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原産協会メールマガジン1月号 2013年1月25日発行 |
Index
□英国での新規原発建設計画と英国原産協会(NIA)年次大会「Energy Choice 2012」参加
本文
当協会は9日、東京都港区の東京プリンスホテルで、「新年会員交流会」を開催、協会会員企業・団体他、行政、大使館関係など、およそ1,000名の来場者がありました。
冒頭、年頭挨拶に立った今井敬会長(=写真)は、昨年の動きとして、政権交代を巡る動きを振り返りながら、政治の力の重要性を強調しました。さらに、福島原子力災害に関しては、国会の事故調査委員会が示した「人災」との結論にも触れながら、長時間にわたる電源喪失への対策不備を戒めた上で、「原因をはっきりと究明して対策を講ずれば、原子力を再稼働しても大きな災害は起こらない」と述べました。
また、エネルギー政策に関して、今井会長は、「原子力発電がなければ、電力の安定供給・低廉供給はできない」として、産業競争力強化、雇用確保、経済再生に原子力発電が不可欠であることを改めて強調した上で、本年、参議院選挙や原子力規制委員会による新安全基準が施行される七月以降が原子力産業界にとって「正念場を迎える」などと述べました。昨年からの東京電力含め電気事業者による自主的な安全対策や、原子力安全推進協会の取組などに期待をかけた上で、原産協会としても、原子力の安全・推進、福島の復興に全力を尽くすとともに、海外における原子力発電導入についても、全面的に協力していく決意を述べ、原子力産業界にとって良い一年となるよう祈念し挨拶を終えました。
今井会長の降壇後、川村隆副会長(日立製作所会長)の音頭により、一同祝杯をあげました。
会場の様子 |
□英国での新規原発建設計画と英国原産協会(NIA)年次大会「Energy Choice 2012」参加
英国では、25年ぶりの新規原子力発電所建設に向け、気運が高まっています。フランス系のEdF-Energy、日立が買収したHorizon、フランスのGDF-スエズによるNuGenの3グループが、新規原子力発電所建設プロジェクトを進めており、5サイトで1600万kWの建設が計画されています。特にEdF-Energyのプロジェクトは、2012年中にサイトライセンスやEPRの設計承認が発給されるなど、トップを走っています。
一方、英国議会では、保守、労働、自由民主の主要3党とも原子力推進の立場を取っており、政界での原子力支持層が分厚い状態です。昨年11月末には、長らく待たれていた「エネルギー法案」が議会下院に上程されました。同法案は、原子力発電を含む低炭素発電の促進、エネルギー・セキュリティの向上、原子力規制局の創設などの原子力関係条項を含んでいます。原子力に対する世論は、昨年11月のNIA世論調査で、賛成が40%、反対が17%であり、福島事故後に一時的に原子力支持が下がったものの素早く回復するなど、国民の原子力に対する支持も高いものが見られます。
25年ぶりに新規原発建設に取り組む英国では、これを支える産業インフラ、人材・労働力、研究開発力などが「虫食い」状態になっているとされ、これを補う観点からも、日本の原子力産業界にとって、海外展開のチャンスが大きいと考えられます。NIAは今年3月19~20日に、ロンドンで新規建設に関する会議を計画しており、建設への機運はますます高まるものと思われます。世界最古の原子力発電所国である英国には、研究・産業インフラや人材もあり、政治的安定性も高いことが魅力です。
○ NIA年次大会「Energy Choices 2012」
昨年12月にロンドンで開かれた英国原子力産業協会(NIA)の年次大会にあたる「Energy Choices 2012」には、原産協会から石塚シニアアドバイザーと喜多国際部長が参加し、サイズウェルB以降、25年ぶりの新規原発建設に沸く英国の原子力産業界の熱気を感じることになりました。
ロンドン市内ウェストミンスター・セントラルホールで、昨年12月6日に開かれた同会議には、約300人が参加。司会を務めたNIA会長のハットン卿(=写真)は、2012年には「エネルギー法」が議会に提出されたほか、EdF-Energyの新規建設サイト・ヒンクレーポイントにサイトライセンスが出されるなど、英国の原子力にとって画期的な年だったと挨拶。このほか、Fallon下院議員が「世界の原子力市場には膨大なチャンスがある」として、ヒンクレーポイン・プロジェクトに引き続き、新規建設プロジェクトと現れるとして、「来年(2013年)は大きな年になる」述べました。エネルギー大臣のHayes氏も、エネルギー法案の重要性や、2030年までに5サイトで1600万kWが計画されている新規原発から多くの職が生まれることなどを強調しました。
日本からは、新規建設プロジェクトを展開するHorizonを買収して注目を集める日立から羽生氏が英語で講演。ホライズンの紹介と買収の経緯、今後2サイト(Wilfa、Oldbury)で各2~3基を建設する予定で、2020年代初期の運開を目指すことなどを説明し、注目を浴びました。
同会議のレセプションはテムズ川沿いの英国議会(=写真)下院内で開催、夕食会には約1100人が参加するなど、ソシャルイベントにも熱気があふれており、英国原子力産業界のフォーカルポイントとしてNIAが重要な役割を果たしていることが伺えました。
○ 英国原子力産業の調査を実施中
英国での新規原発建設計画等の動きを受けて、原産協会は、日本電機工業会、NIAと協力して英国の原子力産業調査を進めています。英国での電力民営化以降、英国の原子力産業がたどった道をレビューし、現状を把握するとともに、現在、新規建設プロジェクトを立ち上げるにあたって、どのような問題に直面し、それらをどのように解決しようとしているのかを調べて、日本の原子力産業界の参考にしてもらおうというのが目的です。4月の原産年次大会時には、報告書を報道機関と原産協会会員向けに発表する予定です。
・三建産業(株)
・フランス電力(EDF)日本駐在事務所
・DOWAエコシステム(株)
□原産協会HP(一般向け)の更新情報 ( http://www.jaif.or.jp/ )
*国内、海外ニュースは毎週および随時更新しております。
・今井敬会長の年頭挨拶(1/9)
・服部理事長の所感「2013年の年頭にあたり 」(1/9)
・第6回原産会員フォーラム(テーマ別会合) 開催のご案内 核不拡散、核セキュ
リティ(12/28)
・第19回日仏原子力専門家会合(N-20)の開催報告
・福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等の状況 (随時)
・福島原子力発電所に関する環境影響・放射線被ばく情報 (随時)
・福島地域・支援情報ページ (随時)
地元自治体の動きやニュース、地元物産・製品等の情報を掲載中
・「日本の原子力発電所(福島事故前後の運転状況)」を掲載 (随時)
□会員向けHPの更新情報( https://www.jaif.or.jp/member/ )
・【日本の原子力発電所の運転実績】2012年12月分と同年暦年データを掲載(1/11)
・【海外原子力情報】2012年11月分を掲載(12/27)
・「新年会員交流会」開催のご案内(12/11)
・「第5回原産会員フォーラム(全体会合)」配布資料を掲載(12/10)
□英文HPの更新情報( http://www.jaif.or.jp/english/ )
・Atoms in Japan:英文原子力ニュース(AIJ) (随時)
・Fukushima & Nuclear News (毎日更新)
・Status of the efforts towards the Decommissioning of Fukushima Daiichi
Unit 1-4 (随時)
・Environmental effect caused by the nuclear power accident at Fukushima
Daiichi nuclear power station (随時)
[Information]
*JAIF President's Comment as 2013 Begins (1/17)
*[AIJ FOCUS] JAIF Chairman's New Year's Speech (1/17)
*JAIF President's Comment on Expectations for the New Administration (12/20)
* Stress Test and Restart Status (随時)
* Current Status before and after the earthquake (随時)
* Operating Records of Nuclear Power Plants (随時)
* Developments in Energy and Nuclear Policies after Fukushima Accident
in Japan (随時)
* Trend of Public Opinions on Nuclear Energy after Fukushima Accident
in Japan (随時)
[福島事故情報専用ページ] 「Information on Fukushima Nuclear
Accident」 (随時)
[今井会長]
・1/9 新年会員交流会(於:東京プリンスホテル)
[服部理事長]
・1/9 新年会員交流会(於:東京プリンスホテル)
・1/25 第6回テーマ別原産会員フォーラム(於:校友会館)
・1/28 プレスブリーフィング(於:琴平タワー3F 会議室)
[佐藤常務理事]
・1/9 新年会員交流会(於:東京プリンスホテル)
・1/25 第6回テーマ別原産会員フォーラム(於:校友会館)
・1/28 プレスブリーフィング(於:琴平タワー3F 会議室)
諸外国の原賠制度の特徴(1)
我が国の原賠制度が「原子力損害の賠償に関する法律」等に規定されているように、諸外国における原子力損害賠償制度も各国の実情を背景とした国内法により規定されているので、各国制度の概要を把握しておくことは大切です。
原賠制度と言っても、各国においてその制度設計は異なります。したがって、原子力に関わる事業を行う場合には当該国の制度をよく理解して対処しておかなければ思わぬリスクに直面する恐れがあります。我が国の制度との違いを把握して、諸外国における事業リスクに備えておく必要があるでしょう。加えて、原子力損害の発生に際して、関係者が他の法律による責任を負う可能性もありますので、国により該当する賠償責任に関わる法律の違いはありますが、それらの法律についても検討しておくことが必要です。
新規原子力導入国における法整備のためのガイドブックであるIAEAの「原子力法ハンドブック」には原賠制度の基本的な事項(制度の必要性、文言の定義、厳格責任、責任集中、免責事項、責任限度額、除斥期間、賠償措置と補償制度、輸送に関する賠償責任等)や国際条約に関する事項が記載されていますが、今後のメルマガで数回にわたり、これらの事項に関わる各国の比較による「諸外国の原賠制度の特徴」を掲載していきます。なお、それぞれの国の原賠制度については、既報のメルマガを参照願います。
Q1.(原賠制度を規定する諸外国の法律) 諸外国の原賠制度はどのような法律に規定されていますか? |
A1.
・ 諸外国においては、我が国のように原賠制度を単独の法律で規定する国ばかりではなく、むしろ、原子力関係法の大元となる“原子力法”の一部として規定されている国が大半です。
・ 変り種としては、原賠制度の基本的な事項は国際条約に拠るものとして、その国際法を補う国内法と一体化した制度を持つ国もあります。
【A1.の解説】
我が国の原子力開発利用は「原子力基本法」をはじめ、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」「原子力災害対策特別措置法」などの法律に基づいて実施されており、原賠制度を規定する法律は民法の特別法である「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」、「原子力損害賠償補償契約に関する法律(補償契約法)」等に規定されています。しかし、諸外国においては原賠制度を我が国のように単独の法律で規定する国ばかりではありません。
多くの国においては、設置許可や安全規制などを含めた原子力全般に関して規定する“原子力法”の一部として、安全規制などと同列に原賠制度が規定されています。
また、フランスのように、原賠制度の基本的事項である運転者への無過失責任、責任集中、免責事項等について自国の国内法で規定せず、パリ条約やブラッセル補足条約の規定をそのまま適用した上で、各国の裁量に委ねられている部分を国内法によって補う形で条約を取り込んだ原賠制度を持つ国もあります。
なお、中国においては国務院により原賠制度に関する文書が公布されているだけで、原賠制度を規定する法律は未だ制定されていません。
主な諸外国の原賠制度について、規定する法律を分類して例示すると以下のようになります。
○ 単独の法律で規定されている国
(1)原子力損害賠償法
・ 日本「原子力損害の賠償に関する法律」
・ 韓国「原子力損害賠償法」
・ 台湾「核子損害賠償法」(原子力損害賠償法)
・ インド「原子力損害に関する民事責任法」
・ スイス「原子力損害の第三者責任に関する法律(LRCN)」
(2)条約を取り込んだ形の賠償法
・ フランス「原子力分野における民事責任に関する法律」(パリ条約、ブラッセル補足条約を直接適用する)
○原子力法の一部に規定されている国
・ ロシア「原子力エネルギーの利用に関する連邦法」
・ ドイツ「原子力の平和利用およびその危険に対する防護に関する法律」(原子力法)
・ 米国「原子力法」(原子力法の170条に関する改正法を“プライスアンダーソン法
(PA法)”と呼ぶ)
・ ベトナム「原子力法」
・ ポーランド「原子力法」
・ マレーシア「原子力エネルギー免許法」
・ インドネシア「原子力エネルギー法」
・ イギリス「原子力施設法」
○原賠制度が法制化されていないが、それに代わる制度を定める国
・ 中国・・・原賠制度を規定する法律は無く、原子力事故の損害賠償責任に関する国務院からの原子力行政機関への回答が原賠制度の拠り所とされる。
Q2.(原子力損害の責任主体に関する諸外国の規定) 諸外国においても日本と同様に、原子力事業者だけが原子力損害の責任を負うという原則は堅持されていますか? |
A2.
・ 原子力事業者だけが原子力損害の責任を負う仕組みは諸外国の制度や国際条約にも共通する原賠制度の基本的原則の一つです。
・ 原賠制度上で原子力事業者の無過失責任を問わない国はありません。したがって、原子力損害について責任はまず原子力事業者が負うことになります。ただし、この第1次的な責任を負った原子力事業者が、被害者に支払った損害賠償を他に求償できるかについては、原子力施設・設備等の関係者に対して、過失や欠陥があった場合の求償する可能性を規定している国もあります。
・ 米国では原子力法(PA法)に責任集中は規定されていませんが、事業者に対して抗弁権の放棄、経済的な責任の集中、賠償責任の免除の放棄等を義務付ける契約により、実質的に無過失責任・責任集中と同様の仕組みを作っています。
【A2.の解説】
我が国の原賠法では、第3条に免責事項の場合以外は原子力事業者が原子力損害を賠償する責任主体であること(無過失責任)が規定されたうえで、第4条に原子力事業者以外の者は責任を負わないこと(責任集中)が規定されており、また、原子力事業者が被害者に支払った損害賠償に関する求償権についても、第三者の故意により生じた場合と原子力事業者と他の者の間に特約がある場合に制限されています(第5条)。
このように原子力事業者の責任は各国の国内法に規定されていますが、無過失責任・責任集中・求償権の制限により原子力事業者だけが原子力損害の責任を負う仕組みは、各国の制度や国際条約にも共通する原賠制度の基本的原則の一つとなっています。
しかし、原子力損害の賠償責任は原子力事業者に集中させていても、場合によっては原子力事業者が原子力施設の建設業者や設備・機器の供給者などに求償することを妨げないとしている国もあります。その最も特徴的な例として、インドでは、原子力事業者は被害者に対する賠償を行った後に、「明らかな又は潜在的な欠陥のある設備・材質、又は基準以下の役務があって、供給者又はその従業員の行為による結果から生じた原子力事故の場合、事業者は求償権を有する」(第17条b項)と規定しています。また、韓国では、「原子力損害が資材の供給や役務・労務の提供(資材の提供)により生じたときには、原子力事業者は、当該資材を提供した者やその従業員に故意又は重大な過失があるときに限り求償することができる。」(第4条)としています。このように、これらの国においては、製品や役務に重大な過失(故意は勿論のこと)や欠陥があった場合に、賠償義務が供給者にも及ぶ可能性があることが明らかになっています。
また、米国では不法行為に関する責任は州法に基づいて判断されるため、連邦法である原子力法に原子力損害賠償に関わる責任集中は規定されていません。その代わりに米国の原賠制度では、原子力事業に関する許認可の際に事業者が政府と結ぶ補償契約において、事業者の抗弁権の放棄、経済的な責任の集中、賠償責任の免除の放棄等を条件とすることにより、実質的に無過失責任・責任集中と同様の仕組み(「経済的責任集中」と呼ばれています)を作っています。
話し方、話すことの大切さ ―新年を迎え、自らの戒めとして―
◎「原産協会メールマガジン」2013年1月号(2013.1.25発行) 発行:一般社団法人 日本原子力産業協会 情報・コミュニケーション部(担当:木下、八十島) 〒105-8605 東京都港区虎ノ門 1-2-8 虎ノ門琴平タワー9階 TEL: 03-6812-7103 FAX: 03-6812-7110 e-mail:information@jaif.or.jp |
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