その後にある程度情報が入手できるようになった状況下で放射線被曝の危険を回避しようと考えて自主的に避難した者が相当数存在する一方で、ほとんどの住民が恐怖や不安を抱きつつも避難せずに滞在し続けました。

 こうした現状を踏まえ、指針においては福島原子力発電所からの距離、避難指示対象区域との近接性、政府等から公表された放射線量に関する情報、自主的避難の状況等の要素を総合的に勘案して、以下のような自主的避難等の損害範囲が示されました。

[対象区域]
下記のうち避難指示等対象区域を除く区域。

○県北地域
福島市、二本松市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、大玉村

○県中地域
郡山市、須賀川市、田村市、鏡石町、天栄村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町

○相双地域
相馬市、新地町

○いわき地域
いわき市

[対象者]
○事故発生時に自主的避難等対象区域内に住居があった者。

○事故発生時に避難指示等対象区域に住居があった者が、自主的避難等対象区域に避難して滞在した期間は自主的避難者等対象者に準じて対象となる。

[損害項目]
○自主的避難者及び滞在者のそれぞれの生活費の増加費用、精神的苦痛、移動費用等を合算し、自主的避難者及び滞在者の損害を同額として算定するのが、公平かつ合理的。損害額は以下を目安とする。

○事故発生時に自主的避難等対象区域内に住居があった者

○事故発生時に避難指示等対象区域内に住居があった者
 その後に子供・妊婦が自主的避難等対象区域内に避難、滞在した場合、事故発生から2011年12月までの損害として一人20万円を目安とし、対象期間に応じた金額とする。

 また、この中間指針追補においては、「対象とされなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではなく、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められることがあり得る」とされています。  この追補による対象の住民は約150万人で、これの賠償総額は約2000億円に上るといわれています。

 なお、中間指針で示されなかった原子力損害には自主的避難等に係る損害の他にも、次のような損害があり、これらについては今後必要に応じて指針が検討されることになります。

○避難指示等対象区域における
中間指針追補の本文はこちら
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/anzenkakuho/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/12/07/1309711_3_1.pdf

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Q2.(原子力損害賠償紛争解決センター)
福島原発事故による原子力損害のうち、必ずしも紛争審査会による指針の対象に挙げられていないもの、あるいは東京電力の補償基準の対象に示されていないものなどについては、どのような解決方法がありますか?

A2.


【A2.の解説】
 福島原発事故による原子力損害については、原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)に基づいて、紛争審査会により当事者による自主的な解決に資する一般的な指針が策定され、指針に基づき東京電力が定めた補償基準により賠償が実施されています。

 しかし、指針は一定の類型化が可能な損害項目や範囲を示したものであり、全ての損害が示されているわけではありません。したがって、指針で対象とされなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではなく、このように指針で示されていない損害については、個別具体的な事情に応じて損害の有無や損害額を判断しなければなりません。こうした問題について被害者と東京電力との合意が成立しない場合には最終的には裁判所の司法判断を仰ぐことになります。

 原子力損害のような多数の被害者がそれぞれ裁判を起こさなければ解決できないとすれば、被害者個人にとっても、また社会にとっても多大な費用が必要となり、迅速な救済を与えることもできません。そこで、こうした場合に「原子力損害の賠償に関する紛争について和解の仲介を行うこと」もまた、原賠法第18条で定められた紛争審査会の役割となっています。

 今回の福島原発事故のため、紛争審査会は2011年8月に、和解の仲介の手続きを円滑かつ効率的に行うための「原子力損害賠償紛争解決センター」(紛争解決センター)を設置しました。紛争解決センターは、和解の仲介手続きを総括する「総括委員会」と、仲介委員が合意形成を後押しする「仲介委員」と、和解の仲介手続きに関する庶務を行う「原子力損害賠償紛争和解仲介室」との有機的な連携の下に、業務が遂行されます。

 具体的には、原子力損害の賠償に関する紛争は次のような流れで処理されます。

被害者による東京電力への賠償請求→示談成立→賠償金支払い
 ↓示談に至らない場合(紛争の発生)
被害者による紛争解決センターへの和解の申立て
 ↓
総括委員会による仲介委員の指名
 ↓
和解の仲介(仲介委員による合意形成の後押し、総括委員会による仲介手続きの総括、和解仲介室による庶務、の有機的な連携)
 ↓
和解案の提示→和解成立、当事者による和解契約書の作成→賠償金支払い
 ↓不合意の場合(和解不成立)
再度の和解の仲介の申立もしくは民事訴訟の提起

 なお、原子力損害賠償支援機構と東京電力が作成した「特別事業計画」において「紛争処理の迅速化に積極的に貢献するため、(中略)提示される和解案については、東電として、これを尊重することとする。」とされ、東京電力はこの手続による和解案での解決にできるだけ応じることが示されています。

 こうした手続によって、当事者間の合意により解決できない場合であっても、裁判所に訴訟を提起するなどの方法によることなく、紛争解決センターを利用することにより、費用や時間をかけずに適性に紛争を解決することが期待されています。

 文部科学省ウェブサイト「原子力損害賠償紛争解決センターについて」はこちら
http://www.mext.go.jp/a_menu/anzenkakuho/baisho/1310412.htm

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○ 原産協会メールマガジン2009年3月号~2010年9月号に掲載されたQ&A方式による原子力損害賠償制度の解説、「シリーズ『あなたに知ってもらいたい原賠制度』」の19回分を取りまとめ、小冊子を作成いたしました。

小冊子の入手をご希望の方は(1)送付先住所 (2)所属・役職(3)氏名(4)電話番号(5)必要部数をEメールで genbai@jaif.or.jp へ、もしくはFAXで03-6812-7110へお送りください。

シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」のコンテンツは、あなたの声を生かして作ってまいります。原子力損害の賠償についてあなたの疑問や関心をEメールで genbai@jaif.or.jp へお寄せ下さい。

 


◎「原産協会メールマガジン」2011年12月号(2011.12.27発行)
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